英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第142話
同日、17:00――――
~ガレリア要塞~
「―――それでは今からお前達を”列車砲”の格納エリアへと案内する。軍の機密事項に属するのでくれぐれも他言は無用にな。」
「了解しました。」
「な、何だかドキドキしてきたね。」
「ええ……そうね。」
「昨日見せてもらった戦車や飛行艇を超える兵器……どのような兵器なのでしょう………?」
今から見学しに行く兵器の存在にリィン達が緊張した眼差しをしている中、セレーネは不安そうな表情をしたが
「どうせ、唯の鉄屑だって。エヴリーヌが本気になればいつでも壊せるから、そんなに不安がる事もないと思うけど?」
エヴリーヌの発言を聞き、リィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「……わかっているとは思うけど、メンフィル帝国の客将であるあんたが万が一”列車砲”に何かしたら、国際問題に発展するわよ。そうなったらプリネ達の今までの努力が水の泡になるんだからね?」
「別に注意されなくてもエヴリーヌは何もする気はないよ。興味ないし、リウイお兄ちゃん達からもよっぽどの事がない限り絶対に壊すなって言われているし。」
サラ教官の指摘を聞いたエヴリーヌは興味なさげな様子で答えた。
「んー、列車砲かぁ。ボクは前にも見えてるからちょっとメンドウかなー。」
そしてミリアムの発言を聞いたリィン達は再び冷や汗をかき
「……オライオン。お前に関しては例外扱いだ。」
「あのねぇ。アンタだけは待ってても構わないのよ?」
ナイトハルト少佐とサラ教官は呆れた表情で言った。
「うそうそ!仲間はずれはやだよー!」
「まったく……」
態度を変えたミリアムの様子にサラ教官が呆れたその時、ナイトハルト少佐が持つオーブメントに通信が入った。
「む……失礼。こちら、ナイトハルト。ワルター司令でしたか。……自分に通信ですか?ええ!そのまま繋いでください!どうした、ミュラー。こんなタイミングに―――……………何だとっ!?」
(なんだ……?)
(へえ、どこかから来た通信をARCUSで受け取ってんのか?)
(ええ、そうみたいね……)
(…………………)
通信内容を聞いて血相を変えているナイトハルト少佐をリィン達は真剣な表情で見守っていた。
「―――わかった。こちらでも備えておこう。ああ……ああ。くれぐれも気を付けるがいい。」
「……クロスベルで異変が?」
「ああ、その通りだ。……つい先程会議が開かれている超高層ビルを”帝国解放戦線”が襲撃した。」
サラ教官の質問に答えたナイトハルト少佐の話を聞いたリィン達は血相を変えた。
「襲撃には飛行艇を使用……幸い、何とか撃退してオリヴァルト殿下や宰相も全員無事だったそうだ。しかし予断は許さない状況が未だに続いているらしい。」
「クッ、本当に襲ったのか……」
「……愚かな……」
「お姉様達が無事だとよいのですが……」
「大丈夫だと思うよ。ツーヤ達があんな雑魚に後れを取る訳がないし。」
ナイトハルト少佐の話を聞いたマキアスは唇を噛みしめ、ラウラは静かな怒りを纏い、不安そうな表情をしているセレーネにエヴリーヌは静かな口調で言った。
「それだけじゃない……他にも気になる事があったみたいですね。何ですか、それは?」
「ああ―――テロリストたちが”導力ネット”を不正に操作して隔壁をコントロールした。その上で、”機械の魔獣”を繰り出してきたらしい。」
「機械の魔獣……!」
「それって、リィン達がレグラムで遭遇した……?」
「ああ、街道に現れた魔獣だ!」
心当たりのある魔獣の存在まで現れた事にエマは真剣な表情になり、フィーの疑問にリィンは頷いた。
「それと”導力ネット”ですか。―――少佐。ガレリア要塞にはどの程度導力ネットが使われていますか?」
「ああ、現時点では整備班などの備品管理に限定されているが……」
そしてサラ教官の質問にナイトハルト少佐が答えかけたその時、強い衝撃が要塞内を襲った!
「な、なに……!?」
「今の地響きは……」
「真下からだわ………!」
「真下……格納庫か!」
異変に気付いたリィン達が格納庫に急行すると、”アハツェン”の軍団が外へと去って行った。
「な、なんだ!?」
「アハツェンが……!?」
「う……」
突然の出来事に仲間達と共にマキアスとアリサが驚いている中、呻き声を聞き、重傷を負って地面に倒れている整備士達に気付いたナイトハルト少佐は整備士に近づいて状況を尋ねた。
「おい、何があった!?」
「……か、勝手に……誰も乗っていないはずなのに……戦車が動き出して……」
「Cユニットの暴走……?……そんなのありえない……」
「Cユニットというのは!?」
整備士達の話を聞いて仲間達と共に血相を変えたサラ教官はナイトハルト少佐に尋ねた。
「軍事演習の標的に使われる自動操縦ユニットだ……!クッ……どうして最新鋭の主力戦車に!?」
そしてナイトハルト少佐が唇を噛みしめたその時、外から銃撃や砲撃の音が聞こえて来た!
「こ、これって……」
「……ヤバイかも。」
「くっ……―――様子を見てくる!お前達は消化と整備員の救護に当たれ!」
「イ、イエス・サー!」
「どうかお気をつけて!」
兵士達に指示をしたナイトハルト少佐がⅦ組の面々と共に外に出ると暴走している”アハツェン”の部隊が自分達を撃墜しようとしている戦車と歩兵の混合部隊を相手に圧していた。
「くっ……」
「メチャクチャだねー。」
「おいおい、自動操縦ってのはあんなに高度に動けんのか?」
「昨日のエヴリーヌさん達との戦いを見た時と比べると明らかに動きがよくなっている気がするのですが……」
外の惨状を見たナイトハルト少佐は唇を噛みしめ、ミリアムは呆け、クロウとセレーネは信じられない表情で見つめながら呟き
「あ、あり得ないわ……!あんな複雑な制御が今の技術でできるはずが……」
アリサは驚きの表情で二人の疑問に答えた。
「でも、機械の魔獣……いえ―――”人形兵器”の技術を応用すれば不可能じゃないわね。」
「……!?」
「教官、まさか例の”結社”が……!?」
「ええ、一枚噛んでる可能性は高そうね……」
「!?なんだ……!?」
外の部隊と戦っていたアハツェンの部隊は突如一斉に方向転換し、演習場の方へと向かった。
「あれは……昨日の演習場の方面!?」
「くっ……何のつもりだ!?」
アハツェンの行動を見たリィン達はアハツェンの後を追って行った。
「ええい!一体何が起こっている!?どうして無人の戦車が勝手に動き始めるのだ!?」
一方その様子を高い場所から見つめていたガレリア要塞の司令―――ワルター中将は怒りの表情で声を上げ
「そ、それが……昨夜、この司令部から整備班にCユニット搭載の命令が送られたらしく……」
「馬鹿な……!そんな命令は出していない!と、とにかく一刻も早く鎮火と混乱収拾を行うのだ!それから第四機甲師団に応援要請を――!」
部下の報告を聞いて驚いた後慌てた様子で指示をした。
「くっ……!」
「どうしますか……!?」
自分達の追跡を振り切ったアハツェンの部隊にナイトハルト少佐は唇を噛みしめ、リィンは判断を促し
「さすがに馬でもないと追いつけなさそうだが……アルバレア号ではせいぜい二人くらいしか乗せられん。」
ユーシスは真剣な表情で考え込んでいた。
「でも……どういうつもり……?」
「んー。何か狙いがありそうだけど。」
「だ、だがこのまま放っておくわけにも……!」
「―――ここは我らに任せよ!」
「この声は……」
「と、父さん!?」
リィン達が判断に迷っていると逞しい声が聞こえ、声を聞いたリィン達が振り向くとアハツェンの部隊を率いたクレイグ中将率いる第四機甲師団が現れた!
「閣下……!」
「要塞司令部から状況は聞いた!暴走している戦車どもは我らの方で何とかしよう!陽動の可能性もある!お前達は留まるがいい!」
「!了解しました!」
「助かります……!」
「父さん、気を付けて!」
クレイグ中将の指示を聞いたナイトハルト少佐とサラ教官は敬礼をし、エリオットは応援の言葉を贈った。
「おお、エリオット!お前こそ気を付けるのだぞ!―――第四機甲師団、前進!暴走中の戦車部隊を鎮圧する!相手は無人操縦だ!遠慮なく叩きのめしてやれ!」
「イエス・コマンダー!」
そしてクレイグ中将率いる第四機甲師団は暴走するアハツェンのの部隊を追って、演習場に向かった。
「……凄いな、エリオットの父さんは。」
「とても頼りがいのある方ですね……」
「えへへ……うん。ああいう所は格好いいかも。」
リィンとセレーネの言葉を聞いたエリオットは嬉しそうな表情で頷いた。
「これで暴走した戦車は何とかなりそうだが……」
「……でも、何が狙い?」
「ええ……まだ油断はできないわね。少佐、いったん要塞内に戻りませんか?」
「ああ、敷地内の被害状況を確認してから――――」
「ん?なにあれ。」
「あれは……」
サラ教官がナイトハルト少佐とこれからの方針を話し合っていると何かに気付いたエヴリーヌとガイウスは空を見上げ
「え……」
「……!」
リィン達もつられるように空を見上げると何と漆黒の飛行艇が二隻現れた!
「帝国解放戦線……!?」
「わわっ、二隻も!?」
「チッ……!別働隊がいやがったのか!?」
帝国解放戦線の登場にリィン達が驚いていると、帝国解放戦線が操縦する飛行艇からミサイルが発射され、格納庫が破壊された!
「ああっ!?」
「格納庫が……!」
「どうしてあのような事を……」
破壊された格納庫を見たアリサとエマは驚き、セレーネは不安そうな表情をした。一方帝国解放戦線の飛行艇は左右に別れて屋上に着地し、ガレリア要塞の守備隊が銃を構えて帝国解放戦線のメンバーを待ち構えていた。
「クッ、鉄壁のガレリア要塞をわざわざ狙うとは……!」
「相手はテロリストだ!皆殺しにしてもかまわん!」
「―――ハッ。それはこちらの台詞だよ。」
守備兵達の意思を嘲笑するかのように豪胆な声が聞こえた後怒涛の銃撃が守備兵達を襲った!
「ぎゃあっ!?」
「うががががっ!?」
銃撃をその身に受けた兵士達は全身を撃ちぬかれて絶命し、残りの一人は飛行艇から飛び降りた大男―――”V”によって殴り飛ばされ、殴り飛ばされた兵士は首の骨が折れて絶命した!更に飛行艇から次々と人形兵器が現れた!
「ハッハ―――ッ!そんじゃあ始めるとするか!目標、左翼列車砲格納庫!歯向かうヤツは八つ裂きにしろ!」
「了解!」
そして”V”率いる帝国解放戦線のメンバーはガレリア要塞内に侵入した!
「くっ!”帝国解放戦線”か……!」
「クロスベル方面に行ったんじゃなかったのか!?」
一方その頃右翼の屋上に離陸した飛行艇から帝国解放戦線のメンバーが出てくるところを待ち構えていた守備隊は唇を噛みしめていた。
「うふふ、一応そっちが本命ではあるんだけどね。」
するとその時女の声が聞こえた瞬間、眼帯の女―――”S”が飛行艇から飛び降りて炎を纏った法剣で守備兵達を薙ぎ払った!
「ぐうっ……!?」
「うおっ………!?」
守備兵達を薙ぎ払ったSが素早く後ろに跳躍すると空から銃撃が降り注いだ!
「あががががががが……!」
「ひいいいいいっ……!」
そして銃撃をまともに受けた守備兵達は絶命した!
「うふふ、呆気ないわねぇ。」
絶命した守備兵達をSが不敵な笑みを浮かべて見つめていると飛行艇から人形兵器が次々と現れ
「これよりクロスベルに向かった同志”G”を支援するわ!目標―――右翼列車砲格納庫!せいぜいステキな祝砲を届けてやりましょう!」
「イエス・マム!」
Sも帝国解放戦線のメンバーを率いて要塞内に侵入した!
「あ――――」
「左翼と右翼を襲撃……まさかっ!?」
「狙いは―――列車砲か!」
「な……!」
「”鉄血宰相”がいる通商会議のビルを……!?」
ナイトハルト少佐の推測を聞いたマキアスとフィーは仲間達と共に血相を変え
「ま、万が一直撃したらビルごと吹き飛ぶわ……!」
「そんな……!それじゃあビルの警護をしているお姉様達まで……!」
「……そんな事、絶対にさせないよ。」
アリサの推測を聞いて表情を青褪めさせているセレーネの言葉を聞いたエヴリーヌは静かな怒りを纏って呟き
「チッ、それが狙いかよ!」
クロウは舌打ちをした。
「もはや事態は特別実習の範疇を越えている!お前達はここで待機して―――」
「聞けません!」
「このような防御、断じて見過ごすわけにはいかぬ!」
「連れて行かないというなら勝手に行動させてもらう……!」
ナイトハルト少佐はリィン達に指示をしようとしたが、リィン、ラウラ、ユーシスは仲間達を代表して声を上げてナイトハルト少佐の指示を制止した。
「くっ……」
「時間が惜しい。手伝ってもらいましょう。これより要塞内に戻る!A班、B班共に遅れずについて来なさい!」
「はいっ!」
そしてリィン達は要塞内に急行した!
~軍事演習場~
軍事演習場では守備隊が暴走したアハツェンの部隊を迎撃していたが、守備隊は劣勢であった。
「だ、駄目だ……手が付けられないぞ!」
「どうしてこんな……いったい誰が動かしている!?」
「だ、第四機甲師団に連絡!クレイグ中将の助けを呼ぶんだ!」
暴走するアハツェンの部隊に守備隊が苦戦しているとクレイグ中将率いる第四機甲師団が到着し、暴走した戦車の部隊との戦闘を始めた!一方要塞内に戻ったリィン達は到る所に大量の血で床に染めて絶命して地面に倒れている帝国兵達を見て驚いた。
~兵舎区画~
「っ……!?」
「こ、これって……!?」
「いったい何が……」
「……酷いな。」
「ここまでするなんて、酷すぎです……!」
到る所に倒れている兵士達の死体を見たリィンやアリサ、エマは息を呑み、ガイウスは重々しい様子を纏い、セレーネは悲痛そうな表情で声を上げた。
「硝煙の匂い……火薬も使われている?」
「そだね。この辺、火薬の匂いでいっぱいだよ。」
フィーの推測を聞いたエヴリーヌは頷き
「……どうやら完全に隙を突かれたようだな。戦車の暴走も含めて、全て囮か。」
「ええ、やはり狙いは2門の”列車砲”―――クロスベルの通商会議を本気で狙うつもりでしょう。」
重々しい様子を纏って呟いたナイトハルト少佐の推測にサラ教官は頷いて話を続けた。
「そ、そんな……」
「くっ、正気か……!?」
「……やはり狙いは鉄血宰相の首ということか。」
「愚かな……ここまでの暴挙に出るとは。」
二人の話を聞いたエリオットとマキアスは信じられない表情をし、ユーシスは目を細め、ラウラは静かな怒りを纏って呟いた。
「んー……ちょっとマズイかもねー。」
「マズイっつーか、わりとピンチじゃねえか?」
ミリアムの呟きを聞いたクロウは真剣な表情で指摘し
「……?あ、リウイお兄ちゃん。…………ん、今起こっている最中だよ。……………」
エヴリーヌは”ARCUS”とは別に持っている”古代遺物”の技術を元に作られた通信器の音に気付いた後通信相手に状況を報告していた。
「…………………―――時間がありません。俺達も協力させてください。”列車砲”が起動する前に何としても彼らを止めましょう。」
「リィン……!」
「そ、そうだよね……!僕達も頑張らないと……!」
「ああ……!こんな暴挙を見過ごせるものか!」
リィンの申し出を聞いたアリサは驚き、エリオットとマキアスは決意の表情で頷いた。
「やれやれ、止めても無駄みたいね。―――エヴリーヌ以外のリィン以下A班。このままあたしに付いてきなさい!エヴリーヌはプリネ達が抜けて戦力が低下しているB班に入り、B班は少佐の指揮に従う事!」
「それぞれ二手に分かれて右翼と左翼の列車砲を押さえる。これは訓練ではない―――実戦だ!くれぐれも気を引き締めるがいい!」
「了解しました!」
サラ教官とナイトハルト少佐の指示にリィンは”Ⅶ組”を代表して頷いた。同じ頃、エレベーターで地下に到着したロイド達もC区画に逃亡したテロリスト達を追撃するダドリーとアリオスのペアと別れた後、D区画に逃亡したテロリスト達を追撃しようとしていた。
「クロスベル警察、”特務支援課”一同……これよりテロリスト達の追撃を始める。テロリスト達の足止めをしている局長達に迅速に合流して、テロリスト達を逮捕するぞ!」
「トールズ士官学院、特科クラス”Ⅶ組”一同……列車砲の起動を食い止めるべくこれよりミッションを開始する。日頃の成果を見せる時だ―――全力で教官たちをサポートするぞ!」
そしてロイドとリィン、それぞれ場所は違えど同じ時間に仲間達を見回して号令をかけ
「おおっ!!」
”特務支援課”、”Ⅶ組”の面々はそれぞれのリーダーの号令に力強く頷いて行動を開始した!
こうして……クロスベル、ガレリア要塞で”帝国解放戦線”の狂気に満ちた計画を阻止する為に立ち上がった若き”英雄”達による作戦が始まった…………!
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