英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第148話
リィン達が校門に到着するとそれぞれが乗るリムジン車の前でオリヴァルト皇子達がそれぞれの従者たちと話し合っていた。
~校門~
「母様……!」
「……父さん!」
アリサとマキアスの声に気付いたオリヴァルト皇子達は自分達を見送りに来たリィン達に気付いて振り返り、アリサ、マキアス、ユーシス、プリネとエヴリーヌ、レーヴェはそれぞれの理事の元へと向かった。
「ふふ、夏至祭以来か。どうやらガレリア要塞ではお手柄だったみたいだな?」
「……からかわないでくれ。自分でも軽率だったとは思っているけど……でも、後悔はしていないよ。」
レーグニッツ知事に微笑まれたマキアスは溜息を吐いた後決意の表情で答え
「そうか……だったらそれでいい。」
マキアスの答えを聞いたレーグニッツ知事は静かな笑みを浮かべた。
「……兄上、お久しぶりです。」
「フフ、5月以来か。どうやら、この兄に確かめたい事があるようだが?」
「ええ……色々と。……カイエン公を出迎えにレグラムに来られたそうですね。」
ルーファスに問いかけられたユーシスは頷いた後真剣な表情でルーファスを見つめた。
「ああ、そなた達にもできれば挨拶をと思ったが。あの方に余計な興味を持たれるよりはマシだろう?」
「それは確かに……ですが兄上たちは、アルバレア家は一体何を?貴族派―――”四大名門”は何をしようとしてるんですか?」
「フフ……さて。”四大名門”も一枚岩ではない。その意味では、私と父上ですら考え方の違いがあるくらいに。そなたはそなたで、公爵家の者としての立ち位置を見極めるがいいだろう。
「……………………」
そしてルーファスの言葉を聞いたユーシスは真剣な表情で黙ってルーファスを見つめた。
「……忙しいのによく来たわね?いつもみたいに商談が入って理事会も欠席すると思ったけど。」
イリーナ会長と対面したアリサはジト目で問いかけた。
「時間は”空く”のではなく必要に応じて”作る”ものよ。上に立つ者ならば尚更ね。」
「む……」
「ふふ、お嬢様もそういう所は会長そっくりですね。勉学、武術、趣味、部活動、魔術、全てこなしてらっしゃいますし。」
イリーナ会長の言葉に頬を膨らませたアリサの様子をシャロンは微笑ましそうに見守っていた。
「当然ね。誇るほどではないでしょう。もっと創造的に時間を使いなさい。きちんとこなすだけではなくてね。」
「ぐっ…………」
イリーナ会長の指摘にアリサは唸った後考え込んである事を思い出して複雑そうな表情をした。
「………”列車砲”を見たわ。それに”アハツェン”の性能も……お祖父様が後悔するのも当然よ。”列車砲”をメンフィルに取られてよかったと今でも思っているわ。母様は……本当にあれでいいと思ってるの?」
「ふふ……そんな質問が出てくるという事は当然わかっているみたいね?あれも時代の”必然”であることを。」
「そ、それは……」
満足げな笑みを浮かべるイリーナ会長の問いかけにアリサは驚いた後顔を俯かせて考え込み
「人の考えを当てにせず、まずは自分の考えを見極めなさい。あなたが本当に家から自立したいと思っているのなら。」
「…………………………」
そしてイリーナ会長の指摘を目を閉じて聞き続けていた。
「リウイお兄ちゃん♪こんなにも早く会えるなんて思わなかったよ♪」
プリネ達と共にリウイとペテレーネと対峙したエヴリーヌは嬉しそうな表情でリウイを見つめ
「フッ、授業にはちゃんとついて行けてるか?」
「当然だよ。エヴリーヌはプリネのお姉ちゃんなんだから、そんな事できて当たり前だよ。」
「フフ、エヴリーヌお姉様、驚いた事に授業中に居眠りをせずにちゃんと聞いていますし、教官達の質問には答えているのですよ?」
「正直、俺も驚いたな。」
静かな笑みを浮かべるリウイの問いかけに胸を張って答えたエヴリーヌに続くようにプリネは微笑みながら答え、レーヴェは静かな笑みを浮かべた。
「まあ……フフ、エヴリーヌさんにとっても良い機会になったようですね、リウイ様。」
プリネ達の話を聞いたペテレーネは目を丸くした後微笑みながらリウイに視線を向け
「ああ。……………―――プリネ。お前も気付いていると思うが、貴族派と革命派による内戦が始まる日は近いだろう。」
ペテレーネの視線に頷いたリウイは表情を引き締めてプリネを見つめた。
「…………はい。」
「―――いくら国家間の修復の為に皇族や貴族を留学させているとはいえ、メンフィル帝国は他国の内戦に介入しない事はわかっているな?」
「重々承知しております。ですがその時が来れば、私は”メンフィル皇女”としてではなく、”プリネ・カリン・マーシルン個人”として皆さんの御力になりたいと思っています。」
リウイの問いかけに頷いたプリネは決意の表情でリウイを見つめた。
「プリネ…………」
「…………………」
プリネの答えを聞いたペテレーネは驚き、レーヴェは静かな表情で見守っていた。
「それがわかっているならいい。――レオンハルト、エヴリーヌ。今はこの場にいないツーヤと共にプリネの力になってやってくれ。」
「ハッ。」
「ん。それがお姉ちゃんとしての務めだしね。」
リウイの指示にレーヴェは会釈し、エヴリーヌは頷き
「プリネ……くれぐれも無理はしないでね?」
「はい、お母様。」
心配そうな表情を見つめるペテレーネの言葉にプリネは静かな表情で頷いた。
「しかし夏至祭に引き続き世話になってしまったな。あやうく宰相殿と同じ場所で女神の元に召される所だったよ。」
リィン達と対峙したオリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべてリィン達を見回し
「いえ、そんな……!」
「……ご無事で何よりでした。」
「通商会議の方も本当にお疲れ様です。」
エリオットとリィンは謙遜した様子でオリヴァルト皇子の感謝を受け取り、エマはオリヴァルト皇子をねぎらった。
「いや、そちらの方は正直良い所がほとんど無くてねぇ。良い所は全部”六銃士”の諸君とメンフィルに持っていかれて、宰相殿の独断のせいで私は各国の代表とマスコミの前で頭を下げる羽目になったからねぇ。」
「ホントにそう思っているの~?レクターは最初から打ち合わせてやったんじゃないかって言ってたけど。」
「お、おい、ミリアム。」
疲れた表情で答えたオリヴァルト皇子の話を聞いてジト目で見つめるミリアムの言葉を聞いたリィンは冷や汗をかいた。
「ハハ……―――それにしてもクロスベル市長があのような発言をするとは思ってもみなかったよ。」
その様子を苦笑しながら見守っていたオリヴァルト皇子は表情を引き締めて話を続けた。
「……クロスベル自治州の『国家としての独立』提唱ですか。」
「正直、現実味がないけど。」
ラウラの言葉を聞いたフィーは静かな表情で呟いた。
「ああ……両帝国と共和国がこのまま独立を認めない限りね。だが現在、クロスベルでは独立の意志を確認する意味での住民投票が予定されている。その意味では少々、揉める可能性はあるだろう。」
「まー、”通商会議”のスキャンダルと戦争勃発を盾にしたメンフィルによって大幅に減らされたとはいえ、クロスベルから徴収できる税収がフイになるのは避けたいところだし、エレボニアとカルバードからしたら”通商会議”で世界中を相手に大恥をかかせた上独立まで提唱するなんて、自治州の分際で何様のつもりだーって感じだろうしねー。」
オリヴァルト皇子の話を聞いて呟いたミリアムの意見を聞いたリィン達は冷や汗をかいてミリアムを見つめた。
「おい、ミリアム……」
「つーか、ぶっちゃけスギだろ。」
「ぶーぶー、別にいいでしょー、このくらい。あの件で情報局に勤めている人達の給料が大幅にカットされて、ボクのおこずかいも減ったんだよー?」
リィンとクロウの指摘にミリアムは頬を膨らませて答え
「それに関しては独断で”赤い星座”を雇った情報局の自業自得だと思うが……」
「……だね。”リベールの異変”に関わった事を知っていて”赤い星座”を雇ったんだから。」
ミリアムの言葉を聞いたラウラの指摘にフィーは静かな表情で頷いた。
「ハハ、君がミリアム君か。色々と噂は聞いているよ。噂のアガートラム君というのも一度見て見たかったものだが。」
「んー、別にいいよー?それじゃ、ガーちゃ―――」
そしてオリヴァルト皇子の言葉に応えるかのようにミリアムはアガートラムを召喚しようとしたが
「ス、ストップ!」
「さすがに控えるべきだろう。」
「ぶーぶー。」
リィンとガイウスによって制止された。
「ぶーぶー、ではない。」
「はあ……とんでもない事するなぁ。」
ミリアムの答えを聞いたラウラとエリオットはそれぞれ呆れた表情で見守っていた。
「まったく……お前も迂闊な発言は慎め。」
「ぶーぶー。」
そしてミュラー少佐の指摘を聞いてミリアムの真似をしたオリヴァルト皇子の行為にリィンは冷や汗をかいた後見覚えのないミュラー少佐を見つめた。
「あの、そちらの方が……」
「もしかして、皇子殿下の護衛を務めているヴァンダール家の……」
「ああ、ナイトハルトから聞いていたか。第七機甲師団に所属するミュラー・ヴァンダールだ。先日は皇子共々、世話になってしまったようだ。改めて礼を言わせてもらおう。」
「……恐縮です。」
「ヴァンダール家の方とお目にかかれて光栄です。」
「”光の剣匠”のご息女と八葉一刀流の使い手だったか。同じ剣の道を志す者としてこうして出会えて嬉しく思う。それと君は……叔父が推薦した若者だったか。」
「はい、ゼクス閣下には色々お世話になっています。」
リィンとラウラに視線を向けた後自分を見つめたミュラー少佐にガイウスは会釈をした。
「なんの、ノルドの一件では叔父も世話になったと聞いている。それ以外にも、頼もしい顔ぶれがここまで揃っているとは……フフ、皇子の思いつきも満更ではなかったようだな。」
「フッ、言った通りだろう?Ⅶ組に限らず、士官学院全体が非常に盛り上がっているようだ。かくなる上は、学生諸君とプールで半裸の付き合いをして親睦を深めるべきかもしれないねぇ♪」
ミュラー少佐の言葉を聞いたオリヴァルト皇子は口元に笑みを浮かべたが
「そんなに汗がかきたいなら帝都までマラソンでも構わんぞ?2時間くらい全力で走れば何とか辿り着ける距離だろう。」
「スミマセン調子に乗りました。」
ミュラー少佐の突込みに肩を落として答え、リィン達を脱力させた。
(なんか息がピッタリ。)
(ええ……どういうご関係なんでしょうか?)
「フッ、それではさらばだ。また近いうちに会えることを祈っているよ。」
その後オリヴァルト皇子達はアリサ達に見送られながらリムジン車に乗り込み、学院から去って行った。
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