英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第97話
~帝都ミルス・郊外~
「―――来たか。」
リィン達が郊外のある場所に到着するとそこにはレーヴェとレーヴェの背後には数体の天馬と鷲獅子がいた。
「レオンハルト教官。後ろの生物達は一体……?」
レーヴェの姿を見たガイウスは不思議そうな表情でレーヴェの背後にいる幻獣たちを見つめ
「嘘!?あの翼が生えている白馬って……!」
「まさか……伝承上でしか存在していない天馬か!?」
「まあ……!まさかペガサスをこの目で見る事ができるなんて、夢みたいです!」
ペガサスに気付いたアリサとマキアスは信じられない表情をし、セレーネははしゃぎ
「ペガサスの傍にいる鷲のような顔と獅子のような身体の獣はもしかして伝承にある鷲獅子でしょうか……?」
「……まさか。”移動手段”というのはこいつらに乗って行くという事か?」
エマは戸惑いの表情でグリフィン達を見つめ、何かを察したユーシスは驚きの表情で尋ねた。
「ふふっ、その通り♪見た目通り、その子達は空を飛べるから、空を飛んで移動するのよ♪」
「お前達が向かう場所はミルスからかなりの距離がある為、明日転移門でレスペレント地方の中心部に当たる都市―――”商人の都レスペレント”にペガサス達と共に移動した後、それぞれ騎乗して実習地に向かってもらう。」
ユーシスの質問にサラ教官とレーヴェはそれぞれ答えた。
「え……転移門があるなら、直接行けばいいんじゃないんですか?確か各地に繋がっている転移門があるはずですよね?」
二人の話を聞いてある事を疑問に思ったリィンは尋ねた。
「フフ、せっかく異世界に来たのですから異世界独特の移動方法も楽しんでもらおうと思って、実習地にはその子達で向かう事にしたんです。」
「ちなみにリウイ陛下の提案だそうです。これも異世界でしか味わえない経験の一つだと。」
「ええっ!?リウイ陛下が……!?」
「フフ、まさか伝承上でしか存在しない幻獣に乗って大空を駆ける事ができるとは……陛下に感謝しないとな。」
プリネとツーヤの説明を聞いたエリオットは驚き、ラウラは静かな笑みを浮かべた。
「ちなみにペガサスは皆さんもご存知の伝承通り、その背に乙女しか乗せませんので、女性の方々はペガサス、男性の方々はグリフィンに決定していますのでご了承ください。」
「そうなんだ……フフ、男子は残念だったわね。」
「少し残念だな……馬に乗って大空を駆けるとはどのようなものなのか気になっていたのだがな……」
「チッ、馬の分際で乗り手を選ぶとは生意気な。」
「ユ、ユーシス。」
「相手は仮にも伝承上の存在だぞ……」
エリゼの説明を聞いたアリサは目を丸くした後微笑みながら男子達を見つめ、ガイウスは若干残念そうな表情をし、ユーシスは舌打ちをしてペガサスたちを睨み、ユーシスの言葉を聞いたリィンは冷や汗をかき、マキアスは呆れた。
「……見た感じ馬に乗った事がある人達なら操れるかもしれないけど、わたしは経験ないよ?」
「あ、私もです。」
「ぼ、僕も……」
フィーの疑問を聞いたエマとエリオットもそれぞれ申し出
「………お前は平民なのに乗馬の経験はあるのか?」
マキアスが申し出ていない事に気付いたユーシスは意外そうな表情で尋ね
「”平民なのに”は余計だ。父さんに乗馬クラブに連れていってもらって、そこで練習した事はあるからそちら程ではないが一応経験はある。」
ユーシスの質問に眉を顰めたマキアスはすぐに気を取り直して答えた。
「セレーネも乗馬経験は確かあるよね?」
「はい。乗馬も王族としてのたしなみでしたし。」
「ハハ……さすがだな。」
ツーヤに尋ねられて答えたセレーネの話を聞いたリィンは苦笑した。
「乗馬経験のない者は経験のある者の後ろに乗せてもらえ。」
「それじゃあ今から夕方までちゃんと乗りこなせるようにしっかりと練習しなさい。この後の予定は夕食を食べて明日に備えて寝るだけだから、たっぷりと練習していいわよ。」
「え……じゃあ前日に来た一番の理由はペガサスやグリフィンを乗りこなす事ですか?」
レーヴェとサラ教官の説明を聞いてある事に気付いたリィンは尋ねた。
「ああ。基本乗馬と変わらないが、さすがに空を飛ぶことになるのだから勝手が違うからな。練習は必要だ。」
「とは言っても乗馬経験があったら、1時間くらいで慣れるからそんなに心配いらないわよ。要は走る場所が空に変わっただけなんだから。」
「いやいやいやっ!?走る場所が空になったら全然違いますよ!」
「万が一落馬して空からまっさかさまになったら、冗談抜きで死ぬんですけど?」
サラ教官の言葉にマキアスは慌てた様子で反応し、アリサはジト目でサラ教官を見つめ
「アハハ……大丈夫ですよ。その子達はちゃんと訓練してありますから普通の馬に乗る感覚で乗れば、問題ないですよ。」
プリネは苦笑しながら答えた。
「ま、そういう訳だからせいぜい頑張りなさい~。」
そしてサラ教官はその場から去り始め
「ちょ、ちょっとサラ教官!?」
「まさかケルディックのように酒場で酒を楽しむつもりですか?」
去り始めたサラ教官を見たエリオットは慌て、ラウラは呆れた表情で尋ね
「ふふっ、あんた達の想像に任せるわ♪あたしが教えなくても経験豊富なプリネ達もいるんだから、大丈夫だって~。」
サラ教官は片手をヒラヒラと振りながらその場から去って行き
「やっぱりこうなったね。」
「やれやれ。あの調子で教官を続けて今までよく問題が起きなかったものだ。」
「ハア……あの放任癖は何とかならないのか?」
その様子を見ていたフィーやレーヴェ、マキアスは呆れた。
「アハハ……―――では私とツーヤ、リィンさんとレーヴェが手分けして皆さんにペガサスやグリフィンの乗り方を教えますね。エリゼさんはどうしますか?」
「申し訳ございませんが私はこの後皆様の食事の用意をしないといけませんので、これで失礼いたします。」
「え……じゃあ今晩の夕食はエリゼが?」
プリネの言葉に答えたエリゼの話を聞いてある事に気付いたリィンは目を丸くして尋ね
「はい。今晩の夕食は僭越ながら私が作ることになっているんです。」
「フッ、以前寮で馳走になった料理を考えると期待できるな。」
「うむ、何から何まで世話になってすまないな。」
エリゼの説明を聞いたユーシスは口元に笑みを浮かべ、ラウラは頷いてエリゼを見つめ
「いえ、これも専属侍女長としての務めですので。―――それでは失礼します。」
エリゼは答えた後会釈をしてその場から去って行った。その後リィン達はそれぞれ練習した結果、サラ教官の宣言通り1時間ほどすると乗馬経験のある者達は大空へ駆ける事にも慣れ始め、プリネの提案でA班、B班に分かれて帝都を練習代わりに外回りする事になり、リィン達A班もそれぞれが騎乗する幻獣に乗って空を飛んでいた。
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