英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第48話
~遊撃士協会・グランセル支部~
「つ、つまりソフィさんは”生きた兵器”……という事なのでしょうか……?」
ソフィの正体を知ったその場にいる全員が驚きのあまり絶句している中、我に返ったクローゼが信じられない表情で訊ねた。
「うん、大体それであっているよ。」
「嘘だろ、オイ……どこからどう見ても俺達と同じ人間にしか見えねぇぞ……?」
「だが、さっきの戦いでその嬢ちゃんが見せた人間離れした動きや嬢ちゃん自身が光みたいなものになって凄まじい攻撃をしたことを考えれば、納得だな……」
「い、一体ソフィさんの世界では技術がどれだけ進んでいるんだろう……?わたし達の世界の技術じゃ、どんなに頑張っても人間そっくりの兵器や空気が完全にない宇宙空間を移動する飛行船……ううん、”宇宙船”なんて創れないよ……」
「そうね。特にソフィお姉さんは”創られた存在”でありながらレン達―――人間と同じように”感情”もあるのだから、ゼムリア大陸からしたらまさに”未知の存在”ね。さっき別れた”星杯騎士”の神父さん達がこのお姉さんの事を知れば、”古代遺物”として”回収”しようとするのじゃないかしら?」
「……さすがにそれはないと思うわ。確かに彼女は通常の”古代遺物”より遥かに凄まじい存在だけど、異世界の存在だから”星杯騎士団”―――いえ、ゼムリア大陸の人々が手を出す事が許されない存在よ。本来その世界に存在しない技術に手を出せば、必ず”世界の理”が崩れるわ。それを考えると”回収”ではなく”保護”をして、彼女を守ろうとすると思うわ。」
クローゼの疑問にソフィが肯定するとアガットは信じられない表情でソフィを見つめ、フレンは静かな表情で呟き、ティータは不安そうな表情で呟き、意味ありげな笑みを浮かべたレンに視線を向けられたアーシアは真剣な表情で推測を口にした。
(”生きた兵器”か…………)
「………………」
かつて尊敬する師匠や祖国に”兵器”として使われた事があるルークは複雑そうな表情でソフィを見つめ、ルークの様子に気づいたバダックは目を伏せて黙り込んでいた。
「フム……君の話では君の故郷……いや、”星”は滅びたと言っていたが、もしかして先程君が口にした”エフィネア”というのは他の”星”の名前の事かな?」
その時ソフィの話を聞いてある事に気づいたレイスはソフィを見つめて訊ねた。
「うん。”エフィネア”は今の私にとっての故郷―――ラントが存在する星で、私はそこでずっと家族と一緒に生きているの。」
「へ?”家族”??」
「それに貴女の今の故郷が貴女のファミリーネームと同じだけど、何か関係があるのかしら?」
兵器であるソフィに家族がいる事を知ったエステルは首を傾げ、ソフィのファミリーネームがソフィの故郷と同じである事が気になったシェラザードは不思議そうな表情で訊ねた。
「うん。”ラント”は領地の名前であると同時にその領地を治める領主の家族の名前でもあるの。」
「という事はソフィさんはその”ラント”という領主の親族という事でしょうか?」
ソフィの説明を聞いてある事に気づいたエルナンはソフィに訊ねた。
「そうだよ。”ソフィ”はアスベル達から貰った名前で”ラント”はアスベルから貰った私がアスベルの”家族”である証の名前で、どちらも私にとっては大切な名前。」
「”アスベル”って誰??」
「もしかしてその”ラント”って領地の領主の名前か?」
ソフィの口から出た初耳の名前にエステルは首を傾げ、今までの話からその人物がソフィの故郷の領主である事を察したルークは確認した。
「うん。”プロトス1”の私はアスベル達と違って限りない時を生き続けるから、いつかアスベル達とも永遠の別れが来て私だけがずっと誰もいなくなった世界で生き続ける事を悩んでいたのだけど………その事に悩んでいる私の為にアスベルは私をアスベルの娘―――”家族”にしてくれたの。そのお陰でアスベル達がいなくなった後の生き続ける目標ができて、今も生き続けているの。」
「その”目標”というのは何かしら?」
ソフィの話が気になったアーシアは真剣な表情で訊ねた。
「今いる人達だけじゃなくその子供達や子孫の人達をずっと笑顔にしたいって言うアスベルの想いをアスベルの子供達やその子孫に伝える事で、アスベルの想いを未来へと繋げて見守り続ける……それが私がずっと生き続ける為の”目標”だよ。」
「………………」
目の前にいる見た目は少女であるソフィが優し気な微笑みを浮かべて答えた想像もしていなかった話を聞かされたエステル達は驚きのあまり絶句した。
「フッ、彼女の方が俺達とは比べものにならない立派な”人間”だな。」
「ソフィさんもそうですが、そのアスベルという方も私達では到底考えつく事もできない立派な考えを持っている方なのですね…………」
「ハハ……ボクとしたことがガラにもなく胸が迫っているよ……」
「ま、今の話を聞いて涙腺が緩まない方がおかしいだろ……」
バダックは静かな笑みを浮かべてソフィを見つめ、クローゼは眩しそうにソフィを見つめ、寂しげな笑みを浮かべているオリビエにフレンは静かな表情で指摘し
「ちなみに貴女は自分の世界では今までどのくらいの年月を過ごしてきたのかしら?」
シェラザードは複雑そうな表情でソフィに訊ねた。
「えっと……今年でアスベル達と永遠のお別れをしてから300年だね。」
「さ、300年!?しかもそのアスベルって言う奴が生きていた頃から生きていたことになるから、最低でも300年以上は生きているって事になるじゃねぇか!」
「嘘だろ、オイ……」
ソフィが生きてきた膨大な年月を知ったルークとアガットは信じられない表情でソフィを見つめた。
「えっと……その……ソフィはやっぱり自分の世界に帰りたいのよね?」
「うん。」
「そっか……それじゃあソフィが元の世界に帰る方法、あたしも一緒に探してあげるわ!」
エステルが突如言い始めたとんでもない事にその場にいる全員は驚きの表情をし
「お、お姉ちゃん!?」
「エステルはそれが凄い難しい話である事はわかっていて言っているのかしら?」
ティータが声をあげて驚いている中、レンは静かな表情でエステルに訊ねた。
「勿論よ!確かにソフィを元の世界に帰してあげる方法を見つけるなんて凄い難しい話だろうけどソフィは故郷に帰れなくて困っているでしょう?困っている人を助ける……それがあたし達遊撃士じゃない!それにソフィがあたし達の世界に来たんだから、その逆も必ずあるはずよ!」
「エステルさん……」
「全く、この娘は……」
「フッ、もはや天晴と思うほどの前向きさだね。」
「ハハ、さすがはカシウスの旦那の娘だな。」
エステルの前向きな答えを聞いたクローゼは微笑み、シェラザードは苦笑し、オリビエは口元に笑みを浮かべて、ジンは感心した様子でエステルを見つめていた。
「……どうしてエステルまで私が元の世界に帰る方法を一緒に探してくれるの?エステルとは今日会ったばかりだよ?」
「さっきも言ったでしょう?遊撃士は困っている人を助ける為の存在よ。それにソフィとは今日から友達になるんだから、友達の困っている事を解決するのも友達の役目でしょう?」
「”友達”……―――ありがとう、エステル。今日からエステル達も私の”友達”だね。」
エステルの口から出た自分にとって最も大切な言葉を聞いたソフィは呆けた後微笑んだ。
「フフ、話がまとまって何よりだが彼女の正体が”異世界の生きた兵器”である事については秘匿情報として扱い、彼女の正体を知る人物は必要最低限にした方がいいだろうね。」
「レイシスお兄様?それは一体どういう事でしょうか?」
レイスの提案を疑問に思ったクローゼは不思議そうな表情で訊ねた。
「……”生きた兵器”である彼女に秘められている異世界の技術は各国の軍や研究関係の組織もそうだし、”結社”を含めた多くの様々な組織にとっても魅力的な技術よ。未知の技術である異世界の技術欲しさに彼女が狙われない為にも彼女の正体を知る人達は可能な限り少なくするべきである事をレイシス殿下は仰っているのよ。」
「確かにその可能性は十分に考えられるな……」
「……俺達正遊撃士が複数集まった部隊を単独で圧倒した強さを持つソフィが”兵器”であると知られれば、戦力強化や戦争を有利へと導く為に彼女を拉致、そして解剖しようとする組織も現れるだろうな。」
アーシアの説明に同意するようにバダックとジンは重々しい様子を纏って頷き
「か、”解剖”って……そんな事、絶対にさせる訳にはいかないわ!」
「ええ、その通りです。レイシス殿下とアーシアさんの仰る通り、ソフィさんの正体を知る人物は可能な限り少なくするべきです。」
アーシア達の推測を聞いたエステルは憤り、エルナンは真剣な表情でエステルの意見に同意した。
「エルナンお兄さん、レン達以外でソフィお姉さんの正体を知る人物は具体的にはどうするのかしら?」
「そうですね………リベールの各支部の受付と後はアリシア女王陛下とカシウスさんのみにしておいた方がいいでしょうね。各支部の受付には盗聴防止用の周波変更機能を使って彼女の事を伝えて、アリシア女王陛下とカシウスさんには私自身がグランセル城とレイストン要塞に赴いて伝えておきます。」
レンの質問にエルナンは考え込みながら答え
「そ、そこまでするの!?」
エルナンの徹底した情報の伝え方にエステルは驚いた。
「ええ、念には念を入れておきませんと。」
「あのあの……お祖父ちゃんへの報告書にソフィさんの正体についてはやっぱり書いちゃダメですか?」
「ええ、ラッセル博士への報告書が第三者に盗難された時の可能性を考えたら申し訳ありませんが止めてください。ソフィさんの事は異世界から現れた方である事だけに留めておいてください。」
「それ以前にそいつが”生きた兵器”である事をあの爺さんが知ったら目の色を変えてそいつを解剖したがるだろうから、あの爺さんにだけは絶対にそいつの事を教えたらダメだろ。」
「アガットさん~……幾らお祖父ちゃんでも、そんな人として間違った事はしませんよ~。」
エルナンの後に呆れた表情で指摘したアガットの推測を聞いたティータは疲れた表情で指摘した。
「みんな……私の為に色々考えてくれてありがとう。」
「フフ、我々は当然の事をしているだけの事ですよ。――――そう言えば貴女が異世界の方である事を知ってから気になっていたのですが、ヨシュアさんや貴女と共にバルバトスを撃退した人物―――確かジューダスという名前の方もいましたよね?もしかしてその方も……?」
ソフィの感謝の言葉に微笑んで答えたエルナンはある事を思い出してソフィに訊ねた。
「うん。ジューダスも私やこの世界とは違う世界の人だよ。」
「ハアッ!?」
「うふふ、この様子だと他にも異世界の人達がゼムリア大陸にいる可能性はあるでしょうね。後何人の異世界の人達がこのゼムリア大陸にいるのかしらね?」
「一体このゼムリア大陸に何が起こっているのでしょう……?」
ソフィの答えを聞いたルークは声を上げ、レンは小悪魔な笑みを浮かべ、クローゼは不安そうな表情をし
(おい、そういう不思議現象は教会の専門だろ?何かわかんねえのか?)
(幾ら何でも、そんな滅茶苦茶な話、わかる訳ないでしょう!?)
小声でフレンに尋ねられたアーシアは疲れた表情で答えた。
「ああもう……頭が混乱しそうな話ね……とりあえずその話は置いて……―――ソフィ、ヨシュアはどこにいるの!?今、何をしているの!?短期間だけどヨシュアと一緒に行動していたのよね!?ヨシュアに何も教えてもらっていないの!?」
「―――ヨシュアが今どこにいるかは私もわからない……でも、ヨシュアは私達と別れた後もジョゼット達と一緒に行動しているはずだよ。」
「え―――――」
「”ジョゼット”って……もしかしてあの空賊達――――”カプア一家”の事!?」
ソフィの答えを聞いたエステルは呆け、シェラザードは驚きの表情で訊ねた。
「”カプア一家”……?あ、そう言えばジョゼットやキール、ドルンのファミリーネームは”カプア”だったよ。」
「間違いなくあの空賊達だな……」
首を傾げて呟いたソフィの答えを聞いたアガットは目を細め
「ほほう?という事はもしかしてヨシュア君は空賊達と共にミュラーが受け取りにいった空賊艇を奪ったのかな?」
「あ………」
そしてオリビエの質問を聞いたクローゼは不安そうな表情をした。
「多分そうだと思う。ヨシュアは”身喰らう蛇”の拠点に潜入する為にジョゼット達の協力が必要って言っていたから。」
「おいおい……って事はヨシュアの奴は俺達が探している”身喰らう蛇”の拠点の場所を知っているのかよ!?」
「ヨシュアは元”執行者”だという話だからな………アジトの一つや二つ、知っていてもおかしくないな。」
ソフィの説明を聞いたアガットは信じられない表情をし、ジンは真剣な表情で呟き
「ヨシュア………」
エステルは心配そうな表情をしていた。
「―――それより気になるのは”空賊艇を奪う必要がある事”ね。飛行艇が必要という事は”身喰らう蛇”の拠点はもしかして空にあるのかしら?」
「空の拠点―――――戦艦、もしくは空中基地か。」
「確かにそれなら拠点になりそうだな……」
レンの推測を聞いて推理したバダックの話を聞いたルークは納得した様子で頷き
「ま、待ってください。そのような大型の飛行物があれば軍の哨戒によって発見されると思うのですが……」
クローゼは戸惑いの表情で意見を言った。
「いえ。昨夜現れたあの巨大な人形兵器――――”パテル=マテル”の事を考えたら、ありえない話ではないわ。」
「そういやあんな目立つ図体をしているのに、軍の哨戒にまだ見つかっていないかったな。」
「えとえと……多分、高性能なステルス機能を備えているんだと思います。理論的には可能ですし……」
「あ………」
「……どうやら話に聞いていた以上に相当規模が大きい組織のようだな、”身喰らう蛇”とやらは。」
しかしアーシアやフレン、ティータの意見を聞くと不安そうな表情をし、レイスは真剣な表情で呟き
「参ったわね……空にあるとなると、飛行艇を所有していないあたし達ではお手上げだわ。」
「チッ、そんな物まで持ち出すとか、”結社”は一体何を考えてやがんだ……!?」
シェラザードは疲れた表情で溜息を吐き、アガットは表情を厳しくし
「エルナン。軍に伝えておいた方がよくないか?」
「ええ、後で伝えておきます。ソフィさん、貴重な情報の提供、ありがとうございます。」
「私はエステル達との約束を守っただけだよ。」
ジンの言葉にエルナンは頷いた後ソフィに視線を向けた。
「エルナンお兄さん。ヨシュアの事も軍に報告するのかしら?」
「……………」
「普通に考えたら空賊艇を奪った手助けをした可能性が非常に高いから教えるべきだが……」
「おねえちゃん……」
そしてレンの質問を聞いて辛そうな表情で黙り込んでいるエステルの様子を気遣いながらルークはエルナンに視線を向け、ティータは心配そうな表情でエステルを見つめ
「いえ。決定的な証拠がない以上、その情報はギルド内に留めておいたほうがいいでしょう。」
「ありがと、エルナンさん。」
エルナンの答えを聞いたエステルは安堵の表情でエルナンを見つめた。
「で、でも……いいんですか、エステルさん?せっかくヨシュアさんの手掛かりが見つかったのに……」
「うん……ソフィと会って話を聞いて何となくだけど思ったんだ。ヨシュアとの絆はなくならない。そう思えるようになったの。」
「あ………」
「違う道を歩いているけど目指す場所はヨシュアやあたしも同じだから。だから今は……自分自身の道を行こうと思う。そうじゃないとあたし自身、強くなれないから。」
「”絆”…………(アスベル、シェリア、リチャード、ヒューバート、教官、パスカル…………)」
(フフ、今の言葉でリッドやファラ達の顔が思い浮かべるとは、私もまだリッド達と共に最後まで行けなかった事に未練を持っている証拠だな……)
クローゼの質問にエステルは静かな笑みを浮かべて答え、エステルの口から出たある単語を聞いた瞬間ソフィは優し気な微笑みを浮かべてかつての仲間達を思い出し、ソフィと同じようにある人物たちの顔を思い浮かべたレイスは苦笑していた。
「あんまり嫉妬深いと、嫌われると思うぞ?」
「馬鹿ね。このくらいの嫉妬、女の子として当たり前よ。」
「うむ。女心もわからぬままでは、一生独身のままだぞ?」
ルークが呟いた言葉を聞いたシェラザードは呆れ、バダックはシェラザードの意見に同意し
「うっせ!余計なお世話だよ!」
バダックの言葉を聞いたルークはバダックを睨み
「フフ…………………」
エステル達やルーク達の様子を見て、かつての旅を思い出したソフィは微笑ましそうに見守っていた。
こうしてバダックとレイシス、ソフィを加え、更にルーク達と合流したエステル達は次なる目的地―――ボース市へと向かった。
ページ上へ戻る