ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~
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第33話絆深き決闘
2024年11月7日、第47層・ライリュウ&ミラ家
あの日からもう二年が経った、あのデスゲームが始まった日から二年が経った。今日は第75層フロアボス討伐戦、3回目のクォーターポイントだ。戦死者もたくさん出るかもしれない。だからーーー
「・・・絶対帰って来てよ?」
「・・・分かってる」
未来を置いていく事にした。未来は攻略組のトッププレイヤーだ、コイツがいないだけで戦況が大きく変わるだろう。オレはコイツの強さを信じてる。死なないって思ってる。でもーーーやっぱり行かせられない。死んでほしくないから、家族だから。
絶対帰って来るって約束した。絶対に約束を果たしてみせるーーー
「約束は守る。そう、コイツらとも約束したからな・・・」
「・・・うん!」
オレは今、気合いを入れ直すため、約束を忘れないために装備を新しくした。かつての復讐の炎を脱ぎ捨て、青いヘアバンド、赤いインナーシャツ、すみれ色の忍者装束、白いマントを着込んでいる。そうーーー
「まだ75層なのにオレが死んだら、弾たちに怒られちまうよ」
オレはこの世界で死んだ親友たちと共に戦う。
「うん。それなら・・・」
「?」
未来は言葉を続け、アイテムストレージから5つの武器を取り出した。それはーーー
「《妖刀竜燐》・・・それにみんなの武器も」
「《リトルギガント》も連れていって!」
未来の愛刀、《妖刀竜燐》、翼の《片手剣》、弾の《槍》、かんなの《チャクラム》、そして亜利沙の《クナイ》だった。
この世界であいつらが使っていた武器、あいつらの意思、あいつらのーーー魂。連れて行かない訳がない。
オレは未来からその武器を受け取り、家の玄関のドアを開いた。
「・・・いってくる!」
******
第55層・《グランザム》
ボス討伐の前に《血盟騎士団》のギルド本部に足を運んだ。やり残した事がある。それを先に済ませてからボス戦に行こうと、思ったから。オレはこの巨大な鉄の建造物の大広間にいるーーー《黒の剣士》に会いに来た。
「ライリュウ・・・」
「キリト、ボス戦の前にやっておきたい事がある」
この世界で初めて出会ったオレの親友、《黒の剣士》キリト。その隣にはキリトの良き妻、《血盟騎士団》副団長のアスナさんがいる。
オレはキリトに歩み寄り、言葉を続ける。オレのやり残した事、それはーーー
「・・・オレとデュエルしろ」
「なっ!?」
キリトとのデュエル。まだオレ達は一度も剣を交えていなかった。
「ライリュウくんこんな時に「アスナ黙っててくれ」ッ!」
「お前・・・一体何を考えてるんだ!?あと三時間でボス戦なんだぞ!?それも今までのフロアボスなんか可愛く見えるぐらいの・・・」
「だからだよ!」
今回のボスは本当に強い、強大な敵だ。クォーターポイントのボス戦では必ずって言っていいくらいの多くの犠牲者が出てる。今度はオレ達だって無事じゃ済まないかもしれない。だからーーー
「オレはお前と戦わずに死んだら、絶対成仏出来ねぇ」
たとえ死んでも、悔いのないように死ねるようにしてぇ。
「・・・分かった」
「キリトくん!」
「ライリュウ、外でやろう・・・」
「・・・ありがとう」
オレとのデュエルをキリトは了承してくれた。オレは大広間の扉を開いて、外に出るために歩き出した。
後悔ほど愚かなモノはないーーーだから、本気でぶつかろう。
アスナside
ライリュウくんーーー君は何を考えているの?
キリトくんーーー何故彼とのデュエルを受けたの?
これからボス戦、キリトくんがそこで死んだらわたしも自殺する。そんな事にならないように、絶対に生きてあの湖の見える家に帰ろう。そう誓ったところだったのにーーーどうしてライリュウくんとのデュエルを望んだの?ライリュウくんとのデュエルは意味があるものなの?本当に今じゃなければいけないの?
「《半減決着モード》で良いか?」
「あぁ、後から後悔しねぇように・・・」
『本気でいくぜ!!』
デュエル開始までのカウントダウンが始まった。今する必要はないーーーそう言いたかった。でも、何故か言えなかった。理由はきっとーーー目に見えるほど強い彼らの闘志。止められる訳がない。
そんな中、わたしの首にかけている雫形の結晶が付いたペンダントがーーーわたしとキリトくんの娘、ユイちゃんの心が輝いたような気がした。
「・・・困ったパパだね、ユイちゃん」
3
2
1
デュエルスタート!
『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
わたしの旦那様、《黒の剣士》キリトと、その親友《隻腕のドラゴン》ライリュウのデュエルーーー決闘の火蓋は今、切って落とされた。
雄叫びをあげて二人は接近し、互いに鞘から剣を抜いた。
キリトくんは黒き魔剣《エリュシデータ》と白き竜の剣《ダークリパルサー》でユニークスキル《二刀流》を解放。対するライリュウくんはかつての愛剣《ドラゴンスレイヤー》の鉱石でさらに強くなった新たな愛剣、竜の翼《ドラゴンビート》。
ライリュウくんがまっすぐ降り下ろした大剣をキリトくんが二刀の剣をX上に重ねて受け止める。
二人は同じ元ベータテスター。デスゲーム以前のSAOで知り合った二人は今となっては親友同士。時々顔を合わせては憎まれ口を叩いたり、ちょっとした喧嘩をしたりと、まるで親友を越えて兄弟のような関係の少年。
そんな彼らは今、大きな戦いを前にぶつかり合い、互いに悔いのないように剣を振るう。この《黒の剣士》と《隻腕のドラゴン》と呼ばれる二人はーーー
「フッ、想像以上に重いな・・・フンッ!」
「うおっと!ハハハッ・・・オレ、やっぱり飢えてたのかなぁ・・・全力になれる相手にっ!!」
笑いながら剣を交えている。
キリトくんが《二刀流》を大勢の前で初めて使ったのは《ザ・グリームアイズ》との戦いで奥の手として使用し、《軍》のシンカーさん救出の際に使って以来戦闘に出なかったからそこまで《二刀流》を使う事はなかった。その本気の戦闘スタイルで笑いながら振るえる相手が目の前にいる。
ライリュウくんの大剣が光を纏い、キリトくんの二刀の剣も光を纏う。
「はあぁぁぁぁぁぁ!!」
「でいやぁぁぁぁぁ!!」
ライリュウくんの《両手剣》突進系ソードスキル《アバランシュ》とキリトくんの《二刀流》突進系ソードスキル《ゲイル・スライサー》。この二つのソードスキルはどちらも初歩的なスキル、だけれどーーー威力が高く、その風圧がわたしに伝わってくる。
ぶつかり合ったキリトくんとライリュウくんの硬直は短く、解除された瞬間に後ろに跳び距離を取った。すかさずライリュウくんは前方に大きくジャンプしソードスキルの体勢にーーー
「行くぞぉっ!!」
空中で範囲系ソードスキル《サイクロン》を発動。あれは横方向に大きく一回転する技であって、空中で使う技ではないんだけどーーージャンプの落下の勢いを利用して回転しながらキリトくんに斬りかかっている。《サイクロン》は必要以上に近づかなければ当たらないけど、こういう方法があったのね。
それに対してキリトくんはーーー《エリュシデータ》と《ダークリパルサー》を十字状に構えている。
「ゲッ!?《スペキュラー・クロス》!?」
「当たりーーー!!」
十字状に構えた剣が光を纏い、《サイクロン》を跳ね返す。《スペキュラー・クロス》は初めて見たけど、あれってカウンター系ソードスキルなのね。
ライリュウくんは驚きながらも身体を仰け反らせて上手く避けている。前から思ってたけど、ライリュウくん器用よねーーーあれ?いつのまにかーーー
「わたし・・・楽しんでる?」
もうすぐボス戦で、嫌でもピリピリするような状況だったのに、二人のデュエルが始まってからーーー不思議だなぁ。もしかしたら、片方が大好きな人だからかもしれない。そうでなくてもあの二人には、あの二人のデュエルにはーーー周りの人を惹き付ける不思議な力があるのかもしれない。
「ライリュウ!デカイの行くぞ!!」
「来い!」
キリトくんが大技発動を宣言した。そんな事言ったら、避けろって注意してるようなものなのにーーー彼らには頭で考えるより、本能で動くのが性に合ってるのかも。
キリトくんのあの構えはーーー《スターバースト・ストリーム》?でも《ザ・グリームアイズ》の時とは体勢が違うようなーーー
「来たな?27連撃・・・」
「あぁ・・・
《ジ・イクリプス》!!」
そのソードスキルは《スターバースト・ストリーム》を遥かに越えていた。星の16連撃よりも速く、強く、目が追いつかないレベルの次元だった。《ジ・イクリプス》、その剣から繰り出される斬撃の嵐の数はーーー27連撃。
その嵐にドラゴンはーーーライリュウくんは防戦一方。剣先が身体を掠り、切り傷を作っていく。いくつか弾いている攻撃もあるけれど、受けた攻撃の方が多い。彼のHPはもうすぐこのデュエルのモードの敗北条件に達する。けれどもライリュウくんだって諦めていない。彼はあの剣撃の嵐の中で剣を構え、最後の一撃を弾く。あれは確か《両手剣》カウンター系ソードスキルーーー
「しまった・・・!!」
「《ホロウ・シルエット》・・・!!」
《ジ・イクリプス》の最後の27連撃目、あの強力な一撃を返した威力は強く、キリトくんのHPを一気に削り取った。
ここでデュエルの勝者が決まった。勝者は
《隻腕のドラゴン》ライリュウ。
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