英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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外伝~”盗獅子”との契約~
~ブレアード迷宮~
「フン、手間をかけさせおって。」
「フウ……何とか無事に終わりましたね。」
「まあ、ヴァレフォルさん自身本気で私達を排除しようとしなかったから、無事に終わったのでしょうね……」
敗北を認めたヴァレフォルを見たアムドシアスはプリネの身体に戻り、エマとプリネは安堵の表情をし
「先程の人馬一体の攻撃、見事だったぞ、ユーシス。」
「俺と俺が認めた愛馬の攻撃なのだから、あの程度できて当然だ。」
「ブルルル……」
ガイウスの感心の言葉をユーシスはアルバレア号と共に当然のように受け止め
「ぶっつけ本番だったけど、できたね。」
「うむ。まあ、エステル殿とヨシュア殿の連携にはまだまだ遠いだろうがな。」
フィーとラウラはハイタッチをして互いを称えあった。
「約束通り、宝石を渡して頂けますね?ヴァレフォルさん。」
「ええ。一度した約束を破らないのも怪盗の流儀よ。―――受け取りなさい。」
プリネに言われたヴァレフォルはプリネにプリネ達が探していた宝石を渡した。
「あ~あ。”神殺し”のセリカ達ともそれなりに修羅場を潜っていたこのワタシとあろう事が不覚を取るなんてね~。」
「え……」
「”神殺しセリカ”……確かその名前はミルスで教えてもらった……」
「―――かの”嵐の剣神”か。」
疲れた表情で答えたヴァレフォルの言葉を聞いたプリネは目を丸くし、ガイウスは呆け、ラウラは静かに呟き
「まさか”神殺し”セリカ・シルフィルの仲間か?」
レーヴェは意外そうな表情で尋ねた。
「ん~、微妙ね。セリカやシュリ達が任務の関係でミルフェに来た時に一時的に力を貸していただけだし。」
「シュリさんまで知っているんですか……」
ヴァレフォルの話を聞いたプリネは驚きの表情でヴァレフォルを見つめた。
「―――それより、その怪盗を名乗っている盗賊はどうするつもりだ?」
「捕まえるのか?」
その時ある事に疑問を思ったユーシスとラウラは尋ね
「そうですね……迷宮にはヴァレフォルさんのようなトレジャーハンターもいますので、見逃していいと思います。怪盗として活動していたヴァレフォルさんの過去の罪状も知りませんし、証明もできませんし……それに正直な所を言って、出来る事なら”魔神”とは敵対しない方がいいでしょうし。」
「……賛成。悔しいけど、さっきの戦いも本気じゃなかったっぽいし。」
「ああ。それに素直に約束を守っている所を見ると心根は悪い娘ではなさそうだしな。」
プリネの提案にフィーとガイウスはそれぞれ頷いた。
「ふふふっ、賢い選択ね♪……そう言えばそこの銀髪の男がさっき”異世界”とか口にしていたけど、もしかして貴女達、噂になっている異世界から来ているのかしら?今まで見た事のない魔術とかも使っていたし。」
「そ、それは……」
「……どこで異世界の事を知った?」
興味ありげな表情をしているヴァレフォルに見つめられたエマは答えを濁し、レーヴェは目を細めてヴァレフォルを見つめた。
「ちちちっ、この”盗獅子”ヴァレフォル様にかかれば、そのくらいの情報も簡単に手に入れているわ。…………―――決めたわ!ワタシはしばらく、貴女達について行く事にするわ♪」
「ええっ!?」
「意味不明。」
「……何が狙いだ。」
ヴァレフォルの提案を聞いたプリネは驚き、フィーはジト目になり、レーヴェは目を細めてヴァレフォルを睨んだ。
「機会があれば異世界にもこの”盗獅子”ヴァレフォル様の名を轟かせたいと思っていたのよ。」
「……我々の世界で盗賊行為をするのなら、賛同しかねない話だな。」
ヴァレフォルの説明を聞いたラウラは眉を顰めて答えた。
「何度も言っているようにワタシは”盗賊”じゃなくて”怪盗”よ。それに異世界を冒険するなんて、楽しそうだしね♪……まあ、そこまでワタシの事を疑うなら、ワタシの良さを教えてあげる為に一時的に”契約”してあげてもいいわよ?」
「ええっ!?け、”契約”……という事は使い魔になるんですか!?」
そしてヴァレフォルの申し出を聞いたプリネは驚き
「先に行っておくが俺は貴様のような盗賊はいらんぞ。」
「ム……ワタシも貴方のような生意気な男はこっちから願い下げよ。」
ユーシスの言葉を聞いたヴァレフォルはユーシスを睨んだ後プリネ達を見回した。
「それに”契約”するならやっぱり女の子の方がいいしね~、どの娘にしようかな~……っと。―――ふふっ、貴女に決めたわ♪」
「ええっ!?わ、私ですか……!?」
ヴァレフォルに指名されたエマは驚き
「何でプリネにしないの?プリネは他にも使い魔がいるよ?」
フィーは首を傾げて尋ねた。
「その娘も悪くないけど、さっきワタシと戦った一角の弓使いがなんか口うるさそうだし。」
(フン!何があって我の事を忘れたのか知らんが、貴様のようなやかましい娘は我も願い下げだ!)
ヴァレフォルの答えを聞いたアムドシアスは鼻を鳴らして呟いた。
「え、えっと……考え直した方がいいと思いますよ?ヴァレフォルさんのような強い方が私に協力して頂くなんて、恐れ多いですし……」
「ふふふっ、その殊勝な態度と言い、シュリを思い出させてくれるわね~♪えいっ♪」
「キャッ!?」
恐縮している様子のエマを見たヴァレフォルはエマに抱き付き
「くんくん……あぁ、とてもいいニオイだわ……ちょっとだけ味見……ペロッ、ぺちゅ……お?胸も大きいわね♪シュリもそれなりにあったけど、シュリとは比べ物にならないわよ♪」
「んんっ……首を舐めないで下さい……む、胸もやめて……ち、力が……」
ヴァレフォルに首を舐められ、胸を揉まれたエマは顔を赤らめ
「え、えっと……(というかシュリさんも被害にあったようね……)」
「変態だね。」
「”怪盗紳士”とは違った方向性の変態だな…………」
その様子を見守っていたプリネは困った表情をし、フィーはジト目になり、レーヴェは呆れた表情で見守り、他の者達は冷や汗をかいて見守っていた。
「ふぅ……ご馳走様。貴女、名前は?」
「えっと……エマ・ミルスティンですが……」
「エマね。それじゃあこれからよろしくね♪」
そしてヴァレフォルはエマの両手を握ってエマの魔力と同化してエマの身体に入った!
「…………………」
ヴァレフォルが自身の身体に入る様子を見ていたエマは固まり
「よかったな、委員長。」
「ふふっ、これ程の多くの異種族達が力を貸してくれるとは”Ⅶ組”は異種族と縁があるかもしれんな。」
「委員長なら、奴が悪事を働かないように見張ってくれるだろうから安心だな。」
ガイウスは祝福の言葉を贈り、ラウラは静かな笑みを浮かべ、ユーシスはからかいの表情でエマを見つめ
「ひ、他人事のように言わないで下さい!ううっ……どうしてこんな事に……」
ガイウス達の言葉を聞いたエマは疲れた表情で指摘した後肩を落とした。
「どんまい、委員長。」
「ア、アハハ……(エマさんには悪いですが、さすがに先程のヴァレフォルさんのエマさんに対する行動を見たら私も正直遠慮したかったから、助かったわ……)」
「やれやれ……ソロモンの魔神とは一癖のある者達ばかりなのか?」
エマの様子を見たフィーは同情し、プリネは苦笑し、レーヴェは呆れた表情で溜息を吐いた。
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