英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
外伝~幻焔計画と狂戦士の宣戦布告~
~グロリアス・甲板~
「……………………………………フフ、随分と寂しくなったものだな………………」
エステルとヨシュアの無事が確認される少し前、甲板から崩れ落ちる浮遊都市を見守っていたブルブランは自分とカンパネルラ以外戻って来なかった”執行者”達を思い浮かべていた。
~前方区画~
「な、なんだあれ……なんなんだよあれはっ!」
同じ頃部屋の一室から崩れ落ちる浮遊都市を見守っていたギルバートは信じられない表情をした後窓を何度も叩いた。
「だ、だって……あの浮遊都市を使ってリベールを支配するんだろ!?それどころか大陸全土まで……こ、これじゃあ話が違うじゃないか!」
混乱していたギルバートだったが、ふとある事に気づくと黙り込んだ。
「い、いや待てよ……考えてみれば……僕が勝手にそう思っていただけでそんなことは一言も……うわあああっ!」
やがて何かに気づいたギルバートは悲鳴を上げた後ベッドに飛び込んだ。
「も、もういやだ……あいつらに逃げられるわ、カンパネルラ様には虐められるわ……お、おまけにこんな……ワケのわからない結果になって……ぼ、僕は……僕達は今まで……何をやらされてたんだよっ!?」
ベッドに飛び込んだギルバートはうずくまって頭を抱え込みながら悲鳴を何度も上げた。一方その頃エレベーターから降りたカンパネルラは”聖堂”に向かっていた。
「カ、カンパネルラ様!」
「ご、ご無事でしたか!」
「うふふ、ご苦労様だね。でも、こんな時までお仕事なんてさすがに真面目すぎるんじゃない?いや~、外は凄いよ?何百万ミラ積んだって見られるような光景じゃない。まだ間に合うと思うから君達も見物してきたらどう?」
「め、滅相もありません!」
「そ、そう言う訳には……」
カンパネルラの誘いに対して見張りの強化猟兵達はそれぞれ恐縮した様子で断った。
「ふふ……条件付けされた君達には難しい話だったか。まあいいや。そこ、通してくれる?ちょっとヤボ用で”聖堂”に用があってね。」
「え……」
「で、ですが……いかにカンパネルラ様といえど教授の許可無しには……」
「ああ、教授なら死んだから。」
「なっ……!?」
「ま、まさか!?」
カンパネルラから告げられた驚愕の事実に強化猟兵達は信じられない様子で声を上げた。
「あれ、僕の言う事がデタラメだとでも……?ふーん。ちょっと傷ついちゃったな。よし、なら君達にもギルバート君みたいな愉しい思いをさせてあげるよ。そうすれば僕の言う事も信じてくれるようになると思うし。」
「い、いやその……」
「そんな気遣いをされずとも最初から信じておりますから!」
不敵な笑みを浮かべるカンパネルラの言葉を聞いて自分達に何が起こるか悟った強化猟兵達は後ずさりをした。
「なら、とっとと外の見物にでも行ってくるといい。君達に警備を命じた人間はもういないんだからさ。」
「そうさせていただきます!」
「そ、それではごゆっくり!」
「ふふ、これで彼らも用済みか。ま、記憶を奪って放り出すのも勿体ないから部隊ごと僕が引き取ろうかな。」
逃げるように慌てた様子で去っていく強化猟兵達を見守ったカンパネルラは強化猟兵達の今後を考えた後”聖堂”へと入り、”結社”の紋章である”身喰らう蛇”の紋章の中心で立ち止まった。
~聖堂~
「フフ、さすがに外の雑音もこの中までは聞こえてこないか。ま、そうでなくちゃ役目は果たせないんだけどね。」
紋章の上に乗ったカンパネルラが指を鳴らすと周囲の柱に”身喰らう蛇”の紋章が浮かび上がり、オルガンが置いてある正面には巨大なモニターが現れた。
「―――アクセル。No.0”道化師”カンパネルラ。”蛇の使徒”第三柱、ゲオルグ・ワイスマンに代わり”星辰の間”への立入を申請する。」
カンパネルラが呟くと空間が歪み、歪みが消えるとカンパネルラは謎の場所に立っていた!
~星辰の間~
「………待ちかねましたよ…………」
カンパネルラが謎の空間――”星辰の間”に立っているとどこからか謎の声が聞こえてきた。
「ふふっ………皆さん、お揃いみたいだね。」
カンパネルラが呟くとカンパネルラの周りに6本の柱が突然現れた!
「しかし………まさか”白面”が滅びるとは。」
「ふふ、どうやら古巣でおいたをしすぎたみたいね。ねえ、カンパネルラ。彼はどんな死に方だったの?」
柱の内の一本――”蛇の使徒”の一人、第五柱は驚いた様子で呟き、さらにもう一本――同じく”蛇の使徒”の一人――第二柱はカンパネルラに尋ねた。
「うふふ、それが傑作でね。頭のてっぺんから爪先までぜんぶ塩にされちゃったんだ。それで最期は粉々に砕け散っちゃった。」
「まあ………ゾクゾクしてしまうわね。ああ、わたくしもその場にいられればよかったわ。」
「”塩の杭”………ノーザンブリアに出現した特異点の産物だね。ふーむ、この目で実物を確かめたかったところだが………」
ワイスマンの死に第二柱が楽しそうな声を上げている中、第六柱からは考えている様子の声が聞こえてきた。
「ハハ、しかし意外だなァ。あんな抜け目のない御仁がそんな隙を見せちまうとはね。」
「………おそらく相手は”守護騎士”の一人であろう。それも今まで不在とされていた”第五位”に違いあるまい。」
「なるほどねェ……だからこそ隙が生じたか。そいつ、なんて名前なんだ?」
第五柱の推測を聞いた第四柱は頷くような声を出した後、カンパネルラに尋ねた。
「―――ケビン・グラハム。かの”紅耀石”に学び、”外法狩り”を名乗っている。うふふ、色々と歪んでいて愉しそうなお兄さんだったよ。」
「”紅耀石”の………うふふ、何だかますます興味をそそられてしまうわね。」
「おいおい”深淵”の。あれほど熱を上げていたレオンハルトが”結社”から離れたってのにもう次の男漁りかよ?」
第二柱――”深淵”と呼ばれる蛇の使徒の言葉を聞いた第四柱は呆れた様子で指摘した。
「あら、心外ね。これでもレオンのことはちゃんと哀しんでいるのだから。とうとう最後まで振り向いてもらえず、私以外の他の女になびいて”結社”を離れたんだから、余計に忘れられそうもないわね。」
「……そうですね。良き剣士であったのに本当に惜しい事になりました。」
”深淵”の言葉に続くように第七柱もまた、残念そうな声でレーヴェの”結社”からの脱退に関する事を答えた。
「確かに執行者の中で貴公と剣で渡り合えたのは彼くらいであったか………」
「ええ、よく無理を言っては稽古に付き合ってもらいました。恐らく彼はリベールに今回の件に対する罪を償わさせられる事になるでしょうが……”漆黒の牙”の件を考えるとリベールは彼の過去に対する責任を取る為に、恐らく便宜を図るでしょうね。」
「フフ……実際に同じ”ハーメルの遺児”でもある”漆黒の牙”の罪を許した慈悲深きアリシア女王ならばありえるだろうな。それどころか”剣聖”が奴の”執行者”としての能力を見込んで、軍属にする可能性もありえるだろうな。」
第七柱の推測に第五柱は興味深そうな様子で答えた。
「ふふ、別に問題はないだろう?戦力全体における損失は極めて軽微――想定の範囲内だよ。今後の影響を考えると”殲滅天使”の方が大問題さ。」
「ハハ、あの嬢ちゃんか。ずいぶん混乱してたようだが果たして戻ってくるのかねェ?」
「まあ、それは彼女しだいでしょう。我々は彼らの上位にあるが彼らの行動までは制限できない。それが”掟”です。」
「……でもねぇ………」
第一柱の正論を聞いてもなお、文句がある第六柱は言葉を濁していた。
「博士、私達もゴルディアス級の重要性は理解しているつもりです。……ですがこれはあの方が決めた”掟”なのです。その意味はお判りでしょう?」
「……………」
「うふふ……教授の漆黒の坊やへの執着は少々度が過ぎていた気がするけど。」
「そう、そしてそれが彼を滅ぼすきっかけとなったのも事実……そうでしょう、カンパネルラ?」
深淵の言葉に頷いた第一柱はカンパネルラに問いかけた。
「うふふ、確かにヨシュアに拘りすぎたのは敗因の一つかもね。あのケビン君にもそのあたりを狙われたみたいだし。」
「………はいはい、わかったよ。でもまあ、私だって”十三工房”を預かる身だからね。ゴルディアス級の運用状況を確認する意味でも監視は続けさせてもらうよ。」
「ええ、それはお任せします。それより皆さん――そろそろ降臨なされますよ。」
「む……そうか。」
「うふふ……ドキドキしてしまうわね。」
全ての柱が見守っている中、カンパネルラはその場で跪いた。するとその時一際大きい柱が降りて来た!
「皆……揃っているようですね。」
「は……”第三柱”を除きまして全員、揃いましてございます。」
一際大きい柱―――”身喰らう蛇”のトップである”盟主”に第一柱は答えた。
「……ご苦労。カンパネルラも……我が代理としての見届け役、大儀でありました。」
「……恐れ入ります。すでに『福音計画』の顛末はご存知かと思いますが……もっとも重要な役目を果たさせて頂きます。」
盟主に答えたカンパネルラは教授の魔導杖を目の前に出した。すると魔導杖から光の球体が現れた。
「おお……!」
「それが……」
「七の至宝が一、”輝く環”か……!」
光の球体―――”輝く環”に他の柱達が魅入っている中、光が盟主の元に向かい始めたその時!
クク……感じるぞ、俺がもっと強くなる為の凄まじい”力”を……!
「え………」
不気味な男の声が聞こえ、その声を聞いたカンパネルラが呆けると何とバルバトスが盟主の前に現れた!
「な――――」
「お前は確か……」
「……”痩せ狼”を殺害した狂戦士―――バルバトス・ゲーティアとやらですね。一体どうやってこの場に現れたのです。」
バルバトスの登場に柱達が驚いている中第七柱は落ち着いた様子でバルバトスに訊ねた。
「ククク…………奴等に深手を負わされてあの塔から落下した時……俺は考えた。どうすればもっと強くなって最強の男になれるのかをな。そして奴等や貴様らが”輝く環”とやらを探している事を思い出し、答えが出た……!」
「!まさか――――」
バルバトスの話を聞いてある事を察した盟主が声を上げたその時バルバトスは”輝く環”を全身で受け止めた!
「な―――」
「”輝く環”を……!」
「ククク……感じる……感じるぞ、凄まじい”力”を……!ハハハハハハハハハッ!」
「滅茶苦茶な奴だな……」
「そんな呑気な事を言っている場合じゃないでしょう!?今すぐ貴方が取り込んだ”輝く環”を我らが盟主に渡しなさい!それは貴方如きが持っていい力ではないわ!」
”輝く環”を取り込んで凶悪な笑みを浮かべて笑い続けているバルバトスを第四柱が呆れた様子で見守っている中、第二柱は怒りの様子でバルバトスに指摘した。
「―――”深淵”、この場は私に預けなさい。」
「え……か、かしこまりました。」
そして盟主に制された第二柱は恐縮した様子で答えた。
「バルバトス・ゲーティアと言いましたね……貴方が持つその”闇”は今いる”執行者”達の誰よりも深い………”結社”に入るのならば”痩せ狼”をその手にかけた罪を許し、”輝く環”をしばしの間貴方に預ける事を許可します。」
「な―――――」
「盟主。恐れながら”輝く環”を預ける事まで許可するのは寛大過ぎると思われるのですが……」
盟主のバルバトスへの誘いに第二柱が絶句している中第五柱は盟主に意見をした。
「ククク……俺を許すだと?何故、”糧”となる貴様ら如きにこの俺が許されなければならない?」
「何……?それは一体どういう意味ですか。」
「クク、何をわかり切った事を……”糧”とは貴様らの事で、そして貴様ら結社はこの俺が更に強くなる”糧”という意味だ!その時が来るまで首を洗って待っているがいい!ハーハッハッハッハッハッ!」
盟主の誘いに対してバルバトスは凶悪な笑みを浮かべて答えた後盟主達に宣戦布告をして笑いながらその場から消えた!
「………退きましたか。」
「個人で”結社”全体に喧嘩を売るなんて滅茶苦茶すぎるだろ……」
「まさか”福音計画”の最後の最後でこんな事になるなんてねぇ……」
「カンパネルラ……あの男が現れたのはあの男につけられて、ここまで連れてきた貴方の責任よ。この責任、どう取るつもりかしら?」
バルバトスが消えると第七柱は静かに呟き、第四柱は呆れた様子で呟き、第六柱は呆けた様子で呟き、第二柱は責めるような口調でカンパネルラに追求した。
「も、申し訳ございません……!今すぐあの男を追い、”輝く環”を奪還してきます……!」
「―――よい。」
そして盟主に謝罪をしたカンパネルラが慌てた様子で去ろうとしたその時盟主が制した。
「”空の至宝”の件は予定外でしたが、『福音計画』ではあまりにも多くの犠牲を払ってしまった……ワイスマン……ヴァルター……いえ、それだけでなく計画にまつわる全ての犠牲も………全ての責はこの私にあります。」
「め、滅相もありませぬ!」
「……どうかご自分をお責めにならないでください。”白面”殿の死は自業自得というものでしょう。」
「もし責められるならば彼を諌めもせずに看過してきた我々”使徒”全員のはずですわ。」
後悔した様子で語る盟主に第五、七、四柱はそれぞれ盟主に非がない事を伝える為に自分達の意見を口にした。
「いいえ、”空の至宝”の件を除いてこの事態を私はなかば想定していたのです。それでも私は………全ての決定を彼に委ねました。それがこの世界にとって必要と判断したがゆえに………ですから全ての責は……私にあるのです。」
「”盟主”よ……」
「なぜ御身はそこまで……」
「…………………この後しかるべき揺れ戻しが起きることが予想されますが……恐らく、その件に関しては七耀教会が動くことになりましょう。彼らに任せておきなさい。」
使徒たちの問いかけに何も答えず盟主は静かな口調で答えた。
「……承知しました。」
「ふふ……少し気になりますが御心のままにいたしますよ。」
「して、我々はこの後、どう動くといたしましょうか?
「…………………」
第四柱に尋ねられた盟主はしばらく黙っていたがやがて口を開いた。
「西方の鐘は鳴らされ、第一の盟約は解かれました。今、この時をもって『オルフェウス計画』がー、『福音計画』の完了と―――そして次なる段階――『幻焔計画』の始動を宣言します。」
「おお……!」
「うふふ……承知しましたわ。」
「はは、どうかお任せあれ。」
「我等”蛇の使徒”一同……」
「大いなる”盟主”の御心に沿うべく………」
「これより全身全霊を持って計画遂行に着手いたします。」
盟主の言葉を聞いた蛇の使徒達はそれぞれ答えた。その後カンパネルラは”星辰の間”から元の場所に戻った。
ページ上へ戻る