英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第101話
~リベルアーク・地下道~
それぞれがアルセイユに向かって急いでいる中、ヨシュアが突然崩れ落ちた。
「ぐっ……」
「ヨシュア!?だ、大丈夫!?どこかケガしていたの!?」
崩れ落ちたヨシュアに気付いたエステルは慌ててヨシュアにかけよって声をかけた。
「いや……何でもないよ。ちょっと……目眩めまいがしただけだから……」
「目眩って……ど、どうしていきなり……」
「……たぶん”聖痕”が消滅した後遺症やろね。」
「え……」
エステルとヨシュアの様子に気づいて戻って来たケビンの説明を聞いたエステルは呆けた。
「エステル!」
「ヨシュア!大丈夫なの!?」
するとそこにエステル達がついてきていない事に気づいたルークとレン、カリンとレーヴェがエステル達に駆け寄った。
「何しろ、意識の根っこに巣食ってた部分や。それを取り除いたら、何らかの形で揺れ戻しが起こる。目眩、頭痛、吐き気……しばらくの間は悩まされるやろ。」
「「そ、そんな……」」
「「ヨシュア………」」
「……………」
ケビンの説明を聞いたエステルとカリン、ルークとレンは心配そうな表情でヨシュアを見つめ、レーヴェは目を伏せて黙り込んでいた。
「いいんだ、エステル、姉さん……。全部覚悟した上で……ケビンさんにお願いしたんだから……姉さんにも再び会えたんだし、これぐらい安いものだよ…………」
「「ヨシュア………」」
「おーい!何をやっとるんじゃ!急がんと置いていくぞ!」
後悔していない様子で答えるヨシュアに返す言葉がないエステルとカリンが黙り込んでいるとラッセル博士のはやし立てる声が聞こえてきた。
「あ……うん!もう走れる、ヨシュア?」
「ああ、問題ないよ。」
「よーし、そんなら急ぐで!」
「うん!」
そしてエステル達は再び走り出したが走っている途中、ヨシュアが何かに気づき
「エステル!」
「え……」
「クッ………!」
後ろを追いかけてきていたエステルを抱え後ろへと飛びのいた!すると、エステル達の前の通路が落石により破壊され、ルーク達と分断されてしまった!
「…………あ………………」
「さっきの揺れで脆かった部分が崩れたんだ……」
「だ、大丈夫か!?」
「う、うん……何とか!」
「エステルさん!ヨシュア!」
「無事か!?」
後方の異変に気づいた仲間達は次々と戻って来て分断された先にいるエステルとヨシュアに気づくと血相を変えた。
「お姉ちゃん!お兄ちゃん!」
「チッ、何てこった……。他に通り道はねえのかよ!」
「”中枢塔”に向かう通路はここだけだったはずよ……。……くっ……何か方法は……」
「シャル、ブラックホールの準備をしろ!ブラックホールで奴等を吸い寄せる!」
(さすがにそれはリスクが高すぎますよ、坊ちゃん~。ブラックホールによって崩壊寸前のこの地下道が完全に崩壊する可能性は高いでしょうし、第一吸い寄せる事ができても下手をすればそのまま奈落の底へ真っ逆さまですよ。)
「ソフィ、お前の身体能力で二人の所に向かった後二人を抱えてこっちに戻ってこれねえか!?」
「……向こうに行く事はできるけど、さすがに人を抱えてあんな長距離を跳躍するのは私でも無理……」
「え、えっと……。あたしたちに構わずにみんな先に脱出してよ。」
「僕たちは何とかして脱出の方法を見つけますから。」
仲間達が自分達を救出する方法を必死で考えているのを見たエステルとヨシュアは仲間達を思い、先に行くように促した。
「馬鹿言うんじゃないわよ!」
「そうだぜ!最初から諦めるな!」
するとその時シェラザードとルークが二人を見つめて怒鳴った。
「これ以上親しい奴等を見殺しにしてそいつらの分も背負って生き続けるなんて、俺はもうごめんだ!」
「ルーク………」
ルークの言葉を聞き、ルークや自分が元いた世界―――オールドラントで起こった親しい人々の”死”を見続けてきたルークの気持ちを察していたイオンは辛そうな表情でルークを見つめ
「ここであんた達を置いていったら先生とレナさんにどう顔向けすればいいの!いいから何か方法を考えるわよ!」
「それにユウナも『死んだら許さない』って言ってたでしょう!?二人が死んだら、レンも絶対に許さないわよ!」
「ルーク兄……シェラ姉……レン………」
「すみません……」
自分達を心配するルーク達の言葉にエステルは何も答えられず、周囲の心配を気にせず自分達の身を顧みない発言をしたことをヨシュアは謝罪した。
「実際問題、ジャンプして飛び越せる距離じゃない……。となると……別のルートを探すしかなさそうだ。」
「別のルート………探索した限りでは一本道だったが………」
「いや、それはあくまでこの地下道に限っての話さ。どうやらこの浮遊都市には幾つもの地下道が存在するらしい。そうした道さえ見つかれば………」
「恐らく緊急用の避難通路のようなものがあると思うのだけど………」
ジンの指摘を聞いて考え込んでいるバダックにオリビエは指摘した後アーシアと共に考え込んだ。
「そういや”中枢塔”の手前で別の地下ゲートを見かけたな………”カルマーレ”に通じた緊急避難通路と書いてあったような…………」
「ホ、ホント!?」
するとその時キールが希望となる答えを口にし、それを聞いたジョゼットは明るい表情をした。
「ああ、確かにあったぜ。その”カルマーレ”ってのがお前らの船のある場所なんだろ?」
「あ、ああ………!」
「そこが使えれば………!」
「うむ、この状況下ならばロックは外れているはずじゃ!」
「間違いなく、外れています。エネルギー源である”輝く環”も消えたのですから……!」
「エステルちゃん、ヨシュア君!もう他に選択肢はなさそうや!そっちの方から”アルセイユ”に戻るんや!」
「うん……!」
「分かりました……!」
二人の脱出方法に気づいた仲間達の会話を聞いて仲間達の代わりに答えたケビンの助言にエステルとヨシュアはそれぞれ頷いた。
「き、気を付けてね!お姉ちゃん、お兄ちゃん!」
「待っています……”アルセイユ”で!」
「うん!みんなも気を付けて!」
エステルとヨシュアに声をかけたティータとクローゼはルーク達と共にアルセイユへと急ぎ
「さあ……僕たちも急ごう。どうやら崩壊まであまり時間はなさそうだ。」
「うん……了解!”中枢塔”前にある緊急用の避難通路よね!」
仲間達を見送ったエステル達は緊急用の避難通路を通って、外への脱出を目指した!地下道を抜け、何とか外へと脱出できたエステルとヨシュアはそのまま”カルマーレ”をめざした。
~リベルアーク~
「きゃあっ……!」
「……くっ……!」
一際強い揺れが起こり、目の前の通路がひびが入り、崩れ始めた!
「……あっ……!」
「しまった……!」
エステルとヨシュアは慌てて進もうとしたが別ルートでカルマーレへと続く唯一の緊急避難通路は完全に崩壊した!
「ああっ……」
「戻ろう、エステル!」
2人はすぐさま戻ろうとしたが、揺れで脆くなっていた通路は戻ろうとした矢先に崩壊し、その結果2人は1本の柱の足場に取り残された!
「………………………………。戻れなく……なっちゃったね。」
「うん……。多分、下の細い梁じゃここは支えきれないだろう。」
「そっか……」
「ごめん、エステル……。僕があの時、足をもつれさせなければ……」
「そういう事は言いっこなし。あたしだって岩の下敷きになるところをヨシュアに助けてもらったしね。」
自分達の”死”が近づいているにも関わらずエステルとヨシュア、二人は落ち着いた様子でいた。
「でも……えへへ……何でかな。こんな状況なのにちっとも怖くないのよね。ヨシュアはどう?」
「あ……。うん……そうだね。僕もぜんぜん、怖くないかな。」
やがて二人の命綱であった下の梁に亀裂が入り始めた!
「ね……ヨシュア。2つ、お願いしてもいい?」
「いいよ。」
「1つ目は……あたしのこと、抱き締めててくれる?」
「喜んで。」
エステルの要望に頷いたヨシュアはエステルを優しく抱き締めた。
「えへへ……」
「……それから?」
「えっと、その……。しつこいって思われたらちょっとイヤなんだけど……。やっぱりその……悔いは残したくないっていうか……」
「……ごめん。その先は僕に言わせて。」
二つ目の要望を口にする事をエステルが恥ずかしがっていると、エステルの言いたい事を察したヨシュアが制して、エステルを見つめた。
「エステル……キスしてもいいかな?」
「あ……。……うん……!」
そして2人が死んでも絶対に離れないように互いを強く抱きしめて口づけををすると、そのまま梁の限界がきて、2人は落下していった―――――
崩れ落ちる浮遊都市”リベル=アーク”からアルセイユ、山猫号、グロリアスは周回しながら離れて行った。
~山猫号・ブリッジ~
「お願い、キール兄!このままじゃヨシュアたちが……!」
「駄目だ、ジョゼット……。……あの様子じゃ、もう……」
ジョゼットの懇願にキールは悔しそうな表情で答えた。
「そんな……」
「……クソッ……最後の最後でなんで……。こんな時に……女神は一体何やってやがる!」
キールの答えを聞いたジョゼットは悲しそうな表情をし、ドルンは悔しそうな表情で叫んだ。
~アルセイユ・ブリッジ~
「そ、そんな……」
「ま、間に合わへんかったか……」
「………エステル…………ヨシュア…………」
「………ッ………!」
「う、嘘だろ……」
一方アルセイユで崩れ落ちるリベル=アークを見つめていたシェラザード、ケビン、ルーク、レン、アガットは信じられない表情や無念そうな表情をし
「や、やだ……。そんなのやだあああっ!」
「そ、そんな……やっと……再会できたのに……こんな事って……!うああああ……っ!」
「カリン……」
ティータが泣き叫んでいる中、悲痛そうな表情で涙を流し始めたカリンをレーヴェは優しく抱きしめた。
「ユリアさん!どうかお願いします!避難通路の方向から考えてエステルさんたちは北西の端にいるはずです!どうかアルセイユをそこへ!」
「……申し訳ありません……。いくら殿下の命令でもそれは……従いかねます。」
「……アルセイユの推力も完全には戻っていない状態だ。今、再び都市に近付けば間違いなく崩壊に巻き込まれる。そうですな、ラッセル博士?」
クローゼの嘆願にユリア大尉は辛そうな表情で答え、二人の救出が無理である事を裏付ける説明をしたミュラー少佐は確認の意味でラッセル博士に視線を向けた。
「……その通りじゃ。」
「……そ、そんな…………」
「クッ……最後の最後でこんなことになるなんて………!」
「これも空の女神のお導きだというの……?」
「もしそうだとしたら、俺は絶対に空の女神を許さねえ……!」
「はは……参ったな……。場を和まそうと思っても頭が真っ白だよ……」
「……ああ、俺もだ。」
「……………」
二人の救出が不可能である事をラッセル博士が肯定するとクローゼは絶望した表情をし、レイスは唇を噛みしめ、悲しそうな表情で呟いたアーシアの言葉を聞いたフレンは悔しそうな表情で答え、オリビエとジンは疲れた表情で呟き、バダックは死んだ二人に向ける意味で黙とうをした。
「空の女神よ……そしてユリアよ……もし、どこかで見ておられるのならどうかあの二人を助けてあげてください………!」
「イオン様…………………空の女神にユリア……どうか、お願い、します………」
諦めずに二人の身が無事である事を祈るイオンを見たアリエッタはイオンに続くように祈りを捧げ
「………クソッ………!スタンといい、何故能天気な奴等に限って……!」
(坊ちゃん……)
「二人を………友達を守れなかった……ごめん、アスベル………」
二人の死を悔しがっているリオンをシャルティエは辛そうな表情で見つめ、ソフィは辛そうな表情で顔を俯かせた。
「あいつら……うう……。これからだってのに…………こんな事になっちまって……」
「エステルちゃん……。……ヨシュア君……。あれ~……?」
二人の死にルーク達が悲しみに暮れている中、突如ドロシーが声を上げた。
「おい……ドロシー……。こんな時くらい……大人しくしてろっての……」
「いえ、その~……。なんだかジーク君が嬉しそうに飛んでいったなあって。」
「へ……」
「あ……」
ドロシーの言葉を聞いたナイアルは驚き、ユリア大尉は何かに気付いて声を上げた。するとジークが飛んでいった先にはエステルとヨシュア、そしてカシウスを乗せた古竜――レグナートが飛行していた!
~リベール領空~
「ちょ、ちょっとレグナート!どうしてあなたがこんな所に……。それにどうして父さんまでここにいるのよっ!」
「なに、王国全土の導力がようやく回復してくれたんでな。モルガン将軍に後の事を任せてこうして彼に乗せてもらったんだ。」
「の、乗せてもらったって……」
伝説の存在である竜に乗せてもらった事を気軽に答えたカシウスをエステルは呆れた表情で見つめていた。
「さすがに驚いたよ……。……初めまして、レグナート。あなたの事はエステルから聞いています。わざわざ僕達を助けに来てくれてありがとうございます。」
(フフ、礼には及ばぬ。新たな風が吹いたのでな……そのついでに翼を運んだだけだ。)
「えへへ……でも、お礼を言っておくわ。来てくれてありがとう。……あれ、そういえば……確かあなたって、人を見守るだけの存在なのよね?あたしたちを助けてよかったの?」
レグナートの念話を聞いたエステルは苦笑しながらお礼を言った後、ある事に気付いてレグナートに尋ねた。
(それは”輝く環”を前におぬしらが答えを出すまでのことだ。そして答えが出された今、古の盟約は解かれ、禁忌も消えた。ゆえに”剣聖”の頼みに応じ、こうして迎えに来たというわけだ。)
「古の盟約……」
「わけ、分からないんですけど……」
「安心しろ、俺にも分からん。何しろこの堅物ときたら肝心な事はロクに喋ってくれないのだからな。」
レグナートの念話を聞いたヨシュアは呆け、エステルはジト目になり、カシウスは疲れた表情で溜息を吐いて答えた後、レグナートに視線を向けた。
(フフ、許せ。竜には竜のしがらみがある。…………ただ一つ言えることは運命の歯車は、今まさに回り始めたばかりということだ。そして、一度回り始めた歯車は最後まで止まることはない……。心しておくことだな。)
「そうか……」
「ちょ、ちょっと待って……!」
「また同じようなことがリベールで起こるというの?」
レグナートの念話を聞いたカシウスは真剣な表情で頷き、再び今回の件のような事が起こる事を悟ったエステルは血相を変え、ヨシュアは真剣な表情で訊ねた。
「いや、その運命は別の場所で、別の者たちが引き受けることになるだろう。―――とにかく今回はお前たちも本当によくやった。今はただ何も考えず、ゆっくり休むといいだろう。かけがえのない仲間と共にな。」
二人の心配をかき消すようにカシウスはエステル達に優しい表情で2人を見つめて言った後二人をねぎらった。
「あ……」
カシウスの言葉に呆けたエステルとヨシュアがカシウスが向けた視線を追っていくと、そこには甲板に出たアルセイユ、モルテニア、山猫号のメンバーの達が嬉しそうな表情でエステル達を見つめたり、手を振ったりしていた。
~アルセイユ・格納庫~
「……………ふふっ、さすがいつもレンの予想を覆すエステルね。……………本当によかった………」
仲間達が二人の無事に喜んで甲板で二人を迎えようとしている中、ただ一人格納庫にいたレンは二人の無事による安堵の涙をぬぐっていた。
「フフ、まさか竜の協力を取り付けるとはな………”剣聖”の手腕には恐れ入った。これでお前にとって”最高の結果”になったという事か。」
するとその時銀がレンの背後の空間から現れた。
「うふふ、何をおかしなことを言っているのかしら?”こっちの方”は”まだ終わっていない”でしょう?―――レンの”幸せ”にちょっかいを出したその罪がどれだけ愚かな事なのか思い知らせてあげるわ、”結社”さん♪」
そして銀の言葉に不敵な笑みを浮かべて答えたレンは端末を取り出して凄まじいスピードで操作をし始めた。
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