英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第149話
9月17日―――
5限目―――実戦技術
~トールズ士官学院・グラウンド~
「はいはい、注目。今日の授業内容は”特別模擬戦”よ。」
「”特別模擬戦”ですか?」
「どう考えても嫌な予感しかしませんが……」
「フン、今度は俺達に何をさせるつもりだ?」
サラ教官の話を聞いたリィンは首を傾げ、マキアスとユーシスはジト目でサラ教官を見つめ
「フフ、マキアスの推測はある意味当たっているかもしれないわね♪」
「ええっ!?」
「フム……模擬戦という言葉を使っているからには誰かと模擬戦をする事だろうな……」
「めんどうな事が起こる予感。」
「サラの事だから、絶対とんでもない相手を用意するんじゃねえか?」
「確かにサラ教官は”前科”が多すぎますからね……」
「アハハ……」
「ボクは面白かったら何でもいいよー!」
「エヴリーヌはめんどうな事じゃなかったらなんでもいいし。」
サラ教官の答えを聞いたエリオットは驚き、ラウラは考え込み、フィーとクロウの推測、ツーヤの言葉を聞いたエマは苦笑し、ミリアムは無邪気な笑顔を浮かべ、エヴリーヌは興味なさげな表情をし
「”特別模擬戦”……一体どのような模擬戦をするのだろうか?」
「かなり気になりますね……」
「今までの事を考えるととんでもない事じゃないかしら?」
ガイウスとプリネは考え込み、アリサはジト目でサラ教官を見つめた。
「あら?レーヴェさんがいらっしゃいませんが……一体どこにおられるのですか?」
その時レーヴェの姿が無い事に気付いたセレーネは首を傾げて尋ね
「フフ、レーヴェなら今日の”特別模擬戦”の”相手”を迎えに行ってるわ。」
「へ―――」
サラ教官の答えを聞いたリィンが呆けたその時
「―――待たせたな。」
後ろにある人物達を率いたレーヴェがリィン達に近づいてきた。
「あら……」
「ええっ!?」
レーヴェの背後にいる人物達を見たプリネは目を丸くし、ツーヤは驚き
「…………!」
(え――――)
レーヴェの背後にいる人物達の一人―――ランディの姿を確認したフィーは目を見開き、ランディと共にいるヴァイスの姿を見たメサイアは呆けた。
「ほう?随分と麗しい女性がいるな。もしかしてあの女性がⅦ組の担任の”紫電”か?」
「……ああ。」
ヴァイスはサラ教官の容姿に驚いた後レーヴェに尋ね、尋ねられたレーヴェは呆れた表情で答え
「フム……授業が終わり、時間があったらお茶に誘うとするか。」
「オイこら、局長!抜け駆けは許さないぞ!俺も後で声をかけようと思ってたんだぞ!?つーか、アンタはエルファティシアちゃん達がいる癖にまだ増やすつもりなのか!?」
ヴァイスが呟いた言葉を聞いたある事を察したランディはヴァイスを睨み
「もう……外国にまで来て早々何を考えているのよ、二人とも……」
「ハア……局長、お願いしますから士官学院生の人達にクロスベル警察が誤解されるので止めて下さい……それとランディも。」
「クロスベル警察の恥さらしですね…………」
ヴァイスとランディと共にいた人物達―――エリィとロイドは呆れ、ティオはジト目でヴァイスとランディを見つめた。
「ええっ!?」
「”クロスベル警察”だと!?」
「ま、まさかその人達はクロスベルの……!」
一方ロイドとティオの言葉を聞いたアリサとユーシスは驚き、マキアスは信じられない表情でロイド達を見つめ
「うわっ!”六銃士”の一人―――”黄金の戦王”ヴァイスハイト・ツェリンダーまでいるじゃん!何で警察のトップまで一緒にいるの??」
「ええっ!?」
「”六銃士”だと……!?」
ヴァイスの姿を確認して驚いたミリアムの言葉を聞いたリィンとラウラは驚いてヴァイス達を見つめた。
「フフ……―――彼らはオリヴァルト殿下の提案によって今日の”特別模擬戦”の相手をする為にはるばるクロスベルから来てくれた”特務支援課”よ。」
驚いているリィン達の様子を面白そうに見ていたサラ教官はリィン達に説明し
「”特務支援課”……!」
「ええっ!?オ、オリヴァルト殿下がですか!?」
「確かプリネ達の話ではオレ達”Ⅶ組”と似たような事をしている警察の部署という話だったが……」
「なるほどな……要するに俺達のパクリをした奴等を相手に模擬戦をさせる事はお互いにとってプラスになるって事か。」
「ちょ、ちょっと、クロウさん!?特務支援課の皆さんに失礼ですよ!?」
ロイド達の事を知ったリィンとマキアスは驚き、ガイウスは考え込み、クロウは納得し、クロウの言葉を聞いたエマは慌てた。
「うっ……」
「耳が痛いわね……」
「ったく、こっちはクロスベルからわざわざ来てやっているんだから、少しは気を使えってーの。」
「というかむしろ設立された時期を考えればパクリはそちら側だと思うのですが……?」
一方クロウの言葉を聞いたロイドは表情を引き攣らせ、エリィは疲れた表情をし、ランディは呆れた表情で呟き、ティオはジト目でリィン達を見つめた。
「さてと、軽く自己紹介だけしておくか。――――クロスベル警察局長、ヴァイスハイト・ツェリンダーだ。今日はロイド達――”特務支援課”の引率で同行してきた形だ。」
「貴方がかの”六銃士”の一人にしてメサイアの…………」
ヴァイスが自己紹介をするとリィンは真剣な表情でヴァイスを見つめ
「それでプリネ姫、ツーヤ。早速聞きたいんだが並行世界の俺の娘とやらと契約している奴はどいつだ?」
ヴァイスはプリネとツーヤを見つめて尋ねた。
「ええっ!?じゃ、じゃあ貴方が……!」
「メサイアさんの……」
「まあ……」
ヴァイスの言葉を聞いたエリオットとエマ、セレーネは驚き
「?”黄金の戦王”がメサイアの事を知っているって事はもしかしてツーヤ達が”特別実習”でクロスベルに行った時にメサイアの事を”黄金の戦王”に教えたの?」
「ええ、並行世界とは言えヴァイスさんの娘ですから知らせておくべきかと思いましたので。」
ある事に気付いたフィーに尋ねられたツーヤは頷き
「メサイアさんと契約しているのはそちらの黒髪の剣士―――リィンさんですよ。」
プリネはリィンに視線を向けた。
「なるほど、お前が……―――とりあえずメサイアをこの場に呼んでくれないか。一度話をしてみたい。」
「………………わかりました。―――メサイア!」
興味ありげな表情をしているヴァイスの言葉にリィンは静かな表情で頷いた後メサイアを召喚した。
「彼女が局長の……」
「綺麗な方ね……」
「うおっ、清楚な雰囲気をバリバリ出している美人のお姉さんじゃねえか!このリア充野郎が……!」
「ランディさんは少し黙って下さい。」
メサイアを見たロイドは驚き、エリィは呆け、ランディは悔しそうな表情でリィンを睨み、ティオはジト目でランディに注意した。
「これは驚いた……亜人族である事を除けばかつて俺がメルキア皇帝であった時に娶ったマルギレッタが産んだ長女―――”メサイア”と瓜二つだな。」
「え、えっと、その…………貴方の事は何とお呼びすればよろしいでしょうか?その……私は貴方の娘ではありませんし……」
ヴァイスに見つめられたメサイアは戸惑いの表情でヴァイスを見つめて尋ねた。
「普通に父親呼ばわりして構わんぞ。世界は違えど、お前が俺の娘である事は間違いないのだからな。」
「え…………ほ、本当によろしいのでしょうか?私は妾の娘ですし……」
「ん?その言い方からするとまさか並行世界の俺とやらは自分の娘であるにも関わらず、お前に肩身の狭い生活を送らせたのか?」
戸惑いの表情で問いかけたメサイアの言葉を聞いたヴァイスは首を傾げた後真剣な表情で問いかけた。
「い、いえ。産まれが特殊な私に対しても皇族としてそれなりの待遇にしてくれた上、娘としても扱ってくれました。」
「”産まれが特殊”…………?―――なるほど、今の言葉で俺とマルギレッタの娘であるにも関わらず亜人族である事も大体”察した”。」
「え…………ど、どうしておわかりになったのですか!?」
真剣な表情になったヴァイスの言葉を聞いたメサイアは呆けた声を出した後信じられない表情で尋ねた。
「アンナローツェと開戦した際、一度は考えた事はあるからな。―――最も、”俺”はマルギレッタより先に捕縛していたリ・アネスから突如奇襲を行った理由等も全て聞き、マルギレッタを救ってほしいという奴の願いを叶える為にそのような考えはすぐに捨てたが。」
「そうですか……リ・アネス様が……………」
ヴァイスの話を聞いたメサイアは複雑そうな表情になり
「―――まあ何はともあれ、困った事があればいつでも相談してもいいぞ。俺がお前の父親である事には違いないのだからな。」
「あ、ありがとうございます、お父様…………!」
そしてヴァイスに微笑まれると嬉し涙を流して笑顔を浮かべた。
「フフ、事情はよくわからないですけど、よかったですね、メサイア様♪」
「……………………」
その様子を見守っていたセレーネは嬉しそうな表情をし、ユーシスは複雑そうな表情でヴァイスとメサイアを見つめ
「――貴重な時間を取ってしまったな。リィンと言ったか?」
「は、はい。」
ヴァイスに視線を向けられたリィンは緊張した様子でヴァイスを見つめた。
「俺の娘の世話をこれからも頼むぞ。」
「……はい。―――戻ってくれ、メサイア!」
そしてヴァイスの言葉に静かな表情で頷いたリィンはメサイアを自分の身体に戻した。
「あの~、局長……俺達には何が何だかわからない内容だったのですが……」
「できればわたし達にもわかるように説明して欲しいのですが。」
その時ロイドがヴァイスを見つめ、ティオはジト目でヴァイスを見つめた。
「帰りの時にでも教えてやるから、それまで我慢してろ。―――それより時間もそんなにないんだし、全員手短に自己紹介だけしておけ。」
「わかりました。――――”特務支援課”のリーダーを務めているロイド・バニングスです。よろしくお願いします。」
「同じく”特務支援課”のサブリーダーを務めているエリィ・マクダエルです。短い間ですがよろしくお願いしますね。」
「ティオ・プラトーです。……よろしくお願いします。」
「ランディ・オルランドだ。よろしくな!」
ヴァイスに促されたロイド達はそれぞれ自己紹介をした。
「なっ!?マ、”マクダエル”ってまさか……!」
「……プリネ達の話にあった”聖皇妃”の妹にしてマクダエル議長のもう一人の孫娘か。」
エリィの名前を聞いたマキアスは驚き、ユーシスは真剣な表情でエリィを見つめ
「人気者ですね、エリィさん。まさか外国の士官学院の人達までエリィさんを知っているなんて驚きです。」
「フフ、人気者なのはおじいさまとお姉様よ。」
二人の反応を見たティオに視線を向けられたエリィは苦笑した。
「……?げげっ!?本当にいやがった……!なんでお前が士官学院なんかにいるんだよ!?」
「?どうしたんだ、ランディ。」
一方フィーに気付いたランディは疲れた表情で声を上げ、ランディの様子に眉を顰めたロイドは不思議そうな表情で尋ねた。
「それを言いたいのはむしろわたしの方。”闘神の息子”が警察にいるなんて、今この目でも見ても信じられないね。」
「うっせ。その呼び方は止めろっつーの、”西風の妖精”。」
フィーの指摘にランディは疲れた表情で答え
「ええっ!?」
「じゃあ、彼女が……」
「話にあった”西風の旅団”の元猟兵ですか………」
ランディの言葉を聞いたロイドとエリィは驚き、ティオは真剣な表情でフィーを見つめた。
「なっ……ならば、あの赤毛の者がフィーの話にあった……」
一方ランディの事を知ったラウラは驚きの表情でフィーに視線を向けたが
「ハイハイ、時間も押しているんだし、私語は後にして、全員軽く自己紹介をしなさい。」
サラ教官が手を叩いて中断させた。そしてサラ教官に促されたリィン達はそれぞれ軽く自己紹介をした。
「は、話には聞いていたけど、改めて見ると凄いメンツだな……」
「そ、そうよね。”貴族派”と”革命派”の主要人物の関係者に加えて”ラインフォルトグループ”の会長のご息女や”鉄血の子供達”までいるものね……」
リィン達の自己紹介を聞き終えたロイドとエリィは冷や汗をかいて苦笑し
「……まあ、”影の国”の時のメンバーと比べれば大した事はないかと。」
「非常識な体験をしてきたティオすけは黙ってろ!―――それで”紫電”のお姉さん!俺達は誰を相手にすればいいんッスか?まさか全員じゃないッスよね?」
静かな表情で呟いたティオに突っ込んだランディはサラ教官に視線を向けて尋ねたが
「フフ、お望みなら全員にしておくかしら?”闘神の息子”のアンタなら、プリネ、ツーヤ、エヴリーヌの3人を除いた全員なら互角か、それ以上に戦えるんじゃないかしら?」
「いやいやいや!?1対11とか、完全に苛めじゃないッスか!つーか、その名前で呼ぶのもマジで勘弁してくださいッス……」
口元に笑みを浮かべたサラ教官の問いかけに慌てた様子で答えた後疲れた表情で指摘した。
「さてと。互いに自己紹介を終えた事だし、そろそろ始めていいか?」
「ええ、お願いします。」
「―――ロイド、エリィ!まずはお前達だ!」
「は、はい!」
「わかりました。」
そしてサラ教官に確認を取ったヴァイスに指示されたロイドとエリィはそれぞれ答え
「―――こっちはリィン、アリサ!貴方達よ!」
「「はい!」」
サラ教官に名指しされたリィンとアリサはそれぞれ頷いてロイドとエリィと対峙し、それぞれの武器を取り出した。
「!刀に弓か……」
「リィンさんはあのエリゼさんのお兄さんなんだから、油断はできないわね……」
リィンとアリサの武器を見たロイドは驚き、エリィは真剣な表情でリィンを見つめ
「フフ、よかったわね、リィン?相手に警戒してもらって。」
「ハハ……(というかエリゼが”特務支援課”の人達と何で関わった事とか非常に気になるんだが……)」
アリサに微笑まれたリィンは冷や汗をかいて苦笑した。
「これより”特別模擬戦”第1戦目を始める!―――双方、構え!」
サラ教官の言葉を聞いたリィン達、ロイド達はそれぞれの武器を構え
「―――始め!」
サラ教官の号令を合図に模擬戦を開始した!
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