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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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インターミッション~新たなる軌跡への系譜~外伝~祝賀会の夜~前篇

―――リベル=アーク崩壊より数週間後――――



~王都グランセル・夜~



「ぜえ、ぜえ、ぜえ………」

リベル=アーク崩壊より数週間後、ナイアルはある場所に急いで向かっていた為、息を切らせて一端休憩をしていた後、振り返って怒鳴った。

「ドロシー、何やってんだ!置いて行くぞ!」

ナイアルが怒鳴るとドロシーがフラフラとした足取りでナイアルについてきていた。

「もたもたすんな!祝賀会が始まっちまうだろうが!”異変”終息を祝ってアリシア女王が主催する特別なパーティーだぞ!?こいつにだけは遅れるわけにはいかねえんだ!」

「も、もうわたし、おなかペコペコで………一歩も歩けませえん………」

ナイアルに怒鳴られたドロシーはお腹の音を鳴らした後、地面に崩れ落ちた。

「お前、まさか………パーティーで御馳走を食うつもりで昼飯抜いたとかじゃねえだろうな?」

「お昼どころか、昨日から食べてませんよー。断食も30時間を超えると、はう、こんなにメマイがぁ………」

呆れた様子で尋ねるナイアルにドロシーは呑気に答えた。



「ドロシー、てめー、何考えてんだ!?」

「ナイアル先輩、おぶってってくださいよ~!」

「えーい、知るか!今日は王国中の有名人が集まってんだ。シャキッとしやがれ!!まずは女王陛下とクローディア殿下、レイシス王子殿下の1枚を押さえて………」

「あうううううううううう~………あ、あれぇ~?意外とらくちんかも~♪」

そしてナイアルはドロシーを引きずりながら城へと急行した。



~グランセル城・空中庭園~



ナイアルとドロシーが王城に到着したその頃、空中庭園はパーティー会場となっており、そこにはエステル達もいて、アリシア女王は祝賀会の始まりを告げる前の挨拶をしていた。

「………そして一時は、この王都も危機に見舞われることもありましたが………皆さまのお蔭で、”異変”も終息をみることとなりました。………ここにそれを祝し、ささやかな祝賀会を催したいと思います。それでは、クローディア。」

「はい。」

「………本日のパーティーには、この事件に尽力いただいた方々をお呼びさせていただきました。苦難に喘ぐ人々に暖かな手を差し伸べ、また多くの人々が不安に震える日々を打ち払ってくださった方々………このリベール王太女として、礼を言わせていただきます。本当にありがとうございました。本日はささやかなパーティーではありますが………」

「…………ギリギリセーフ!!」

「や、やっとたどり着きました~………ご馳走プリーズですぅ~………」

アリシア女王に促されたクローゼが話をしているとナイアルとドロシーが慌ただしい様子で空中庭園に到着した。

「ドロシー、何やってやがる!さっさとカメラを構えろ!!スピーチが終わっちまうだろうが!!」

「はうう、そうだったぁ………」

「えっと……ど、どうかごゆっくりお楽しみ下さい。」

ナイアル達の行動にクローゼは苦笑しながら祝賀会の始まりを告げた。

「今宵は無礼講。今宵はそれぞれの立場を忘れて、どうか肩の力を抜いて今までの疲れを癒してくれ。」

「ここに集いし者は各々責任を背負い、日々多忙な者であろう。だが、今宵ばかりは日頃の労を忘れ、骨を休めてほしい。豪華料理や酒も存分に用意してあるので堪能するとよいぞ。このリベールに女神(エイドス)の幸あれ!」

そしてレイスとデュナンの宣言が開幕となり、大きな拍手が鳴り響く中、パーティーが始まった。



「う~ん……やっぱり、クローゼは凄いわね~。あんなドレスを着て、みんなの前で堂々とスピーチするんだもん。」

「うん、この間会った時は自信が無いって言ってたけど………王太女として立派にやっているみたいだ。」

「うふふ、さすがお姫様よね♪」

「ああ……まだ成人もしていないのに大したもんだぜ……」

クローゼの様子を見守っていたブライト家の兄妹達は感心した様子でクローゼを見つめていた。

「はあ、いいな………あたしも、あんなドレスが似合ったらいいんだけどなぁ………」

「……………………」

「………何よ、その間は。」

うっとりとした様子でクローゼを見つめていたエステルだったが、驚いた様子で黙って自分を見つめるヨシュアの視線に気づくとジト目になったヨシュアを見つめた。



「いや……エステルもやっぱり女の子なんだなって改めて思っただけだよ。」

「な、なによっ……!そりゃまあここの所、復興の手伝いで忙しくて家にも帰ってないけどさ。……あたしだってたまには綺麗な服が着てみたくなるの!!」

「クスクス、少し前のエステルとは比べものにならないくらいレディらしくなったわね♪何だったら、レンがエステルに似合うドレスを何着かプレゼントしてあげるわよ?」

「お前の場合、金に糸目を付けずに目が飛び出るような金額のドレス――――それこそ王族や貴族が着ているドレスを余裕で買える財力があるから洒落になっていねぇぞ……」

「まあまあ。……でも、この数週間でエステルも成長したよね。

恥ずかしそうな様子で反論するエステルを見て小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンに呆れた表情で指摘するルークを苦笑しながら諫めていたヨシュアは優し気な微笑みを浮かべてエステルを見つめた。



「えっ……?」

「リベール中を駆け回る結構ハードな仕事だったと思うけど……遊撃士としてのエステルの判断もかなり信頼できるようになったし……正直、僕の目から見ても頼もしく思える事があるよ。」

「あ、あはは……何だかヨシュアにほめられると、くすぐったいわね~…………でも、この数日でようやく仕事も一段落したわね。王都の復興も順調みたいだし……ようやく、落ち着いてきたよね。」

「……うん、そうだね……」

「あ………」

何かに気づいて声を上げたエステルの視線の先には御馳走が山のようにあった。

「ああっ……ご馳走があんなに………!」

「グランセル城のシェフ達が料理を切り分けてくれるみたいだね。」

「うーん、これは見逃せないわね。生誕祭の時のご馳走はちゃんと味わえなかったし……これはご相伴にあずかるしか……!ヨシュア、レン、ルーク兄!ちょっと待ってて!あたし様子を見て来るから!」

そしてエステルはご馳走が置いてあるテーブルに急いで向かい

「もう、エステルったら……花より団子なんてまだまだお子様よねぇ。ま、レンもお腹が空いていたし、レンも最高級のディナーの御相伴にあずかってくるわ。」

「ハハ、さすがのレンも城の御馳走には我慢できないみたいだな。―――そんじゃ、俺もお先に料理をもらってくるぜ。」

エステルに続くようにレンとルークも御馳走が置いてあるテーブルに向かった。

「おっ、ヨシュアじゃないか。エステル達はどうしたんだ?」

するとその時エステル達と入れ替わるようにナイアルとドロシーがヨシュアに近づいてきた。



「……ええ、少し料理を取りに。ナイアルさん達はお仕事みたいですね。」

「ああ、これだけの顔ぶれが一堂に会してるんだからな。ここでハナシを聞かねえわけにはいかねえっつーの!……もちろん、お前さんたちにも後でみっちり取材させてもらうからな。勝手に帰るんじゃねえぞ!

「はは……了解です。」

「よし、次はいよいよクローディア姫の取材だ!そしてその後は帰国して、次代の宰相としてクローディア姫達を支える事を決められたレイシス王子殿下の取材!……ドロシー!」

「も、もうだめ、倒れちゃいます。何か食べさせてくださいよう……」

嬉しそうな表情で自分達の方針を語ったナイアルに視線を向けられたドロシーはお腹から大きな音を出して、泣きそうな表情で言ったが

「オラ、もたもたすんな!」

「ひ~ん、ナイアル先輩のいじわる……!」

ナイアルは無視しでドロシーを引きずって行った。

「ナイアルさん、今日は一段と気合入ってるな……えっと、エステル達は………」

ナイアル達が去った後、ヨシュアは独り言を呟き、エステル達を探した。するとレンは食事をしながらティータと仲良く会話をしている所やクルツ達と会話をしているルークを見つけたが、何故かエステルはご馳走の前でジョゼットと言い争いを始めていた。

「はあ、全くなにやってるんだか……」

その様子を見たヨシュアは呆れた表情で溜息を吐いた。

「…………(……丁度良いかもしれないな。ここに集まっている人達には随分お世話になってしまったし……今のうちに、挨拶しておこう。)」

そしてヨシュアは仲間達への挨拶回りを始め、まず一番近くのテーブルにいたアガットとティータ、レンに近づくと、ティータがアガットに嬉しそうな笑顔で尋ねていた。



「……で、アガットさん。いつ来てくれるんですか?」

「いやだから、あれはだなぁ……」

「煮え切らない答えねぇ……ちょっとは成長したと思っていたけど、相変わらず情けない人ねぇ。」

「んだと……?テメェこそ、そのクソ生意気な態度を少しは――――って。」

ティータの誘いに答えを濁している自分に呆れているレンを睨んでいたアガットだったがヨシュアに気づくとティータやレンと共にヨシュアに視線を向けた。

「あら。」

「あ、ヨシュアお兄ちゃん。」

「よう、ヨシュア。お前の方は挨拶回りか?」

「ええ、まあ。レン達は……?」

「えっと、その………アガットさん、今度家にご飯を食べに来てくれるって言ってたから……い、いつごろなのかなぁって………」

「うふふ、レンはティータの友達だからちゃんとティータのお誘いが成功できるように応援しているのよ♪」

「そういえば………アルセイユを降りるときにお二人でそんな話をしてましたよね。」

ティータとレンの話を聞いたヨシュアはある事を思い出した。



「あ、あれは……その別れ際の挨拶みたいなもんだろ。……遊撃士は結構忙しいからな。実際行けるかどうかなんざ、わかんねっつーの。」

一方アガットはティータの誘いを断る様子で答えたが

「………………ずっと待ってたのに…………」

「うっ…………わ、わぁったよ!……あー、えーと……げ、月末ならなんとか………確か金曜辺りは空いてたハズだしな……」

ティータが泣きそうな表情になると慌てて考え直した。

「げ、月末ならなんとか………確か金曜辺りは空いてたハズだしな……」

「ほんとーですか?えへへ、約束ですよ?」

「お、おう………」

(うふふ、ティータも中々やるわよね♪あんな小さな頃から女の涙で男を変えるなんて、将来はとっても素敵なレディになるんじゃないかしら♪)

(ハハ……)

その後レン達から離れたヨシュアはラッセル博士に挨拶をした後、リシャールに話しかけた。



「リシャールさん……いらしてたんですか。」

「ああ……准将の計らいでね。陛下から正式な恩赦を受けることになったんだ。」

「”結社”による王都襲撃を阻止した功績ですね。おめでとうございます。」

「……いや、正直この身には過ぎたことだとは思うのだが………平和が訪れた以上、私も真っ直ぐに自分の犯した罪を受け止めるべきなのかもしれないな。」

ヨシュアに祝福されたリシャールは静かに首を横に振って答えた。

「リシャールさん……」

「ふふ、そう心配そうな顔をしないでくれたまえ。私は決して陛下の恩義に反するようなことをするつもりはない。ただ、私なりの決着をつけるべきだろう。……そう思うだけだ。」

「……はい。」

そしてヨシュアはカノーネ、シード中佐、モルガン将軍、各都市の市長、エルナンに挨拶をした後、2人で飲んでいるシェラザードとオリビエを見つけて話しかけた。



「シェラさん、オリビエさん。ご無沙汰してます。」

「……ん、ヨシュアか。どう、一緒に飲まない?」

「フフ、共に甘美な杯を傾けようじゃないか。今宵はトコトンつき合わせてもらうよ。君の瞳が揺れるまで……ね。」

「……遠慮しておきます。」

シェラザードとオリビエの誘いにヨシュアは呆れた表情で答えた。

「なによう、こんな時くらい付き合いなさいよね。……あ、そうだ。あんたの正遊撃士祝いもついでにやってあげよっか。そーいや、あんたの分だけまだだったわよねー。」

「……あのシェラさん。その、ルシオラのことは……」

「ふふっ……ヨシュアったら、何おねーさんの心配しちゃってるのよ。あんたが気を揉むことじゃないわ。」

ルシオラの事でヨシュアに心配されたシェラザードは苦笑しながら答えた。



「フッ、シェラ君の言う通りさ。みな、この事件を通じて様々な思いを抱いたことだろう。だが、今だけはせめて飲んで騒いで浮かれまくるとしようじゃないか!力の限り、精一杯ねっ!」

「は、はあ……」

「……あんたは今に限らず、浮かれ騒いでる気がするけど。でもまあ、そういう事ね。……それよりヨシュア、もう一人で勝手な行動を取るのはやめなさいよね。あんたのいない間のエステルときたら、ホント、見てらんなかったんだから。」

オリビエの言動にヨシュアが戸惑っている中シェラザードは呆れた表情で溜息を吐いた後静かな表情でヨシュアに忠告した。

「……はい。大丈夫です、もうあんなことをするつもりはありませんから。」

「……そ、なら良いわ。」

「ウフフ、従順な顔も良いよ、ヨシュア君。」

そしてヨシュアはかつてエステルと別離した場所で静かに外を見下ろしているカシウスに近づいた。



「……ヨシュアか。」

「父さん、出席してたんだ。通信では、忙しいからパスって言ってなかった?」

「ああ、忙しいとも。ライフラインの確保に復興物資の輸送……この国が平穏を取り戻すまで、まだしばらくはかかるだろうからな。」

ヨシュアに尋ねられたカシウスは疲れた表情で溜息を吐いて答えた。

「そう言えば……エステルとあちこち回ったけど、地域住民の不安を解消するために小さな村にも王国軍が駐屯していた。父さんらしい指示だと思ったよ。」

「軍は軍で、できる事をやっているというだけのことだ。………帝国や共和国の内政が不透明な上、王国軍の再編も棚上げ状態だが……まあ、たまには気を抜くのも必要なことだろう。ヨシュア、今日くらいは息抜きをしておけよ。」

「父さんこそ、少しは休みをとったらどうだい?母さんやエステル達も心配してたよ。」

「はっは、無用な心配だ。こう見えて、きちんと手は抜いているからな。……それに後数週間したら、新しい家族ができるんだ。遅くとも新しい家族が産まれる数日前には家に帰るつもりだ。」

「そっか。頑張ってね、父さん。」

「ああ。」

その後カシウスから離れたヨシュアはリオンとソフィを見つけて、二人に近づいた。 
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