英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第37話
~???~
「………?―――なっ!?こ、ここは……バチカルの俺の屋敷!?俺……元の世界に戻って来たのか??」
ルークが目を覚ますと自分にとって見覚えがあり、どことなく懐かしげな豪華な屋敷が目の前にあり、それを見たルークは驚き
「一体どうなってんだ……?」
訳のわからない状況にルークは首を傾げながら屋敷の中へと入って行った。
「ルーク様!お帰りなさいませ!」
ルークが屋敷の中に入ると一人の老執事が迎え
「ラムダスか。えっと……父上達はいつもの場所に?」
「はい!奥様や若奥様と共に首を長くしてルーク様をお待ちしております!」
「………ハ?奥様は母上の事だとして……若奥様って誰だ??」
聞き覚えのない人物がいる事を聞いたルークは首を傾げて尋ねた。
「何を仰いますか!若奥様は勿論、ルーク様の奥様の事ではありませんか!」
「ハアッ!?お、おおおおお、俺に妻~~~~っ!?」
自分に伴侶がいるという全く身に覚えがない事を知ったルークは混乱し始めた。
「こうしてはおられません!すぐに旦那様達をお呼びしますので少々お待ち下さい!」
「あ、おい、ラムダス!……行っちまった………ラムダスがあんなに慌てている様子、見た事ねえな……」
そして老執事は慌てた様子でその場から去り、その場にはルークが一人取り残されていた。
「俺に妻って……まさかナタリアの事か?いやでも、国王である叔父上の一人娘のあいつと結婚していた場合、住んでいるのはバチカル城の上、俺が婿入りする……というかそもそもナタリアの相手はアッシュだし!あー、もう!どうなってんだよ!?」
現在の自分の状況を考え込んでいたルークはある場所に飾られてある見事な宝飾がついた剣に気付いた。
「あれはガルディオス家の……!あの剣は父上がガイに返して師匠との決戦の時にガイが使っていたはずなのに……という事は俺、過去に戻ったのか?」
「お、ようやく帰ってきたか、ルーク。」
見覚えがある剣を見たルークが考え込んでいたその時、金髪の青年が笑顔を浮かべて近づいてきた。
「ガイ!何でお前が屋敷に……というか何であの剣をファブレ家に渡したんだ!?あの剣、お前にとって大切な剣なんだろ!?」
青年――――ガイに気付いたルークは血相を変えて尋ね
「おいおい、帰って来て早々何を変な事言ってんだ?俺がファブレ家に来た時からあの剣は元々あの場所に飾ってあったし、俺はあの剣の事なんか、全く知らないぞ?」
「ハ………?」
ガイの口から出た信じられない答えを聞いたルークは呆けた。
「そんな事よりこうして帰ってきたって事は無事、任務を果たしてきたようだな。」
「へ?任務って何の事――――」
そしてガイの話を聞いたルークが目を丸くして尋ねかけたその時
「――お帰りなさい、ルーク。ああ、無事で本当によかった……!」
「よく成し遂げてきた、ルーク。お前はファブレ家の誇りだ。」
「母上!父上!」
生まれてきたばかりの自分にとっての”両親”がルークに近づいてきた。
「父上、”成し遂げてきた”とは一体何の事でしょうか?それに俺に妻って一体誰の事を言ってるんですか?」
「まあ、ルーク。間違ってもあの娘の前でそんな事を言っては駄目よ?」
「うむ。後数ヵ月もまてばお前も立派な父親になるのだから、そのようなふざけた事を口にするなよ?」
「ハアッ!?お、おおおおおお、俺が父親~!?ってか、マジで俺の妻って誰だよ!?」
両親の口から出た信じられない話を聞いたルークは再び混乱し
「おいおい、何を言ってんだ、ルーク?お前の結婚相手が”予言”で決められていたとはいえ、お前達は相思相愛の仲じゃないか。」
ルークの様子を見たガイは首を傾げて言った。
「いや、だからマジで俺の妻って誰な――――」
そしてガイの言葉にルークが答えかけたその時
「――――ルーク!やっと帰ってきたのね……!―――お帰りなさい……!」
薄い茶色の髪を腰までなびかせる一人の美しい女性が嬉しそうな表情でルークに抱き付いた!
「!!ティア……!な、ななななな、な、何でお前が俺の屋敷に……というか、何で俺に抱き付いて――――」
女性―――ティアに抱き付かれたルークは混乱した様子で言いかけたその時
「おいおい、夫婦同士仲が良いのはわかるが、そういう事はできれば人の目のない所でやってくれよ。」
「フッ、夫婦仲が良い分、ファブレ家は将来、跡継ぎに困らなくて助かるな。」
「ふふっ、ティアさん。ルークの兄であるアッシュと結婚して既に子供を産んだナタリアに負けないように、多くの子供を産んでくださいね?」
「お、お義母様っ!」
ガイ達はルークにとって信じられない会話を始め、それを聞いたティアは顔を真っ赤にして声を上げ
「…………………………」
ティアが自分の妻と知ったルークは石化したかのように固まり
「ええええええええええええええええええっ!?」
やがて我に返ると大声を上げて驚いた!その後ルークの帰還パーティーが祝われ、ルークは流されるままにパーティーに参加し、そしてパーティーが終わると自室でティアと二人っきりになった。
「ふふっ、ようやく二人っきりになれたわね、ルーク……」
(い、いいいいい、一体どうなってんだよ!?あのティアがこんなにも変わるなんて……!っていうか、そもそもそれ以前に俺、いつティアと結婚したんだよ!?)
ベッドの上で幸せそうな表情をしているティアはルークにもたれかかり、ルークは混乱していたが
「予言で決められた重要な任務も終えたし、これからはキムラスカも繁栄し、多くの人々が幸せになるでしょうね。」
「!!(予言で決められた重要な任務…………キムラスカが繁栄する………――――まさか!?)………なあ、ティア。確認なんだけどさ。その予言の内容って何で俺は何の為に任務に行ってたんだっけ?もしかして俺の力で”セフィロト”を壊せばアグゼリュスが崩壊して、キムラスカが繁栄するっていうアレか?」
ティアの口から出た話を聞き、心当たりがあるルークは血相を変え、真剣な表情でティアを見つめて尋ねた。
「ええ。ND2018
ローレライの力を継ぐ若者、人々を引き連れ鉱山の街へと向かう。
そこで若者は力を災いとしキムラスカの武器となって街を消滅させ、マルクトの領土の一部を削り取った英雄となってキムラスカに戻ってくる。
しかる後にルグニカの大地は戦乱に包まれ、マルクトは滅ぶだろう。
結果キムラスカ・ランバルディアは栄え、それが未曾有の繁栄の第一歩となる。
ルークはその為に今まで出かけて来て、見事アグゼリュスを崩壊させたじゃない。」
「………………………」
ティアに微笑まれたルークは厳しい表情で黙り込み
「………けん……な………」
「ルーク?どうしたの?」
やがて顔を俯かせて身体を震わせながら呟き、ルークの様子に首を傾げたティアは不思議そうな表情で尋ねた。
「ふざけんな!ティアの顔で………命懸けで師匠を止めようとしたあいつの顔でそんなふざけた事を口にするな!」
「ル、ルーク?どうしたの?」
するとその時はルークは怒りの表情で自分にもたれかかっているティアを振り払って叫んだ。
「何もかもが間違っているよ!俺は”英雄”なんかじゃねえ!………俺は何も考えず、疑わなかった自分の愚かさでアグゼリュスに住む多くの人々が死ぬ事の原因を作った”大罪者”だ!それに……例え予言で決められていたとしても、あいつは……ティアは……自分の故郷―――ホドが滅ぶ原因となった”死の予言”を黙っていたテオドーロさんを怒り、”死の予言”を嫌い、助けられる命は助けようとしていた!そんな優しいあいつの顔でふざけた事を口にしてんじゃねーよ、偽物が!―――消えろ!」
そしてルークが怒りの表情で叫んだその時、空間に罅が入った後パリンと音をたてて割れ、ティアや周囲の景色も全て消え、ルークは暗闇の中に立っていた!
「やっぱり夢だったか……色々とおかしいと思っていたんだよな………」
周囲を見回したルークは疲れた表情で溜息を吐いた。するとその時
「フフ、よく気付いたわね、ルーク………アグゼリュスを崩壊させた時の貴方と比べると見違えるように”変わった”わね……」
ルークの背後から聞き覚えのある声が聞こえ、声を聞いたルークが振り向くとそこにはティアが微笑みながら自分を見つめていた。
「……ティア………」
「貴方も気付いていると思うけど、正確に言えば私は貴方が知る”ティア・グランツ”ではないわ。貴方の思い出から構成された擬似的な人格と言うべきかしら。今までの出来事は全て貴方の夢の中での出来事なの。」
「やっぱりな。……でも夢の中とはいえ、俺は自分の”罪”から逃げようとしていたなんて、最悪だぜ……こんな事、本物のティアに知られちまったら、今度こそマジで見限られちまうな……」
ティアの説明を聞いて頷いたルークは疲れた表情で溜息を吐いた。
「ふふ、自覚しているのだから、成長し、昔の貴方から必死に変わろうとしている証拠よ。”本物の私”が知ってもきっと大丈夫よ。それで………行くのね?」
「ああ。俺は自分が背負う”罪”を償う為にも一人でも多くの人々を助けることが俺の”義務”だからな。」
ティアに問いかけられたルークは真剣な表情で頷き
「そう……ふふ、不思議ね……私は本物のティアではないけれど、今、”エルドラント”で別れた貴方に再会できたことにとても幸せを感じている……好きな人にまた会えた事に………」
「え、えっと……ティア?前々から疑問い思っていたけどあの時言ってた”好き”って意味ってまさか………」
自分を見つめて微笑むティアの言葉を聞いたルークは顔を真っ赤にしてティアを見つめた。
「ふふっ、それは”本物の私”に聞いて。貴方には戻るべき場所があるでしょう?」
ルークの表情を見たティアが微笑んだその時、暗闇の中に光が刺す扉が現れた!
「あれが夢の終わり……今の貴方が生きている時間と空間への出口よ。さあ……行きなさい。」
「ああ。―――じゃあな、ティア!夢とは言え、お前にまた会えて凄く嬉しかったぜ!」
そしてルークはティアに微笑んだ後光が刺す扉の中へと入って行き、ルークが扉の中に入ると扉は消え、その場はティアだけになり
「フフ……不思議ね……私は本物のティアじゃないのに貴方に会えた事に嬉しさと幸せを感じている………いつか”本物の私”と会える事を心から祈っているわ、ルーク………」
一人だけになったティアは優しげな微笑みを浮かべていた……………
~ミストヴァルト・セルべの大樹~
「クッ……!」
「う……ん……」
「グッ……!?」
「ン……」
夢の世界から帰還したルークが目覚めて起き上がるとレン、フレン、ステラも同時に目覚めて起き上がり
「!!ルーク、レン!それにフレンやステラさんも!よかった……起きてくれたのね!」
目覚めたルーク達を見たシェラザードは安堵の溜息を吐いた。
「ああ……夢とは言え、懐かしい奴等に会えたぜ………」
「ふふっ、今度は”本物”のレーヴェと”あの子”に会わないといけませんもの……」
「ったく、よくできた夢だったぜ……マジで俺も騙される所だったぜ。」
「うふふ、レンはすぐに”偽物”だと気付いたけどね♪あんな人達………レンの”本当の家族”じゃないし。」
ルーク達が懐かしそうな表情でそれぞれ呟いている中、レンだけは小悪魔な笑みを浮かべて答えた後全身に殺気を纏って冷たい視線で呟き
「う~ん、むにゃむにゃ………わあ……可愛いぬいぐるみがいっぱいだ~。えへへ~、どの子を先に抱きしめようかな~?」
アネラスだけはまだ眠っており、幸せそうな表情で呟いた。
「アネラス……あんたね……」
「えっと、どうやって起こしましょう……?普通の起こし方じゃ起きないでしょうし……」
幸せそうな表情で呑気に眠り続けているアネラスにシェラザードは呆れ、ステラは苦笑しながらルーク達を見回し
「うふふ、レンに任せて♪怖いよ……レン、一人ぼっちじゃ眠れないよ……誰かレンをずっと抱きしめて一緒に眠ってくれる人はいないの……?」
ステラの言葉に小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンはアネラスの耳元で何かに怯えるような表情を作って囁いた。
「はいはいはいっ!ここにいます!だから今夜は私がず~~~~っと、ぎゅっと抱きしめて一緒に眠ってあげるね、レンちゃん!!」
するとその瞬間目を覚ましたアネラスが起き上がって必死に何度も手を挙げながら真剣な表情で叫んだ!
「………あれ?もしかして私……今まで眠っていたの??」
そしてすぐに我に返ったアネラスは周囲を見回して首を傾げ
「うふふ、おはよう、アネラスお姉さん♪良い夢は見れたかしら?」
レンは小悪魔な笑みを浮かべてアネラスを見つめていた。
「すげえ。一発で起きたぞ。」
「っていうか、何気に演技がすげえ上手いな、レン。」
「ふふっ、とても演技とは思えない表情を出していましたね。」
一方その様子を見守っていたフレンはレンの手際に感心し、ルークは冷や汗をかいて苦笑し、ステラは微笑んでいた。
「ハア……まさかアネラス自身が自分の性格に助けられるなんてね。さてと、それはともかく……」
シェラザードは呆れた表情で溜息を吐いた後大樹を睨み
「いるんでしょ!ルシオラ姉さん!」
「ふふ……やっと呼んでくれたわね。」
シェラザードが叫ぶと、鈴の音が鳴り響き、黒衣の女性がルーク達の目の前に現れた!
「なっ!?」
「わあ。一瞬で現れるなんて、手品みたいね。」
突如現れた黒衣の女性にルークは驚き、レンは目を丸くし
「こ、”黒衣の女性”……!」
「……………」
「犯人のお出ましか……」
アネラスとステラは不安そうな表情をし、フレンは真剣な表情でロレント中を騒がしていると思われる黒衣の女性を見つめていた。
「……やっぱり……」
ルーク達が驚いている中、シェラザードだけは動じず複雑そうな表情で黒衣の女性を見つめていた。
「久しいわね、シェラザード。8年ぶりになるかしら?」
「ええ……そうね。まさか姉さんがこんな事をしてるなんて……。いったい、どういう事なの?」
「あら。もしかしてシェラお姉さんのお知り合いなのかしら?」
二人の会話からシェラザードと黒衣の女性が顔見知りである事を察したレンは目を丸くして尋ねシェラザードに尋ね
「ええ……昔いた旅芸人一座で姉代わりにあたしを世話してくれた人よ。」
「ふふ、今は『身喰らう蛇』に所属する『執行者』No.Ⅵ。『幻惑の鈴』ルシオラ。今はそう呼ばれてるけどね。」
シェラザードの説明に捕捉するように黒衣の女性―――ルシオラは妖しげな笑みを浮かべて答えた。
「えっ!?」
「『身喰らう蛇』………!」
「まさかこんなにも早く会うなんてね……!」
「……俺達とやり合うつもりか?」
ルシオラが自分達が追う組織に所属してる者だと知ったステラは驚き、ルーク達は警戒し
「ふふ、今回は挨拶代わりに姿を現しただけよ。それより……よく今回の出来事を起こしているのが私だと気付いたわね、シェラザード?
「鈴を使った幻術……。姉さんの十八番だったから。ロレントで発生した霧も幻術とか言わないでしょうね?」
「ふふ、まさか。あれは今回の実験のため、『ゴスペル』が起こした現象よ。人々の夢に干渉するための触媒といったところかしらね。」
「じ、『実験』?」
「その『ゴスペル』を使って『結社』は一体何をしようとしてるのかしら?」
「触媒……。まさか『ゴスペル』というのは人の精神にも干渉するというの!?」
ルシオラの口から語られた話を聞いたルークは戸惑い、レンとシェラザードはそれぞれ真剣な表情で尋ねた。
「ふふ、そうみたいね。私の鈴はあくまで誘導……。幻術とは比べ物にならないリアルな夢を構築するわ。苦しみも哀しみもないただひたすら幸せな夢をね。ちなみに『実験』は今後の『計画』の為とだけ言っておくわ。」
「そ、そんな……人の精神にまで干渉するなんて……」
「…………………」
「その言葉からすると他の地方でもその『実験』とやらをやっているみたいだな……?」
「……くっ……」
信じられない内容を聞いたアネラスとステラは不安そうな表情をし、フレンは真剣な表情でルシオラを見つめ、シェラザードは唇を噛みしめた。
「その『計画』ってのは一体何の『計画』なんだよ?」
「私はただの『執行者』。『使徒』の手足として動くもの。その意味では、今回の計画の手伝いをしているに過ぎないわ。詳しいことは教授とレーヴェに聞きなさい。」
「!!やっぱり『剣帝』も……レーヴェもリベールにいるんですね!?」
警戒するルークの質問に答えたルシオラの話を聞いたステラは血相を変え
「あら。レーヴェと知り合いなのかしら?見た所、”星杯騎士”のようだけど。」
「!!そ、それは………」
ルシオラに視線を向けられた瞬間、ルシオラから視線を逸らして口ごもった。
「………………………………。……ルシオラ姉さん。これだけは言わせてくれる?」
「あら……何かしら」
「最初、あたしはリベールに長居をするつもりはなかった……。姉さんが帰ってくるまでの間、身を寄せるだけのつもりだった。でも、あれから8年が過ぎた。今の私には、友人や仲間たち、家族同然の人たち、そして誇りに思っている仕事がある。もう……ハーヴェイ一座の踊り子シェラザードじゃない。」
「シェラ先輩……」
「………………………………」
シェラザードの口から語られた話を聞いたアネラスは驚き、ルシオラは黙ってシェラザードを見続け
「ふふ……それでいいわ。あなた達にとって『結社』はあまりにも強大よ。全力で立ち向かってきなさい。」
鞭を構え、自分を睨みつけるシェラザードを見たルシオラは満足げな笑みを浮かべた後、『ゴスペル』を回収した!
「あっ!」
「『ゴスペル』を……!」
「ふふ……近いうちにまた会えるわ。つもる話はその時にでも……」
ルシオラの行動にアネラスとルークが驚いたその時、ルシオラは鈴の音と共にその場から消えた!
その後ルーク達は報告の為にギルドに戻った。ロレントに戻ると既に霧は晴れ、昏睡していた市民達も眼を覚ましていた。
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