英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第49話
ボースに到着したルーク達はギルドに向かった。
~遊撃士協会・ボース支部~
「いや~、グランセルからわざわざご苦労じゃったな。しかし……『獅子王』、『不動』、『焔の剣聖』、『小剣聖』、『暁』、『不屈』、『銀閃』、『重剣』に加えて期待のルーキーの揃い踏みか。何とも豪華なメンバーじゃのう。」
ボース支部の受付である老人―――ルグランはボース支部に集まった精鋭達を見回して思わず感心した。
「期待のルーキー??」
「わはは、お前さんのことじゃよ。3つの地方で『結社』の陰謀を立て続けに阻止した驚異の新人……そんな風に噂されておるようじゃ。」
「じょ、冗談!陰謀を阻止したなんて買いかぶりもいいところだわ。いつも『実験』が終わってから余裕で逃げられちゃってるし……」
ルグランに感心されたエステルは謙遜した様子で答えた。
「むう。レン達があのオバサン達をもっと早く見つけていたら、レン達の方が勝ってたかもしれないのになあ。」
「あのな……競争をしている訳じゃねえんだぞ?」
頬を膨らませたレンの言葉を聞いたルークは呆れ
「まあ、功名心がある事は良い事だと思うぜ?」
「そうね……やりすぎて、周りを見失っていなければいいと思うわよ?」
「失礼ね。そのくらいの事、レンはわかっているわ。」
フレンとアーシアの言葉を聞いたレンは溜息を吐いた。
「だが、俺が聞く所新人ながらも他の正遊撃士達に負けない活躍をしていると聞く。そこのところはどうなのだ?」
「まあ確かに、今までの地方ではなかなか良い動きをしてくれていたぜ。」
「あ、あれはその、偶然が重なったっていうか……」
バダックの疑問に答えたアガットの称賛にエステルは照れ
「はは、照れるなっての。要は評判に見合うだけの働きをすりゃあいいんだからな。」
「もう、簡単に言わないでよ。」
ジンの言葉を聞き、溜息を吐いた。
「フム。そして………エルナンからは聞いておるが、お嬢ちゃんがヨシュアに雇われたという異世界の兵―――いや、異世界出身の少女か。」
「………私は自分の世界に帰る前にできればバルバトスを排除したいと思っていたから、エステル達に同行している……唯それだけ。」
ルグランに視線を向けられたソフィは淡々と答え
「エステル達を相手にたった一人で圧勝する腕前を持つ者が警戒する男か………やれやれ、”結社”の事でも頭が痛いというのに、厄介すぎる存在じゃな。できればそのジューダスとやらに詳しい話を聞きたいのじゃがな?何でも話によれば、そのジューダスとやらがバルバトスの事を一番良く知っているようじゃし……」
ソフィの答えを聞いたルグランは疲れた表情で溜息を吐き
「―――ジューダスがあの後どこに行ったかは私もわからない。ジューダスもヨシュアにエステル達に同行してくれって頼まれていたけど、『雑魚共と群れる趣味はない』と言って断っていたよ。」
「むっかー!何よ、そいつ!?あたし達が”雑魚”ですって~!?滅茶苦茶生意気な人ね!ソフィ!その人って何歳なの!?」
ルグランに説明したソフィの話を聞いて怒りを感じたエステルはソフィに尋ねた。
「確か……エステルと同じ17歳だよ。」
「ええっ!?」
「エ、エステル達と同い年でそのバルバトスって奴と渡り合えるなんて……」
「うふふ、もしかしてレンみたいな天才なのかしら?」
「相当の腕前である事は確かだな。」
「ああ。できればソフィのように私達の仲間に加わってくれたら心強い味方となっただろうね。(ひょっとしたらリッドと互角―――いや、それ以上かもしれないな……)」
まだ見ぬ強者の年齢を聞いたクローゼとルークは驚き、レンとバダック、レイスは興味を持っていた。
「フンだ!いくら強くたって、協調性がないから、連携が取れなくてやり辛いから、こっちから願い下げよ!それはともかく……ボースでの状況はどうなの?」
「うむ、今のところ『結社』が関与していると思しき事件は起こっておらんよ。例の空賊艇の奪還事件以来、軍の警戒も厳しくなっておるしな。あえて言うなら……手配魔獣が増えておるくらいか。」
「フン……そうか。」
「ボースって、手配魔獣が現れるのが他の地方よりも多い気がするわね。前に来た時もそうだったけど何か原因でもあるの?」
ボース地方は他の地方と違い、手配魔獣が多い事に気付いたエステルは首を傾げて尋ねた。
「元々ボース地方は広いし、険しい地形に囲まれておるからの。そういった場所から凶暴な魔獣が降りてくることが多いんじゃが……。それにしても今月に入ってからすでに10件も報告されておってな。」
「それは多いわね……。スティングさんあたりが頑張ってくれてるのかしら?」
「うむ、それとクルツたちも先日立ち寄ったついでに何匹か退治していってくれた。できればお前さんたちにも手伝ってもらいたいんじゃが。」
「ふむ……そうした方が良さそうだな。凶暴な魔獣の増加にしても『結社』が絡んでいるのかもしれん。」
「うんうん、このまま放っておくと危ないし、ここは退治を優先しちゃいましょ。」
「………………………………」
エステル達が話しあっている中、アガットは真剣な表情で黙り込んでいた。
「???アガットさん。どーしたんですか?」
「あれ、どうしたの。」
「いや……何でもねえ。とりあえず、今報告されてる手配魔獣を片っ端から退治するか。」
「フム、そうか。助かるぞい。………おや。」
アガットの言葉にルグランが頷いたその時、ギルドに金髪の女性と黒髪のメイドが入ってきた。
「……失礼しますわ。」
「メイベル市長……それにマリアンさんじゃない!」
ギルドに入って来た女性――ボース市長メイベルとメイベル市長に仕えるメイドの一人、マリアンにエステルは驚いた。
「うふふ、ご機嫌よう。エステルさん。ようやく再会できましたね。」
「……ご無沙汰しております。」
「うわ~、何だか久しぶりねぇ。生誕祭の時以来だったっけ?リラさんも元気?」
メイベル市長とマリアンを見たエステルは懐かしそうな表情で話しかけた。
「ええ、リラ共々元気にしていますわ。エステルさんのお噂は色々な所で耳にしていますわ。それとレンさんとルークさんもお久しぶりですわね。」
「ああ。」
「うふふ、久しぶりね、メイベル市長。それと気になっていたんだけど、そちらのメイドさんは新しく雇い入れたのかしら?以前会った時はいなかったわよね?」
「そう言えば前はいなかったよな……?確かいつも連れ歩いているメイドはリラさんじゃなかったっけ……?」
「あれ……ルーク兄とレンはマリアンさんの事、知らないの?」
レンとルークの疑問を聞いたエステルは首を傾げ
「お二人が最後に私と出会ったのはマリアンが我が家に来る少し前ですから彼女の事は知らなくて当然ですわ。―――マリアン。」
「はい。―――マリアン・フュステルと申します。僭越ながらリラさんの補佐をさせて頂き、メイベル様に仕えておりますので、今後ともお見知り置きを。」
メイベル市長に促されたマリアンは会釈をした。
「フフ、補佐とは言っているけど貴女のメイドとしての腕を考えれば、リラとほぼ同等ですから、リラがもう一人増えたようなものですから貴女が我が家に来てくれたお陰で私とリラは大助かりですわ。」
「……恐縮です。」
「フッ、その謙虚な所もまた美し………!?ガクガクブルブル………!」
メイベル市長の言葉に謙虚な様子で答えたマリアンに声をかけようとしたオリビエだったが突如襲って来た寒気に身体を震わせていた。
「どうしたの?あんたがナンパを中断するなんて、珍しいわね?」
「いや……何か突如寒気が襲って来て。」
「何それ。」
シェラザードの疑問に表情を青褪めさせて答えたオリビエの言葉を聞いたエステルは首を傾げ
「フフ、もしかしたらマリアンに恋心を持つ男性の嫉妬かもしれませんわね。」
「メ、メイベル様。」
「「「…………………」」」
(何だ?今スゲェ殺気がギルドの外から感じてきたが……)
(今のは”殺気”か……?誰かギルドの外にいるのか?)
(うふふ、案外当たっているかもしれないわね♪)
メイベル市長のからかいにマリアンが顔を赤らめている中、一瞬感じた殺気を感じ取っていたバダックやソフィ、レイスとルーク、そしてジンとレンは殺気がした方向にある窓に視線を向けたがそこには誰もいなかった。
(坊ちゃん~。今の坊ちゃん、かつてカイル達と出会った後、そのまま陰で見守っていた頃の坊ちゃんとそっくりですよ?というか名前どころか顔も同じみたいですけど、幾ら何でもボース市長の傍にいるマリアンは坊ちゃんが良く知るマリアンではないと思うのですが……)
「フン。例え別人であろうと、マリアンにあんな軽薄な男が近づく等万死に値する。」
(ハア……一体いつまでこんな事を続けるつもりなんですか……)
ルーク達が視線を向けた先の窓の傍の壁にはジューダスが気配を消してギルド内の会話を聞くのに集中していた。
「あら?まあ……!レイス先輩ではありませんか!一体いつリベールにお戻りになられたのですか?」
「やあ、久しぶりだね、メイベル。リベールに戻ったのは今朝だよ。」
「え……メイベル市長、レイスさんの事を知っているの?」
レイスと互いに懐かしそうな表情で挨拶をし合っているメイベル市長に目を丸くしたエステルは訊ねた。
「学園時代の先輩ですわ。それと先輩の”本来の身分”も私が幼い頃より存じておりますわ。」
「そ、そうなのですか?メイベル先輩は一体どこでお兄様と出会われたのですか?」
「父がまだ健在だった頃、父の紹介で女王陛下に初めてお目通りした際、女王陛下からもレイス先輩を紹介されたのです。」
「そうだったのですか……」
メイベル市長の説明を聞いたクローゼは目を丸くした。
「フフ、カシウスさんが軍に戻り、先輩も戻って来て下さった今のリベールでしたら例えどのような脅威が訪れても大丈夫でしょうから、ボース市長として……そしてリベールの一市民として安心できますわ。」
「ハハ、さすがにそれは買いかぶり過ぎだよ。放蕩者の私にできる事なんて本当に限られているから、そんなに期待しないでくれ。」
メイベル市長の賛辞にレイスは苦笑しながら答えた。
「フフ、ご謙遜を。それと……アガット・クロスナーさん。お久しぶりですわね。」
レイスに微笑んだメイベル市長はアガットに視線を向けて話しかけた。
「……まあな。」
「あれ、アガットって市長さんと顔見知りだったの?」
「何度か依頼を通じてお世話になっていますわ。それと10年前に……」
「おい……嬢さん。」
エステルに説明したメイベル市長がある事情を説明しようとした時、アガットが制止の声を出した。
「……失礼しました。今日のところは、皆さんがいらっしゃったと聞いたので挨拶に伺わせていただいたのです。聞けば、王国全土を騒がす国際犯罪組織を追ってらっしゃるのだとか?」
「こ、国際犯罪組織……」
「少し雰囲気は違うけれど、そう思ってくれて構わないわ。」
「ボース市としても犯罪組織の暗躍は他人事ではありません。可能な限りの協力をさせて頂きますわ。」
「うん、その時はよろしくお願いします。」
「フン……ま、せいぜい期待してるぜ。」
「では、わたくしたちはこれで失礼させていただきます。何かありましたら市長邸までいらしてくださいね。」
「……失礼します。」
そしてメイベル市長とマリアンはギルドを出て行った。
「やれやれ、アガット。お前さん、もう少し愛想良くはできんのか?」
「悪いが、これが地でね。サービス業じゃねえんだ。その辺は勘弁してもらうぜ。」
「うーん、確かにアガットって誰に対しても横柄だけど……それでも対応そのものは割と丁寧な感じがするのよね。でも、さっきの市長さんには素っ気なく感じたんだけど。」
「………………………………」
エステルの疑問を聞いたティータは心配そうな表情でアガットを見つめていた。
「へっ。気のせいだろ。それよりも、さっさと手配魔獣を退治しちまうぞ。爺さん、一通り教えろや。」
「うむ………報告されている手配魔獣は…………」
その後ルーク達はそれぞれのチームに分かれて手配魔獣を退治する事にし、それぞれ手配魔獣を退治した後ギルドに戻ってきた。
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