英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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外伝~可憐な姉妹の想い~後篇
~エマの私室~
一方その頃エマは自分の部屋に入れたセリーヌを睨んで自分達の事情にエリスを巻き込んだ事に怒っていた。
「うるさいわねぇ……仕方ないでしょう。……を……為にも必要な事なのだから。」
「だからと言って、関係のない人……それもリィンさんの大切な妹を巻き込むなんて、間違っているわ!」
鬱陶しそうな様子をしているセリーヌをエマは厳しい表情で睨んで怒っていたその時
「!?この感覚は……!」
「結界!?一体誰が……!」
部屋全体が結界によって封じ込められた事に気付き、それぞれ警戒の表情をして周囲を見回した。
「うふふ、猫の分際で賢いじゃない。」
「ふふふ、猫は危険察知に長けている動物ですからね。貴女の結界に気付いてもおかしくはないかと。」
するとその時ベルフェゴールとリザイラがエマとセリーヌの前に転移魔術で現れ
「ベ、ベルフェゴールさん……リザイラさん……」
「……一体何の用よ。」
現れた二人を見たエマは安堵の表情をし、セリーヌは二人を警戒した。
「――――今日の旧校舎での出来事。さっきの会話を聞いて確信したわ。施錠していたはずの旧校舎にエリスが入り込んであの甲冑に襲われたのは、やっぱり貴女の仕業だったのね。」
「まあ、彼女が貴女を睨んだ時点でほとんど確信していましたが。」
ベルフェゴールは不敵な笑みを浮かべてセリーヌを見つめ、リザイラは静かな笑みを浮かべてながらも僅かな殺気をセリーヌに向け
「あ………………」
「……だったら、何だって言うのよ。アンタたちはアタシ達の事情に干渉するつもりはないって言ってたわよね?だったら、ほおっておいて。あれもアタシ達にとっては必要な事だったのよ。」
二人の言葉を聞いたエマは辛そうな表情をし、セリーヌは二人を睨んだ。
「そうね。別に私達も貴女達が何をしようと気にするつもりはないけど…………今回の件はちょっと、おイタがすぎたわね?」
セリーヌの言葉に頷いたベルフェゴールは魔力が籠った眼でセリーヌを見つめた。
「…………ぁ…………」
するとセリーヌは放心状態になった後、自身が業火に焼かれ、全身を武器で貫かれる幻惑を見させられ、更に業火に焼かれる熱さや武器で貫かれる痛みを感じた!
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――――――――――――――――ッ!?」
「セ、セリーヌ!?ベ、ベルフェゴールさん……!一体何を……!?」
ベルフェゴールの幻惑の魔術によってその場で暴れながら悲鳴を上げるセリーヌを見て慌てたエマは表情を青褪めさせてベルフェゴールを見つめた。
「唯の幻惑術よ。煉獄の業火に焼かれ、全身を武器で貫かれる夢をね♪純情な乙女を自分の目的の為に危ない目に合わせた”罰”よ♪」
「ふふふ、”大罪”を司る貴女が与える”罰”はさぞかし、恐ろしい内容の”罰”になるのでしょうね。」
ベルフェゴールの説明を聞いたリザイラは静かな笑みを浮かべて感心し
「ご、ごめんなさい!2度とあんな事がないように、私が注意をしますからどうか……どうかセリーヌを許してあげてください……!」
エマは頭を深く下げて謝罪した。
「……まあ、今回の件はその猫の独断専行のようだし、エリスは大した傷は負っていないから、このくらいにしてあげるわ。」
エマの様子を見たベルフェゴールは指を鳴らした。
「ハア……ハア…………ゴホッ、ゴホッ……!」
「セ、セリーヌ!?だ、大丈夫……!?」
ベルフェゴールが術を解除した事によって悪夢から解放されたセリーヌは全身に汗をかいた状態で息を切らせたら咳き込んだりし、その様子を見たエマは心配そうな表情で見つめた。
「―――今回はそれで勘弁してあげるわ。次に自分達の”目的”の為にご主人様の親類並びに親しい人達を利用した挙句、傷つくような真似をしたら、そうね……?どうしようかしら。猫はともかく、その娘を殺したらご主人様も怒るでしょうし。ご主人様を含めたその娘の事を知っている人達全員に暗示系の魔術で忘れさせるのもめんどくさいのよね~。」
「なら、その者達の故郷を滅ぼせばよいのでは?私が精霊達に呼びかければ嵐は勿論、大地震や土砂崩れも起こせますし、海に面しているのなら津波も可能ですよ?」
「そうね、それにしましょう♪”自然災害”なら、誰も疑わないでしょうしね♪」
「え………………」
「何ですって……!?そんな事が許されると思っているの!?」
リザイラの提案に頷いたベルフェゴールの様子を見たエマは表情を青褪めさせ、セリーヌは驚いた後二人を睨んだ。
「うふふ、私は”魔王”よ?”魔王”の気にいらない事をした愚か者に相応の”罰”を与える事は当然の事よ?」
「―――私は”精霊王女”。精霊を統べる王女たる私が”主”と認めた勇者の決意に溢れた光を曇らせるような真似は許しません。」
セリーヌの反論を一方的な暴論で一蹴した睡魔を統べ、”大罪”の一つを司る魔王と精霊を統べる王女はそれぞれ王者の風格を纏い、膨大な殺気をエマとセリーヌに向けると共に不敵な笑みを浮かべ
「………………………………」
「グッ…………!?」
二人の膨大な殺気によってエマは今にも倒れそうなくらい表情を青褪めさせて身体を震わせ、セリーヌも金縛りにあったかのように硬直した。
「うふふ、これにこりたらあんな真似は2度としない事ね♪」
「”魔王”と”精霊王女”の怒りが”警告”で済んだことに心から感謝しておきなさい。」
そして二人が転移魔術で消えるとエマの部屋を封じ込めていた結界も解け、エマは地面に膝をつき、セリーヌは息を切らせていた。
「ハア……ハア……セリーヌ……今回の件は完全に貴女が悪いわ……!リィンさんを慕っている二人の怒りは当然なんだから、今後は絶対にあんな事は2度としないでよ……!」
「ハア……ハア……わかっているわよ……!」
息を切らせているエマに視線を向けられたセリーヌは息を切らせながら悔しそうな表情をした。
~リィンの私室~
「ううっ……まさかこんな事になるなんて…………父さんと母さんに合わす顔がないよ……」
全てが終わった後リィンは疲れた表情で呟き
「むっ……兄様は私達に純潔を奉げられた事がそんなにもお嫌だったんですか?頑張って奉仕もして差し上げたのに。」
リィンの言葉を聞き、エリゼと共にそれぞれが着ていた服に着直したエリスは頬を膨らませてリィンを見つめた。
「い、いや……そんな事はちっとも思っていないよ。でもな?俺達は兄妹なわけだから、そういう関係は世間的に見て非常に不味いくらいわかるだろう?」
エリスの指摘にリィンは疲れた表情で答えたが
「―――”血は繋がっていない”から恋人になれる事は勿論、結婚だってできます。第一それを言ったらシルヴァン陛下とカミーリ皇妃はどうなんですか?お二方は腹違いの子同士で結婚しているのですよ?」
「うぐっ。」
エリゼに反論を封じられて唸った。
「そ、その二人とも……大丈夫か?中に出してしまって……」
そしてすぐにある事を思い出したリィンは恐る恐るエリゼとエリスを見つめて尋ね
「ええ。私は勿論、エリスは今日は安全日ですし、ここに来る前に念の為に妊娠防止用の魔術を私とエリス、それぞれにかけてから来ましたので。」
「なっ!?そ、そんな魔術まで使えるのか!?」
「あの魔術にそんな効果があったんですか…………」
エリゼの答えを聞いたリィンは驚き、エリスは目を丸くした。
「兄様。」
「な、何だ。」
エリスに呼ばれたリィンは戸惑いの表情でエリスを見つめ
「順序が逆になりましたが……この際言っておきます。私――――エリス・シュバルツァーは一人の女性としてリィン・シュバルツァーを心から愛しております。この心は一生変わりません。」
「――同じくエリゼ・シュバルツァー。一人の女性としてリィン・シュバルツァーを心から愛しております。兄様が何者であろうと、この想いは永遠に変わりません。」
「エリス……エリゼ…………」
妹達からの告白を聞いたリィンは返す言葉がなく、黙り込んだ。
「今まで兄妹だったのですから、すぐに私達の事を女性として見る事には無理がある事は重々承知しております。ですから少しずつで構いませんので、どうか私達を”妹”ではなく一人の”女性”として見てください。」
「エリス…………わかった……………これからはそうなるように努力するよ。」
「フフ、よかった。それと兄様。兄様に私達以外の愛する女性ができても、祝福するつもりですので、他の女性と恋愛をなさっても別に構いませんよ。」
「ええっ!?ちょ、ちょっと待て!それだと二人の言っている事と矛盾していないか!?」
エリゼの言葉を聞いたリィンは驚いて反論した。
「―――――何を勘違いなさっているのですか?私達と兄様が将来、夫婦になる事は”決定事項”ですよ?その中に私達が兄様の妻として共に結婚する事を承知する寛大な心を持つ女性が入るだけです。なので、もし私達以外の女性と恋人同士になった時、私達の事は予め説明しておいてくださいね?」
「…………………………」
(うふふ、よかったじゃない♪ハーレム公認で♪)
(ふふふ、とてもできた妹達ですね。)
膨大な威圧を纏って微笑むエリゼの説明を聞いたリィンは口をパクパクさせ、リィンの部屋の外で聞いていたベルフェゴールはからかいの表情になり、リザイラは静かな笑みを浮かべた。
「それでは私達はこれで失礼します。――――ん。」
「おやすみなさい、兄様。―――ん。」
そしてエリゼとエリスはリィンの頬の左右に同時に口付けをした後エリゼの合言葉によってベルフェゴールが展開した結界を解除して部屋を出て行った。
「………………こ、これからどうすればいいんだ……!?というか、何でこんな事になってしまったんだ…………!?ハア………………」
姉妹によって兄妹同士でありながら無理矢理肉体関係の間柄になってしまったリィンは頭を抱えてこれからの自分の将来に悩み続けた。
翌日、エリゼとエリスはリィン達に見送られ、数日後に実技テストの日が来た………………
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