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高嶺の花

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第五章

「だって、僕なんかがね」
「告白しても受け入れてもらえない」
「そう思ってだったからな」
「緊張もしてて」
「不安だったんだよな」
「あれだけ凄い娘だから」
 ハンスから見てだ。
「本当に無理かもって思ってたから」
「それがな」
「逆にヒルダちゃんからそう言われた」
「それは確かにな」
「ハンスとしてはびっくりするよな」
「天と地がひっくり返る位にね」
 それこそというのだ。
「驚いたよ」
「自分が思っていたことをな」
「相手が言うとな」
「そりゃ確かにびっくりするな」
「俺もそうなるな」
「俺もだよ」
 友人達も口々に言う。
「御前が驚くのも当然だな」
「そのことはな」
「それでデートをしてね」
 そしてと言うのだった。
「お互い仲良くしてるけれど」
「俺言っただろ」
 ここでだ、マルティンは微笑んでだった。そのうえでハンスにこう言った。
「自分が高嶺の花って思っててもな」
「実は、なんだ」
「そうでもないんだよ」
「そうなんだね」
「そしてこれは言ってなかったけれどな」 
 マルティンはさらに言った。
「自分が思っていることを相手も思っている」
「そうしたこともあるんだ」
「そうなんだよ、世の中ってのはな」
「そういうものなんだ」
「ああ、だからな」
「ヒルダはだね」
「あの娘はあの娘でそう思ってたんだよ」
 こう言うのだった。
「ヒルダちゃんの方もな」
「高嶺の花って」
「そういうことだよ」
「僕なんかジャガイモだよ」
「それなら最高級のジャガイモだよ」
「それになるんだ」
「それこそ大富豪が自分の為だけに用意させた畑で作ったな」
「凄いジャガイモだね」 
 少なくとも普通のジャガイモでないことは確かだ。 
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