英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第79話
夕食前にリィン達はオリヴァルト皇子からある話を聞かされていた。
~夕方・聖アストライア女学院・聖餐室~
「―――驚きました。学院の理事長をされているのが皇族の方とは聞いていたのですが。」
「ハッハッハッ。驚くのも無理はない。今をときめく『放蕩皇子』が伝統ある士官学院の理事長なんかやっているんだからねぇ。まー、あまり聞こえがよろしくないのは確かだろうね。」
リィンの言葉に声を上げて笑って答えたオリヴァルト皇子は苦笑して説明し、オリヴァルト皇子の答えを聞いたリィン達は冷や汗をかき
「お兄様、ご自分でそれを言ったら身も蓋もありませんわ。」
アルフィン皇女は呆れた表情で指摘した。
「というかお主がよく士官学院の理事長を務められるな?音楽院の方が似合っているぞ。」
「そだね。女好きのそいつなら、むしろ女の子がいっぱいいるこの学院の理事長を務めたかったんじゃないの?」
リフィアとエヴリーヌはそれぞれ呆れた表情で指摘し
「リ、リフィアお姉様、エヴリーヌお姉様。」
「……二人とも、余計な事を言わないでください。」
二人の指摘を聞いたプリネは表情を引き攣らせ、エリゼは疲れた表情で指摘した。
「ハッハッハッ。いや~、ボクも叶うことなら、そうしたかったんだけどね~。一度は考えた事もあるんだけど、残念ながらミュラー君やアルフィンに止められちゃったんだよね~。」
「考えた事はあるんですか……」
「フウ……さすがにお兄様が女学院の理事長になるのは、色々と不味いですから止めて当然ですわ。」
そして笑顔で答えた後心底残念そうな表情をしたオリヴァルト皇子の話を聞いたリィン達は再び冷や汗をかき、ツーヤとアルフィン皇女は呆れた表情で溜息を吐いた。
「で、ですが本当なのですか?殿下が”Ⅶ組”の設立をお決めになったというのは……」
「タネを明かせばそういう事さ。元々、トールズの理事長職は皇族の人間が務める慣わしでね。私も名ばかりではあったんだが一昨日のリベール旅行で心を入れ替えたのさ。」
アリサの質問に答えたオリヴァルト皇子は静かな表情になった。
「一昨日のリベール旅行……」
「”リベールの異変”ですね。」
「ああ、あの危機における経験が帰国後の私の行動を決定付けた。そして幾つかの”悪あがき”をさせてもらっているんだが……そのうちの一つが、士官学院に”新たな風”を巻き起こす事だった。」
「新たな風……」
「……すなわち我々、特科クラス”Ⅶ組”ですか。」
「では、身分に関係なく様々な生徒を集めたのも……?」
オリヴァルト皇子の話を聞いてある事が気になったマキアスはオリヴァルト皇子を見つめた。
「ああ、元々は私の発案さ。もちろんARCUSの適性が高いというのも条件だったがね。」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたリィン達全員は黙り込んだ。
「……今となってはその意図も何となくわかります。こうして”特別実習”という名目で各地に向かわせることの意味も。」
「この帝国で起きている実情……貴族派と革命派の対立を知らしめ、考えさせるのが狙いですか。」
「無論、それもある。だが私は君達に現実に様々な”壁”が存在するのをまずは知ってもらいたかった。その二大勢力だけではない、帝都と地方、伝統や宗教と技術革新、帝国とそれ以外の国や自治州までも……この激動の時代において必ず現れる”壁”から目を背けず、自ら考えて主体的に行動する―――そんな資質を若い世代に期待したいと思っているのだよ。」
「あ……」
「……それは…………」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたリィン達は再び黙り込んだ。
「正直、身に余る期待ですけど……」
「ですがようやく、色々なものに合点がいった心境です。」
「たしかにこの”Ⅶ組”ならばそんな視野が持てるかもしれない……」
「そういった手応えが自分達の中にあるのも確かです。」
「……だね。」
「フフ、そうか……そう言ってくれただけでも私としては本望だ。”Ⅶ組”の発起人は私だが既にその運用からは外れている。それでも一度、君達に会って今の話だけは伝えたいと思っていた。そこにアルフィンが、今回の席を用意すると申し出てくれてね。」
Ⅶ組の面々の答えを聞いて静かな笑みを浮かべたオリヴァルト皇子は話を続けた。
「そうだったんですか……」
「フフ、お兄様のためというのもありますけど。エリスの大切なお兄さんに一度、お会いしたかったのもありますね。」
「ひ、姫様……!」
「フフ、お兄様は素敵な方ですものね。」
「………………」
リィンを見つめて微笑むアルフィン皇女とセレーネの答えを聞いたエリスは焦り、エリゼは顔に青筋を立てて微笑んでいた。
「はは……―――そういえばずっと気になっていたんですけど、プリネさんとツーヤさんの留学はオリヴァルト皇子の頼みという事でしたけど……」
「………エヴリーヌもまだ聞いてない。何でプリネ達をそっちの事情に巻き込んだわけ?」
リィンの疑問に頷いたエヴリーヌはオリヴァルト皇子を見つめた。
「そう言えば君達はまだ二人の留学した”真の理由”を知らなかったな……」
「”真の理由”、ですか。二人は両国の国家間の関係修復の為に留学していると聞いていましたが……」
オリヴァルト皇子の言葉が気になったユーシスはオリヴァルト皇子を見つめた。
「勿論それもある。私が彼女達の留学を望んだの本当の理由は君達では対処できなくなってしまった危機に陥った時の”切り札”として、君達を手伝って欲しいと望んだのだよ。」
「ぼ、僕達では対処できなくなってしまった危機って…………」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたエリオットは不安そうな表情をし
「……”身喰らう蛇”によってエレボニア帝国が第2の”リベールの異変”のようになることを危惧しておられるのですね、オリヴァルト皇子は。」
プリネは静かな表情でオリヴァルト皇子を見つめた。
「なっ!?そ、それは……!」
「………………」
プリネの言葉を聞いたマキアスは驚き、ラウラは真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめ
「フフ、その通り。”リベールの異変”で”身喰らう蛇”はリベールから手を引いたが、他の国で同じような事が起こらないという保証はない。”執行者”辺りが相手になると、さすがに今の君達では荷が重いだろうからね。それは私自身、”リベールの異変”で彼らと直接剣を交えたから、彼らの恐ろしさは嫌と言うほどわかっているよ。」
「お兄様………」
「「…………」」
真剣な表情で答えたオリヴァルト皇子の話を聞いたアルフィン皇女とエリス、そしてエリゼはそれぞれ心配そうな表情でオリヴァルト皇子やリィンを見つめた。
「その”執行者”に関してですが……―――本日、”怪盗B”こと執行者No.Ⅹ”怪盗紳士”ブルブランが関わった盗難事件にあたし達がブルブランの謎かけで盗まれた品物を取り返し、更にブルブラン自身と接触しました。」
「まあ……”怪盗B”と言えばお兄様のお話にあった………」
「”怪盗B”だと?奴と接触したのか?」
「ああ……まんまと逃げられてしまったけどな。」
「ほう?まさか美を巡る我が好敵手が既に君達と接触したとは。フフ、さすがは我が好敵手。目の付け所が良いね。」
ツーヤの話を聞いたアルフィン皇女は目を丸くしてオリヴァルト皇子を見つめ、ユーシスは眉を顰めてリィン達を見つめ、リィンは疲れた表情で答え、オリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべた。
「た、確かに僕達が実際”怪盗B”みたいな人達と戦っても勝てるかどうかわからないよね……?」
「ああ……訳のわからない術も使うし、ツーヤ達の話ではとんでもない実力を持っているようだしな……」
「……ツーヤやプリネ無しの今のわたし達が戦っても、勝率は限りなく低いだろうね。」
不安そうな表情のエリオットの言葉にマキアスは疲れた表情で頷き、フィーは真剣な表情で答え
「……そうだな。悔しいが、今は精進あるのみだな。」
フィーの意見にラウラは重々しい様子を纏って頷いた。
「まあ、そういう訳で忙しいプリネ姫達には申し訳ないと思ったんだけど、彼女達に君達のサポートを頼むことにしたのさ。」
「そうだったんですか……」
「……俺達の身を心配して頂きありがとうございます。」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたアリサは目を丸くし、ガイウスはオリヴァルト皇子に会釈をした。
「フフ、オリヴァルト皇子の提案のおかげで私達は憧れていた学院生活を満喫していますから、むしろ感謝しているくらいですよ。」
「ええ……クローゼさん達をずっと見ていましたから、いつか学院生活を送りたいと思っていましたし。」
「フッ、二人とも学院生活を満喫しているようで何よりだよ。」
プリネとツーヤの答えを聞いたオリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべ
「……とは言ってもプリネ達がいる事で起こった問題もあるから、正直お主たちエレボニア帝国にとってメンフィル帝国の皇族や貴族であるプリネ達の存在は諸刃の剣と思うぞ。――――ケルディックの件が良い例じゃ。ケルディックの件はお主自身、どう思っているのじゃ?」
リフィアは真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめた。
「あ…………」
「それは…………」
ケルディックの件を思い出したアリサとリィンは心配そうな表情でユーシスを見つめ
「………私自身、ユーシス君には悪いと思うが、あの件はアルバレア公爵にとって良い薬になったと思っているよ。まあ、その後の特別実習でも再び強引な手段を取ったにも関わらずエステル君達によって痛い目に合されたようだから、さすがに懲りたと思うが……」
「……私の事はどうかお気になさらず。あの二つの件は両方とも父の暴走ですので、あの結果は父の自業自得だと思っております。メンフィル帝国には大変申し訳ない事をしたと、今でも私や兄自身思っております……」
オリヴァルト皇子は重々しい様子を纏って答え、ユーシスはオリヴァルト皇子に会釈をした後、リフィアを見つめて頭を下げ
「頭を上げろ。もうあの件は既に終わった事。余やリウイ達もあの件はもう気にしておらぬ。」
「……寛大なお心遣い、ありがとうございます。」
リフィアの言葉を聞き、リフィアに会釈をした後頭を上げた。
「むう。これからもプリネ達が狙われないって保証はないんだし、内輪揉めしている国なんかにプリネをずっといさせるなんて、エヴリーヌは安心できないけど。」
「エヴリーヌお姉様ったら……」
つまらなさそうな表情で呟いたエヴリーヌの言葉を聞いたプリネは呆れ、エヴリーヌの直接的な言い方にリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「ハッハッハッ。そんなに心配ならエヴリーヌ君も”Ⅶ組”に編入するかい?プリネ姫とレーヴェ君の逢瀬の邪魔もできるだろうし♪エヴリーヌ君の見た目なら、学生でも充分通るだろうし。」
「フム、それはよいの。エヴリーヌに勉強させるちょうどいい機会にもなるしな。」
「ええっ!?」
オリヴァルト皇子の提案に頷いたリフィアの様子を見たリィンは驚き
(……プリネさん。エヴリーヌさんがまともに授業を受けてくれると思いますか?)
(多分無理でしょうね……)
ツーヤに念話で尋ねられたプリネは苦笑し
「んー……勉強はヤだけど、プリネの傍にいられる上レーヴェをプリネに必要以上近づかせないためにもいいかもしれないね。」
「フフ、私としたらリフィアの脱走の手助けをする要注意人物がしばらくいなくなりますから、大助かりですけどね。」
「しまったっ!?エヴリーヌに抜けられるとエリゼの監視から逃げ出す事が困難な事に気付かないとは、なんたる不覚……!」
考え込みながら呟いたエヴリーヌの様子を見て微笑むエリゼの言葉を聞いて慌てているリフィアの様子を見たリィン達はリフィアの事を良く知る者達以外全員冷や汗をかいて表情を引き攣らせていた。
「はは……―――話を聞かせていただいて本当にありがとうございます。自分達の中の芯が一本、改めて通ったような心境です。ですが……お話を聞く限り、自分達が期待されているのはそれだけでは無さそうですね?」
冷や汗をかいていたリィンは気を取り直して真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめて尋ねた。
「え……」
「兄様?」
「えっと……どういう事なんですか??」
「ほう……」
リィンの質問を聞いたエリスは呆け、エリゼとセレーネは戸惑い、オリヴァルト皇子は感心した様子でリィンを見つめた。
「士官学院の常任理事の4名……我が兄、ルーファス・アルバレアに帝都知事カール・レーグニッツ。そしてラインフォルト社会長、イリーナ・ラインフォルトと前メンフィル皇帝にして現メンフィル大使リウイ・マーシルン皇帝陛下ですか。」
「あ……」
「確かにその4名は……」
「どう考えても皇子様とは違う狙いを持ってそう。」
「フフ、その通りだ。―――先程も言ったが既に”Ⅶ組”の運用は私から離れ、彼ら4名の理事に委ねられている。このうち、知っての通り、ルーファス君とレーグニッツ知事はお互い対立する立場にある。イリーナ会長はARCUSなどの技術的な方面に関係しているが、その思惑は私にもよくわからない。リウイ陛下もイリーナ会長同様、何故プリネ姫達を留学させる条件の一つとして自らが常任理事の一人になる事を出した思惑もわからない。そして――――君達の”特別実習”の行き先を決めているのは彼らなのさ。」
ユーシスの指摘に頷いたアリサやマキアス、フィーの指摘を聞いたオリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべて説明した。
「そ、そうだったんですか……」
「……確かに何か思惑や駆け引きなどがありそうですね。」
「ああ、リウイ陛下を除いた3人からは”Ⅶ組”設立にあたって譲れない条件として提示されたものでね。正直、ためらいはしたのだがそれでも我々は君達に賭けてみた。帝国が抱える様々な”壁”を乗り越える”光”となりえることに。」
オリヴァルト皇子の話を聞いたリィン達は黙って考え込んだ。
「フフ……だがそれじゃあ我々の勝手な思惑さ。君達は君達で、あくまで士官学院の生徒として青春を謳歌すべきだろう。恋に、部活に、友情に……甘酸っぱい青春なんかをね♪」
真剣な表情で語った後ウインクをしたオリヴァルト皇子の発言にリィン達は冷や汗をかき
「やっぱ、オリビエはオリビエだね。」
「全く、そこで何故余計な一言を言うのじゃ……」
「まあ、それでこそオリヴァルト皇子だけどね……」
「フフ、そうですね……」
エヴリーヌとリフィアは呆れた表情で呟き、プリネとツーヤは微笑んでいた。
「あはは……」
「……そう言って頂けると少しだけ気が楽になりました。」
エリオットが苦笑している中、リィンは口元に笑みを浮かべてオリヴァルト皇子を見つめた。
「その、先程”我々”と殿下は仰っていましたが……他にも殿下に賛同されている関係者の方々が?」
その時ある事に気付いたアリサはオリヴァルト皇子を見つめて尋ねた。
「ああ――――ヴァンダイク学院長さ。元々、私もトールズの出身で、あの人の教え子でね。”Ⅶ組”を設立するアイデアにも全面的に賛同してくれたんだ。」
「そうだったんですか……」
「確かに学院長には色々と配慮していただいてますね。4人の理事達とは異なり、学院運営に口を出せる立場ではないが理事会での舵取りもしてくれている。何よりも現場の責任者として最高のスタッフを揃えてくれたからね。」
「最高のスタッフ、ですか?」
「もしかして……サラ教官のことでしょうか?」
オリヴァルト皇子の言葉が気になったユーシスは不思議そうな表情をし、ラウラは尋ねた。
「はは、彼女だけではないがね。ただ学院長が彼女を引き抜いたのは非常に大きかっただろう。帝国でも指折りの実力者だし、何よりも”特別実習”の指導には打ってつけの人材だろうからね。」
「え。」
「帝国でも指折りの実力者……」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたアリサとエリオットは呆け
「”特別実習”の指導に打ってつけの人材……??」
(フフ、ここまでヒントがあるにも関わらず、わからないのはある意味奇蹟に近いかもしれないわね。)
(そ、そうですね……)
首を傾げているマキアスを見たプリネとツーヤはそれぞれ苦笑した。
「ふふっ、わたくしも噂くらいは耳にしたことがありますわ。”紫電”なんて格好いい呼ばれ方をされている方ですよね?」
「”紫電”……!」
「……やはり……!」
「二人が知っているという事は帝国の武の世界で知られる名前か。」
アルフィン皇女の言葉を聞いて顔色を変えたラウラとリィンの様子を見たガイウスは二人に尋ねた。
「ああ……耳にした事があるくらいだけど。」
「帝国遊撃士協会にその人ありと言われるほどの若きエース。最年少でA級遊撃士となった恐るべき実績の持ち主……”紫電のバレスタイン”―――それが君達の担当教官さ。」
その後リィン達はオリヴァルト皇子達と談笑しながら夕食を取り、食後の紅茶の時間になるとエリゼがリィンを見つめて口を開いた。
「――――さてと。兄様、そろそろそちらの少女―――セレーネさんに関しての詳細な説明をして頂きましょうか?」
「先程のセレーネさんの自己紹介では兄様に”仕えている”や”パートナー”に加えて兄様の事を”お兄様”と呼んでいる事が非常に気になっていたのですが……?」
「う”っ……」
膨大な威圧を纏って微笑むエリゼとエリスに見つめられたリィンは冷や汗をかき
「アハハ……え、えっと。実は―――」
その様子を見て冷や汗をかいて苦笑していたツーヤは助け舟を出すかのように、その場にいる全員にセレーネの事情を説明した。
「ほほう?ツーヤ君の妹君か。フフ、幼い頃のツーヤ君に負けず劣らず可憐な娘だね♪ミント君とツーヤ君の例を考えると、成長すればきっと二人のようにスタイル抜群の素晴らしい美女になるだろうね♪いや~、リィン君が羨ましいよ♪将来美女になる事が確定している可憐な娘をキープしているんだから♪」
セレーネの事情を聞いたオリヴァルト皇子は目を丸くした後リィンにウインクをしたが
「お兄様、少しお下品ですわよ。」
「あたっ。ボクは当然の事を言っただけなんだけどね~。」
アルフィン皇女にハリセンで頭を叩かれ、羨ましそうな表情でリィンを見つめた。
「ほう?”七大罪”の一柱に精霊王女に加えて竜とも契約するとは……やるではないか。」
「エステル並みに異種族達に好かれているね。」
一方リフィアとエヴリーヌは感心し
「フフ、私としては嬉しいわ。ツーヤの妹に会えて。」
「それはあたしもですよ。もう会えないと思っていたのですから……」
微笑むプリネの言葉に頷いたツーヤは懐かしそうな表情でセレーネを見つめた。
「「に・い・さ・ま~~~~~??」」
「うっ…………」
膨大な威圧を纏って微笑む姉妹に見つめられたリィンは表情を引き攣らせた。
「あ、あの。わたくし、お兄様と契約してはいけなかったのでしょうか……?」
その様子を見ていたセレーネは心配そうな表情でエリゼとエリスを見つめ
「―――いえ、セレーネさんは何も悪くありませんので気になさらないで下さい。」
「ええ。全て兄様が悪いだけですから。」
「全くよね!」
「何で全部俺のせいに……というかアリサまで何で一緒に頷くんだよ……」
エリスとエリゼの意見に頷いたアリサの言葉を聞いたリィンは疲れた表情で肩を落とした。
「「?………………(まさか…………!)」」
一方アリサの答えを聞いた姉妹は首を傾げた後ある事を察してアリサを真剣な表情で見つめ
「―――アリサさん、つかぬ事をお聞きしますが……アリサさんも”そう”なのですか?」
エリゼがアリサに問いかけた。
「え?…………!え、ええ、そうよ!言っておくけど、諦めるつもりはないわよ……!」
エリゼの問いかけに首を傾げたアリサだったがすぐに察して真剣な表情でエリゼとエリスを見つめ
「「フフ……」」
「ふふ……」
互いに膨大な威圧を纏って微笑み合い、その様子を見守っていたその場にいる全員は冷や汗をかいた。
(な、何なんだ、一体……)
(うふふ、ついに妹達にアリサの事がわかってしまったわね♪)
(ふふふ、今の所は姉妹が優勢ですから、ここから彼女がどうやって巻き返すのかが見物ですね……)
(アリサ、怖い……)
その様子を見守っていたリィンは表情を引き攣らせ、ベルフェゴールはからかいの表情になり、リザイラは静かな笑みを浮かべ、ミルモはアリサを怖がり
「うふふ、さすがエリスのお兄さんですわね♪」
「いや~、甘酸っぱい青春を楽しんでいるようで何よりだよ♪」
アルフィン皇女とオリヴァルト皇子はからかいの表情で見守っていた。
「コホン。それはともかく……セレーネさん、でしたね?私はエリゼ。リィン兄様の妹です。以後お見知り置きをお願いします。」
「私はエリス。リィン兄様の妹で、エリゼ姉様の双子の妹です、よろしくお願いします。」
「はい!えっと、お兄様の妹ですから……エリゼお姉様とエリスお姉様とお呼びした方がよろしいですか?」
姉妹の事を知ったセレーネに見つめられたエリゼとエリスはそれぞれ目を丸くして互いの顔を見合わせた後、セレーネに微笑んだ。
「ええ、よろしくね、セレーネ。」
「フフ、ついに私にも妹ができて嬉しいわ、セレーネ。」
「はい!よろしくお願いします、エリゼお姉様、エリスお姉様……!」
姉妹に微笑まれたセレーネは嬉しそうな表情で頷いた。
「うむ、姉妹同士仲が良いのは良い事だ!それはそうと……セレーネと言ったな?契約方法はやはりミントやツーヤと同じなのか?」
「はい。わたくし達ドラゴンの”パートナー契約”はキスをする事ですが。」
リフィアに尋ねられたセレーネが頷いて答えたその時
「ちょっ、セレーネ!?」
「「「何ですってっ!?」」」
リィンは慌て、エリゼとエリス、アリサは声を上げて驚き
「まあ♪」
「ほう、こんな可憐な娘にキスをするとは……やるじゃないか♪ハッ、待てよ?という事はミント君とツーヤ君の”パートナー”であるエステル君とプリネ姫も同じことをしたという事だから……ムフフ、これは良い事を聞いちゃったよ♪」
アルフィン皇女と共にからかいの表情になったオリヴァルト皇子はある事に気付いて酔いしれた表情をした。
「フウ、知られてはいけない人に知られてしまったわね……」
「アハハ……次にエステルさん達に出会った時に、からかわないといいのですが……」
「絶対からかうだろうね。オリビエだし。」
オリヴァルト皇子の様子を見たプリネは疲れた表情で溜息を吐き、苦笑するツーヤの言葉にエヴリーヌは呆れた表情で答え
「キ、キスですか……」
「フッ、その場面を是非とも見たかったな。」
「伝承の存在である竜との契約……一体どんな状況だったのか、気になるな。」
エマは頬を赤らめて苦笑し、ユーシスはからかいの表情になり、ガイウスは静かな笑みを浮かべてリィンを見つめ
「アハハ……今考えると、見ている方も恥ずかしかったよね?」
「そ、そうだな。」
「……まあ、本人同士の合意の元なのだから、別に構わぬが……」
「リィン、ロリコン?」
苦笑するエリオットの言葉にマキアスは頷き、ラウラは困った表情をし、フィーは首を傾げた。
「「に・い・さ・ま~~~~~??」」
「リィン、あなた……こんな小さい娘にキスをするなんて……!」
姉妹は膨大な威圧を纏って微笑みを浮かべてリィンを見つめ、アリサは顔を真っ赤にしてリィンを睨み
「し、仕方ないだろ!契約方法がそれしかなかったんだし!それにキスをしたって言ってもキスした場所はうなじだぞ!?」
リィンは慌てた様子で言い訳をしたが
「「「そういう問題ではありません(ないわよ)っ!!」」」
「すみません…………」
エリゼとエリス、アリサに怒鳴られ、肩を落として反射的に謝った。
その後食事を終えたリィン達はエリスに見送られようとしていた…………
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