英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第38話
~遊撃士協会・ロレント支部~
「そう……そんな事があったなんてね。」
「ごめん、アイナ。もっと早く心当たりについて話しておけばよかったけど……」
「ふふ、気にしないで。あなたの知り合いと分かってもなにか出来たわけじゃないしね。今度オゴってくれればいいわ。」
「ええ、お安い御用よ。」
「うーん、2人の飲みっぷりだと全然安くないような気がするんですけど……」
「だよなあ?二人とも酒に強いし。」
「俺も酒は好きだが、さすがにあんな量は無理だぜ……」
「うふふ、一体いくらになるんでしょうね♪」
シェラザードとアイナの会話を聞いていたアネラスは二人の酒の強さを思い出してルークやフレンと共に冷や汗をかき、レンは興味深そうな表情で二人を見つめていた。
「霧もすっかり晴れたし昏睡していた人も目を覚ましたわ。みんな、本当にご苦労さまでした。今回は依頼が複数になったけどまとめて報酬を渡しておくわね。」
そしてアイナはルーク達に報酬を渡した。
「それにしても”身喰らう蛇”の”執行者”とやらがロレントでも現れるなんてね……」
「あら、その言い方だともしかして他の地方でも”執行者”が姿を現したのかしら?」
アイナが呟いた言葉が気になったレンは目を丸くして尋ね
「ええ。ルーアンでエステル達が”怪盗紳士”と名乗る”執行者”と出会ったそうよ。」
「エステルちゃん達が!?」
「……エステル達、大丈夫だったのか?」
エステル達が”執行者”と出会った事を知ったアネラスは血相を変え、ルークは真剣な表情で尋ねた。
「ええ。ただルーアンでも”ゴスペル”を使ってその”実験”とやらを行っていたようでね……まんまと逃げられたそうよ。」
「そうですか………」
「いずれにしても”執行者”とやらは一端はロレントから手を引いたって事で一応解決って事になるか?」
「ええ、ご苦労様でした。……そう言えばステラさんは?」
フレンの疑問に頷いたアイナはステラがいない事に気付いて不思議そうな表情をした。
「ステラさんなら、あたし達がロレントに戻ってきた時に出入り口で待っていたイオンさんとアリエッタさんと合流してロレントから去っていったわ。彼女は彼女で”剣帝”とやらを探す為に”星杯騎士”の人達と一緒に行動しているそうだしね。」
「そう……彼女はクーデターの時にも暗躍していた”結社”の”剣帝”の事をよく知っているみたいだから、色々と聞きたい事があったんだけどね……」
貴重な情報を持っているステラが姿を消した事にアイナは残念そうな表情で溜息を吐き
「まあ、そんなに落ち込む事はないと思いますよ?イオンさん達の話ではその内遊撃士協会とも情報を共有し合うつもりだって言ってましたから、向こうから会いにきてくれるかもしれませんし。」
「そうね。…………それにしても今気付いたけどステラさんとエステルは共通している部分があるわね。」
アネラスの話を聞き、頷いた後考え込んだ。
「え……エステルちゃんとステラさんの共通している部分ですか?」
「一体どこが一緒なんだ?」
アイナの答えを聞いたアネラスとルークは不思議そうな表情をし
「……姿を消したヨシュアを探すエステル。同じく姿を消した”剣帝”を探すステラお姉さん。そのどちらも”結社”という共通点があるわ。」
「あ……っ!」
「なるほどな……」
「確かによく考えてみると二人は偶然とは思えない程共通している部分があるわね。もしかしたら彼女、ヨシュアの事についても何か知っていたかもしれなかったわね…………アイナ、エステルにもステラさんの事について伝えておいた方がいいのじゃないかしら?」
「ええ、後でキリカさんに連絡してエステルにステラさんの事を話すように伝えておくわ。」
シェラザードの提案にアイナは静かな表情で頷いた。
「話は変わるけどアイナお姉さん。”身喰らう蛇”の人がロレントから去った今、レン達は次は何をすればいいかしら?」
「……そうね。実は他の支部から空賊やまだ捕まっていない特務兵が発見されたという情報が入ってきているのよ。どれも信憑性は低いけど……貴方達は各地を廻って情報を確かめてくれないかしら?」
レンに尋ねられたアイナは考え込んだ後答え
「空賊に特務兵って……」
「そう言えばまだ捕まっていないんでしたっけ?」
「ええ。どちらも”結社”らしき影が見え隠れしている連中だから、もしかしたら重要な手掛かりになるかもしれないわね。」
「んじゃ、各地を廻って特務兵や空賊どもを探すとするか。」
「ええ、お願いするわ。まず最初に目撃されたのは………」
その後ルーク達は各地のギルドを回って空賊と特務兵の行方を探すことになった。
一方エステル達は幽霊騒動の調査の最中に”執行者”―――”怪盗紳士”ブルブランと邂逅し、まんまと逃がしてしまい、次の地方―――ツァイス地方へと旅立ち、その際にエステル達の調査の同行かつサポーターとして申し出たクローゼとオリビエと共に旅立ち、ツァイス地方に到着した。
ツァイス地方では一部の地域で地震が起こるという謎の現象が起こり続け、エステル達は地震の調査の為に同行するティータと共にツァイス地方各地に地震の状況を測定する装置を設置して来た。
その後地震が再び起こり、測定の結果エルモ温泉の奥地―――源泉がある場所が震源地とわかった。
そして調査の為のティータと共にメンバーを厳選したエステル達が震源地に到着するとそこには”執行者”――――”痩せ狼”ヴァルターが待ち構えており、ヴァルターは”ゴスペル”を使って地震を起こしており、その影響で出てきた魔獣を退治したまではよかったが、ヴァルターの強力な一撃によって攻撃を察して回避したアーシアを除いた全員は地面に蹲っていた。
~温泉の源流・最奥~
「ほう?一人だけ、俺の攻撃を逃れた奴がいるとはなあ?クカカ、A級だけあってちったあできるようだな?」
サングラスをかけ、黒いスーツ姿の男――――”痩せ狼”ヴァルターは凶悪な笑みを浮かべてアーシアを見つめ
「……………」
アーシアは法剣とボウガンを構えてヴァルターの一挙一動を警戒していた。
「クソ……馬鹿な……」
「つ、強すぎます……」
「は、はわわわ……っ!」
「こ、これが”執行者”の実力なの……!?」
一方地面に蹲っているアガットやクローゼは表情を歪め、ティータは慌て、エステルは信じられない表情でヴァルターを見つめていた。
「フン、こうなったら仕方ねぇ。教授と直談判して漆黒のコゾーを狩るとするか。そうすりゃ、少しはゾクゾクさせてくれるだろ。」
「!!!ま……待ちなさいよっ!」
そしてヴァルターの口から出たヨシュアの事を聞いたエステルは血相を変え、身体を震わせながら立ち上がり再び棒を構えた!
「あん?」
「このグラサン男……いい加減にしなさいよ……。漆黒のコゾーっていうのがもしヨシュアのことだったら……。狩らせるなんて……絶対にさせないんだから……」
「エステルお姉ちゃん……」
「エステルさん……」
エステルの決意を聞いたティータとクローゼは心配そうな表情をし
「エステル、無理はしては駄目よ!」
アーシアはヴァルターを睨みながらエステルに警告した。
「俺の一撃を食らって立てたのは誉めてもいいが……。やめとけや。完全にヒザが震えてるぞ。」
ヴァルターは弱冠感心した様子でエステルを見た後忠告した。
「だからどうしたってのよ……。あたしは絶対に……ヨシュアを見つけるんだから……。あんたたちなんかに邪魔なんてさせないんだからっ!」
「エステル……」
「……言っておくが、俺は女子供の区別はしねぇ。武術家なら、敵に得物を向ける時の覚悟はできてるな?」
エステルの決意を聞いたアガットは真剣な表情でエステルを見つめ、ヴァルターは武具をつけた拳を構えた。
「当然……!やれるもんならやってみなさいよ!」
「クク、上等だ……。その度胸に免じて一撃で終わらせてやるよ。」
「………………………………」
不敵に笑うヴァルターを見てもエステルは怯まず、ヴァルターを睨み
「やだやだ!エステルお姉ちゃん!」
「エステル、逃げろッ!!」
「エステルさんっ!」
「クッ……!エステルをやらせないわよ!」
その様子を見ていたティータは悲鳴を上げ、アガットとクローゼは血相を変えて叫び、アーシアはエステルの前に飛び込んで武器を構えていた。するとその時!
ほう?貴様も少しは楽しませてもらえそうだなあ?
エステル達とヴァルター、双方にとって聞き覚えのない狂気を宿した声が聞こえてきた!
「あん?一体どこにいる?―――姿を現せ!」
そしてヴァルターが叫んだその時、ヴァルターの側面の空間が歪んだ後なんとバルバトスが姿を現した!
「へっ!?」
「な、なんだぁっ!?」
「何もない所から突然現れるなんて……」
「な、何かあの人、凄く怖いです……」
突如現れたバルバトスを見たエステルとアガットは驚き、クローゼは信じられない表情をし、バルバトスの雰囲気を感じ取っているティータは不安そうな表情をし
「―――みんな、気を付けて!あの男からは凄まじい”邪気”を感じるわ!」
アーシアは厳しい表情でバルバトスを睨んで警告した。
「………テメェ、何者だ?」
「クク……俺は”最強”の男、バルバトス。ヴァルターと言ったな?貴様も俺が更に強くなる”糧”となってもらうぞ!ぶるあああぁぁぁぁぁっ!!」
「クク、ゾクゾクさせてくれる狂気だな。―――いいぜ、ガキ共の相手で萎えていた所だ。そこにまさかこんな”御馳走”が転がり込んでくるとはな。……さあ、死合おうとしようぜ!」
膨大な闘気を纏って自分を睨んで叫ぶバルバトスを見て、口元に笑みを浮かべたヴァルターは凶悪な笑みを浮かべてバルバトスに向かって行った!
今ここに!狂気を宿した者達同士の戦いが始まった……!
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