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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第96話

~マルーダ城・会議室~



「―――それでは次にこの世界―――ディル・リフィーナにおける神々を崇める宗教団体の事に関しての説明をしますね。」

「よろしく頼む。」

「私達の世界で知られているのは”混沌の女神(アーライナ)”と”癒しの女神(イーリュン)”だけど他にもあるの?」

プリネの言葉を聞いたガイウスは頷き、アリサは尋ねた。



「ああ。その二つの宗教はほんの一部だ。」

アリサの言葉にリィンは頷き

「リィンさんの言う通りこの世界には多くの神々がいて、同時に多くの宗教団体がいるんです。まず神々を崇める宗教は”光陣営”と”闇陣営”の二つに分かれているんです。」

「”光陣営”と”闇陣営”だと……?」

ツーヤの説明を聞いたユーシスは眉を顰め

「このディル・リフィーナにおける”光”に属する神々と”闇”に属する神々は互いに対立している為、その関係でそれぞれの神々を崇める宗教、その宗教と深く繋がっている国々も完全に敵対状態なのです。時には戦争も起こったりする事もあるのです。」

「”宗教戦争”か……」

「我々の世界では”空の女神”しかいなかったから、そう言った話は聞かなかったが……」

「ま、教えとかも違うんだから当然争う事もあるでしょうね。」

エリゼの説明を聞いたマキアスとラウラは考え込み、サラ教官は冷静な様子で呟き

「要するに”西風の旅団”と”赤い星座”の対立みたいなものだね。」

「フィ、フィーちゃん。それはちょっと違う気がしますよ……」

フィーの言葉を聞いたエマは冷や汗をかいた。



「まずは光の神々についてですが……一番有名なのは”軍神”マーズテリア教団です。」

「”軍神(マーズテリア)”とはその名の通り、勇猛な戦神で、その宗教に属する騎士達は精鋭揃いで国家間の争いに介入できるほどの軍事力を持っているんです。」

「ええっ!?しゅ、宗教が国家間の争いに介入できるの!?」

「まさに”軍神”の名を持つ宗教に相応しい宗教団体と言った所か……」

プリネとツーヤの説明を聞いたエリオットは驚き、ラウラは真剣な表情で呟いた。



「基本光に属する神を崇める宗教団体は天使やエルフ族を除いた異種族―――――特に”闇夜の眷属”を忌み嫌い、その事からメンフィルは何度もマーズテリア教団と剣を交えています。」

「……という事はメンフィルは闇陣営の神を崇めているのか?」

プリネの説明を聞いてある事が気になったガイウスは尋ねた。

「いえ、メンフィルは”光と闇の共存”を謳う国。光の陣営の宗教団体も受け入れていますが……”相手が誰であろうと決して傷つけず、傷ついた者には誰であろうと癒しを奉げる事”を教義としている”癒しの女神(イーリュン)”と”交易の神”である”セーナル”以外の光陣営の宗教は領内で活動をしていません。」

「―――その件ですが……”風の女神(リィ・バルナシア)”教団がメンフィルに接触してきました。」

「え……”風の女神(リィ・バルナシア)”が?そんな話は初耳ですが……」

ツーヤの説明を捕捉したエリゼの話を聞いたプリネは目を丸くしてエリゼを見つめた。



「えっと……何なの、そのリ、リィ何とかって言う宗教は?」

「先程の話にあった光陣営に属する宗教なのか?」

話を聞いていたエリオットは戸惑い、マキアスは尋ねた。

「はい。”リィ・バルナシア”―――――同じ光陣営に属する神―――”嵐の神バリハルト”の妹神に当たる”風の女神”を崇める宗教です。」

「”嵐の神”に”風の女神”…………」

プリネの説明を聞いたガイウスは呆け

「――それでエリゼさん。今の話はどういう事ですか?”風の女神(リィ・バルナシア)”がメンフィルに接触して来た等私も初耳ですよ?」

プリネは真剣な表情でエリゼを見つめた。



「プリネ姫が知らなくても無理はありません。”風の女神(リィ・バルナシア)”教団に属する天使モナルカ様が”風の女神(リィ・バルナシア)”の使いと名乗って2日前にマルーダ城に現れたんです。――――。”風の女神(リィ・バルナシア)”教はメンフィル帝国と友好を結びたいと。」

「ええっ!?」

「まあ……!素敵なお話ですね……!」

「何故またそのような唐突に……」

エリゼの説明を聞いたツーヤは驚き、セレーネは嬉しそうな表情をし、プリネは戸惑いの表情で尋ねた。



「モナルカ様のお話では光と闇が共存するメンフィルの在り方を見守ってきた”風の女神(リィ・バルナシア)”自身が考えを変えたとか。リウイ陛下がお忙しいのはその事も関係しています。」

「なるほど……”風の女神(リィ・バルナシア)”の考えはわからないけど、とにかく光と闇の共存を目指すメンフィルとすれば嬉しい申し出ですね。もしかしたら皆さんの世界にも”風の女神(リィ・バルナシア)”教が進出するかもしれませんね。」

(へえ?一体どういう風の吹き回しかしらね?兄神である”嵐の(バリハルト)”は闇夜の眷属達に対して排他的な考えなのに。)

エリゼの説明を聞いて微笑んだ後リィン達を見回して苦笑し、ベルフェゴールは目を丸くして首を傾げていた。

「それって、新しい宗教がゼムリア大陸にでてくるって事?」

「そうなったら、世界中を騒がす事になるだろうな……」

「………………そうね。一番の問題は七耀教会がどんな反応を見せるかだけど。」

プリネの話を聞いたフィーは首を傾げ、リィンは呆け、サラ教官は真剣な表情で頷いた後呟いた。



「へ……七耀教会が?」

「どういう事だろうか?」

サラ教官の言葉が気になったアリサは呆け、ラウラは不思議そうな表情で尋ねた。

「―――考えても御覧なさいよ。宗教は信者達や国による”寄付金”で成り立っているのよ?ただでさえ異世界の宗教が進出して来た事で信者の数を減らしているのに、そこでまた新たな宗教が出てきたらどうなると思う?」

「あ……!」

「なるほどな。要は”寄付金”が減る事だな。」

サラ教官に答えを促されて何かに気付いたエマは声を上げ、ユーシスは呆れた表情で答えを口にした。



「……寄付金が減ると不味いのか?」

意味があまりわかっていないガイウスは不思議そうな表情でリィン達を見回して尋ね

「まあ、七耀教会も教会の維持は勿論福祉施設の維持などの関係で物入りだからな。信者達による寄付金が減る事は正直嫌だろうな。」

ガイウスの疑問にマキアスは静かな表情で推測した。

「確かに異世界の宗教が現れるまで七耀教会が信者を独占状態だったから、これ以上宗教が増える事はあまり歓迎したくない事でしょうね。」

「うーん、僕達がいつもお世話になっている七耀教会がお金の事を気にしているなんて、正直ショックだけど……」

「神父の方達にも生活があるからな。聖職者でありながら金の心配をするなと言う方がむしろ酷というものだな……」

複雑そうな表情で言ったアリサの言葉にラウラは不安そうな表情をしているエリオットと共に答え

(後は”星杯騎士団”がどういう反応をするか、ね。)

サラ教官は真剣な表情で考え込んでいた。



「―――それと実際”風の女神(リィ・バナルシア)”教団がゼムリア大陸に進出しましたら、”風の女神(リィ・バナルシア)”を崇める騎士団まで進出してくるかもしれませんね。」

「”騎士団”だと?」

プリネの説明を聞いたラウラは眉を顰めて尋ねた。

「ええ、これはほぼ全ての宗教に言える事なんですがそれぞれの神を崇める総本山には”神官戦士”達によって結成されている”騎士団”が存在し、世界各地に派遣されているんです。」

「”神官戦士”ですか……」

「………そうなると国家間で戦争が起こった際、”力づく”で介入して来る可能性もあるという事か……」

ツーヤの説明を聞いたエマは真剣な表情になり、ユーシスは考え込んだ。



「あれ?でも”混沌の女神(アーライナ)”も”癒しの女神(イーリュン)”もそんな存在は聞いた事がないよ?」

その時ある事に気付いたエリオットは首を傾げて尋ねた。

「戦いを否定する”癒しの女神(イーリュン)”はそのような存在は最初からいませんし、”混沌の女神(アーライナ)”はゼムリア大陸全土の”混沌の女神(アーライナ)”教の責任者であるお母様が”混沌の女神(アーライナ)”教に属する神官戦士達の”アーライナ騎士団”の進出を断っているんです。悪戯に七耀教会や他の国家を刺激する訳にもいきませんので。」

「そ、そうだったんだ……」

プリネの口から出た予想外の話にアリサは目を丸くした。



「―――少しいいかしら?」

「ベルフェゴール?どうしたんだ?」

「今の話を聞いて少し気になっていてね……他の光陣営の神々を崇めている団体―――特に”軍神(マーズテリア)”の連中はそんな裏切り行為にどんな反応をしているのかしら?軍神(マーズテリア)の連中は闇夜の眷属(私達)や闇陣営に属している連中を毛嫌いして、機会あれば滅ぼそうとする連中よ。」

「ええっ!?」

「そ、それ程までの緊張状態に陥っているんですか……?」

ベルフェゴールの疑問を聞いたエリオットは驚き、エマは信じられない表情でプリネ達を見つめた。



「はい。ベルフェゴール様の疑問についてですが……モナルカ様のお話では”軍神(マーズテリア)”教の過去の強引なやり方は他の光陣営の神々を崇めている団体も眉を顰めており、距離を取っているそうです。」

「へえ?どうやら長年のツケが来たみたいね?――邪魔したわね。」

エリゼの説明を聞いたベルフェゴールは興味ありげな表情をした後リィンの身体に戻った。

「強引なやり方とはどういう事なのだ?」

その時ある事が気になったラウラはプリネ達に質問した。



「―――先程も説明したように”軍神(マーズテリア)”教は国家ともまともに戦えるほどの戦力を持ち、加えて独自の判断で動く宗教団体。過去紛争地帯に介入し、紛争地帯を”神殿統治領”としてマーズテリア神殿が治める事もあり、その結果”軍神(マーズテリア)教”は他の宗教団体と比べると比較できない程の勢力があるんです。」

「そ、それって……」

「―――”鉄血宰相”のやり方と同じだな。」

プリネの説明を聞いて何かを察したエリオットは不安そうな表情をし、ユーシスは目を細め

「なるほどね。確かに他の宗教団体からしたら面白くない話ね。で、その結果その軍神(マーズテリア)教とやらは孤立したようね。今の話を聞くとエレボニア帝国も他人事ではないわね……」

「そだね。もしエレボニアに未曾有の危機が訪れたらどの国や団体も助けてくれないんじゃない?宿敵のカルバードは勿論、”百日戦役”のせいで多くの被害を被ったリベールも可能性は低いし。”百日戦役”の時に仲裁した遊撃士協会は”鉄血宰相”が擁する”情報局”によって多くの支部が撤退させられたから、良い感情は持っていないだろうし。」

「………………」

「それは…………」

「フン、洒落になっていないな。」

サラ教官の話に頷いて推測したフィーの言葉を聞いたマキアスは複雑そうな表情をし、ラウラは真剣な表情になり、ユーシスは鼻を鳴らして呟いた。

「―――話を戻します。次に闇陣営の神々についてですが……皆さんもご存知の通り、”混沌の女神(アーライナ)”も闇陣営に属する女神で、メンフィル領内にも多くの教会があります。そしてそれとは別に他にもメンフィル領内に多くの教会がある宗教団体があります。―――その宗教団体が崇める神とは”暗黒の太陽神(ヴァスタール)”。」

「ヴァスタールは別名”暗黒王”の名を持つ”暗黒の太陽神”です。」

「”暗黒王”に”暗黒の太陽神”……」

「何だか名前からして少し怖いですよね……?」

プリネとツーヤの説明を聞いたガイウスは呆けた表情で呟き、セレーネは不安そうな表情になり

「……ちなみにその宗教はどんな教えなのですか?」

真剣な表情で黙り込んでいたエマは尋ねた。



「”闇勢力としての秩序を成立させる”が本来の教えなのですが……盗賊や山賊が自分達の行動を正当化する為にも崇められ、本来の教えとは若干外れている事例も多く、また規則や制限も緩い為、魔術の追求のためだけに入信する魔術師も多いそうです。」

「なっ!?それは要するに犯罪行為を認めるって事じゃないか!」

「……犯罪行為を教義で正当化している事に、そのヴァスタールとやらを崇めている宗教団体は何の処罰も降さないのか?」

エリゼの説明を聞いたマキアスは信じられない表情で声を上げ、ラウラは眉を顰めて尋ねた。



「―――先程も説明したように”暗黒の太陽神(ヴァスタール)”教は規則や制限が緩やかで、例え犯罪行為を正当化する為に教義を使われても処罰等しないんです。これに関しては世界に”混沌”を望む”混沌の女神(アーライナ)”教も同じです。」

「闇陣営の神々を崇める宗教団体は光陣営の神々を崇める宗教団体と違って、全体的に規則や制限が緩やかである事が特徴的なんです。勿論闇勢力による国家などは教義に忠実ですから、全ての信者が犯罪者と言う訳ではないんです。」

「―――要するに犯罪者も受け入れる宗教団体って事ね。名前の通りまさに”闇”の宗教団体ね。」

プリネとツーヤの説明を聞いたサラ教官は頷いた後真剣な表情でプリネ達を見つめた。

「そしてメンフィルは”光”と”闇”の”共存”を謳う国……」

「今の話を聞けば並大抵の事ではできんな。下手をすれば両陣営を敵に回す行為だしな。」

「メンフィルが”大陸最強”と呼ばれる理由はそれもあるんだろうね。」

ガイウスは考え込み、ユーシスが呟いた言葉に続くようにフィーは静かな表情で答えた。



「最後にこの世界―――ディル・リフィーナにおいて戦闘する際の注意を説明します。」

「?一体どういう事?」

エリゼの話が気になったアリサは首を傾げて尋ね

「――あ。そう言えばそうだったな……」

「リィンはエリゼちゃんが知っている言葉の意味を知っているの?」

ある事に気付いたリィンの様子を見たエリオットは尋ねた。



「ああ。この世界では俺達が住んでいるゼムリア大陸で言う”上位属性”――――時・空・幻属性が有効になるんだ。」

「ええっ!?それってもしかして……!」

「上位属性アーツにも弱点や抵抗があるという訳か。」

「……そう言えば、この世界に来てから旧校舎やリザイラの”領域”、それにノルドの地にてテロリスト達を追い詰めた遺跡で感じていた今までとは異なる”風”をずっと感じてきたな……」

「………………」

リィンの説明を聞いてある事を思い出したアリサは驚き、ユーシスは冷静に呟き、ガイウスは考え込み、エマは真剣な表情で黙り込んでいた。



「それと異世界での戦闘に必ず関係してくる”属性”はゼムリアの時の”属性”と違って、抵抗や弱点も違うから少々厄介よ?」

「?どういう事、サラ。」

サラ教官の言葉が気になったフィーは首を傾げて尋ね

「今、その属性に関する事の資料をお配りします。」

エリゼはリィン達にディル・リフィーナにおける属性の弱点、抵抗が書いてある資料を配った。



「今まで聞いた事の無い属性ばかりだな……」

「”火炎”は火属性、”冷却”は水属性、”電撃”は風属性、”地脈”は地属性だと推測できるのですが……」

資料を読んでいたマキアスは不思議そうな表情をし、エマは戸惑いの表情で呟き

「言葉からして”暗黒”は闇、”神聖”は光を想像できるが……まさか時属性と空属性の事なのか?」

考え込んでいたユーシスはプリネ達を見つめて尋ねた。



「はい。”暗黒”は時属性。”神聖”は空属性です。」

「ちなみに幻属性はこの資料だと何の属性になるのだ?」

ユーシスの質問にプリネは頷き、ラウラはユーシスに続くように尋ねた。

「幻属性は”万能”属性ですね。」

「えっと……それじゃあこの世界にいる間は幻属性――――”万能属性”を主体に攻めた方がよろしいのでしょうか?サラ教官に弱点がわからない敵に関しては万能性がある上位属性で攻めた方がいいと習いましたし。」

「良い所に目を付けたわね。でも残念ながら、その万能属性に抵抗を持っている属性もいるわよ?」

ツーヤの答えを聞いて推測したセレーネの言葉に感心したサラ教官はリィン達を見回した。



「―――”不死属性”と”霊体属性”の事ですね?」

「”不死属性”と”霊体属性”?」

「先程もらった表には書いていないが……」

ツーヤの言葉を聞いたエリオットは首を傾げ、ガイウスは戸惑った。



「――――不死属性と霊体属性は攻撃属性にはなく、魔物独特の属性だから書いていないのです。」

「不死属性と霊体属性を持つ魔物とはこの世に未練を持つ哀れなる存在――――つまり皆様にわかりやすく説明すると幽霊やゾンビです。」

「ええっ!?ゆ、ゆゆゆゆゆ、幽霊にゾンビって……!?」

「そ、そそそそそ、そんな非常識な存在までいるのか!?」

プリネとエリゼの説明を聞いたアリサとマキアスは表情を青褪めさせて声を上げ

「フン、今更驚く事もあるまい。神や天使、悪魔が存在しているのだから、幽霊やゾンビがいても何らおかしくはあるまい。」

二人の様子を見たユーシスは鼻を鳴らした後冷静な様子で答えた。



「ゆ、幽霊にゾンビって……僕達が戦って勝てる相手なの……?」

「―――そう言った系統の”魔物”は伝承では聖なるものに弱いですが……もしかして神聖属性―――空属性が弱点なのですか?」

エリオットは大量の冷や汗をかきながら表情を引き攣らせ、エマは真剣な表情で尋ねた。

「ああ。後は火炎属性―――火属性にも弱いな。ただし、霊体属性は他の属性持ちの魔物と比べると最も厄介な相手で物理攻撃はほとんど通じないんだ。」

「霊体属性の魔物はその名の通り”霊体”ですから、属性付与の加護もない通常の武器での攻撃は一切効きません。」

「ふむ……そうなると私にとっては相性が最悪の相手になるな……」

「物理を通さないって事は銃も効かないの?」

リィンとエリゼの説明を聞いたラウラは真剣な表情で考え込み、フィーは尋ねた。



「基本通じないけど、戦技(クラフト)に関しては効果は薄いけどダメージは与えられたわ。多分、あたしの予想だと闘気を纏った攻撃に関しては効くと思うけど……」

「ええ。闘気を纏った攻撃に関しては”万能属性”になるので、僅かにですが攻撃は通ります。」

「勿論、魔導杖(オーバルスタッフ)による通常攻撃も効果がありますよ。魔導杖による通常攻撃は魔法(アーツ)に分類されますから。」

サラ教官に尋ねられたプリネは答え、ツーヤが続けて説明を捕捉し

「じゃあ、僕と委員長の通常攻撃は通じるんだ……」

「……それとこの世界にいる間はいざ出会った時に空属性か火属性アーツをいつでも放てるようにクオーツを変えて置く必要がありますね……」

「わたくしは光の魔法は得意としますから、その時になればわたくしの出番ですね!」

「私もプリネのお蔭で光と炎の魔術を使えるから……いざ現れた時は大丈夫ね!」

ツーヤの説明を聞いたエリオットは目を丸くし、エマは静かな表情で呟き、セレーネは力強く頷き、アリサは自分に言い聞かせるように呟いた。



「後は聖なる加護を受けた武器―――例えば”聖剣”等であれば、霊体系の魔物にとって弱点になります。」

「”聖剣”……」

「そういった聖なる類の武器は伝承などでも出てくるが……」

「その言い方からするとまさか異世界では”聖剣”すらも簡単に手に入るのか?」

プリネの説明を聞いたガイウスは呆け、ラウラは考え込み、ユーシスは呆れた表情で尋ねた。

「はい。商人の方々も独自のルートで大量に手に入れていますから販売している店もありますし、光陣営の神々を崇めている教会でも販売しています。」

「で、伝説の存在の”聖剣”が普通に売っているなんて……」

「ちょっとショックですね……」

「一体どうやって量産しているのかしら?」

ツーヤの話を聞いたエリオットとセレーネは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、アリサは苦笑しながら呟いたがある事に気付いた。



「あら?買い物で思い出したけど……よく考えたら異世界でミラが使えるのかしら??」

「た、確かに言われてみれば……」

「異世界でゼムリア大陸の通貨が使える方がおかしいよな……」

「となると我々は一文無しになるな。」

「こ、困りましたね……」

「セピスが換金できるみたいに、ミラを換金とかできないの?」

アリサの疑問を聞いたエリオットとマキアスは冷や汗をかき、ラウラは戸惑いの表情になり、エマは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、フィーは尋ねた。

「―――その点はご安心下さい。レスペレント、アヴァタール地方で使われている通貨―――”ルドラ”に換金しますので、皆様が持っているミラと今この場で交換できるように用意してあります。」

「よ、よかった~。」

「金がないと、色々と不都合があるからな。」

「用意がいいな。さすがは皇族の専属侍女長と言った所か。」

エリゼの話を聞いたエリオットは安堵の表情をし、ガイウスは静かに頷き、ユーシスは感心した様子でエリゼを見つめた。そしてリィン達はエリゼに”ミラ”を”ルドラ”に交換してもらった。



「―――それでは世界情勢等の説明も終わりましたので、そろそろ行きましょうか。」

「へ……行くってどこにだ?」

エリゼの言葉を聞いてプリネとツーヤを除いたそれぞれが首を傾げて不思議そうな表情をしている中、リィンが代表して尋ね

「フフ、そんなの勿論”移動手段”の所に決まっているでしょう?」

リィン達の様子を面白そうに見ていたサラ教官はウインクをした。



その後リィン達はエリゼの案内で郊外に出た。 
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