偶発的殺人
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第三章
「だから今回も受けるにしても」
「どうもですね」
「今回はおかしな事件ですね」
「事故と言うべきです」
「容疑者達がどう言っても」
「うん、無罪になるよ」
絶対にとだ、メイスンは確信して言った。
「それ以外には有り得ないね」
「では、ですね」
「今回の依頼は」
「確信を以てやっていくよ」
こう言ってだ、実際にだった。
メイスンは証拠、証言、検死結果を全て今回の事件の陪審員達に話した。すると彼等も口々に言うのだった。
「これはです」
「無実ですね」
「どう考えても」
「そうですね」
彼等もこう思うのだった。
「それでどうして」
「容疑者達は犯罪だと言うのか」
「訳がわかりません」
「彼等が撃った訳ではないのに」
「どうしてなのか」
首を傾げさせて言うのだった、そして。
検事も証拠等を全て裁判の場で出した、容疑者達は何も語らない。
メイスンは弁護士として全力を尽くしてだった。裁判において活躍し。
陪審員達はだ、全員がこう言った。
「無罪」
十二人全員がだ、これで裁判は終わった。
しかし裁判の後の話を聞いてだ、ドーバーは話をしたマクレガーに言った。
「自責の念か」
「それにかられてです」
「二人は教会に入ってか」
「奉仕者として暮らすとのことです」
「やっとわかった」
この状況でというのだ。
「彼等が何故自分達を殺人犯と言ったのか」
「自責の念ですね」
「確かに彼等は撃っていない」
このことは間違いないというのだ。
「誰がどう見てもな」
「しかしですね」
「彼等の銃でだ」
「被害者が死んでいますね」
「このことは事実だ、それでだ」
「彼等は自責の念を感じて」
「自首したのだ」
そして自分達を殺人犯と言ったというのだ。
「そうしたのだ」
「それで無罪となってもですね」
「罪を償う為にだ」
「教会に入ったのだ」
「罪の意識はある」
「人には」
「彼等はその意識に従ったのだ」
彼等の良心の中にあるそれにというのだ。
「そうしたのだ」
「そういうことですね」
「このことは仕方ない」
「我々にも弁護士にもですね」
「検事にも誰にもだ」
それこそというのだ。
「我々の仕事は事件の真実を明らかにすることだからな」
「こうしたことまでは」
「仕事ではない、罪の意識への贖罪はその人それぞれがすることだ」
まさにというのだ。
「後は彼等次第だ」
「そうしたことになりますね」
「このことは他の者から見れば不幸な事故だが」
「彼等から見ればですね」
「忌まわしい殺人事件だ」
「そうなったのですね」
「彼等はその罪の償いに入った」
そうなったというのである。
「後は彼等次第だ」
「そうなりますか」
「そういうことだな」
こう言ってだ、そのうえで。
ドーバーは瞑目してだ、マクレガーにあらためて言った。
「事故、事件も主観的だな」
「その人がどう思うか」
「それ次第ということだな」
こう言ってだ、彼は自分のコーヒーを飲んだ。その味は普段よりも苦く口の中に残って消えはしなかった。
偶発的殺人 完
2016・1・24
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