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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第120話

その後課題を終えたリィン達が町に戻ってくると、不穏な空気が漂っていた。



~レグラム~



「……?」

「何やらざわついてるな……」

「何かあったのでしょうか?」

町の様子にリィンやラウラ、セレーネは不思議そうな表情をし

「あれれー?んー、水上定期船が戻ってきてるみたいだけど。なんか変な連中もいるねー。」

波止場に停泊している定期船を見つけたミリアムが呟いた言葉を聞いたリィン達が町を見回すと、何と領邦軍の兵士達が町中で行動していた。



「兵士がいるなんて、別におかしくないじゃん。貴族に兵士がいるのは当たり前の事だし。」

「いや……彼ら―――”領邦軍”はアルゼイド家に仕えている兵士ではないし、アルゼイド家は辺境の領ゆえ、領邦軍は存在しない。」

エヴリーヌの疑問にラウラは首を横に振って答えた後真剣な表情で領邦軍を見つめていた。



「”領邦軍”……貴族派の兵士だったか?」

「え、ええ……そうみたいですけど。」

ガイウスの疑問にエマは戸惑いながら答えた。



「白と紫……帝都でも見かけた色だな。」

「言われてみればそうですわね……」

「……たしかあの色はラマール州のものだったはずだ。」

リィンとセレーネの会話を聞いていたユーシスは自身の知る情報を口にした。



「ラマール州と言えば帝国のほぼ反対側……どうしてその領邦軍がレグラムを訪れるのだ……?」

そしてラウラが眉を顰めて領邦軍を見つめていたその時

「よ、戻ってきたみたいだな。」

トヴァルがリィン達に近づいてきた。



「トヴァルさん……」

「その、これは一体……」

「どうやら対岸の波止場から定期船を徴発したみたいでな。サザーラント州じゃなくてラマール州ってのが謎だが……どうも貴族のお偉いさんが子爵閣下を訪ねてきたらしい。」

「父上を……?」

「一体誰が……」

「……気になるな。」

「………………」

トヴァルの説明を聞いたリィン達が眉を顰めている中、ミリアムは真剣な表情で考え込んでいた。



「ま、そんなに気になるなら様子を確かめてきたらどうだ?街道から戻ってきたってことは手配魔獣も退治してきたんだろ?」

「ええ、それなんですが。」

「その、実はおかしな事が……」

リィン達は手配魔獣が機械仕掛けの魔獣であった事をトヴァルに報告した。



「機械仕掛けの魔獣……」

「……トヴァル殿?」

「……何か心当たりが?」

報告を聞いて考え込んでいるトヴァルを見たラウラとガイウスは尋ねた。



「いや……そうだな。念のため俺の方でもその”残骸”を調べてみよう。とにかくご苦労さんだったな。報酬を渡しておくぜ。」

そしてリィン達はトヴァルに報酬を手渡した。



「そんじゃ、子爵邸の方はお前さん達に任せたぜ。」

「んー、何だか心当たりがあるっぽいね?」

(……”結社”かな?)

去って行くトヴァルを見つめて首を傾げたミリアムの疑問を聞いたエヴリーヌは考え込んだ。

「フン……まあそちらは任せておけばいいだろう。」

「俺達はいったんラウラの実家に戻るか。」

「ああ……!」

その後リィン達はアルゼイド子爵邸に向かった。



~アルゼイド子爵邸~



(……ぁ……)

(あれは……)

屋敷に戻ったリィン達はアルゼイド子爵と対面している護衛らしき人物達を傍に控えさせた豪奢な装いの男を見つけた。



「フフ、そう言わずに考えておいてくれたまえ。貴公が来てくれれば会合にも箔がつくというものだ。」

「所詮、片田舎の領主に過ぎぬ身。さすがに買いかぶりでしょう。」

男の誘いにアルゼイド子爵は静かな表情で遠回しに断った。



「価値を決めるのは周囲であって貴公自身では無いのだよ。わかっているとは思うが……くれぐれも妙な真似はせぬことだ。正規軍の武術教練とやらもできれば今後は控えてもらいたい。無用な波風を立てたくなければな。」

「それは……」

「フフ、それではさらばだ。―――執事。なかなか美味い茶だったぞ。」

答えを濁しているアルゼイド子爵の様子を満足げな笑みを浮かべて見つめた男はクラウスに視線を向け

「恐縮でございます。」

クラウスは恭しく頭を下げた。



「ほな、よろしゅうに。」

「……失礼する。」

そして男の護衛らしき長身の青年と巨漢の男は挨拶をした後男と共にその場から去り、玄関にいるリィン達と鉢合わせた。



「ラウラ嬢か、久しいな。ほう、ユーシス君までいるのか。」

「……ご無沙汰しております。」

「いつも父たちがお世話になっております。」

男に話しかけられたラウラとユーシスはそれぞれ会釈をして答えた。



(お知り合いみたいですね……)

(見た所貴族の方みたいですが……)

二人の様子を見ていたエマとセレーネは小声で囁き合い

(だが……あの二人の緊張ぶりは。)

(貴族の大物みたいだね。)

緊張している様子のラウラとユーシスの様子にガイウスとエヴリーヌは気付き

(んー、まさかこんな所に現れるなんてねー。)

ミリアムは真剣な表情で男を見つめ

(”四大名門”筆頭にして西のラマール州の統括者……海都オルディスを治める大貴族、”カイエン公爵”……!)

リィンは真剣な表情で男を見つめながら男―――カイエン公爵を知らないガイウス達に説明した。



「おや、どこかで見た顔かと思っていたがアルフィン殿下の”婿候補”と噂されているシュバルツァー家の養子か。」

その時リィンに気付いたカイエン公爵は興味ありげな表情でリィンに視線を向け

「リィン……」

「…………」

その様子を見守っていたラウラは心配そうな表情をし、ユーシスは真剣な表情でカイエン公爵を見つめ

「……ご無沙汰しております。それとお言葉ですが自分如きがアルフィン殿下の婿候補という畏れ多き資格があるとは思えません。あれはマスコミの方達の憶測です。」

リィンは静かな表情で会釈をした。



「フフ、そのくらいの事はわかっている。しかしシュバルツァー男爵家の直系の双子の妹のエリス嬢はアルフィン殿下の付き人を務め、姉のエリゼ嬢はリフィア殿下の専属侍女長の上、かの”剣聖”から直接剣の師事を仰いでいる事からリフィア殿下―――”聖魔皇女の懐刀”と称され、リィン君自身はアルフィン殿下の失態どころかエレボニア帝国の失態を取り消すようにリウイ陛下に意見をし、リィン君の意見によってメンフィル帝国は夏至祭で起こった件について追及しなかったと聞いている。アルフィン殿下どころかエレボニア帝国を守り、エレボニアとメンフィル、それぞれの皇家に信頼をおかれているシュバルツァー男爵家の息子なら、養子とはいえアルフィン殿下の婿としての”価値”もあると思うがな。シュバルツァー男爵も予想外の大活躍をした”拾い物”を拾った事に、さぞ喜んでいるだろう。」

「「「…………」」」

「…………恐縮です。」

カイエン公爵の言葉の節々からリィンを侮辱している事に気付いていたラウラとユーシス、セレーネは厳しい表情でカイエン公爵を見つめ、リィンは一瞬複雑そうな表情をしたがすぐに気を取り直して会釈をし

(何、この男……遠回しにご主人様の事を貶しているわね。)

(恐らく大貴族の子息でもないご主人様が自国の皇女に気に入られている事が気にいらないのでしょうね。)

(典型的な血統主義者ですか……)

ベルフェゴールとリザイラ、メサイアはそれぞれ静かな怒りを纏ってカイエン公爵を睨んでいた。



「フフ、久闊を叙したくもあるが少しばかり急いでいてな。また近いうちに、会う機会を設けるとしよう。うむ、それではさらばだ。」

そしてカイエン公爵は護衛達と共に去り始めたが、護衛達は立ち止まってリィン達を見つめた。



「ハハ、なるほどなぁ。君らがトールズ士官学院の”Ⅶ組”ってやつか。」

「……!?」

「何故それを……?」

青年が自分達の正体を知っている事にリィンは驚き、エマは信じられない表情をした。



「いやな、縁があって少しばかり調べてたんや。うん、なかなかええ面構えしとるわ。」

「え、えっと……」

「………………」

青年の言葉にエマは戸惑い、ミリアムは真剣な表情で青年と大男を見つめ

「それに……まさかこんな所で”あいつら”を仰山(ぎょうさん)殺した”魔弓将”と会う事になるとはな。」

「誰の事を言っているの?エヴリーヌは今まで殺した雑魚の事なんか一人も覚えていないよ。」

不敵な笑みを浮かべる青年に見つめられたエヴリーヌは首を傾げて答えた。



「何やと……?」

エヴリーヌの答えが気に触ったのか青年は殺気を纏ってエヴリーヌを睨んだが

「……閣下がお待ちだ。そのくらいにしておけ。」

「……ああ。ほなな~。」

「それでは失礼する。」

大男の忠告に気を取り直した後その場から去り、子爵邸を後にした。



「……なんだ、今の男たちは。」

「領邦軍の兵士じゃないのは確かのようだが……」

「私達の”Ⅶ組”のことを知っているようですけど……」

「それにエヴリーヌさんの事まで知っているようでしたけど……」

「さあ?エヴリーヌはあんな奴等、見覚えがないよ。」

不安そうな表情で尋ねたセレーネの疑問にエヴリーヌは首を傾げて答えた。



「―――おそらくカイエン公が私的に雇っている護衛だろう。」

その時アルゼイド子爵がリィン達に近づいてきた。



「父上……」

ラウラは心配そうな表情でアルゼイド子爵を見つめた。

「フフ、そんな顔をするでない。だが……いよいよ、本格的に動き始めたようだな。」

その後リィン達は執務室でアルゼイド子爵から詳しい話を聞き始めた。

~アルゼイド子爵邸・執務室~



「貴族派が水面下で動き始めている……!?」

アルゼイド子爵からカイエン公爵の訪問の詳細な話を聞いたラウラは声を上げた。



「うむ、先月あたりから貴族派が頻繁に動き始めている。各地で会合が繰り返され、結束を再確認しているようだ。……そちらのお嬢さんは当然知っている情報だろうが。」

「んー、まあね。とうとう革新派と本格的にやり合うつもりかって情報局もピリピリしてるし。」

アルゼイド子爵に視線を向けられたミリアムは真剣な表情で頷いた。



「そうだったのか……」

「本当に内戦が始まってしまうのでしょうか……?」

「くっ……そんな事が。」

ミリアムの話を聞いたリィンは重々しい様子を纏い、セレーネは不安そうな表情をし、ユーシスは唇を噛みしめた。



「でも、カイエン公って言えば貴族派でもリーダー格だよね?わざわざ来るっているのはさすがにビックリしたよー。」

「うむ……私も驚いた。貴族派全体の大規模な会合を近い内に開くつもりらしくてな。それに必ず出席するようにとこんな辺境まで訪ねて来たらしい。」

「で、ですが父上はあくまで貴族派からは……」

アルゼイド子爵の話を聞いたラウラは信じられない表情でアルゼイド子爵を見つめた。



「……はい。距離を取っておられます。さりとて革新派にも近づかず中立を貫いておられますが……」

「だが、先方からしてみれば貴族ならば貴族派に所属して当たり前という理屈なのだろう。気の進まぬ貴族たちも強引に引き込んでいるという話も聞く。」

「……当然、俺の実家もそれに関わっている筈ですね。」

「うむ……そうだな。”四大名門”の主導権をカイエン公とアルバレア公のどちらで取るか……やや揉めていると聞くが基本的には同じ方針であろう。」

「………………」

「ユーシスさん……」

自分の推測に答えたアルゼイド子爵の説明を聞いて黙り込むユーシスに気付いたエマは心配そうな表情をした。



「その、自分の実家については何かご存知ありませんか?今はメンフィル帝国貴族とは言え、元はエレボニア帝国貴族ですし……」

「それは大丈夫だと思うよ。エリゼはリフィアのお気に入りだし、リウイお兄ちゃん達もリフィアのお目付け役を務められるエリゼを信頼しているし。以前の夏至祭の時にリウイお兄ちゃん達がエリスを助けに行ったでしょ?あれって、エリスがエリゼの妹だからだよ。」

「え……」

自分の心配に答えたエヴリーヌの話を聞いたリィンは呆け

「フフ、そちらのお嬢さんの言う通り、そなたの実家ならば心配は無用だろう。シュバルツァー卿と言えば私以上の頑固者として有名だ。元は祖国の話とは言え、貴族同士の胡乱な動きに加担するとはとうてい思えぬ。加えてそなたの妹―――エリゼ嬢がリフィア殿下の専属侍女長を務めている事からメンフィル皇家に信頼されている話は夏至祭の際、リウイ陛下達自らエリゼ嬢の妹―――エリス嬢の救出に向かった事によって有名になった上、エリス嬢の件を考えるといざとなればリウイ陛下達も動いて下さるだろう。」

「そ、そうですか……少しばかり安心しました。」

「まあ……!さすがエリゼお姉様ですわ。」

アルゼイド子爵の説明を聞いて安堵の表情をし、セレーネは目を丸くした後微笑んだ。



「ふむ……待てよ。―――そういう事なら、まだ打つ手があるやもしれん。クラウス、またしばし留守にする。悪いがよろしく頼んだぞ。それとセリカ殿にはお見送りができなく、申し訳ないと伝えておいてくれ。」

「かしこまりました、お館様。」

その時何かに気付いたアルゼイド子爵はクラウスに指示をし

「ち、父上!?」

「あはは、いきなりだねー。」

アルゼイド子爵の突然の行動にラウラは驚き、ミリアムは無邪気な笑顔を浮かべた。



「即断即決が信条でな。―――各地の中立派の貴族と連絡を取り合う事にする。貴族派全体の強引な動きに取り込まれる事がないようにな。」

「あ……」

「……父上。」

「……確かにそれが賢明であるかと思います。」

アルゼイド子爵の話をリィン達が聞いていたその時

「――そういう事なら俺もお共させてもらいますよ。」

トヴァルが執務室に入ってきた。



「トヴァルさん……」

「おお、そなたも来たか。」

「ええ、こちらに来たのがカイエン公だと知りまして。ちなみにバリアハートから来たリムジンに乗って行きましたよ。」

「バリアハートから……!?」

「まさか……アルバレア家の!?」

トヴァルの情報を聞いたリィンは驚き、ユーシスは血相を変えた。



「ああ、君のお兄さんだったか?ルーファス・アルバレア―――あの御曹司が迎えに来てたけど。」

「…………」

「あの人が……」

「まあ、ルーファス殿と言えばアルバレア家の嫡子だ。カイエン公が訪問するのであれば出迎えに来てもおかしくあるまい。それはともかく……他にも何かあったようだな?」

トヴァルの情報にリィン達が驚いている中、アルゼイド子爵は冷静な様子で受け止めて続きを促した。



「ええ、お嬢さんたちが気になる話を持ってきましてね。……レグラムの街道外れに”機械仕掛けの魔獣”が出ました。」

「!……そうか。一昨年のカシウス卿の反攻作戦以来というわけだな。」

「ええ、そうなりますね。考えてみれば子爵閣下とはその時以来の付き合いですか。」

「ああ……奇遇なものだ。―――他にも放たれた気配は?」

トヴァルの話に懐かしそうな表情をしていたアルゼイド子爵はすぐに表情を引き締めて続きを促した。



「それ以外には、全く。これは俺のカンですが陽動の可能性が高いですね。」

「私もそう思う。―――ふむ、やはりそなたには一緒に来てもらうとしようか。」

「そう来なくっちゃ!」

「父上……」

「何やら込み入った事情がおありみたいですね……?」

「悪い、まだちょいと不確かな情報なんでな。何かわかったらサラ経由でちゃんと情報を流すからさ。」

そしてリィン達はアルゼイド子爵とトヴァルを駅前で見送ろうとしていた。



~レグラム~



「―――それじゃあ、午後の追加分を渡しておくぞ。」

仲間達と共に見送りに来たリィンにトヴァルは午後の課題内容が書かれてある封筒を手渡し、リィン達は課題内容を確認した。



「区切りがついたらギルドに戻って書類整理をやってくれ。カウンターのメモに手順は書いておいたからさ。」

「わかりました。」

「任せるがよい。」

「書類整理……めんどくさ。」

「エ、エヴリーヌさん。」

「夜になったら戸締りをしてそれで今日の実習は終わりだ。明日には、俺の代わりに別の人間が来る手筈になってる。」

「了解した。」

「それでは留守を預からせていただきますね。」

トヴァルの指示にリィン達はそれぞれ返事をした。



「フフ、せいぜい励むことだ。それと、慌しく去る事になって本当にすまない。」

「父上のなさりようには昔から慣れっこですゆえ。」

「―――手合わせ、本当にありがとうございました。また会える機会を楽しみにしております。」

「うむ、そなたの剣はまだまだ伸びるはずだ。娘共々、これからも切磋琢磨するがいいだろう。”飛燕”の(つるぎ)を取り入れたそなたの”八葉”がどのように成長するのか、楽しみにしている。」

「……光栄です。」

アルゼイド子爵の言葉にリィンは静かに会釈をして答えた。



「他の者も、無骨者の娘だが今後ともよろしくお願いする。男手一つで育てたゆえ、浮いた話のひとつも無いのがいささか心配ではあるが……」

「ち、父上……!」

苦笑しながら言ったアルゼイド子爵の話を聞いたラウラはジト目でアルゼイド子爵を見つめたが

「まあ、大剣を振り回すラウラをお嫁さんにしたい男なんて、中々いないだろうね。」

「グッ……」

「エ、エヴリーヌさん。さすがにそれは言いすぎですよ……」

「フフ、耳の痛い話だな。」

エヴリーヌに図星を突かれて唸り声を上げ、セレーネは冷や汗をかいて指摘し、アルゼイド子爵は苦笑していた。



「ふふっ、こちらこそ喜んで。」

ラウラ達の様子を微笑ましそうに見守っていたエマはアルゼイド子爵に微笑み

「たしかにラウラは女の子にモテてるよねー。」

ミリアムはからかいの表情で言った。

「どうかお気をつけて。」

「数々のご配慮、感謝する。」

「はは、それじゃあな。サラのやつにもよろしく言っておいてくれ。」

そしてアルゼイド子爵とトヴァルは駅の中に入って行った。



「ふう……あの人は。」

二人が去るとラウラは呆れた表情で溜息を吐いた。



「はは……凄いお父さんじゃないか。自由で、懐も広くて、それでいてあの強さ……ラウラがそういう風に育ったのもわかる気がする。」

「なっ……」

リィンの指摘にラウラは驚き

「ふふっ、そうですね。あの親にしてこの子ありを地で行ってるというか……」

「確かに言葉遣いとか似ていたね。」

「あれだけの人物が近くにいたら当然、高みを目指す訳か。」

「もしくは偉大な親に萎縮して劣等感を持つかだが……どうやらアルゼイド家の息女は健やかに育ったらしい。」

「ふふっ、きっと大切に育ててもらったのでしょうね。」

「え、ええい。からかうのは止めるがよい!……コホン。トヴァル殿からレグラム支部を預かったのだ。残る半日、我らは我らの指名を果たす事にしよう。」

エマ達からの集中攻撃に声を上げたラウラは話を誤魔化そうとした。



「あはは、誤魔化したー。」

「誤魔化してないっ。」

そしてミリアムの指摘をラウラは必死の表情で否定した。



その後リィン達は残りの課題の消化を開始した。







 
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