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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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第41話

レン達が去ったその後、カノーネ達特務兵の残党達はその後駆けつけて来た王国軍によって、拘束され、翌日にはカノーネがエルベ離宮の一室にてシードとユリアから尋問を受けていた。



~エルベ離宮~



「―――カノーネ君。頼むから話してくれないか?あの少女――レン姫はどういう形で君たちに接触してきたんだ?そして君たちは、レン姫が何の為に君たちに『ゴスペル』に限りなく似た物を渡したのか聞いているのか?」

「………………………………」

シードの尋問に対し、カノーネは固く口を閉ざしていた。

「カノーネ……。意地を張るのもいい加減にしろ。このままではお前はおろか、お前の部下たちの罪も重くなる。それは本意ではあるまい?」

「フン、彼らもわたくしもとっくに死ぬ覚悟は出来ている。あの時、メンフィルに殺される覚悟も出来ていた。その程度の脅しに屈するものですか。」

ユリアに忠告されたカノーネは鼻を鳴らして答えた。

「軽々しく死ぬなど言うな!同盟国の姫が何故、今回の件を企んだ事態の深刻さが分からないお前ではあるまい!?下手をすれば、今まで保ってきた同盟の崩壊、そして最悪はあのメンフィルとの戦争へと発展する事になるかもしれないのだぞ!?」

「………………………………」

ユリアの叫びにカノーネは何も答えず、口を閉ざしていた。その様子を見たシードは静かに語った。

「カノーネ君……。リシャール大佐はある意味、高潔な愛国者だった。何者にもリベールの自主独立を脅かされないことを望んでいた。その事だけは私も真実だと思う。そして今、リベールに新たなる暗雲が忍び寄ろうとしている……。彼がその事を知ったらどう思うか考えてもらえないか?」

「……るさいですわ……」

「なに?」

カノーネの呟きの一部が聞こえたシードが首を傾げたその時

「……うるさい、黙れ!」

カノーネは怒鳴った。

「リシャール閣下のお気持ちをもっともらしく語ったりするな!閣下を追い落とすことによってその地位を手に入れた輩がっ!」

「………………………………」

「カノーネ、貴様!」

カノーネに睨まれ罵られたシードは何も返さず、その様子を見たユリアはカノーネを注意しようとしたがカノーネは矛先をユリアに変えた。

「貴女もそうよ、ユリア!昔からのライバルが落ちぶれたさまを眺めるのじゃさぞかし愉快でしょう!?ならば笑いなさい!いい気味だと嘲笑(あざわら)うがいいわ!」

「……カノーネ…………」

カノーネの様子を哀れと思ったユリアは痛ましそうな表情をしていた。



「わたくしが今まで泥をすすって生きてきたのは閣下を助けるため!それが叶わなくなった今、わたくしが生きる意味などない!さっさと銃殺にでもするがいいわ!」

「おいおい……。馬鹿なことを言いなさんな。」

カノーネが叫んだその時、カシウスが部屋に入って来た。

「准将……!?」

「ど、どうしてこちらに……」

カシウスの登場にシードは驚き、同じように驚いた表情をしたユリアは尋ねた。

「今回に事件について陛下と相談したいことがあってな。それとは別の用事があって先ほど王都に到着したばかりだ。」

「そうでしたか……」

「ご多忙の中、お疲れ様です!」

「カシウス・ブライト……。諸悪の根源が現れたわね……。貴方もわたくしを……嘲笑いに来たというのかしら?」

カシウスを見たカノーネは憎々しげな様子でカシウスを睨んだ。

「やれやれ、嫌われたものだ。これでもリシャールに負けないくらいの男前だと自負してるんだがなぁ。」

「ふ、ふざけるなアアッ!貴方さえいなければ……閣下は……リシャール閣下は……」

溜息を吐いて自分の事を語るカシウスをカノーネは睨んで、大声で怒鳴り、悔しそうな表情で語ろうとしたその時

「コホン、准将……。あまり彼女をからかわないでもらえませんか?」

部屋内の人物達ではない男性の声が部屋の入口付近から聞こえて来た。



「え……」

「今のは……」

「ま、まさか……」

男性の声を聞いたカノーネ、シード、ユリアは驚いて入口を見た。すると声の主――かつてのクーデター事件の首謀者であったリシャールが服役姿で部屋に入って来た。

「…………あ………………」

「リ、リシャール大佐!?」

「……お久しぶりです。」

リシャールの登場にカノーネは呆け、ユリアは驚き、シードは懐かしそうな表情で挨拶をした。

「久しぶりだね。シード中佐、シュバルツ大尉。それに……カノーネ君もな。」

「あ……ああ……」

リシャールに微笑みかけられたカノーネは身体中を震わせていた。

「服役中の身であるが准将にわがままを言ってここに連れてきていただいた。どうしても君と直接、会って話がしたかったんだ。」

「……わたくし……と?」

リシャールの話を聞いたカノーネは信じられない表情でリシャールを見た。

「ああ……。―――すまない、カノーネ君。私の傲慢と視野の狭さが君たちを巻き込んでしまった。前途有望で有能な若者たちを犯罪行為に荷担させるばかりか、数名はその命を散らさせてしまった。そのことをずっと謝りたくてね。」

「おやめください、閣下!わたくしたちは自分の意志で……」

謝罪するリシャールにカノーネは恐縮しながら答えようとしていた。

「いいや、これは私の責任だ。君たちは、私の方針の元、動いてもらっていたに過ぎない。その意味では今回の事件も私の責任と言ってもいいだろう。」

「そ、そんな……」

リシャールの話を聞いたカノーネは目を伏せた。

「だから……ここに改めて宣言しよう。―――只今をもって王国軍情報部は解散する。以後、その任務は軍司令部に引き継がれることになるだろう。カノーネ君……今まで本当にご苦労だったね。」

「……あ…………」

「これでもう……君が無理をする必要はない。私など助けるために命を賭けなくてもいいんだ。だから死ぬなどと……哀しいことを言わないでくれ。」

「リシャール……閣下……。……ううっ……あああっ……。うああああああああッ……!」



リシャールの言葉にカノーネはしばらくの間、大声で泣き続けた。



~遊撃士協会・グランセル支部~



「そうですか……。ええ……わかりました。それでは宜しくお願いします。」

「どうだった、エルナンさん?」

通信器を置いて、自分達に振り返ったエルナンにエステルは尋ねた。

「ええ、カノーネ元大尉が事情聴取に応じたそうです。詳しい事情が分かったらギルドにも教えてくれるでしょう。」

「そっか……」

「あの強情そうな女が話をする気になったなんてね。どんな手を使ったのかしら?」

エルナンの説明にエステルは安堵の溜息を吐き、シェラザードはカノーネの事を思い出して、カノーネに口を割らせた方法が気になった。

「ま、そっちの調査は王国軍に任せておくとしよう。俺たちは俺たちで情報を整理したいところだ。」

「そうですね……。では、まずは今回の仕事の報酬をお渡しするとしましょう。細々とした依頼への対応も併せて査定しておきましたよ。」

そしてエルナンはエステル達にそれぞれ報酬を渡し、また、ミントには推薦状を渡した。

「ねえ、クロ―ゼ………レンって本当にメンフィルの皇女なの?」

「………はい。今朝、シルヴァン陛下達自ら私やお祖母様との朝食を望まれて、その際シルヴァン陛下達と共に現れ、陛下達に促されてお祖母様に自分の事を紹介しました。………”英雄王”リウイ皇帝陛下と”闇の聖女”ペテレーネ様の娘にして、”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”プリネ姫の妹と。」

エステルに尋ねられたクロ―ゼは頷いて説明した。

「……師匠から次女の話は聞いた事があったけど、まさかあの娘だったとはね………」

「え!?シェラ姉、レンの事を知っていたの!?」

シェラザードの言葉を聞いたエステルは驚き、尋ねた。

「名前とかは知らなかったけど、次女がいる事だけは昔、教えてもらった事があるわ。……ただし、プリネさんの妹――レンは師匠達の実の娘ではなく、養女よ。」

「養女………確かにレンは正真正銘、あたし達と同じ”人間”よね……」

「うん……プリネさん達と違って、耳が尖っている訳でもないし……」

シェラザードの話を聞いたエステルは納得し、ミントはレンがプリネ達”闇夜の眷属”の特徴がなかった事を言った。



「それより、あの娘が何を考えて、今回の真似をしたかを考えるべきだな。」

「ええ。それにしても、徹底的に振り回してくれたわね。カノーネに『ゴスペル』もどきを渡して戦車を使った再決起を唆したのもあの子だったみたいだし……」

「各方面に脅迫状を送ったのもあのガキだったらしいな……。一体何のためだったんだ?」

ジンの言葉に頷いたシェラザードやアガットは真剣な表情で考え込んだ。

「なんとなく、だけど……。そうした方が面白そうだったからじゃないかな?」

「なに……?」

そして唐突に呟いたエステルの言葉にアガットは首を傾げた。

「レンは今回の件を『お茶会』に見立ててたわ。そしてあたしたちを含めた大勢の人間を参加させるために色々と準備して招待した……。そんな気がするのよね。あたし達の事もメンフィルの情報部みたい所から、手に入れたんじゃないかな。」

「……マジかよ。脅迫状の一件があったから王都に来たのは確かだが……」

「レ、レンちゃんって一体………」

エステルの推測にアガットやティータは驚いていた。

「ふむ、あの仔猫ちゃんならそのくらいはやりかねないね。ボクたちを眠らせた睡眠薬の量もコントロールしていたみたいだし。」

「……アーライナ教は治療薬以外にもさまざまな薬を扱っていると聞きます。アーライナ教のトップであるペテレーネ様ならそういった薬の調合の仕方も知っているでしょうから、きっとペテレーネ様から教わったのでしょうね……」

オリビエの話に続くようにクロ―ゼも頷いて答えた。

「ちょうど俺たちがあのタイミングで波止場に到着できるようにだな……。ふざけたマネしやがって……」

「えっと、やっぱりみんなあの子に眠らされちゃったわけ?」

怒りを抑えている様子のアガットを見てエステルは仲間達に尋ねた。

「ええ……恐らく。レンちゃんが百貨店で買ってきたクッキーを頂いた直後でしたから……」

エステルの疑問にクロ―ゼは不安そうな表情で頷いた。

「しかし……痛い失態だったな。彼女が殺すつもりで毒でも使われていたら全員死んでいたのかもしれん。」

「あ……」

「いえ、それに関しては私の失態です。皆さんをバックアップする身としてもう少し気を付けるべきでした。本当に申しわけありません。」

真剣な表情で語るジンの言葉を聞いたエステルは呆け、エルナンはエステル達に謝罪した。



「や、やだな、エルナンさん。今回ばかりはあたしたち全員の責任だと思う。まさかレンがメンフィルの皇女であんな事をするなんて、誰も思わなかったし……」

「レンちゃんは一体何を考えてこんな事をしたんだろうね……」

謝罪するエルナンをエステルは慌てた様子で声をかけ、ティータは不安そうな表情で呟いた。

「ティータ……もう、元気出しなさいよ!今度会ったら、絶対にあの子に事情を聞きだしてやるわ!」

「ふえっ……?」

「ママ……?」

エステルの言葉にティータやミントは首を傾げた。

「だって、レンはプリネの妹なんでしょ?だったら、普段はロレントのメンフィル大使館にいる可能性がかなり高いわ。メンフィルの王様達の話だとプリネ達も帰って来ているようだし、事情を話してレンにあわせてもらって、今回の件を怒って、そしてなんでこんな真似をするか絶対に聞きだしてやるわ!」

「お、お姉ちゃん……。うんっ、そうだよね!」

「ふふ……さすがエステルさん。」

「うんうん、その意気だよ!」

エステルの心強い言葉にティータは明るい表情をし、クロ―ゼは微笑み、アネラスは嬉しそうに頷いた。

「フッ、気持ちいいくらいのあっぱれな前向きさだねぇ。」

「ったく……軽く言ってんじゃねえぞ。ガキとは言え、相手は王族なんだからな。」

「ふふ、いいじゃないの。これがエステルなんだから。」

オリビエは感心し、アガットは呆れ、シェラザードは微笑んでエステルを見た。

「こういう前向きさは旦那以上かもしれんなぁ。」

ジンは口元に笑みを浮かべて感心していた。

「うーん、ええなあ。ますます惚れてしまいそうや。」

その時、ケビンがギルドに入って来た。



「あ……!」

「ケビン神父。お待ちしていましたよ。」

ケビンの登場にエステルは驚き、エルナンは笑顔で出迎えた。

「やー、遅れてスンマセン。今までカラント大司教にこっぴどく説教されてましてなぁ。それで遅れてしまったんですわ。」

「………………………………」

苦笑しながら事情を説明するケビンをエステルはじっと見た。

「どした?オレの顔に何かついとる?」

「あのー、今更といえば今更な質問なんですけど……。結局ケビンさんって何者なの?」

「ええ、それがあったわね。あたしたちも結局、はぐらかされたままだわ。」

「もちろん普通の神父さんじゃないんですよね?」

首を傾げているケビンにエステルはジト目で睨んで正体を尋ね、エステルに続くようにシェラザードやアネラスも尋ねた。

「そやな……。改めて自己紹介しようかな。―――七耀教会『星杯騎士団』に所属するケビン・グラハム神父や。以後、よろしく頼みますわ。」

「『星杯騎士団』……?」

ケビンが名乗った時、言った組織名がわからなかったエステルは首を傾げた。

「ほう、これは恐れ入った。まさかキミみたいな若者が『星杯騎士』だったとはね……」

「オリビエ、知ってるの?」

「アーティファクトが教会に管理されているという話は聞いたことがあると思うが……。その調査・回収を担当するのが『星杯騎士団』と呼ばれる組織さ。メンバーは非公開ながらかなりの凄腕が選ばれるらしい。」

「へえ、詳しいですやん。残念ながらオレは騎士団でもペーペーの新米でしてなぁ。凄腕ちゅうのは過大評価ですね。」

オリビエの説明を聞いたケビンは苦笑しながら答えた。

「ああ、あれは王国軍から正式に引き渡されたもんや。教会とリベールの間にはアーティファクト回収の盟約が結ばれているさかいな。それを無断で壊してしもうたんで大司教さんに説教されたんやけど……」

「そ、そうだったんだ……。でもあの場合、ああするしか方法はなかったと思うんだけど。」

「ええ、手段を選んでいる場合じゃなかったと思うわよ。」

ケビンの説明を聞いて驚いたエステルは状況を思い出してケビンの行動は間違っていない事を指摘し、シェラザードも頷いた。



「えっ……!?」

「オレがリベールに来たのは『結社』の調査のためやからね。正確に言うと……連中が手に入れようとしとる『輝く環』の調査なんやけど。」

「!!!」

「『輝く環』……!」

ケビンの話を聞いたエステルとクロ―ゼは驚いた。

「女神が古代人に授けた『七の至宝』の一つ……。グランセル城の地下に封印されていると思われていた伝説のアーティファクトですね。」

「ええ、そうですわ。どうもここ最近、大陸各地で『七の至宝』に関する情報を集めとる連中がいるらしくて……。教会としても、その動向にはかなり目を光らせていたんですわ。そんな折、リベールの方から『輝く環』の情報が入ってきた。そこで、真偽を確かめるべく新米のオレが派遣されたわけです。」

クロ―ゼの確認するように尋ねられたケビンは頷いて答えた。

「そうだったんですか……」

「それじゃあ『輝く環』って本当にリベールにあるわけ?封印区画に無かったってことはただの伝説だと思ってたけど……」

「そもそも、どういう物かも判ってねえそうじゃねえか?」

「ま、そのあたりの真偽を調べるのもオレの仕事なわけや。今日来たのは、こちらの事情を説明してもらおと思ってな……。つまり、また何かあった時はお互い協力しようってこっちゃ。」

「なるほどね……。うん、こちらも望むところよ。」

「そうだな。こちらとしても助かるぜ。」

「これも何かの縁だし、困ったことがあったら連絡して。」

「おおきに!ほな、今日のところはこれで失礼させてもらいますわ。またな~、みなさん!」

そしてケビンはギルドを去った。



「行っちゃった……」

「オリビエとは違った意味で毒気を抜かされる神父さんね。」

「フッ、ボクに言わせればまだまだ修行不足かな。もう少し優雅さが欲しい所だね。」

「あんたの世迷言のどこに優雅さがあるってゆーのよ。」

髪をかきあげて語るオリビエをエステルはジト目で睨んで指摘した。

「しかし『輝く環』ですか……。『結社』が各地で『ゴスペル』を使った実験をしているのと何か関係があるのでしょうか?」

「そうですね……その可能性は否定できません。ちなみに、今回の事件は関係ありませんでしたが、それでも2つの地方で『ゴスペル』の『実験』終えた事になります。この分だと、残りの地方でも実験が行われるかもしれませんね。」

「そっか……。王都での騒動も片づいたし移動した方がいいのかしら。」

「てことは、ロレント地方かボース地方になるな……」

エルナンの話を聞きエステルは提案し、アガットが頷いて次の目的地を提案したその時、通信器が鳴った。

「はい、こちら遊撃士協会、グランセル支部です。………………………………。なんと、そうですか。……了解しました。こちらも注意しておきます。ええ、それでは」

「エルナンさん、どうしたの?」

「あの雌ギツネの取り調べでも終わったか?」

「いえ、それとは別件です。どうやら昨夜、ボース地方に空賊団の残党が現れたそうです」

「ええっ!?」

通信器から手に入れた情報を知ったエステル達は驚いた。

「情報部に空賊団……やたらと忙しい夜だったんだ。で、一体どこに現れたんだ?」

ジンは空賊がどこに現れたか尋ねた。

「以前彼らがアジトにしていた『霧降り峡谷』の砦だそうです。現在、軍の飛行訓練場として使用されているそうですが……。彼らはそこに保管されていた空賊艇を奪って逃走したそうです。」

「なんですって……!」

「ほほう、ミュラーが受け取りに行ったあれか……」

エルナンの話を聞いたエルテルとオリビエは驚いた。



「ちょ、ちょっと待ってよ。何だかあまりにもタイミングが良すぎない?もしかしてそれも『結社』が絡んでいるとか?」

「可能性は否定できませんね。その意味では、この次に皆さんに向かっていただくのはボース地方がいいのかもしれません。」

「確かに……」

「いいんじゃないかしら。現時点ではロレントとボースのどちらで事件が起こるのか判らないしね。」

「うん……。って、シェラ姉も一緒に来てくれるわけ?」

シェラザードも同行する様子を見てエステルはシェラザードに尋ねた。

「情報部の残党のケリがついてあたしたちの仕事も一段落したわ。敵は相当強いみたいだしあたしも助太刀しようと思ってね」

「やった!」

「わーい!シェラお姉さんも一緒に来るんだ!」

「ヘッ、『風の銀閃』の手並み、とくと拝見させてもらうぜ。」

「ふふふ、シェラ君がついにボクの元に来るんだね。」

「シェラザードさん。よろしくお願いします。」

シェラザードの加入にエステル達は表情を明るくして、迎えた。

「ええ、こちらこそよろしくね」

「あ、もしかして……アネラスさんも一緒とか?」

「えへへ……私は残念ながら。そろそろクルツさんたちが強化訓練から帰ってくるんだ。そちらのチームに入れてもらうつもりなの。」

「そうなんだ……」

アネラスは来ない事にエステルは残念そうな表情をした。

「チームってことはやはり『結社』対策かい?」

「はい、『結社』の拠点を捜索することになると思います。」

「拠点の捜索?」

ジンの問いに答えたアネラスの言葉にエステルは首を傾げた。

「これまでの動きから見て『結社』は国内の何らかの拠点を築いている可能性は高そうです。そこを叩かない限り、根本的な解決にはなりません。今後は王国軍と全面協力して捜索活動を行う必要があるでしょう。」

「確かにそうですね……」

エルナンの説明を聞いたクロ―ゼは納得して頷いた。

「へっ、結社対策チームがもう1つ必要になるのも当然か。」

「うーん、そうなるとクルツさんのチームにも戦力が必要になりそうだし……。アネラスさんを取られちゃうのも仕方ないかぁ。」

「えへへ、ごめんね。『結社』の拠点を見つけたらエステルちゃんの力も借りることになると思うから。その時に一緒に戦おう?」

「うん……そうね!」

「ミントもいっしょだよ!」

そしてアネラスは先にギルドを出て行った。アネラスが出て行った後、エステル達はそれぞれの荷物を持って、空港に行こうとしたその時

「うふふ、遊撃士って本当に忙しいのね。数日前に来たばかりなのに、もう他の地方に行っちゃうなんて。」



なんとレンがギルドに入って来た………!




 
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