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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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外伝~動き始める意志~後篇

~クロスベル市・特務支援課~



「―――”通商会議”の間、”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”と”蒼黒の薔薇”が”特務支援課”と共に行動してオルキスタワーの警備につくそうだ。」

「ええっ!?」

「へえ、その二人って言ったらヨアヒムによるクロスベル襲撃から守ったメンバーに加えて以前の”怪獣”騒ぎで大勢の警備隊、警官相手に奮戦したメンバーの内の二人じゃないか。」

セルゲイの話を聞いたノエルは驚き、ワジは目を丸くした。



「一体どうしてそんな事になったのですか?」

「何でも、現在二人が留学しているエレボニア帝国の”トールズ士官学院”の”実習”の一環だそうだ。」

「ハア?何で他国の皇女や貴族がエレボニアの士官学院なんかに留学してるんだ?」

ロイドの疑問に答えたセルゲイの話を聞いたランディは首を傾げ

「―――お姉様の手紙によるとエレボニア帝国とメンフィル帝国の国家間の関係修復の為だそうよ。」

「エリィは何か知っているのか?」

静かな表情で答えたエリィの話を聞いたロイドは尋ねた。



「ええ、お姉様の近況を伝える手紙に書いてあったの。何でもプリネ姫達が所属しているクラスは貴族、平民が混じった特殊なクラスで更には時折他の地方に行って”実習”という形で私達――――”特務支援課”と似たような事をしているそうよ。」

「あ、あたし達と同じ事というと……」

「もしかして遊撃士のパクリかい?」

エリィの説明を聞いたノエルは戸惑い、ワジは口元に笑みを浮かべて尋ねた。



「あのな、ワジ……」

「身も蓋もない事を言うんじゃねえ!」

ワジの言葉を聞いたロイドは呆れ、ランディはワジを睨み

「でも事実だろ?」

「フフ、まあそうね。」

静かな笑みを浮かべるワジの意見にルファディエルは苦笑しながら頷いた。



「お姉様の話によるとそうやって他の地方に出向き、エレボニア帝国で起きている実情―――”貴族派”と”革新派”の対立を知らしめ、考えさせて様々な”壁”が存在するのを知ってもらう為にオリヴァルト殿下が立ち上げたクラスだそうよ。」

「オリヴァルト殿下というと……エレボニア帝国の皇子の一人ですよね?」

「ああ、そして”通商会議”にも参加するVIPの一人だ。そして二人が所属しているクラスは今年度により新たに設立された特科クラス―――”Ⅶ組”という名だそうだ。」

エリィの説明を聞いて目を丸くしたロイドに尋ねられたセルゲイは頷いた。



「特科クラス”Ⅶ組”……」

セルゲイの説明を聞いたロイドは考え込み

「で、その”Ⅶ組”とやらがやる”実習”で何で俺達と共に行動する事になるんだよ?」

「もしかして同じパクリ同士、何か学べるものがあると思ったからじゃない?」

「ワ、ワジ君……お願いだからもうちょっとオブラートに包んだ言い方をしてよ……」

首を傾げたランディの疑問に続くように口元に笑みを浮かべて言ったワジの推測を聞いたノエルは疲れた表情で溜息を吐いた。



「……あの、課長、ルファ姉。今の話を聞いて一つ気になった事があるんですが。」

「何かしら?」

その時考え込んでいたロイドはセルゲイとルファディエルを見回した。



「どうして”エレボニア帝国の士官学院の実習関係”に”メンフィル帝国政府が関わることができる”のですか?」

「言われてみればそうだな……」

「しかもメンフィル帝国の皇族、貴族であるプリネ姫とルクセンベール卿の二人だけだなんて、幾ら何でも怪しすぎますよね……?」

ロイドの疑問にランディとノエルは考え込み

「お姉様の手紙に書いてあった内容によるとリウイお義兄様が”トールズ士官学院”の常任理事の一人を務めていて、その関係で実習地にも口出しできるそうだから、お二人の実習地をクロスベルにできたのも恐らくその関係だと思うわ。」

「リウイ陛下が……」

エリィの説明を聞いたロイドは目を丸くした。



「フフ、どう考えてもメンフィル帝国の思惑だろうねぇ?」

「ああ、間違いなくそうだろうな。」

口元に笑みを浮かべて言ったワジの推測にセルゲイは頷き

「う、う~ん。私個人としてはお二人が何らかの暗躍をするなんて、想像できないんだけど……」

「まあ、あのお姫さん達の人格を考えると、とてもそんな事をするようには見えないよなあ?」

エリィは戸惑いの表情をし、ランディは苦笑しながら言った。



「―――お話はわかりました。それで”通商会議”のいつ頃、お二人は俺達と合流するのですか?」

「初日の13:00に支援課のビルに直接来るとの事だ。合流後は支援課の一員として扱っていいそうだから、通常の『支援要請』にも手伝わせてもいいぞ。」

ロイドの質問にセルゲイは答え

「いや~、短期間とはいえ、潤いが増える事は良い事だな~。二人ともすっごい美人でスタイル抜群だし♪」

「それに短期間とはいえ、あの”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”と”蒼黒の薔薇”が”後輩”になるんだから、滅多にない体験だねぇ?」

「先輩、ワジ君……」

「ハア……」

お気楽な様子を見せているランディとワジの言葉を聞いたノエルとエリィは呆れ

「フフ……(予定通りね……)」

その様子をルファディエルは微笑みながら見守っていた。





同日、25:00―――



~ルナリア自然公園~



真夜中の自然公園にギデオンが静かに誰かを待っていた。

「……………………――来たか。」

「よう、”G”の旦那。」

「ウフフ、早いわね。」

足音に気付いたギデオンが視線を向けると大男と焦眼の女性が近づいてきた。

「同志”V”、それに”S”。そちらの準備も万事、整ったようだな。」

「ええ、滞りなくね。もっとも今回の主役はやっぱり貴方なのでしょうけど。」

「まさかアンタがクロスベル行きを志願するたぁな。”赤い星座”のことを考えると俺が行った方が良かっただろうに。」

「いや―――私は”笛”を失い、片腕までも失った。クロスベルでの作戦が捨石となる可能性を考えたら私が行くのは合理的なはずだ。我らの目的を達成するためにもな。」

大男の話を聞いたギデオンは決意の表情で答えた。



「あんた……」

「……まったく。生真面目すぎるでしょう。」

「フッ……君達も似たようなものだろう。そうでなければ、こんな闘争にわざわざ身を投じてはいまい。」

それぞれの想いを抱えて自分を見つめる二人を見たギデオンは静かな笑みを浮かべて答えた。



「フフ、そうね。」

「クク、違いねぇ。」

「―――揃っているようだな。」

ギデオンの言葉に二人が苦笑していると”C”が3人に近づいてきた。



「同志”C”。」

「来たわね、リーダー。」

「これで全員揃ったかよ。」

「同志たちよ、よくぞ集まった。既に我らは走り出し止まる事も、顧みる事もない。求めるのは”結果”のみだ。」

「同意する。」

「異議ナシね。」

「言わずもがなだぜ。」

”C”の言葉に3人はそれぞれ静かに頷いた。



「その上で、あえて聞こう。―――同志”G”。本当にいいのだな?」

「フッ……私の思想と理念は”解放戦線”に息づいている。ならば、たとえクロスベルでこの身が果てようとも構わない。あの男がもたらすであろう恐るべき反理想社会(ディストピア)の到来……誰かが食い止められれば我らの勝利となるのだから……!」

”C”の確認にギデオンは静かな笑みを浮かべた後決意の表情で語った。



「……わかった。女神の―――いや、悪魔の加護を。事が成ったら、4人で祝杯を上げるとしよう。願わくば帝都ヘイムダルでな。」

「ああ……!」

”C”の言葉に頷いたギデオンは歩いて”C”達に背を向けてヘルメットを被り

「さらばだ―――同志たちよ。」

”C”達に永遠の別れの言葉を告げてその場から去って行った。



「本当に……不器用な男ね。」

「正義に殉じて立場を追われ、果てなき闘争に身を投じるか……とても真似できねぇな。」

ギデオンが去った方向を見つめた女性は静かに呟き、大男は重々しい様子を纏って呟いた。



「………………背景や経緯は違えど我らの望みはどこまでも同じだ。―――行くぞ。同志”S”、それに同志”V”。計画に従い、我らは我らの為すべきことを果たすとしよう。」

「ええ……!」

「おお、任せておきな!」

そして”C”の言葉に二人は力強く頷いた後その場から去って行った。



この別れがギデオンの宣言通り、永遠の別れとなり、ギデオンは2度と仲間達と生きて再会する事はなかった………………


 
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