英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第65話
~グランセル城・謁見の間~
「あ……」
「「父さん……」」
「パパ………」
カシウスに気づいたブライト家の兄妹達はカシウスを見つめた。
「カシウス殿、ご苦労様でした。」
「各方面への指示は完了したのか?」
「ええ、先ほど終わらせてこちらの方へ飛んできました。そこで少々、父親としての義務を果たそうと思いまして。」
「え……」
アリシア女王とモルガン将軍の言葉に頷いた後ヨシュアに近づくカシウスをエステルは呆けた表情で見守っていた。
「……昨日、通信で話したが実際に顔を合わせるのは久々だな。」
「うん……そうだね。……ごめん。心配をかけてしまって。」
「お前の誓いを知っていた以上、俺も共犯みたいなものさ。謝る必要はないが……義務は果たさせてもらうぞ。」
そしてカシウスはヨシュアの頬を叩いた!
「っ……」
「きゃっ……」
「ちょ、ちょっと父さん!?」
カシウスの行動にティータとクローゼは驚き、エステルはカシウスを睨んで責めたが
「……いいんだ、エステル。家出息子には……当然のお仕置きだからね。」
「そういうことだ。思っていた以上に皆に心配をかけていたこと……ようやく実感できたようだな?」
ヨシュアは叩かれた頬を手で抑えて静かに語り、ヨシュアの言葉にカシウスは頷いた後、ヨシュアを見つめて尋ねた。
「……うん。僕なんかのために―――なんて思ったら駄目なんだよね。」
「ああ……。人は様々なものに影響を受けながら生きていく存在だ。逆に生きているだけで様々なものに影響を与えていく。それこそが『縁』であり―――『縁』は深まれば『絆』となる。」
「……『絆』……」
「そして、一度結ばれた『絆』は決して途切れることがないものだ。遠く離れようと、立場を違えようと何らかの形で存在し続ける……。その強さ、思い知っただろう?」
ある言葉を聞いて呆けているヨシュアにカシウスは説明し、そして笑顔を見せて尋ねた。
「うん……正直侮っていた。確かに僕は……何も見えてなかったみたいだ。」
「ヨシュア……」
「フフ、それが見えたのなら家出した甲斐もあっただろう。」
そしてカシウスはヨシュアを抱き締めた。
「ヨシュア……この馬鹿息子め。本当によく帰ってきたな。」
「うふふ、パパったら、相変わらずの子煩悩ね♪」
「いつも母さんや俺達に甘えまくっているお前にだけは言われたくないだろ……」
「フッ、親馬鹿が……」
「ふふ……本当に良かった。」
ヨシュアを抱き締め、安堵の表情で語るカシウスを見つめて小悪魔な笑みを浮かべるレンにルークは呆れた表情で指摘し、モルガン将軍とアリシア女王は微笑ましそうに見守っていた。
(フッ、今も幸せに過ごしているか?メリル……)
(アスベル……シェリア……)
(親の意志は子へと受け継がれていく……エステルと彼女の父親を見ているとスタンとカイルを思い出しますね、坊ちゃん……)
(………フン、あの二人と違って父親の方は能天気ではないようだがな。)
カシウスとヨシュアの様子を見守っていたバダックは最後まで敵対関係であった大切な娘を思い出し、ソフィは兵器でありながらも自分を”本当の家族”として迎えて接したかつての友であり、仲間でもあった夫婦を想い出して懐かしそうな表情をし、シャルティエの言葉に対しリオンは鼻を鳴らして小声で答え
(フフ………私が知らない内にたくさんの『絆』ができたのね………こんなにも多くの人達に心配され、そして暖かい家族に囲まれているヨシュアは幸せ者ね……もう、”私”という存在は必要ないのかもしれないわね………)
(本当ならすぐにでもヨシュアを抱きしめたいでしょうに、僕達の事情に巻き込んだ事で正体を隠して他人のフリをさせてしまい、本当に申し訳ありません、カリン………)
(………イオン様……)
ステラは寂しげな笑みを浮かべてヨシュアを見つめ、ステラの様子に気づいて複雑そうな表情をしているイオンをアリエッタは心配そうな表情で見つめていた。
「失礼します!」
するとその時、ユリア大尉が大慌ての様子で謁見の間に入って来た。
「王都を除いた5大都市の近郊に正体不明の魔獣の群れが現れました!報告から判断するにどうやら人形兵器と思われます!」
「あ、あんですって~!?」
「動き出したか……」
ユリア大尉の報告を聞いたエステルは驚き、ヨシュアは気を引き締めた表情で呟いた。
「そうか……」
「急いでハーケン門に戻る必要がありそうだな……」
(……そろそろ動く頃だと思っていたわ。ママの為の”保険”をかけておいて正解だったわね……うふふ、レンの”家族”を狙った人達はレンの”家族”を狙った事がどれだけ愚かな事か、”命と引き換えに”思い知る事になるでしょうね。)
ユリア大尉の報告にカシウスは重々しく頷き、モルガン将軍は考え込み、レンは口の端を僅かにつりあげて黙り込んでいた。
「そ、それと……」
「なんだ、まだあるのか?」
「詳細は不明なのですが……”四輪の塔”に異変が起きました。得体の知れぬ『闇』に屋上部分が包まれたそうです。」
「!!!」
「恐らく”四輪の塔”を用いるのが第3段階なのだろうね。」
「やはり”四輪の塔”が関係していましたか………」
「各塔の屋上の装置が、間違いなく、関係している、でしょうね。」
「チッ……嫌な予感が当たりよったか。」
ユリア大尉の報告を聞いたエステルは目を見開いて驚き、レイスとイオンは真剣な表情で呟き、アリエッタは気を引き締めた表情になり、そしてケビンは舌打ちをした後真剣な表情で呟いた。
「なお、哨戒中の警備艇が調査のため接近したそうですが……すぐに機能停止に陥り、離脱を余儀なくされたのことです。」
「『導力停止現象』か……」
「地上からの斥候部隊は?」
「すでに派遣されたそうですが……」
カシウスの疑問にユリア大尉が答えようとしたその時
「も、申し上げます!」
一人の王国軍士官が慌てた様子で謁見の間に入って来て、報告をした。
「各地の塔に向かった斥候部隊が撃破されてしまったそうです!し、信じ難いことですが、どの部隊もたった1人によって蹴散らされてしまったとか……」
「なに……!?」
「そ、それって……!」
「ああ……”執行者”だろうね。父さん……彼らは一般兵の手に余る。ここは僕に行かせてほしい。」
士官からもたらされた報告を聞いたユリア大尉が驚いている中、部隊をたった一人で撃退した相手が”執行者”である事を察したエステルの言葉に頷いたヨシュアはカシウスに提案した。
「ふむ……」
「ちょっとヨシュア……なに1人で行こうとしてるのよ。昨日の約束をもう忘れたの?」
「エステル、でも……」
「”結社”が動き始めた以上、遊撃士としても放っておけない。絶対に付いて行くからね。」
「エステル……」
エステルの答えを聞いたヨシュアはエステルを見つめ
「エステルだけじゃないわ。あたしも付き合わせてもらうわよ。個人的な因縁もあるしね。」
「ああ、俺も同じくだ。」
「俺は遊撃士として……そしてヨシュアの家族として、当然ついて行くぜ。」
「シェラさん、ジンさん……ルーク兄さん……」
「当然俺も付き合うぜ。今までリベールに世話になったんだから、少しくらいは恩返しをしないとな。」
「ええ、リベールは私とフレンにとっても第二の故郷ですもの。”結社”にこれ以上好き勝手をさせる訳にはいかないわ。」
「フッ、俺はエステル達との合流が遅れたからな。その分を取り返す為にも当然俺も同行するぞ。」
「フレンさん……アーシアさん……バダックさん……」
「勿論私も一緒だよ、ヨシュア。」
「フン、”執行者”達は”強者”との戦いを望むバルバトスにとっても格好の相手だ。それを考えると奴も現れる可能性が高いからな。そこの能天気娘から受けた”借り”を返し、奴を滅したい僕にとっては一石二鳥だ。当然僕も付いていくぞ。」
「ソフィ………リオンさん……」
「ま、拘りがあるのはお前だけじゃねえってことだ。抜け駆けはナシにしようぜ。」
「そ、そうだよお兄ちゃん!こーいう時こそみんなで力を合わせなくちゃ!」
「アガットさん、ティータ……。……ありがとう、助かります。その……レンはどうするんだい?間違いなく君の妹―――”殲滅天使”とも対峙する事になるだろうけど。」
仲間達の心強い言葉を聞いたヨシュアは感謝の言葉を言った後複雑そうな表情でレンを見つめて問いかけた。
「うふふ、勿論ついて行くに決まっているでしょう?”犯罪者”にまで成り下がった”偽物の妹”をこらしめて、レンの潔白とレンがユウナとは何の関係もない事を示す絶好の機会だし。」
「レンちゃん…………」
「レン………」
「………やっぱり君も君を憎んでいるユウナと同じようにユウナを憎んでいるのか…………」
レンの答えを聞いたティータは悲しそうな表情をし、エステルとヨシュアは複雑そうな表情をした。
「…………決まりのようだな。遊撃士協会にお願いする。”四輪の塔”の異変の調査と解決をお願いする。これは軍からの正式な依頼だ。」
「うん……分かったわ!」
「しかと引き受けました。」
カシウスの依頼にエステルとヨシュアは力強く頷いた。
「……お祖母様。私に”アルセイユ”を貸していただけませんか?」
「へっ……!?」
「で、殿下!?」
「ほう……?」
「ふふ……確かに一刻を争う事態です。わたくしも”アルセイユ”を提供しようと思いましたが……。そう申し出たということは覚悟が固まったという事ですか?」
クローゼの提案にエステルとユリア大尉は驚き、レイスは興味ありげな表情でクローゼを見つめ、アリシア女王は微笑んだ後、クローゼを見つめて尋ねた。
「いえ……まだです。ですが、船をお返しする時には必ず答えを出すと約束します。」
「ふふ……いいでしょう。リベールの希望の翼、好きなように使ってみなさい」
凛とした表情のクローゼを見たアリシア女王は微笑んで言った。
「ありがとうございます。ユリア大尉、発進の準備を。可及的速やかに”四輪の塔”へ向かいます。」
「承知しました!」
クローゼの指示にユリアが敬礼をし
「……レイシス。クローディアを頼みます。」
「ハッ。この身を盾にしてでも大切な妹……―――いえ、”リベールの未来”を守り抜く所存でありますので、どうかご安心を、祖母上。」
アリシア女王に視線を向けられたレイスは敬礼をした後会釈をしたが
「フフ、決して無理はしないでください。貴方もこれからのリベールにとってなくてはならない存在なのですから。」
「アリシア祖母上……―――はい。必ず全員無事に戻って来ますのでどうかご朗報をお待ちください。」
アリシア女王の言葉を聞くと驚きの表情でアリシア女王を見つめた後会釈をした。
こうして……リベールは”百日戦役”以来の未曽有の事態を迎えた。王国軍の全部隊を指揮するためカシウスとモルガン将軍はそれぞれレイストン要塞とハーケン門に戻り……。エステルたちは”アルセイユ”で各地にある塔に向かうことになった………………
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