英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第54話
人形兵器を追跡していたリィン達が人形兵器が降り立った場所に急行すると、そこには少女と銀色の人形兵器がいた。
~ノルド高原~
「……!」
「いた……!」
「ほ、本当に子供みたいね……」
「あの銀色の……いったい何でしょう?」
「とにかく逃げられる前に押さえるぞ……!」
リィン達が少女に近づく少し前、少女は銀色の人形兵器を前に考え込んでいた。
「んー、これで大体の状況は掴めたかなー。どうしよっかな……制圧するだけならカンタンだけど逃がしちゃう可能性もあるし。かといってミナゴロシにするのもさすがにカワイソウだしなぁ。」
そして少女が今後の詳細な行動を考えようとしたその時
「―――動くな!」
男子の声が聞こえ、声を聞いた方向に振り返るとそこにはリィン達が少女を睨んでいた。
「あ、シカンガクインの人達だ。」
「俺達のことを……!?」
「ど、どうしてしってるの……!?」
少女が自分達が士官学院の学生である事を知っている事にリィンとアリサは仲間達と共に驚き
「あれ?”姫君の中の姫君”がいなくて、その使い魔達が何でシカンガクインの人達といるの??」
「ええっ!?プ、プリネさんの事まで……!」
「ボク達の事も知っているの~!?」
「ま、精霊女王たるこの私が知られていて、当然ですわね!」
「うむ。我らが有名なのは当然だな!」
少女がプリネの正体やペルル達の事まで知っている事にエマとペルルは驚き、フィニリィとアムドシアスは自慢げに胸を張った。
「貴様……いったい何者だ?」
「そ、その大きなものは一体……」
「―――――」
ユーシスとエマの問いかけに対し、人形兵器は謎の機械音を出して答えた。そしてリィンとガイウスが前に出て少女に問いかけた。
「君は―――いったい何者だ?軍の監視塔と、共和国軍の基地が攻撃されたことに関係しているのか?」
「……無用な疑いはかけたくない。だが、この地にいる理由と名前くらいは教えてもらえないか?」
「むう、なんかロコツに疑われちゃったみたいだし……ちょっと段取りが狂ったかなぁ。」
警戒の表情をしているリィンとガイウスに問いかけられた少女は頬を膨らませた後溜息を吐いたが
「そっかぁ、その手があったか。キミたちが手伝ってくれれば万事解決、オールオッケーだよね?」
ある事を思いついて笑顔になった。
「へ。」
「な、なにを……」
「でも、どれだけ出来るか―――ちょっとだけ試させてね?」
少女の言葉にリィンとアリサが戸惑ったその時、少女は人形兵器の前で何かの構えをした。
「―――ふふっ。」
「―――――」
「くっ……」
「やる気か……!」
少女と人形兵器の様子から戦いを仕掛けてくると判断したリィンとユーシスは少女と人形兵器を警戒した。
「ボクはミリアム。ミリアム・オライオンだよ。こっちは”ガーちゃん”……正式名称は”アガートラム”。それじゃあヨロシクねっ♪」
そしてリィン達は少女―――ミリアムが操る人形兵器―――アガートラムとの戦闘を開始した!
「みんな、行くぞっ!」
「気を逃すなっ!一気にかかれっ!」
「謳え!奏でよ!我等の凱旋ぞ!」
ミリアム達との戦闘を開始したリィン、ユーシス、アムドシアスはそれぞれクラフトで仲間達の闘志を高めた。
「ガーちゃん、先制攻撃だよっ!」
「――――」
そこにミリアムの指示によってアガートラムが片腕を大きく振りかぶって強烈な一撃――――バスターアームをリィン達に放ってきたが
「超、ねこパ~ンチ!!」
対するペルルが強烈な一撃をこめた丸めた翼で攻撃して相殺し、強烈な一撃がぶつかった際の衝撃でアガートラムとペルルの双方は後ろへと吹っ飛ばされた!
「わわっ!ガーちゃんの一撃を相殺するなんてやるね~!」
その様子を見たミリアムは感心し
「感心している場合かしら!?――――燃えちゃいなさい!火炎指弾!!」
「アークス駆動!スパークアロー!!」
そこに詠唱を終えたアリサが指から火球を、オーブンの駆動を終えたエマが雷のアーツをミリアムに向けて放った。
「ガーちゃん、バリアっ!!」
「――――」
自分に襲い掛かってきた2種類の遠距離攻撃を見たミリアムはアガートラムは操縦者を絶対防壁の結界で守護するクラフト―――アルティウムバリアを展開してミリアムを守り
「吹っ飛べ~!!」
「―――――」
ミリアムの指示によって高熱のレーザー――――ライアットビームをアリサとエマに向けて放った。
「貫け、烈輝の陣!レイ=ルーン!!」
しかしそこに片手に魔力を溜め終えたフィニリィが極太の純粋魔力が凝縮されたレーザーを放って二人に襲い掛かるレーザーを呑みこみ、アガートラムに命中させた!
「!?」
「ガーちゃん!?」
フィニリィの魔力レーザーを受けて怯んだアガートラムの様子に気付いたミリアムが驚いたその時、ガイウスが跳躍し
「ハアッ!!」
「わわっ!?」
ミリアムの前に十字槍を叩きつけ、衝撃波を発生させるクラフト―――サベージファングで攻撃し、襲い掛かってきた衝撃波をミリアムは慌てた様子で回避した。
「ファイアッ!!」
「白き刃よ、お願いっ!!」
そこにたたみかけるようにアリサがクラフト―――フランベルジュを、エマがクラフト―――イセリアルエッジを放ち
「ガーちゃん、お願い!!」
「――――」
ミリアムはアガートラムを自分の前に出して襲い掛かって来た炎の矢や白き刃を受け止めさせたが
「二の型―――疾風!!」
「痛っ!?」
仲間達が攻撃している間にミリアムの背後に回ったリィンが電光石火の攻撃をミリアムに叩き込み
「ハッ、ハッ……セイッ!!」
「うわっ!?」
リィンと戦術リンクを結んでいる影響でミリアムが怯んだ隙にユーシスがすかさずクラフト―――クイックスラストで追撃し、ユーシスの攻撃をミリアムは必死に回避していたが
「セイッ!!」
「あうっ!?」
ガイウスのクラフト―――ゲイルスティングに命中して怯んだ。
「我が角の電撃、受けるがいい!」
「行きますわよ……!大放電!!」
「――――――――!!??」
一方魔力を溜め終えたアムドシアスは角から、フィニリィは槍からそれぞれ強烈な電撃を放ってアガートラムに大ダメージを与え
「今よ、エマ!―――メルトレイン!!」
「はい!――――踊れ、炎よ!アステルフレア!!」
アガートラムの様子を見て好機と見たアリサは炎の矢の雨を降り注がせ、エマは魔導杖に内蔵されてある特殊な炎のアーツを放つクラフト―――アステルフレアをアガートラムに命中させ
「行っくよ~!せーの!!」
「!!??」
空から回転しながら突撃して来たペルルのクラフト―――恐怖のごろごろをまともに受けたアガートラムは石柱に叩きつけられた!
「ガーちゃん!?」
石柱に叩きつけられたアガートラムを見たミリアムが驚いたその時
「勝負ありだ。」
「これ以上何か怪しげな事をすれば命の保証はできんぞ。」
「…………降参して、オレ達が聞きたい事を答えてくれ。」
「!!」
リィン、ユーシス、ガイウスがミリアムを包囲してそれぞれの武器の切っ先をミリアムに向け
「降参!降参だから、武器を収めて~!!」
自分の敗北を悟ったミリアムは慌てた様子で両手を挙げて自分の敗北を宣言した!
「わわっ……キミたち、結構すごいなぁ。うんうん。これなら大丈夫そうかな?」
自分の降伏宣言を聞いたリィン達が武器を収めるとミリアムは驚いた様子でリィン達を見つめ、何度も頷いて独り言を呟いた。
「くっ……小娘……いい加減にしてもらおうか!」
「二つの軍事施設への攻撃……やっぱり貴女の仕業なの!?」
ミリアムの言葉を聞いたユーシスは敗北したにも関わらずふざけた態度を取っているミリアムに怒りを感じたのかアリサと共にミリアムを睨んだ。
「だ、だから違うってば~!ああもう、何て説明すればわかってくれるんだろ……」
自分を警戒するリィン達の様子を見たミリアムは慌てた様子で答えた後疲れた表情で肩を落とした。
「―――だったら話せる範囲まででも構わない。君が知っている情報を教えてくれ。」
「俺達の力が必要と言ったな?この地の平穏を取り戻せるのならいくらでも力を貸そう。だから―――どうか話して欲しい。」
そしてガイウスはリィンと共にミリアムに近づいて真剣な表情でミリアムを見つめた。
「…………………………」
ガイウスの言葉を聞いたミリアムは考え込み
「リィン、ガイウス……」
「フン……甘いとは思うが。」
「フウ……そのお人好しさ、ウィルに似ていますわね。」
「アハハ……それを言ったらセリカもそうだよ~。」
「まあ、確かに奴も”神殺し”の癖にお人好しな所があるからな……」
アリサは驚き、ユーシスはフィニリィは呆れ、苦笑するペルルの言葉にアムドシアスは呆れた表情で頷いた。
「―――えっと、ミリアムさんと言いましたか。とにかく時間がありません。私達にどんな事を手伝って欲しいんでしょうか?」
「ふふっ……―――手伝って欲しいのは監視塔と共和国軍の基地を砲撃した連中……数名くらいの武装集団の拘束だよ。」
「…………っ!?」
「な、なんですって!?」
エマの質問に口元に笑みを浮かべて答えたミリアムの話を聞いたガイウスとアリサは驚いた。
「あの迫撃砲を見たでしょ?同じ物が、共和国軍の基地から少し離れた場所に隠してあったんだ。ま、同じ連中が仕掛けたんだろうね。」
「ちょ、ちょっと待て……」
「その武装集団というのは一体どういう……?」
予想外の犯人の正体にユーシスは戸惑い、エマはミリアムに答えを促した。
「詳しくは知らないけど……猟兵崩れっぽいから、高額なミラで雇われただけなんじゃないかな~?ま、これからそのあたりを確かめに行こうと思ったんだけど。」
「待ってくれ……!……という事は……」
「そいつらがどこに居るのか君は知っているのか……!?」
ミリアムの話の様子からミリアムが犯人の居場所を知っているように感じたリィンとガイウスは驚きの表情でミリアムを見つめた。
「うん、高原の北の方だよ。どう、手伝ってくれるなら案内してあげるんだけど?」
「……………………」
ミリアムに尋ねられたリィン達は少しの間黙り込み、そして事件解決の為にミリアムと協力する事が近道と悟って自己紹介をした。
「―――わかった。とりあえず協力させてもらう。トールズ士官学院・Ⅶ組、リィン・シュバルツァーだ。」
「ガイウス・ウォーゼル。」
「アリサ・ラインフォルトよ。一応よろしくね。」
「エマ・ミルスティンです。よろしく、ミリアムちゃん。」
「ボクはペルル!よろしくね!」
「―――”精霊女王”フィニリィですわ。」
「芸術を愛する魔神、アムドシアスだ。」
「ユーシス・アルバレアだ。オーロックス砦の侵入についても色々と話してもらいたいものだが?」
「あ、あはは……ボクたちに気付いてたんだ。それはそれ、これはこれでいったんオネガイシマス。」
ユーシスの問いかけに驚いたミリアムは苦笑しながら答えを誤魔化した。
「フン……調子のいい。」
「ふふっ、まあまあ。」
「えへへ、とにかくよろしく!それじゃあ早速だけど高原の北に向かっちゃおうか?」
「ああ、だがその前にいったん集落に寄らせてくれ。」
「そうね……通信器で門にも状況を説明したいし。」
「よし、とにかく出発しよう。って、君の方は”彼”に乗って行くのか?」
ミリアムと共に出発しようとしたリィンだったがミリアムの移動手段が気になり、アガートラムに視線を向けて尋ねた。
「んー、そうだねぇ。とりあえず、せっかくだしキミの後ろに乗せてもらおっかな?」
「え。」
「ガーちゃん。」
「―――――」
ミリアムの指示によってアガートラムはその場から消えた。
「えっ!?」
「き、消えた……!?」
「……しかも今の消え方は……」
「ほらほら、出発するんでしょ?それじゃあ武装集団を捕えるためにレッツ・ゴー!」
その後ミリアムを加えたリィン達は急いで集落に向かい、長老の住居にある通信器でゼクス中将に調査の結果を説明した。
同日、12:00――――
~ノルドの集落~
「―――では、その武装集団は高原北側に潜伏しているのだな?」
「ええ、間違いないそうです。」
「これから自分達が出向いて押さえるつもりだ。」
「くっ……この状況では仕方ないか。――了解した。15:00までの行動を許可する!くれぐれも気を付けるのだぞ!」
通信器からは学生のリィン達に任せる自分達の不甲斐なさを悔しがるゼクス中将の声が聞こえた後、リィン達の行動の許可と心配する言葉聞こえた。
「はい……!」
「そちらの方はどうかよろしくお願いします……!」
そしてリィン達はゼクス中将との通信を終えた。
「猟兵崩れの武装集団か……」
「猟兵……噂には聞いた事があるが。」
ゼクス中将へのリィン達の報告を聞いていたラカンと長老は重々しい様子を纏って呟き
「ふむ、厄介な連中が入り込んでいたようじゃな。」
グエンは真剣な表情で考え込んでいた。
「―――ですがどうかオレたちに任せてください。」
「この地での戦争……必ずや食い止めてみせます!」
「……決意は固そうじゃな。」
「ふむ……ワシの方はこの通信器でARCUSの導力波を拾えるようにしておこう。何かあったら連絡してくるといい。」
「お祖父様……助かります!」
「風と女神の導きを。くれぐれも気を付けるがいい。」
その後リィン達はミリアムが推測している武装集団が潜伏している場所――――”石切り場”へ馬を急がせた。
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