英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第123話
~ローエングリン城~
「よし……!」
「全て倒せたようだな。」
「あっけな。もうちょっと強いのはいないの?」
「エ、エヴリーヌさん……縁起でもない事を言わないでくださいよ……」
戦闘を終えたリィンとガイウスは周囲を見回して安堵の表情をし、つまらなさそうな表情で言ったエヴリーヌの発言を聞いたセレーネは疲れた表情で指摘した。
「二人とも、お怪我はありませんか?」
「は、はい……!」
「す、すげ~……!姉さんたち、めちゃくちゃ強えーな!!まるで昔話の”鉄騎隊”みたいだったぜ!!」
エマに心配された子供達は安堵の表情で頷いたり、はしゃいだりし
「やれやれ……元気は有り余っているようだ。」
「はは……ひとまず無事でよかったよ。」
はしゃいでいる子供を見たユーシスは呆れ、リィンは苦笑していた。
「いや……その前に。二人とも、言う事があるだろう。」
「へっ……」
「え、えっと……」
その時静かな表情で語りかけたラウラの言葉に呆けたり、言いづらそうな表情をし
「あ、そうだお礼!ありがとな、姉さんたち!」
ある事に気付いた子供の一人がリィン達を見つめてお礼を言った。
「そうではない。大人たちに黙って勝手にボートを出してこんなところに入り込んで……私達やそちらの女性が助けにこなかったらどうするつもりだったのだ?そなたたちの家族や町のみんながどれだけ心配したと思っている!?」
しかしラウラは真剣な表情で首を横に振った後子供達に近づいて子供達を叱った。
「う……」
ラウラに叱られた子供は項垂れた。
「ラウラさん……」
「ぐすっ……ごめんなさい……」
「ごめん……なさい……」
「わかればいい。」
「あ……」
泣きべそをかきながら謝った二人を見たラウラは優しげな微笑みを浮かべて子供の頭を撫でた。
「先程、カルノを守ろうと前に出ていた気概はよかった。だが、まだまだそなたも未熟だ。……私と同様にな。騎士に憧れるならば、ゆっくりと精進するがよい。」
「うん……ごめんなさい……」
「ありがとうございました。お兄さんたちも……」
「フフ、気にしなくていい。」
「お二人が無事で何よりです。」
子供達にお礼を言われたガイウスとセレーネは微笑み
「フン、今後はもう少し軽率な行動を慎むんだな。」
「ユーシス、もしかしてお礼を言われて照れてる~?」
「このガキ……」
ユーシスは注意したがからかいの表情で自分を見つめるミリアムを睨んだ。
「あはは……」
「んー……こっちはともかく、むしろ問題ありまくりなのは、向こうみたいだけど。」
「へ―――」
その様子を見守っていたエマは苦笑し、セリカ達を見つめて呟いたエヴリーヌの言葉に呆けたリィンは仲間達と共にアイドスと相対しているセリカ達に注目した。
「…………………」
「………………」
魔物達を倒し終えたセリカは静かな表情でアイドスを見つめ、対するアイドスは複雑そうな表情をしてセリカから視線を逸らして黙り込み
「え、えっと、その……」
二人からさらけ出されている重苦しい空気にシュリはかける言葉が思いつかず、言い辛そうな表情をし
「―――単刀直入に聞きたい。貴女はかつて私やご主人様達が”影の国”で戦ったアイドス様なのですか?それに何故ご主人様の剣技が扱えるのですか?」
「メ、メティサーナさん!」
「…………………」
真剣な表情でアイドスを見つめて尋ねたメティサーナの質問にシュリは声を上げ、セリカは静かな表情でアイドスを見つめた。
「―――ええ、そうよ。そして私がセリカの剣技―――”飛燕剣”を扱えるのはラプシィアと融合していた影響かもしれないわね。」
「!!」
「ラプシィアだと?まさか……!」
アイドスの答えを聞いたシュリは血相を変え、セリカは表情を厳しくしてアイドスを睨みつけ
「勘違いしないで。ラプシィアの気配は感じられないわ。……まあ、貴方とお姉様の運命を滅茶苦茶にした―――ううん、お姉様の”仇”である私が言っても信じないだろうけど……」
(フム、見た所嘘はついていない……というか、目の前の者がかつてお前達と因縁深かった奴とは思えない程だの。)
悲しそうな表情をしているアイドスを見たハイシェラは静かな表情で語った。
「何故俺がいるにも関わらずサティアの身体が存在している上、サティアの身体にお前が宿っている?」
「―――正直全くわからないわ。気がついたら、この姿でこの城の中で倒れていたのよ。”影の国”の時、私はラプシィアと共に貴方とお姉様の手によって消されたはずなのに……」
「…………………」
自分の質問に困惑の表情で答えたアイドスをセリカは目を伏せて考え込み
「え、えっと、その……アイドス様のご様子からするとアイドス様はもう、ご主人様達と敵対するつもりは無いのでしょうか?」
シュリは懇願するかのような表情でアイドスを見つめた。
「ええ。どうして私が蘇り、それもお姉様の身体に宿っているなんて、わからないけど……―――少なくともアストライアお姉様やセリカの事はもう憎んでいないわ。」
「そうですか……!」
「うむ!何はともあれアイドス様が蘇った事をエステルに宿ったサティア様が知れば、喜ぶだろうな!」
「……そうだな。」
優しげな微笑みを浮かべて答えたアイドスの言葉を聞いたシュリとメティサーナは明るい表情をし、セリカは警戒を解いて静かな笑みを浮かべた。
「エステル……?確か”想念”の力によってお姉様とセリカを再会させた娘よね?何故その娘が関係―――」
そしてアイドスが不思議そうな表情で尋ねようとしたその時
「あ、あの~……ちょっといいでしょうか?」
リィンが言い辛そうな表情で話しかけて来た。
「―――我らが駆け付けてくる前に子供達を守っていてくれた事、感謝する。ただ何故この城の中にいたのか、訪ねてもよいだろうか?」
「えっと……その……」
ラウラに尋ねられたアイドスは言いよどみ
「ねえ、セリカ達の会話を聞いていて、疑問に思ったけど、サティアじゃないんだよね?」
エヴリーヌは静かな表情で尋ねた。
「”サティア”……?以前もその名前が出てきたが……」
エヴリーヌの質問にガイウスは考え込み
「!え、えっと……実は――――」
アイドスは咄嗟に思いついた嘘―――旅の途中、転移門を使った際、事故でこの場に現れた事を説明した。
「そんな事が……」
「それは災難でしたね……」
事情を聞き終えたリィンは驚き、セレーネは心配そうな表情で見つめ
「ねーねー、お姉さんってその人―――”嵐の剣神”とそっくりだね~?もしかして双子??」
ミリアムは首を傾げて尋ねた。
「……―――ええ。自己紹介が遅れたわね。―――私の名はアイドス。アイドス・セイルーン。セリカは私の”お兄様”よ。」
「ええっ!?」
(なっ!?)
「フム、確かに間違ってはいないな。」
「……………おい、何のつもりだ。サティアが使っていた名前を使った事もそうだが、何故俺がお前の兄になる。」
アイドスの自己紹介を聞いたシュリとハイシェラは驚き、メティサーナは納得し、一瞬石化したかのように固まっていたセリカは我に返るとアイドスを睨み
(ハアッ!?ア、”アイドス”ってまさか……!)
(かつてアヴァタール地方に災厄を運び込んだ古神―――”慈悲の大女神”ですか!?)
(かの女神は”神の墓場”にて”神殺し”に討たれたと、白銀公から聞きましたが……)
ベルフェゴールとメサイアは驚き、リザイラは真剣な表情でアイドスを見つめた。
「あら、”どちら”の意味でも間違っていないでしょう?私はアストライアお姉様の妹だから、お姉様が”サティア”として名乗っていた頃の”セイルーン”を名乗ってもおかしくないし、貴方はお姉様が伴侶と決めた相手だし、お姉様の身体を持つ貴方にとって私が妹なのは間違いないし。」
「……………」
(………………………)
微笑みながら答えたアイドスの答えを聞いたセリカは自分が知るアイドスとあまりにも違う事に冷や汗をかいて絶句し、ハイシェラは口をパクパクさせ
「ア、アハハ。た、確かによく考えたらそうですよね……」
シュリは大量の冷や汗をかきながら苦笑していた。
「あ、それとも呼び方は”兄さん”の方がよかったかしら?もしくは”お兄ちゃん”かしら♪」
「ア、アイドス様!?」
「…………サティアの容姿と声でそれ以上おかしなことを口にするな……」
「というか、アイドス様は女神なのですから、もっと威厳を持って欲しいのですが……」
(ククク……ハハハハハッ!これは傑作だの!サティアが今の変わり果てたアイドスを見たら、どんな顔をするのか見物だの!)
そしてアイドスの口から出た信じられない発言にシュリは驚き、自分が心から愛する女性の容姿でからかいの表情になって自分を見つめるアイドスの言葉に突如頭痛を感じたセリカは片手で頭を抱えて呟き、メティサーナは表情を引き攣らせ、ハイシェラは腹を抱えて笑っていた。
「ちょ、ちょっと待ってください!”神殺し”―――いえ、”女神”の身体に宿るセリカ殿の妹という事は……!」
「まさか……貴女も”女神”なのですか?」
その時リィンが慌てた様子でアイドスを見つめ、エマは信じられない表情でアイドスを見つめて尋ねた。
「あら、セリカの事、そこまで知っているんだ。」
「おい。あいつらはどこまで俺の事情を説明したんだ?」
リィン達がセリカの事情を知っている事にアイドスは目を丸くし、セリカはエヴリーヌを睨み
「エヴリーヌにそんな事を言われても、知らないよ。」
睨まれたエヴリーヌは興味なさげに答えた。
「フフ……――――ええ、そうよ。”慈悲の大女神”。そんな風に呼ばれていた事もあったわ。」
「”慈悲の大女神”……」
「ほ、本当に女神様だったんですか……」
微笑みながら答えたアイドスの話を聞いたガイウスは目を丸くして呆け、セレーネは信じられない表情をし
「すっげー!アイドスお姉さんって、女神様なんだ!」
「おねえちゃん、すっごい美人だもんね!」
子供達ははしゃぎながらアイドスを見つめ
「め、女神って……”嵐の剣神”が女神の身体に宿っているとかどうなっているの~!?」
事情が全く呑み込めていないミリアムは混乱し
「少しは黙れ、阿呆。」
「アハハ……セリカさんの事情を知らなかったら、普通はみんな驚きますよ……」
ミリアムに注意したユーシスにエマは苦笑しながら答え
「フフ、これももしかすれば”槍の聖女”のお導きかもしれないな……」
ラウラは静かな笑みを浮かべてアイドスを見つめた。
「それでアイドスだっけ?これからどうするの?」
「―――今後の身の振り方についてはまずこの城を出てから考えるわ。悪いけどこの城を出るまでの間、同行させてもらってもいいかしら?」
エヴリーヌに尋ねられたアイドスは答えた後リィン達を見つめ
「それは別に構いませんが、肝心の出入り口が結界に阻まれて脱出できないんですよね……どうやって脱出をすればいいのか、俺達も考えていたんです。」
リィンは困った表情で答えた。
「ふむ、そう言えばこの部屋にも結界がかかっていたはずだが……そなたたちはどうやってここまで入り込んだのだ?」
その時考え込んでいたラウラはある事に気付いて子供達に尋ねた。
「えと……ぼくたちが入ってきたときはここまで普通にこれたんです。とりあえず最上階を目指してたんですけど……」
「ここの部屋に入って、アイドスお姉さんを見つけた時にいきなりあたりが青白いモヤに包まれてさ。扉にも変な模様が現れて、戻ることもできなくて途方にくれてたんだよ。」
「要するに閉じ込められていたわけか……他の脱出ルートがあるわけでもなさそうだな。」
子供達の話を聞いたリィンは周囲を見回して考え込んだ。
「やっぱり、この状況をなんとかしないことには出るのは難しそうですね。正門の結界を解く方法が何かあると思うんですけど…………」
エマは呟いた後考え込み
「―――ちょっと待って。この城の最上階にこの城全体を覆っている力の源が感じられるわ。」
「なに……?」
「ふむ……そんなことがわかるのか?」
静かな表情で答えたアイドスの答えを聞いたユーシスは眉を顰め、ガイウスは不思議そうな表情で尋ね
「そりゃ女神なんだからそのくらいの事、わからない方がおかしいよ。エヴリーヌだって感じているんだから。」
「エ、エヴリーヌさん……わかっているなら、教えてくれてもいいじゃないですか……」
呆れた表情で答えたエヴリーヌの話を聞いたセレーネは疲れた表情で溜息を吐いた。
「とりあえず、最上階の力の源を何とかすればいいだけだな。」
アイドスの答えを聞いたセリカは上を見上げて呟き
「えっと……子供達はどうしましょう?」
「いっそ、何人か残しておくか?」
ある事に気付いたシュリはリィン達を見回し、メティサーナは尋ねた。
「別にそこまでしなくても、連れていってもいいんじゃないのー?これだけのメンツがいれば護衛も出来るだろうし。」
「危険はあるかもしれないが一理あるな……」
「二人とも、聞いた通りだが……ついてこられるか?」
ミリアムの提案に考え込んでいるリィンの様子を見たラウラは子供達に尋ね
「も、もちろん!」
「みなさんがいるなら僕達も安心ですし……」
子供達は力強く頷いた。
「ふふ、わかった。」
「フン、せいぜい責任を持って護衛しよう。」
「それじゃあさっそく最上階に向かうぞ。」
「では改めて出発しようか。」
こうしてアイドスと子供達を加えたリィン達は最上階に向かって進み始めた。
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