英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第30話
課題内容を難なくこなし、更に手配魔獣の戦闘では戦術リンクを活かして余力を残して勝利した。
~北クロイツェン街道~
「や、やった……!!」
戦闘を終えたマキアスは嬉しそうな表情をし
「ああ、なんとか昨日のリベンジは果たせたみたいだ。」
「お疲れ様でした、皆さん。」
「ま、及第点。」
リィン達もそれぞれ明るい表情をしていた。
「は、はは……みんな、その、色々と迷惑をかけてしまった。特にリィン、君にはちゃんと謝りたい。すまなかった、この通りだ!」
そしてマキアスはリィンを見つめて頭を深く下げて謝罪した。
「マキアス……気にしなくてもいいさ。最初のときに曖昧な言い方をした俺にも非があったんだ。……こちらこそすまなかった。」
「リィン……」
「同じ”Ⅶ組”メンバーとして、改めてよろしくな。」
リィンは仲直りと同時に改めての友好の証を求めるかのように片手を差し出し
「ああ……!」
マキアスは差し出された手を握ってリィンと握手をした。
「ふふ、お二人ともよかったですね。」
「これぞ青春って感じ。」
(青臭いけど、そこがいいのよねぇ。)
その様子を見守っていたエマ達は微笑ましそうに見つめ
「ええい、茶化すんじゃない!」
マキアスは恥ずかしそうな様子で怒鳴った。
「ハハ……そうだ、マキアス。せっかくだからこのままユーシスとも和解したらどうだ?」
「はあ!?」
しかしリィンの突如の提案に信じられない表情で声を上げた。
「いや、お互い素直になれれば、”戦術リンク”だって……………」
「そ、それとこれとは話が別だ!奴は素で気に喰わない!そこのところは一切譲れん!」
「あ、あはは……」
「……やれやれ。」
(お子様ねぇ。)
リィンの言葉に反論したマキアスの様子を見たエマは苦笑し、フィーとベルフェゴールは呆れていた。
「(はあ、仕方ないか。)えっと、それじゃあ……そろそろ街に戻るか?」
「ええ、ユーシスさんとツーヤさんも戻っている頃かもしれません。」
「なんだかお腹すいた。」
「フ、フン……だったらさっさと行くとしよう。」
その後リィン達は時折現れて来る魔獣を倒しながらバリアハートに到着した。
~バリアハート~
「―――おい、お前達!」
バリアハートに到着すると領邦軍の兵士達が駆け寄り
「……?」
「領邦軍の兵士か……」
駆け寄ってきた兵士達を見たリィンは自分達に領邦軍が何の用があるのか訝しく思い、マキアスはどことなく嫌そうな表情をした。
「”トールズ士官学院”の生徒だな?」
「”実習”とやらでバリアハートに来たという。」
「ええ、そうですが……」
「何の御用でしょう?」
兵士達に尋ねられたリィンは頷き、エマは尋ねた。
「……間違いない。手配の写真とも一致する。」
「すぐに見つかって良かったぜ。」
一方兵士達はエマの質問に応えずマキアスを見つめてそれぞれ呟き
「……?」
「…………………」
兵士達の行動にマキアスは戸惑い、フィーは警戒の表情で兵士達を見つめていた。するとその時兵士の一人が笛を吹いた!
「っ……!?」
「な、なんだ!?」
兵士達の行動にリィンとマキアスは驚き、兵士達はマキアスに近づいた。
「―――士官学院1年、マキアス・レーグニッツだな?」
「貴様を逮捕する。大人しくお縄についてもらうぜ。」
そして兵士達はマキアスを睨んで信じられない事を口にし
「へ……」
「い、一体何を……」
兵士達の言葉を聞いたマキアスは呆け、エマは戸惑った。
「―――待ってください!いったい何の容疑で……何かの間違いじゃありませんか!?」
その時リィンがマキアスの前に出て兵士達の信じられない行動を尋ねた
「……………………」
マキアスは呆けた様子で兵士達を見つめていた。
「容疑は幾つもあるが……最大のものは、昨日の午後の”オーロックス砦”への侵入罪だ。」
「そ、それって……!?」
「あの銀色の物体を目撃した時の……?」
兵士の説明を聞いたエマとフィーが驚いたその時
「じょ、冗談じゃない!た、確かに侵入者があった時に行きあわせたのは確かだが………あくまで仲間と一緒に行動していたんだぞ!?どうして僕一人が疑われるんだ!?」
マキアスが兵士達を睨んで反論した。
「その事は俺達が証明できます。」
「それに……私たちの仲間である”ユーシス・アルバレア”さんも証明してくれると思います。」
マキアスに続くようリィンとエマもマキアスを庇う為にそれぞれ反論したが
「フン―――だからどうした?」
兵士は二人の反論を一笑した。すると笛の音によってかけつけてきた兵士達がリィン達を包囲した!
「っ……」
兵士達の行動にリィンは唇を噛みしめ
「……多勢に無勢か。って、そうだ。リィン、今こそ”切り札”―――ベルフェゴールを呼べば?」
フィーは周囲を見回して溜息を吐いた後リィンが戦況をひっくり返せる存在と契約している事をすぐに思い出してリィンに視線を向け
「た、確かにベルフェゴールに力を貸してもらえばここからの撤退は可能だが……」
「ここで彼らを攻撃してしまったら、マキアスさんの無実が証明できなくなってしまいますし、それどころか……」
視線を向けられたリィンは戸惑いの表情で答え、エマは不安そうな表情をし
(そうねぇ。ここで私を出してあいつらを撃破したら、とんでもなくマズイ事になるから悪手ね。)
「それもそっか。」
ベルフェゴールは納得した様子で周囲を見回し、二人の言葉に納得したフィーは溜息を吐いた。
「重要なのはそちらの彼に複数の容疑がかかっており……そして我々、領邦軍に取り調べる権利があることだ。」
「抵抗しても無駄だ。大人しく拘束されるがいい。」
「くっ……」
そして兵士達はマキアスを拘束して自分達を厳しい表情で睨むリィン達から去って行った。
「―――やれやれ。あいつのカンが見事、当たっちまったか。」
一方その様子を見守っていた金髪の青年は溜息を吐き
「さて……レグラムからわざわざ出張ってきたはいいが。どうフォローしたもんかねぇ?」
軽い口調とは別に真剣な表情でリィン達を見つめていた。
「そら、とっとと入れ。」
領邦軍の兵士達に連れて行かれたマキアスは地下牢に入れられ
「……くっ………」
「安心しろ、大人しくしていれば危害は加えない。」
「容疑が晴れさせすれば”いずれ”解放されるはずだ。」
自分達を睨むマキアスに忠告した兵士達はその場から去り
「……クソ、迂闊だった。父さんの立場を考えたら十分予想できたはずなのに……」
兵士達が去るとマキアスは肩を落として複雑そうな表情で呟いた。
一方リィン達は領邦軍の詰所に向かい、領邦軍の隊長にマキアスの無実を主張していた。
「―――何度も言っているように彼が犯人である訳がありません!昨日の昼、バリアハートに来てからずっと一緒にいたんです!」
「その、逮捕するなら私達も一緒というのが筋なのでは……?」
「何を言っても無駄だぞ。マキアス・レーグニッツの身柄は容疑が晴れるまで我々が預かる。既に士官学院にも連絡はしている。お前達はお前達で”実習”とやらを続けるがいい。」
何度もマキアスの無実を主張したリィン達だったが、領邦軍は一切取り合わなかった。
「くっ……」
「無茶苦茶だね。」
領邦軍の横暴さにリィンは唇を噛みしめ、フィーは呆れた表情で溜息を吐いた。
「ああ―――それとユーシス様とルクセンベール卿だが。色々とお忙しいらしく、実習にはお戻りになれないそうだ。」
「………………………」
領邦軍の話を聞いたリィンは目を丸くした後厳しい表情で領邦軍の隊長を見つめ
「そ、それって……」
「本人達の言葉?」
エマは不安そうな表情をし、隊長の言葉がほぼ嘘だと確信していたフィーはジト目で尋ねた。
「さて、そのように伝言するよう公爵家より連絡があったのでな。言っておくが、お二人に会いにお館を訪ねても無駄だぞ。門前払いが関の山だろうからな。」
そしてリィン達は領邦軍の詰所から距離を取って話し合いを始めた。
「―――多分、昨日のうちから仕組まれていた段取りだろう。今朝、ユーシスとツーヤさんが実家にいきなり呼び出されたのも……」
リィンは考え込みながら自分の推測を口にし
「……お二人がいたらマキアスさんの逮捕を止められる可能性があったから……そういう事なんでしょうか?」
エマが続きを口にした後領邦軍の詰所を見つめた。
「それっぽい。ユーシスの証明を無視できない事は勿論だし、メンフィル帝国の貴族――それも”伯爵”の爵位を持っているツーヤの証明もさすがに無視できない上、下手に強気に出たらケルディックの二の舞になるだろうし。二人とも実家で動きを封じられてそう。」
二人の推測にフィーは頷いた後領邦軍の詰所を睨んでいた。
「ああ間違いないだろう……――もう昼過ぎだから一度ホテルに戻るとして……二人からの連絡が無ければ対応を考える必要があるな。」
その後リィン達はホテルに戻ったが、なんとホテルには領邦軍の兵士達がリィン達の部屋を調べていた。
~ホテル・エスメラルダ~
「ま、誠に申し訳ありません。何でも容疑者に関する調査を念のため行うとのことで……夕方には引き上げるそうですが……」
「そ、そうですか……」
「……ご迷惑をおかけします。委員長、フィー。とりあえず失礼しよう。」
「ん。」
「……はい。」
その後、リィン達は昨日のレストランなどにも顔を出してみたものの……やはり兵士が巡回に来ており、迷った結果―――職人通りにある宿酒場で今後の事を話す事にした。
~職人街・宿酒場~
「結局、マキアスが捕まったのは昨日の砦への侵入とは無関係……革新派の有力人物であるレーグニッツ帝都知事の息子を拘束するのが狙いなんだろう。色々な取引に使えるカードを手元に置いておく意味で。」
「……そのくらいしか考えられなさそうですね。で、でも……さすがに傷つけたりはしないですよね?」
リィンの推測を聞いたエマは頷いた後不安そうな表情で尋ね
「……どっかな。貴族派と革新派の対立はかなり深刻みたいだし。最悪、痛めつけるなりして、脅迫される可能性はありそう。」
「そんな……」
冷静な表情で答えたフィーの推測を聞き、表情を青褪めさせた。
「―――これも”特別実習”の延長路線上にあるかもしれない。危険かもしれないが……俺達で何とかしてみないか?」
「……はい。さすがに放っておけません。」
「いいよ。」
リィンの提案にエマとフィーはそれぞれ頷いた。
「ありがとう。……突破口があるとすればまずはユーシスかツーヤさんだろう。特にユーシスは今回の逮捕だって絶対にあいつの本意じゃないはずだ。」
「ええ……間違いないと思います。多分……お父さんである”アルバレア公”の独断ですね。」
「でも、ユーシスともう一人マキアスを解放できる可能性があるツーヤは実家で動けなくされてるっぽい……昨日会ったユーシス兄は頼れないの?」
「ルーファスさんか。マキアスにも友好的だったし、力になってくれそうだけど……でも、帝都に行っているからいつ帰ってくるかわからない。この状況で頼るのは難しそうだ。」
「……了解。だったらもう、わたしたちで直接奪還するしかないと思う。」
リィンの話を聞いたフィーは頷いた後真剣な表情で物騒な提案をした。
「フィ、フィーちゃん……」
(まあ現状ではそれしかないでしょうね。」
「……直球だな。」
フィーの提案を聞いたエマは冷や汗をかき、ベルフェゴールとリィンは苦笑していた。
「考えてもみて。市内にある詰所ならまだ侵入できる余地はある。でも……もしマキアスが昨日の砦にでも移送されたら奪還の可能性は相当低くなるよ。」
「それは……よし―――腹をくくるか。」
フィーの説明を聞いたリィンは考え込んだ後決意の表情でフィーの提案に頷いた。
「……はい。マキアスさんを奪還するにしてもなるべく秘密裏がいいですね。あくまでこっそり侵入していつの間にかいなくなっている……そんな形なら、元々冤罪ですし、強く出られないのではないかと。」
「そうだな……領邦軍は面子を重んじるらしいし。バリアハートから脱出できれば何とか追及をかわせるかもしれない。」
そしてエマの推測にリィンが頷いたその時
「―――だったら、あたし達もその脱出作戦、手伝うわ。あたし達なら、その捕まった人をこっそり助けられるかもしれないルートをしっているし。」
「え……」
栗色の髪の娘がリィン達に近づき、娘の傍には黒髪の青年と銀髪の娘がいた。
「…………!」
銀髪の娘が無意識にさらけ出している霊圧を感じたエマは真剣な表情になり
(あら?あの銀髪の娘……気配からして”天使”ね。何でこんな町中に………しかも異世界にいるのかしら?)
ベルフェゴールは首を傾げて銀髪の娘を見つめていた。
「え、えっと、貴女達は……?」
一方リィンは戸惑いの表情で尋ね
「あ、自己紹介がまだだったわね。―――エステル。あたしの名前はエステル・ファラ・サウリン・ブライト。遊撃士よ!」
「僕はヨシュアと言います。遊撃士協会・ケルディック支部に正式配属になったばかりです。」
「メティの名はメティサーナだ!ご主人様―――セリカ・シルフィルの頼みによって忙しいエステル達を手伝ってやっている!」
栗色の髪の娘―――エステル、黒髪の青年―――ヨシュア、銀髪の娘―――メティサーナはそれぞれ自己紹介をした。
「遊撃士……!」
「しかも”エステル・ファラ・サウリン・ブライト”って言ったら、あの”ブレイサーロード”じゃん。何でバリアハートにいるの?」
(”セリカ・シルフィル”って言ったらかの”神殺し”じゃない!何で”天使”が”神殺し”の使い魔に……い、いえそれ以前にどうして”神殺し”がわざわざ使い魔に人間達の仕事を手伝わせているのかしら?って、よく見たらあの栗色の髪の娘からは”神気”も感じられる上あの鞘に収めてある剣の霊圧からして、”神剣”じゃない!……あの娘……何者??)
エステル達の自己紹介を聞いたエマは驚き、フィーは目を丸くした後興味ありげな表情でエステルを見つめ、ベルフェゴールは驚きの表情でエステル達を見つめた後エステルから感じるある気配を感じて戸惑いの表情でエステルを見つめた。
「バリアハートに住んでいる人から依頼を頼まれたのよ。で、依頼を終えた後お昼ご飯をここで食べていたら、ちょうど君達の会話が聞こえて来て、あたし達も手伝おうと思って君達に声をかけた訳。君達って確か”トールズ士官学院”の”Ⅶ組”の人達だよね?」
「そうだったんですか……しかしどうしてファラ・サウリン侯爵閣下がどうして俺達の事を?」
初対面のエステル達が自分達の事を知っている事に気付いたリィンは不思議そうな表情で尋ねた。
「その前にその”ファラ・サウリン侯爵閣下”って呼び方は止めて。あたし、その貴族としての呼ばれ方であんまり呼ばれたくないのよ。元々あたしの名前は”エステル・ブライト”だし。」
「し、失礼しました。それじゃあどのようにお呼びすれば……?」
ジト目のエステルに注意されたリィンは慌てた様子で謝罪した後尋ね
「”エステル”でいいわよ。勿論”様”付けもなしで!」
「わ、わかりました。―――それではエステルさん。改めてお聞きしますが、どうして俺達の事を?」
エステルの指摘に戸惑いの表情で頷いたリィンは気を取り直して尋ねた。
「君達のクラスメイトにプリネとツーヤがいるでしょう?あたし達、その娘達と友達同士で手紙のやり取りをしているんだけど……二人の手紙で君達―――”Ⅶ組”の事は知っていたのよ。」
「それと、ケルディックの新領主のサフィナさんやレンからも君達が今バリアハートに来て”特別実習”をしている事を知らされているんだ。」
「――そしてメティ達が”遊撃士”として捕えられたお前達の仲間の救出作戦を手伝ってやると決めて、お前達に話しかけた訳だ!」
リィンの疑問にエステルとヨシュアはそれぞれ答え、メティサーナは胸を張って答えた。
「ええっ!?」
「わお。まさかこんな強力な戦力が助力を申し出てくれるなんて、ついてるね。」
メティサーナの話を聞いたエマは驚き、フィーは目を丸くした後口元に笑みを浮かべ
「ちょ、ちょっと待ってください。え、えっと……確か遊撃士は”報酬”を用意しないと”依頼”を請けてくれないと聞いていますが……」
「そ、その……私達、エステルさん達に報酬を払えるほど持ち合わせがないのですが……」
その時リィンが慌てた様子で尋ね、リィンの質問を聞いたエマは不安そうな表情をした。
「報酬の支払いに関しては心配いらないわ。民間人の緊急保護の報酬は遊撃士協会から支払われる事になっているのよ。」
「こういった救出や保護の依頼の報酬は本部の基金から出るし、場合によっては保護対象者の生活費も出るんだよ。それに何より民間人の保護は遊撃士協会の義務だから、見逃せないよ。」
「そのマキアスとやらも、遊撃士協会の保護対象―――”民間人”に入るから金の心配をする必要はないぞ。」
「太っ腹だね。」
「そ、そうなんですか……どうしますか、リィンさん?」
エステル達の説明を聞いたフィーは静かな口調で呟き、驚きの表情で聞いていたエマはリィンに判断を促し
「………………―――そうだな……こういうことに関しての専門家でもある遊撃士が手伝ってくれたら心強いし、何よりエステルさんはメンフィル帝国の貴族の爵位―――それも”侯爵”の爵位を持っているからな。さすがにメンフィル帝国の貴族――それもアルバレア公に次ぐ爵位の”侯爵”相手なら領邦軍も手も出しにくいと思うから、マキアスを確実に助ける為にもせっかくの申し出なんだから有難く受けておくべきと思う。二人ともいいか?」
リィンは考え込んだ後結論を出し、二人に尋ね
「私は勿論構いません。正直、私達だけでマキアスさんの奪還を実行するのには不安もありましたし……」
「ん。これで作戦成功率も大幅にアップだね。」
尋ねられた二人はそれぞれ頷いた。
「わかった。……という訳で少しの間ですが、よろしくお願いします。」
「オッケー!」
「了解。」
「大船に乗った気分でいるがよいぞ!」
「―――それで早速聞きたいのですが先程マキアスを助けられるかもしれないルートを知っている……と言っていましたが、どのような話か聞かせて頂いていいですか?」
「ええ、いいわよ。えっとね。この宿酒場のマスターから聞いた話なんだけど、バリアハートの地下には昔の水道が張り巡らされていて、手強い魔獣もいたから、以前はあたし達遊撃士が時々退治していたそうなの。」
リィンに尋ねられたエステルは答え
「……その地下水道ってどのくらいの広さ?」
ある事が気になったフィーは尋ねた。
「街の東から西にかけて地下に広がってるって話だよ。ちょうど、駅前のあたりから貴族街のあたりぐらいらしい。それでここが肝心な所なんだけど……アルバレア公爵家の館にも通じているという噂もあるらしい。」
「ちなみに領邦軍共は地下水道にいる魔獣には興味がなく、ほとんど放置しているそうだぞ。」
「それは……」
「もし、本当にアルバレア公爵家の館にも通じているのなら、秘密裏にマキアスを助けられる絶好のルートだな。」
「行ってみる価値はあり、だね。」
ヨシュアとメティサーナの説明を聞いたエマとリィンはそれぞれ真剣な表情をして顔を見合わせ、フィーは静かに頷いた。
「―――時間もそんなに余裕はない。早速その地下水道を探してみよう。」
そしてリィン達は宿酒場を出て行った。
「お、おいおい。アイツらが直接手を貸すなんて、色々な意味で大丈夫か?それにしてもまさかアイツらもバリアハートにいるなんて、完全に予想外だったな……まあ、アイツらがいるなら、俺のフォローも必要ないか。」
その様子を驚きの表情で見守っていた金髪の青年は疲れた表情で溜息を吐いた後、苦笑していた。
「……ただなあ。アイツらに任せておいたら、大丈夫なのは確実なんだが……アイツらが領邦軍相手に大暴れして、大事へと発展させないかが心配なんだよな。ハア、本当に頼むから穏便に済ませてくれよ……」
しかしすぐにある事に気付いて、疲れた表情で溜息を吐いた。
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