英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第103話
8月7日―――
翌日朝食を取ったリィン達はついにウィルが作ったそれぞれの専用装備を受け取ろうとし、武器の性能を調べる為に城の訓練所に向かった。
~マルーダ城・訓練所~
「―――お待たせ。昨日の内にリウイから頼まれていた君達の装備は全て完成したよ。まずはリィン君。」
「―――はい。」
ウィルに言われたリィンはウィルに近づいた。
「情報を見て君は炎の系統の剣技や魔術を得意としているから太刀は『利剣”真焔”』、防具は『ブレイズコート』だ。」
「ありがとうございます。……凄い……こうして手に取るだけでもこの太刀とコートにそれぞれ凄まじい力を秘めている事がわかります……」
ウィルから太刀とコートを受け取ったリィンは太刀とコートに込められている”力”を感じ取って驚き
「うむ、相変わらずウィルの作った物はどれも素晴らしいな!」
「…………(何て魔力と霊圧……一体どうやって加工したのかしら……?)」
リィンが持つ武具の凄まじさを感じ取っていたリフィアは胸を張り、エマは信じられない表情でウィルを見つめた。
「フフ、ちなみにコートにはリィンさんの実家の家紋が刻み込まれてありますよ。」
「え……―――あ…………」
セラウィの言葉に呆けたリィンがコートの背中の部分を見ると、そこには”シュバルツァー男爵家”の家紋でを見て呆けた。
「実際に着てみて、違和感がないか確かめてくれないか?」
「は、はい。」
ウィルに言われたリィンは渡されたコートを羽織った。
「ほう……」
「フッ、意外と様になっているではないか。」
「……似合ってますよ、兄様。」
コートを羽織ったリィンの姿を見たラウラは感心し、ユーシスは静かな笑みを浮かべ、エリゼはリィンが羽織ったコートの背にしっかりと刻み込まれてあるシュバルツァー男爵家の家紋を見て嬉しそうな表情をした。そしてリィンはコートを羽織った状態で何度か受け取った太刀で素振りをした。
「……問題ありません。これ程の名品を俺の為に作って頂き、ありがとうございました。」
「ハハ、俺は”工匠”としての仕事をしただけだよ。」
「―――次はアリサさん、貴女です。」
「は、はい!」
その後アリサ達もウィルから次々と自分達専用の装備を受け取り、それぞれ装備して感触を確かめていた。
「へえ、さすが”匠王”。いい仕事をしているね。しかもわたしの二つ名もついているなんて、滅茶苦茶気に行った。」
「フフ、それを言ったらあたしもよ♪」
新しい双銃剣――――”オメガシルフィード”で試し撃ちをしていたフィーは感心した後嬉しそうな表情をし、フィーの意見にサラ教官は自身の得物―――強化ブレードの『オメガエクレール』と銃の『トールスター』を見て頷き
「遠距離射撃用のスコープに加えて、導力エネルギーを大幅に上げるなんて、一体どうやって創ったのか気になるわよ……」
アリサは”不死鳥”の名を冠した魔導弓――――『フェニックス』を見て苦笑していた。
「僕のはもはや”ショットガン”と言えるのか、怪しいんだが……」
「まあ、様々な属性の弾丸を放つ事もそうですが、全属性の集束砲まで放つ事ができますものね……」
集束砲も撃てるようになったショットガン――――”エレメンタルショット”を持って冷や汗をかいたマキアスの意見にプリネは苦笑しながら頷いた。
「魔導杖まで作れるなんて、ウィル様は本当に凄い職人の方なんですね……」
「プリネ達の話では異世界では導力技術はほとんど普及していないのに、一体どうやって作ったんですか?」
「魔導杖に関しては以前共に行動した事のある仲間―――ティオが使っていた得物だから、構造等もほとんどわかっていたからね。そのお蔭でもあるよ。」
いくつかの専用導力魔法が撃てるように創られた魔導杖――――『アークワンド』を持つエマは驚きの表情でウィルを見つめ、魔導杖――――『セプトタクト』を持つエリオットに尋ねられたウィルは答えた。
「え……」
「私達以外にも魔導杖を使っている方がいらっしゃるんですか?」
ウィルの説明を聞いたエリオットは目を丸くし、エマは尋ねた。
「はい。ティオちゃんは”エプスタイン財団”に所属している魔導杖のテスト要員なんです。」
「ちなみにティオ・プラトーが使う魔導杖のデータを元に改良してお前達の魔導杖が創られている。」
「そ、そうだったんですか……」
「フフ、という事は私達にとっては先輩にあたりますね。」
ツーヤとレーヴェの説明を聞いたエリオットは驚き、エマは微笑んだ。
「フフ……”至高の職人”と評されているウィル殿が直々に創って頂いた武具を身につける等正直畏れ多いが、私の姿を父上に見てもらいたくなってきた。」
「同感だ。俺も今の姿を兄に見せて差し上げたいな。」
大剣―――『聖剣アロンダイト』を両手に持ち、背に”アルゼイド子爵家”の家紋が刻み込まれた防具―――『ヴァルキリーガード』を装備しているラウラの意見に片手に『聖剣クラウソラス』を持ち、『アルバレア公爵家』の家紋が刻み込まれてあり、エメラルドグリーンを基調としたコート―――『ノーブルオブノーブル』を身に纏うユーシスは満足げな笑みを浮かべて頷いた。
「これほどの強い”風”を感じる武具をオレ達の為に創って頂き、ありがとうございました。」
嵐の力が宿りし十字槍――――『ラグナ・ホーク』を手に持つガイウスはウィルに会釈し
「わたくしのような未熟者にこれ程の名剣を用意して頂き、本当にありがとうございます。」
『聖剣アーリアル』を手に持つセレーネもガイウスに続くように会釈した。
「ハハ、みんな喜んでいるようで何よりだよ。みんなの笑顔を見ると作った甲斐はあったね。」
「――――それでは私達はこれで失礼しますね。」
「はい。本当にありがとうございました!」
そしてウィルとセラウィはその場から去った。
「さてと―――そろそろ俺の出番のようだな。」
ウィル達が去った後、別の扉からなんとカシウス准将が現れてリィン達に近づいてきた。
「貴方は……!」
「カシウス卿……!」
「ど、どうしてカシウスさんがこちらに?」
カシウス准将の登場にリィンとラウラは目を見開き、サラ教官は驚きの表情で尋ねた。
「フフ、リウイ陛下から依頼されてわざわざ来たんだよ。お前達に世界の広さを教えてやる為にな。」
「へ……」
「まさか……」
カシウス准将の発言を聞いたエリオットが呆け、ある事に気付いたプリネが目を見開いたその時、カシウス准将は膨大な闘気を纏って棒を振り回し、カシウス准将の闘気に応えるかのようにカシウス准将の周囲の空気は震え、地鳴りが鳴り始め
「――――全員でかかってこい。全員纏めて俺が相手してやろう。これが今回の”特別実習”とやらの総仕上げだ。」
カシウス准将は口元に笑みを浮かべて答えた!
「ええっ!?」
「と、”特別実習”の総仕上げって……」
「あのリベールの”英雄”と戦うなんて、無茶苦茶だ……」
カシウス准将の言葉を聞いたアリサは驚き、エリオットとマキアスは冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「フッ、これは驚いた。俺も今の話は初耳だ。」
「アハハ……リウイ陛下にしてやられましたね。」
「もう、お父様ったら……」
静かな笑みを浮かべたレーヴェの言葉にツーヤは苦笑しながら頷き、プリネは溜息を吐いた。
「あの~、カシウスさん。まさかとは思いますが全員でかかってこいの”全員”にはあたしやレーヴェも数に入っているんですか?」
一方サラ教官は大量の冷や汗をかきながらカシウス准将に尋ね
「あたりまえじゃないか。サラと手合わせをした事は一度も無い上、かの”剣帝”とも機会があれば一度手合わせをしたかったところだからちょうどいい。」
「フッ、それはこちらの台詞だ。―――”剣聖”カシウス・ブライト。まさかこんな形で手合わせをする事ができるとはな……」
笑顔で答えたカシウス准将の言葉にレーヴェは不敵な笑みを浮かべてカシウス准将を見つめた。
「昨日一日休んで元気がありあまっているじゃろ?有り余っている元気を今この場で発散すれば、ちょうどいいと思うぞ?」
「もう、リフィアったら……カシウス准将が相手だと、むしろ足りないくらいじゃない……」
口元に笑みを浮かべて言ったリフィアの言葉にエリゼは呆れ
「!という事は昨日が休みだった理由は……」
「カシウス准将との模擬戦に備えて英気を養う為だったんですか……」
「……騙された。こんなとんでもない不意打ちがあるなんて、卑怯すぎ。」
「アハハ……」
「まあまあ……」
リフィアの言葉からある事を察したガイウスは目を見開き、リィンは冷や汗をかいて苦笑し、フィーはジト目になり、エマは苦笑し、セレーネはフィーを諌め
「フフッ、リウイ陛下には感謝しなくてはな。絶対に敵わない相手とはわかっていますが、未熟ながら父上に代わり、アルゼイドの剣……とくとお見せします!」
「フッ、まさかかの”剣聖”と手合わせができるとはな……―――相手にとって不足は無い!」
ラウラとユーシスはそれぞれ不敵な笑みを浮かべてカシウス准将を見つめた。
「やれやれ……――――”Ⅶ組”一同、全身全霊を持ってカシウスさんに挑むわよ!」
「どれほど強大な相手でも勝機は必ずある。決して諦めるな!」
そしてサラ教官とレーヴェは号令をかけ
「はいっ!」
リィン達は二人の号令に力強く頷き
「―――見せてもらうぞ、特科クラス”Ⅶ組”の力を。」
カシウス准将は口元に笑みを浮かべて”Ⅶ組”の面々を見つめた。
今ここに!リベールの”英雄”にしてゼムリア大陸にその名を轟かせる”剣聖”カシウス・ブライトに挑む戦いが始まった…………!
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