英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第50話
その後依頼を片付け、昼食をご馳走になったリィン達は昼からの依頼の消化をして集落に戻ると集落の人が使っている導力車が故障しており、集落の人々が知る導力技術で作られた物の故障を直せる技術者を呼ぶ為に、技術者がいる湖の近くにある小屋に向かった。
~ノルド高原・ラクリマ湖岬~
「……どうやら中に誰かいるみたいだな。」
小屋の中から人の気配を感じたリィンは呟き
「えっと……例の御老人ですよね?」
小屋の中にいる人物が件の人物かどうかをエマはガイウスに尋ねた。
「ああ、たぶん釣りから戻られたんだろう。」
「フン、なかなか優雅な暮らしをしているじゃないか。」
「大自然に囲まれた隠居生活ですから、きっと充実した1日を日々送っているのでしょうね。」
ガイウスの話を聞いたユーシスは鼻を鳴らし、ユーシスの毒が微妙に混じった言葉に苦笑するプリネは扉を見つめ
「……どうするの?」
アリサはリィン達に判断を仰いだ。
「ごめんください!いらっしゃいますか!」
「おお、開いとるぞ。遠慮なく入ってくるがいい。」
「!」
リィンの言葉に返した老人の声を聞いたアリサは目を見開いて息を呑み
「ア、アリサさん……?」
「どうかされたんですか?」
アリサの様子に気付いたエマとプリネは戸惑いの表情でアリサを見つめた。
「……?えっと、失礼します。」
アリサの様子に首を傾げながらもリィンは仲間達と共に小屋の中に入った。
「あ―――――」
部屋の中でパイプを吸っている老人の姿を見たアリサは呆け
「……ご隠居。ご無沙汰しています。」
ガイウスは老人に会釈をした。
「おお、ガイウス。半年ぶりくらいじゃの。それとアリサ、直接会うのは5年ぶりになるかな?」
「え。」
「も、もしかして……」
アリサに微笑む老人の様子にリィンは呆け、ある事に気付いたエマは驚きの表情でアリサを見つめ
「お、お、お……お祖父様っ、どうしてこんな所にいらっしゃるんですかっ!?」
アリサは口をパクパクさせた後信じられない表情で声を上げた。その後リィン達は席に座って改めて老人の話を聞き始めた。
「フフ……まあ見当はついておるじゃろうがあらためて自己紹介と行こうか。グエン・ラインフォルト。そちらのアリサの祖父にあたる。よろしく頼むぞい。トールズ士官学院・Ⅶ組の諸君。」
「こ、こちらこそ。リィン・シュバルツァーです。」
「初めまして……エマ・ミルスティンです。」
「お初にお目にかかる。ユーシス・アルバレアだ。」
「プリネ・カリン・マーシルンと申します。よろしくお願いします。」
老人――――アリサの祖父であるグエンが名乗るとリィン達はそれぞれ自己紹介をした。
「ふむ、なかなか見所のありそうな面々じゃな。いや、しかし5年も経つと見違えるほど成長したの~。背はもちろんじゃが、出てるところも立派に出て。うむうむ、本当にジジイ冥利につきるわい♪」
アリサの身体をよく見て感心したグエンの言葉を聞いたリィン達は冷や汗をかき
「お、お祖父様!本当に……!今までどうしてたんですか!?す、全て放り出してルーレからいなくなって……!どれだけ私が心配したと思ってるんですかっ!?」
アリサは呆れた後グエンを睨んで声を上げた。
「一応、季節ごとには便りを出しておったじゃろう?お前がシャロンちゃんに届けた手紙もいつもちゃあんと読んでおるしな。」
「だ、だからと言って……!……5年も前からここでずっと暮らしてたんですか?」
「うむ、もっとも1年中、暮らしておるわけではないが。1年の半分くらいは、帝国に戻ったり、大陸各地の知り合いの所に遊びに行っておる。」
「そう……だったんですか。」
今まで知らなかった祖父の5年間の行動を知ったアリサは複雑そうな表情で頷いた。
「その、グエンさん。どうやら俺達の実習についても詳しくご存知だったみたいですね?」
「そ、そう言えば……」
「まるで俺達が来るのを待っていたような様子だったな。」
「もしかして”特別実習”の依頼を出したのですか?」
リィンの疑問を聞いたエマはグエンが自分達の事を知っているように言った事を思い出し、ユーシスは呆れた表情で苦笑するプリネと共に尋ねた。
「ふふ、集落の運搬車が壊れたというのは偶然じゃが。実習の期間中、お前さんたちが訪ねてくるだろうとは思っていた。イリーナの連絡にもあったしな。」
「!?か、母様と今でもやり取りをしてるんですか!?」
グレンの説明を聞いたアリサは信じられない表情で尋ねた。
「まあ、必要最低限じゃが。我が娘ながら、仕事が楽しくて仕方ないようだからの~。やれやれ、どこでどう育ったらあんな仕事中毒になるのやら。」
「……………………」
呆れた表情で母親(イリーナ会長)の事を語るグエンをアリサは複雑そうな表情で見つめ
「アリサさん……?」
「……………………」
アリサの様子に気付いたエマは首を傾げ、リィンはジッと見つめていた。
「さて、コーヒーも飲み終えたしとっとと修理に向かうとするか。ガレージで工具を取ってくるから少し待っておるがいい。そうじゃガイウス。大岩魚が何匹か釣れたから持って行ってくれんか?」
「ええ、ありがたく。」
そしてグエンとガイウスは小屋を出て行き、その様子をリィン達は見守っていた。
「………RFグループ先代社長、グエン・ラインフォルトか。名前だけは知っていたがずいぶん軽妙な老人だな。」
「そ、そうですね……飄々とされているというか。」
「えっと……親しみ安い方でしたね。」
「……ふう、いいわよ。別に気を遣わなくっても。趣味人で、飄々としててみんなから愛されているけど気まぐれでいいかげんで……5年前だって……」
ユーシスやエマ、プリネの気を遣っている言葉を聞いたアリサは溜息を吐いた後複雑そうな表情でかつての出来事を思い出し
「アリサ……?」
その様子をリィンは不思議そうな表情で見つめた。
「ううん、何でもない。―――私達も行きましょ。すぐに集落に戻るでしょうし。」
「ああ、そうだな。」
その後リィン達はグエンと共に集落に戻る事になり、グエンの希望によってグエンはリィンの後ろに乗せてもらい、リィン達は馬で集落まで戻り始めた。
~ノルド高原・夕方~
「……まったく……どうしてリィンなのよ……ま、まさか変なこと吹き込まれてないでしょうね?」
馬を走らせているアリサは時折リィンの背後に乗るグエンを見た後ブツブツ呟き
「ふふっ、まあまあ。そ、それよりちゃんと手綱に集中してくださいね……?」
その様子を苦笑しながら見ていたエマはアリサに忠告した。
「そうそう、そう言えばシャロンちゃんは元気かね?お前さんたちの寮で働き始めたと聞いたが。」
一方グエンはリィンに呑気な様子で尋ねた。
「ええ、俺も知り合ってまだ日は浅いですけど……すごく有能な人みたいですね。」
「有能というのは勿論じゃが、それ以上に可愛いじゃろ~?慎ましくて可憐で、それでいて悪戯っぽい立ち振る舞い……く~っ、ワシの専属メイドとしてこちらに来てほしいくらいじゃ!」
「は、はあ……」
グエンに同意を求められて答えに困ったリィンは戸惑いの表情で頷いた。
「ふむ、しかしあのエマちゃんも超ないすばでーで眼鏡っ子じゃし、とてもええの~。しかも成績優秀な委員長とはまあに死角ナシじゃな!それにあの”闇の聖女”の娘さんであるプリネちゃんも、とても子持ちとは思えんほど綺麗なお母さんに似て美人じゃし出てる所は出ているし、しかも家事も完璧と聞く。まさに女性としてパーフェクトじゃ!お前さんもそう思うじゃろ!?」
(うふふ、よくわかっているじゃない♪)
(ふふふ、さて……ご主人様は一体誰を選ぶのでしょうね?)
(あら♪そんなの勿論、ハーレムに決まっているじゃない♪)
(ふふ、結婚する際に揉めないとよいのですが。……まあ、私としては自然と共に生きる事を決意する人間の意思を継ぎし者達が増えるのは歓迎しますが一体何人になるのやら……)
「いや、確かにそう思わなくもないですけど…………………………」
答え難い質問を次々とするグエンの言葉を聞いたベルフェゴールとリザイラはそれぞれ口元に笑みを浮かべて互いにリィンの将来の伴侶について念話で語り合い、リィンはグエンの問いかけに戸惑ったが少しの間考えてグエンにあってからずっと疑問に思っていた事を尋ねた。
「―――あの、グエンさん。どうして今までアリサに所在を教えなかったんですか?」
「ふむ……なあ、リィン君。お前さんから見たアリサはどんな子だと思う?」
「それは…………頑張り屋だと思います。その、色々な意味で。」
グエンに問いかけられたリィンは今までのアリサの事を思い出して答えた。
「ああ、そうじゃな。見ての通り器量良しじゃし、貴族の子女にも負けぬ振る舞いや教養を身につけておるじゃろ?無理をしているわけではなくて。」
「そうですね……正直、凄いと思います。……ですが…………」
「人に頼らず何でも一人で解決しようとする……そんなところがあるじゃろ?」
「ええ……そんな風には感じていました。義理堅くて、人には親切で。でも、自分の事は人に頼らず全て一人で抱え込もうとする……」
アリサの今までの言動を思い出したリィンは真剣な表情で考え込みながら答えた。
「多分、あの子のそんな性分はワシと娘の仲が原因なんじゃろう。すなわち祖父と母親の対立が。」
「……!」
「ワシが所在を告げなかったのもそのあたりが原因でな……だがまあ、これ以上ワシの口から言うわけにはいかん。お前さんが孫娘とイイ仲になれば自然と教えてくれるじゃろ。」
「いい仲って……何か誤解していませんか?」
グエンの言葉を聞いたリィンは冷や汗をかいて答えた。
「おや、違うのかの?手紙でお前さんの名前を見たからてっきり何かあったかと思ったが。」
(あら♪)
(ふふふ、さすが家族は聡いですね。)
目を丸くして言ったグエンの言葉を聞いたベルフェゴールは興味ありげな表情をし、リザイラは静かな笑みを浮かべ
「いや、その……不幸な偶然はありましたけど。単なるアクシデントですし仲直りしてからは何も……」
リィンは戸惑いの表情で答えた。
「ほう、アクシデントか。登校途中にパンを咥えたあの子と曲がり角でぶつかりでもしたかの?それで偶然、ムフフでラッキーな体勢になったりしたとか!」
「な、何でそんなに意味不明に具体的なんですか。それにラッキーな体勢って――――!………………」
グエンの問いかけにリィンは戸惑った後地下校舎での出来事を思い出して黙り込み
「おおっ!?本当に何かあったのか!?それは詳しく、えぐり込むように聞かせてもらおうじゃあないか!?」
リィンの様子を見たグエンは興味ありげな表情でリィンに問いかけた。
「フフ、私でよければ話してあげるわよ♪」
「ふふふ、お孫さんとご主人様の仲は他の男性と比べると随分仲がいいのは本当ですよ?二人で共にこの私を破ったのですから。」
するとその時馬を走らせているリィンの両脇にベルフェゴールとリザイラが現れてそれぞれ飛行しながらリィンとグエンが乗る馬と並び
「なっ!?ベルフェゴール!?リザイラ!?」
「おおっ!?随分とベッピンでないすばでーなお嬢さん達じゃないか……!その年でこれ程の素晴らしいお嬢さんを二人も侍らすとはやるではないか!アリサの事も含め、詳しく聞かせてもらおうじゃあないか!?」
突如現れた二人にリィンは驚き、グエンは興味ありげな表情で二人を見つめた後リィンに問いかけ
「もう、お祖父様っ!ベルフェゴールとリザイラも!それ以上何か余計な事を言ったら許さないわよっ!?」
(?どうしてアリサは怒っているんだろう??)
その様子に気付いたアリサが馬のスピードを抑えてリィン達と並んで3人を睨んで怒鳴り、アリサの様子をミルモは首を傾げて見つめていた。
「んー、あれって……シカンガクインの人達だ。何でこんな所にいるんだろう?」
一方オーロックス砦に侵入した水色の髪の少女が遠くからリィン達の姿を確認して首を傾げ
「ま、いっか。何だか色々と面白くなりそうだし♪」
「―――――」
すぐに気を取り直して片手を天へと掲げた。すると少女の背後に銀色の人形兵器が現れ
「うん、それじゃあ任務、開始しちゃおっかな♪まったくオジサンたちも要求レベルが高すぎるよねー。」
「――――――」
少女は人形兵器の片腕に乗ってどこかへ飛び去った。
ページ上へ戻る