英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第64話
その後エステルとヨシュアはルーアンのギルドに向かい、報告をした後、翌日グランセル城に向かい、アリシア女王と傍に控えているモルガンに”グロリアス”やヨシュア自身が手に入れた結社の情報を話した。
~グランセル城・謁見の間~
「―――以上が、これまでの顛末と”方舟”潜入時に掴んだ情報です。」
「むむ……なんたる事だ。そんな化物じみた巨船がリベールに潜入していたとは……。そんなものを持ち出して一体何をするつもりなのだ……」
ヨシュアの話を聞き終え、リベールに”結社”の戦艦が潜入している事を知ったモルガンは唸った後考え込んだ。
「『福音計画』の全貌はとうとう掴めませんでした。ですが、彼らはすでに次の行動を開始しています。」
「たしか……第3段階とか言ってたわよね。」
ヨシュアの説明を補足するようにエステルは呟いた。
「大変な事態になりましたね……。モルガン将軍。王国軍の対応はどのように?」
「昨夜のうちに、この2人からカシウスに連絡が行ったようでしてな。すでに彼の指示で、全王国軍に第1種警戒体制が発令されております。さらに飛行艦隊を出動させて王国全土の哨戒に当たらせました。」
「そうだったのですか……。エステルさん、ヨシュア殿。本当にご苦労さまでしたね。」
モルガンの話を聞いて頷いたアリシア女王はエステルとヨシュアに優しく微笑んだ。
「い、いえ。当然の連絡をしただけですし。」
「正直……もう少し早い段階で連絡すべきだったかもしれません。空賊艇奪還事件の件を含めて本当に申し訳ありませんでした。」
「ちょ、ちょっとヨシュア。」
「いいんだ、エステル。裁きを受ける覚悟はできているから。」
「ふむ……陛下、如何いたしますか?」
覚悟を決めている様子のヨシュアを見たモルガンはアリシア女王を見つめて訊ねた。
「そうですね……。超法規的措置にはなりますが。今回、ヨシュア殿が明らかにした”結社”に関する様々な情報……それをもって過去の行為は不問としましょう。」
「ホ、ホントですか!?」
「ですが……」
アリシア女王の答えを聞いたエステルは明るい表情をし、ヨシュアは反論しようとしたその時、アリシア女王は玉座から立ち上がりエステル達に近づいてヨシュアを無罪放免にする理由を答えた。
「いいのです、ヨシュア殿。この程度の裁量……”ハーメル”の遺児たる貴方への償いにもならないでしょうから。」
「え。」
「………………………………」
「……どうやらご存じだったようですね。わたくしがあの虐殺事件を知りながらも今まで沈黙してきたことを……」
「ええっ!?ど、どういう事ですか!?」
アリシア女王が『ハーメルの惨劇』を知っていた事に驚いたエステルがアリシア女王に訊ねると、モルガン将軍が代わりに答えた。
「戦争開始時、エレボニアは宣戦布告をリベールに行ったが……その時、ハーメル村の虐殺が王国軍によって起こされたという断固とした指摘がなされていたのだ。しかし終戦間際、帝国政府は突如としてその指摘を撤回し、即時停戦と講和を申し出てきた。……ハーメルの一件について一切沈黙することと引き替えにな。」
「!!!」
そしてモルガン将軍の説明を聞いたエステルは絶句した。
「……前後の事情を考えると、帝国内部でどんな事があったのか朧げながら想像がつきました。ですが、反攻作戦が功を奏し、帝国軍は未だ余力を残していました。帝国本土からの増援があったら、王国は再び窮地に陥る事になる―――そう判断したわたくしは……その条件を呑むことに決めました。」
「あ……」
「………………………………」
アリシア女王の話を聞いたエステルは呆けた声を出し、ヨシュアは辛そうな表情で黙り込んでいた。
「……自国の安寧を優先してわたくしは真相の追及を放棄しました。背後にいるはずの被害者たちの無念を切り捨ててしまったのです。かつてロランス少尉がわたくしに告げた『哀れむ資格はない』という言葉……あれは真実、的を射ていたのです。」
「女王様……」
「……どうかご自分をお責めにならないでください。そもそも虐殺に関わりがない上に自国の平和がかかっていたのです。国主としては当然の判断でしょう。」
目を伏せて語るアリシア女王をエステルは心配そうな表情で見つめ、ヨシュアは静かな口調で慰めの言葉をかけた。
「ヨシュア殿……」
「このリベールという国は僕の凍てついた心を癒してくれた第2の故郷ともいう地です。その地を守った陛下のご決断、感謝こそすれ、恨みなどしません。」
「ヨシュア……」
「ありがとう……ヨシュア殿。そう言って頂けると胸のつかえが取れた気がします。」
ヨシュアの答えを知ったエステルはヨシュアを見つめ、アリシア女王がヨシュアに感謝したその時
「エステルさん、ヨシュアさん!」
「あ……!」
「みんな……」
クローゼ達が謁見の間にやって来た。
「エステルさん、よくご無事で……。それに……ヨシュアさんも……」
「よ、よかったぁ……。2人とも帰って来てくれて……!」
「クローゼ、ティータ……」
「2人とも……心配をかけちゃったみたいね。」
「まったくもう……。肝を冷やしてくれるじゃない。」
「へへっ……。だがまあ、家出息子を連れ戻せて何よりだったな。」
「フッ、不幸中の幸いだったな。」
「シェラさん、アガットさん、バダックさん……」
「2人とも……よく無事に戻ってきたな。」
「フッ、これも女神のお導きというものだろうね。」
仲間達がそれぞれ二人の帰還に喜んでいる中ジンとオリビエも明るい表情で二人を見つめていた。
「うふふ、誘拐されてもすぐに脱出した上ヨシュアまで見つけて連れ戻してくるなんてさすがエステルね♪相変わらずレンの予想斜めな上な事をしてくれるわね♪」
「ちなみに俺達がお前の事を心配しながら仕事をしている中レンだけはエステルの事を全然心配していない所か、『そんなに心配しなくてもエステルの事だから、その内帰ってくるわよ』って言って普通に仕事をしていたんだぜ?」
「は、薄情な妹ね~……家族が誘拐されたんだから、心配するのが普通でしょう?」
ルークの話を聞いたエステルは小悪魔な笑みを浮かべているレンをジト目で見つめて指摘し
「や~ね♪ジッとしていられない性格のエステルが大人しく捕まったままだなんて、そんな殊勝な様子が全然想像できないもの♪その証拠にたった1日で脱出してきたじゃない♪」
「ひ、他人事だと思って……」
「まあまあ。裏を返せばレンは貴女なら必ず無事に戻ってくると信じていた証拠よ?」
「フフ、それに”家族”を大切にしている彼女の事だから、決して誰にも悟られないように君の事を凄く心配していたんだと思うよ?」
「やれやれ、リオン並みに素直じゃないお嬢ちゃんだぜ。」
「何故そこで僕が出てくる……!」
ジト目でレンを睨むエステルをなだめるアーシアとレイスの言葉に続くように苦笑しながら呟いたフレンをリオンは睨んだ。
「貴方は……ジューダスさん……!?もしかして貴方もエステル達に協力してくれていたのですか?以前僕が依頼した時は断りましたけど……何か心境の変化があったのですか?」
リオンに気づいたヨシュアは驚いた表情でリオンを見つめて訊ねた。
「フン、非常に遺憾だがそこの能天気娘には借りを作ってしまったからな。その借りを返す為にあくまで手を貸してやっているだけだ。―――それとジューダスは過去の僕の名前で、今の僕の名前はリオン・マグナスだ。」
「そうだったんですか……改めてよろしくお願いします、リオンさん。それとソフィも僕の依頼を受けてエステル達に協力してくれてありがとう。」
「お礼を言いたいのは私の方だよ。ヨシュアの依頼のお陰でエステル達とも”友達”になれたから……ヨシュアを連れ戻すことができてよかったね、エステル。」
「えへへ……ありがと、ソフィ!」
ソフィに微笑まれたエステルは恥ずかしそうな表情で笑った後笑顔で答えた。
(………ヨシュア……………)
仲間達が二人の帰還に喜んでいる中ステラはヨシュアの姿を見ると、辛そうな表情になり
(イオン様、ヨシュアが帰還した事で、ステラが嘘をついていた事もみんなにもバレてしまいますが、どう、しますか?)
(……任務が終われば必ず彼女の正体を判明させる事を約束して、何とか隠し通すしかありませんね。)
ヨシュアに視線を向けたアリエッタに小声で囁かれたイオンは疲れた表情で答えた。
「や~、エステルちゃんが無事なのをこの目でで見てホンマに安心したわ~。」
するとその時ケビンが謁見の間に現れた。
「あ、ケビンさん!」
「エステルちゃんが掠われた時は目の前が真っ暗になったわ。ホンマにもう……あんまり心配させんといてや。」
「うん……ゴメンなさい。」
「んで、こっちが例の……」
「初めまして、ケビン神父。ヨシュア・ブライトといいます。」
ケビンに視線を向けられたヨシュアは自己紹介をした。
「うぐっ……予想以上のハンサム君やね。って、オレのこと知っとんの?」
ヨシュアの容姿を見たケビンは唸った後、ある事に気づいてヨシュアに尋ねた。
「あなたの存在については僕の情報網にも入っていました。エステルの危ない所を何度も助けてくれたそうですね。ありがとう……感謝します。」
「むむむ……まあええか。仲直りしたんやったらオレから言うことは何もないわ。…………ただな。」
ヨシュアにお礼を言われたケビンは唸った後、ヨシュアに耳打ちをした。
(……あんまり可愛い彼女を放っておいたらアカンで。オレみたいな悪い虫にコナかけられたくなかったらな。)
(……肝に銘じます)」
「?どうしたの?」
2人の様子を不思議に思ったエステルは首を傾げて尋ねた。
「いやぁ、ちょいとな。」
「男同士の話をね。」
「なんかヤラしいわね……」
ケビンとヨシュアの答えを聞いたエステルがジト目で睨んだ。
「ちなみにイオン様も男同士の話、した事なかったですよね?”以前のイオン様”は、ルークやアニス達とずっと、一緒でしたし。」
「ええ。僕としてはちょっとだけ興味があったんですけどね……」
「ハハ……(イオンがそんな事に興味を持っていたなんてアニスが知ったら驚くだろうな……)」
アリエッタの疑問に答えたイオンの答えを聞いたルークはかつての仲間の反応を思い浮かべて苦笑していた。
「………お久しぶりです、アリエッタさん。今回もエステル達に協力してくれているとの事で感謝しています。」
「たまたまアリエッタ達の任務が、関係していましたから、ヨシュアが気にする必要は、ありません。」
「……それでも僕は感謝しています。そして貴方がアリエッタさんの上司であるイオン神父ですね。初めまして。クーデターの時は陰ながら母さんを守ってくれていたと聞いています。母さんを情報部の魔の手から守っていただき、本当にありがとうございました。」
「フフ、貴方の兄であるルークは僕にとって古い友人ですからね。僕はルークの友人として当然の事をしただけですよ。」
「イオン……」
ヨシュアの感謝の言葉に対して微笑みながら答えたイオンをルークは口元に笑みを浮かべて見つめていた。
「…………そして貴女がエステルの話にあった……―――――え。………………」
真剣な表情でステラに視線を向けたヨシュアだったが、ステラを見つめた瞬間今は亡きカリンと瓜二つの雰囲気を感じた為、呆けた表情でステラを見つめ
「………………(ヨシュア……)」
ステラは何も語らず、仮面越しにヨシュアを見つめていた。
「あ………え、えっと……ステラさん……その……あたし、あの後”グロリアス”って言う”結社”の戦艦に連れて行かれたんだけど……その時にレーヴェと会ってヨシュアのお姉さんの死の真相やヨシュアが”結社”に入った理由とかを教えてもらったわ。」
二人の様子に気づき、ステラが正体を偽っていた事を思い出したエステルは気まずそうな表情でステラに答えた。
「そうですか……レーヴェが……」
「!!??」
するとその時ステラの声を聞いた瞬間ヨシュアは信じられない表情をした。
「……ヨシュアを連れ戻すことができて本当によかったですね、エステルさん。」
「う、うん。えっと……次はステラさんの番ね!あたしがヨシュアを連れ戻すことができたんだから、ステラさんも……その……レーヴェを連れ戻すことが絶対にできると思うわ!」
「フフ、実際にヨシュアを連れ戻すことができたエステルさんに言われると信憑性がありますね。」
一方ヨシュアの様子に気づいていないステラはエステルの言葉を聞いて微笑みを浮かべていた。
「………………………あの。ステラ・プレイスさんでしたよね?貴女は―――――」
そしてその様子を見守っていたヨシュアが決意の表情でステラに話しかけたその時
「失礼します、陛下。」
カシウスが謁見の間に入って来た……………!
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