英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第83話
マーテル公園に到着したリィン達がクリスタルガーデンにかけつける少し前――――クリスタルガーデン内には大穴が空き、レーグニッツ知事は負傷して地面に膝をつき、アルフィン皇女とエリスは魔獣に囲まれ、テロリスト達に銃をつきつけられていた。
~クリスタルガーデン~
「う、あ……」
突然の出来事にパトリックはどうすればいいのかわからず、ただ恐怖の表情で周囲を見回し
「フフ……御機嫌よう、知事閣下。招待されぬ身での訪問、どうか許していただきたい。」
ギデオンは不敵な笑みを浮かべてレーグニッツ知事を見下ろしていた。
「クッ……君達は……」
「正直、貴方にそこまでの恨みは無いのだが……”あの男”に協力している時点で同罪と思っていただこう。」
「やはりそれが狙いか……――――殿下は関係ないだろう!二人を解放したまえ!」
ギデオンの説明を聞いたレーグニッツ知事は唇を噛みしめた後ギデオンを睨んで叫んだ。
「知事閣下……」
「……………………」
レーグニッツ知事をアルフィン皇女は心配そうな表情で見つめ、エリスは目を伏せて黙り込んでいた。
「クク、残念だがそれは応じられぬ相談だ。こちらのお二方には君達の陣営の致命的な失点になっていただく……命まで奪うつもりはないがね。」
「…………っ…………」
「………………」
ギデオンの言葉を聞いたアルフィン皇女とエリスがギデオンを睨んだその時!
「エリス―――――ッ!!」
リィン達が駆け付けて来た!
「兄様……!?」
「リィンさんたち……!」
「き、君達は……!」
「来てくれたのか……!」
リィン達の登場にエリスとアルフィン皇女は明るい表情をし、パトリックは驚き、レーグニッツ知事は安堵の表情をした。
「父さん、大丈夫か……!?」
「トールズ士官学院……ノルドでの仕込みに続いてまたもや現れたか。だが、今回ばかりは邪魔されるわけにはいかん……!」
そしてギデオンが懐から取り出した笛を吹くと魔獣達がリィン達に近づいてきた!
「……!」
「魔獣を……操っているのか!?」
「そ、それで外の魔獣も……」
「一体どうやって魔物達を……」
その様子を見たフィーとラウラは厳しい表情をし、エリオットは真剣な表情でギデオンを睨み、セレーネは信じられない表情をし
「人形兵器までいるという事は……まさか、あなた達の背後には”身喰らう蛇”がいるんですか!?」
ツーヤは厳しい表情でギデオンを睨んで叫んだ。
「兄様っ……!」
「皆さん……!」
そしてテロリスト達はエリスとアルフィン皇女に銃をつきつけてどこかへと連れて行き
「エリス、皇女殿下……!」
「貴様ら……!」
「フフ、それでは我々は一足先に失礼させてもらおう。―――お前達!ここにいる全員を喰い殺せ!」
ギデオンは魔獣達に指示をした後テロリスト達の後を追って行った。
「くっ……負けないよっ!」
「―――大型魔獣2体。戦闘パターンは分析済み。」
「Ⅶ組A班、全力で撃破する!」
「おおっ!」
そしてリィン達は戦闘を開始し、協力して魔獣達を撃破し、そしてギデオン達が向かった大穴に急行して調べた。
「くっ……!」
「時間が惜しい……!追いかけるとしよう!」
テロリスト達が既に遠くへと去った事にリィンは悔しがり、ラウラは真剣な表情で言い
「?はい、ツーヤですが……―――ファーミシルス大将軍!状況を報告します!…………」
ARCUSとは別に持っている通信器の通信の音に気付いたツーヤは通信相手に現状を伝えていた。
「父さん!血が出てるじゃないか!」
「掠り傷だ……問題ない。それより……お前も殿下達を……!」
「くっ……わかった……!」
レーグニッツ知事の言葉にマキアスが唇を噛みしめて頷いたその時パトリックがかけつけてきた。
「ま、待ちたまえ……!僕も助太刀させてもらうぞ!」
「パトリック……いや、あんたにはできればここを守って欲しい。」
「まだ外には大型魔獣や人形兵器もいるし、知事さんも怪我してるからね。」
「だ、だが……」
リィンとエリオットの頼みにパトリックは判断に迷ったが
「僕からも頼む……!君の腕だったら安心だ!」
「くっ……引き受ければいいんだろう!」
マキアスの言葉を聞き、悔しそうな表情で頷いた。
「決まりだね。」
「よし……行くぞ!」
「知事閣下、鉄道憲兵隊への連絡をお願いします……!」
「ああ……任せたまえ……!」
「セレーネは知事閣下を含めたクリスタルガーデン内にいる負傷者達の傷を癒してくれ!」
「はい!どうかお気をつけて!」
そしてリィン達はセレーネを残して大穴の中に飛び込み、テロリスト達が残した足跡を追い始めた。
~ヘイムダル国際空港~
一方その頃、空港ではメンフィル帝国のVIP達の護衛に派遣されたバルヘイム宮の近衛兵達が魔獣や人形兵器達に苦戦している中、メンフィル兵達は次々と迅速に戦闘配置についた。
「大将軍!右翼の部隊、戦闘配置完了しました!」
「同じく左翼の部隊も、戦闘配置完了です!」
「わかったわ。―――総員!まずは空港内の魔獣並びに人形兵器達を殲滅する!今こそマーシルン皇家の守護者たる親衛隊の底力、惰弱なエレボニア近衛兵達に見せてやれ!」
親衛隊員から報告を受けていた背中に3対の翼を持つ上級魔族である”飛天魔族”にして、メンフィル帝国の”大将軍”の位についているファーミシルスは頷いた後号令をかけ
「オォォォォオオオオオオオ―――――――ッ!!」
ファーミシルスの号令によってそれぞれの武器を掲げて叫んだメンフィル兵達は魔獣や人形兵器達を圧倒していた!
「うふふ、それにしてもエレボニア帝国って、こんなにも弱いのかし……らっ!!」
「キャハッ♪あんな雑魚共を護衛によこすなんて、エレボニアはエヴリーヌ達を舐めているのか……なぁっ!?」
「フン、近衛兵でこの練度とは……所詮はプライドだけの屑共……かっ!!」
レンとエヴリーヌ、レーヴェは兵士達に混じって次々と魔獣や人形兵器達を撃破し
「フハハハハハッ!そんな雑魚共で余達に勝とうなど、1億年はやーい!!」
「魔術師タイプの癖にあんまり前に出ないでよ!戦うならせめて後方からの援護に徹しなさいよ!秘技―――裏疾風!!」
リフィアは高笑いをしながら魔術で次々と魔獣や人形兵器達を葬り、エリスはリフィアに文句を言いながらも襲い掛かってくる魔獣や人形兵器達を次々と切り捨てていた。
「――ツーヤ!私よ!帝都内の状況は一体どうなっているのかしら!?………………そう、わかったわ。」
「―――状況はどうなっている。」
ファーミシルスが通信を終えたその時、リウイが戦艦の出入り口から出て来た。
「ハッ!現在、空港内の魔獣や人形兵器達との戦闘を開始した所です。エレボニアの憲兵や近衛兵達も協力しているようですが……正直、足手纏いですね。―――それより先程ツーヤに帝都内の状況を確認した所、少々厄介な事になっているようです。」
「何?」
そしてファーミシルスはツーヤから聞いた情報――――テロリスト達がアルフィン皇女と共にエリスを攫い、ツーヤ達が追っている事を説明した。
「………………フン、テロリスト共の思惑に乗るつもりは毛頭ないが、メンフィル帝国の貴族であり、リフィアのお目付け役もこなしているエリゼの縁者に手を出して来たのはメンフィル帝国としてもさすがに見逃せん。ファーミシルス、お前は兵達を指揮し、帝都内にいる魔獣や人形兵器達の殲滅をしろ。俺達はエリスの救助に向かう。」
「……よろしいのですか?帝都内の防衛に他国の我らが無許可で介入しても。」
「ユーゲント皇帝には”市民達の為”に”善意で動いた”と言っておく。それ以前に次期皇帝たるリフィアの専属侍女長を務める縁者にしてメンフィル帝国に所属している貴族の子女をみすみすと攫われ、更にその原因が自分の娘である事に関しての責任もあるから、ユーゲント皇帝は反論すらできん。」
「確かに。イリーナ様の護衛は……フフ、愚問でしたね。」
リウイの説明を聞いて口元に笑みを浮かべたファーミシルスは戦艦内にいるリウイの愛妻であるイリーナの護衛が気になったが、戦士として、そして指揮官としても自分と同等かそれ以上の能力を持つ専属侍女長がイリーナの傍に常に控えている事をすぐに思い出して静かな笑みを浮かべ
「――――飛竜を出せ!」
「ハッ!!」
そしてリウイは周囲の兵士達に指示をした!
「死愛の魔槍!!……ぬっ!?こんな時に通信とは一体誰じゃ。」
一方戦闘をしていたリフィアは自分のオーブメントに通信が入った事に眉を顰めた後、通信した。
「なんじゃ、リウイか。一体何の用…………何っ!?―――わかった!余とエリゼもすぐに甲板に向かう!――――エリゼ、お主の妹がテロリスト共に攫われたそうじゃ!」
「!?どういう事!?」
真剣な表情のリフィアの言葉を聞いたエリゼは血相を変えてリフィアを見つめ、リフィアはエリゼに軽く説明した。
「そんな……エリスが……」
「心配するな!リウイが今から救助に向かうし、勿論余も向かう!当然、お主も一緒に来るだろう?」
「当たり前よ!リフィア……その……ありがとう……皇族である貴女やリウイ陛下自らがエリスの為に動いてくれて……」
エリゼは皇族達が妹の救助の為に動いてくれることに感謝したが
「大切な友人であり、下僕でもあるお前の家族を助けるのも皇族として当然の務めじゃ!」
「もう……”下僕”ではなく、”臣下”って言いなさいよね。」
リフィアの言葉を聞き、苦笑しながらリフィアを見つめた。その後リウイ達は甲板に集められた飛竜にそれぞれ乗った。
「あなた……気を付けてください。ペテレーネ、リウイの事をお願いね。」
「はい。リウイ様を必ずやお守りしてみせます……!」
”絶世の美女”といってもおかしくない美しい容姿を持つ金髪の女性――――リウイの愛妻であるイリーナ・マーシルンは心配そうな表情で飛竜に乗っているリウイを見つめた後リウイの背後にいる夕焼け色の髪を二房に分けた女性――――アーライナ教の神官長であり、プリネの母であるペテレーネ・セラを見つめ、ペテレーネは力強く頷き
「相手は自爆行為も厭わない狂人共。油断するつもりはない。――――エクリア、イリーナの護衛は任せたぞ。」
イリーナの言葉に答えたリウイはイリーナの隣にいるイリーナとよく似た容姿を持つイリーナの専属侍女長――――エクリア・フェミリンスを見つめた。
「お任せ下さい。命に代えてもイリーナを守るつもりです。」
「フッ、お前ほどの者が命を賭ける程の事態にはならないと思うがな。―――それとレン、エヴリーヌ。暴れるのは程々にしておけよ。」
エクリアの大げさな言葉に苦笑したリウイは別の飛竜に二人一緒に乗っているレンとエヴリーヌに視線を向けた。
「はーい♪」
「キャハッ♪プリネ達、きっと驚くだろうね♪」
「………陛下、もしテロリスト達を見つけた際はいかがいたしますか?」
二人がリウイの言葉に笑顔で頷いている中、別の飛竜に乗っているレーヴェはリウイに尋ね
「エレボニアの為にわざわざ捕縛してやる義理はない。テロリスト共は見つけ次第全員殺せ。」
「御意。」
リウイの指示に会釈をして答えた。
「よし――――エリスの救助にゆくぞっ、エリゼ!」
「ええ!(お願い、エリス……無事でいて……!)」
リフィアを背後に乗せているエリゼはリフィアの指示の後飛竜を空へと舞い上がらせ、心配そうな表情でマーテル公園の方面を見つめながら、リウイとペテレーネが乗る飛竜と共に飛竜を駆ってマーテル公園へと急行した。
それぞれ飛竜に乗っているリウイ、ペテレーネ、リフィア、エリゼはマーテル公園に、レーヴェ、レン、エヴリーヌは”ヘイムダル大聖堂”があるサンクト地区に向かった………!
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