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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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外伝~動き始めた運命~前篇

~リベール王国某所~



エステル達がル=ロックルでの訓練を終えた同時期、リベールのある場所に建造されている研究所に一機の赤い飛空艇が着陸し、そこからスーツ姿の少年が現れた。

「ふぅん。なかなか良い所じゃない。教授もいい趣味してるよね。」

「遅かったな、カンパネルラ。」

少年――カンパネルラにクーデター事件後行方がわからなくなっていた銀髪の青年――ロランス少尉が近付いて来た。

「やあ、『剣帝』。ずいぶん久しぶりだねぇ。君がいない半年間、寂しくてたまらなかったよ。」

「フッ、心にもないことを。帝国遊撃士協会の襲撃はお前が担当したと聞いている。カシウス・ブライトの相手はさぞかし楽しかっただろう?」

「なあんだ、知ってたのか。いや~、あのオジサン、ホントとんでもない人だよね。僕の存在は知らないはずなのに次々と的確な対策を取られてさぁ。おかげで手持ちの猟兵団をひとつ潰されちゃったよ。」

「『ジェスター猟兵団』か。一度、稽古は付けてやったがどうにも凡庸な連中だったな。『剣聖』の相手は少々、荷が重かっただろう。」

自分の部下達が潰された事実を焦りも怒りも抱いていないカンパネルラは楽しそうな表情で答えた後、目の前の青年もまた自分と同じように強敵と対峙した事を思い出した。



「そういう君は”戦天使の遊撃士(エンジェリック・ブレイサー)”に”獅子王”に加えて”七の守護者(セブンスガーディアン)”を相手にしたじゃないか♪そっちと比べたら大した事ないよ♪何でもずいぶん手酷くやられたんだってね?」

「ああ。噂通りとんでもない存在だよ、奴等は。特に驚くべきは”戦天使の遊撃士(エンジェリック・ブレイサー)”だな。実際に戦ってみてわかったが、実妹の”殲滅天使”と互角……いや、下手をすればそれ以上の実力かもしれん。」

「へえ……フフ、是非とも相反する”天使”同士が剣を交えるとどんな結果になるのか見てみたいね♪」

「…………………」

レンとある人物が剣を交えている様子を思い浮かべたカンパネルラは口元に笑みを浮かべ、ロランス少尉は目を伏せて黙り込んでいた。

「でもま、君の工作完了まで足止めできたから十分かな。あ、そういえば君ってば彼との対決が(たの)しみだったとか?」」

「フフ……少しな。だが、野に放たれた虎も軍務という名の鎖に繋がれた。もはや、正攻法で我らを止めることは叶うまい。」

「ふふ、教授の計画が見事、図に当たったみたいだね。それじゃあ、他のメンバーはもうリベールに来てるのかい?」

「ああ、昨日集結したばかりだ。もっとも、ブルブランのやつは前から下見していたようだが。『怪盗紳士』、『痩せ狼』、『幻惑の鈴』、『殲滅天使』……。揃いも揃って、クセのある連中ばかりが集まったものだ。」

今後リベールで暗躍するメンバーの顔ぶれを思い浮かべたロランス少尉は不敵な笑みを浮かべた。



「そういう君だって相当クセが強いと思うけどね。そういえば『彼』……行方をくらましたんだって?」

「………………………………」

カンパネルラからある人物の事がでるとロランス少尉は何も答えず黙り込み

「うふふ、愉しみだな。僕たち『執行者(レギオン)』の中でも隠密行動はピカイチだったしね。『剣帝』と『白面』相手にどこまで頑張ってくれることやら。」

「………………………………。所詮、何年も前に『結社』から足を洗った人間だ。大した脅威になるはずがない。」

楽しそうに語るカンパネルラとは反対にロランス少尉は目を伏せて答えた。

「いやいや。そんな事はないと思うよ。」

するとその時以前の学者風の服ではなく、まるで神父が身に纏っているような法衣にも見える白を基調とした服を身に纏ったヨシュアが失踪する原因となった人物―――ワイスマンが近づいてきた。



「やあ、カンパネルラ。わざわざご苦労だったね。見事、カシウス・ブライトを足止めしてくれて助かったよ。」

「うふふ、愉しい仕事だったよ。しかし、教授の計画書を拝見させてもらったけど……いやはや、ずいぶんと愉しいことを考えてるじゃない。」

「ははは、道化師たる君にそう言ってもらえるとは光栄だ。しかし、実際の計画ではもっと楽しんでもらえると思うよ。何しろ、今回協力してくれる諸君は皆、個人的な目的を持っている。私も、そしてこちらの彼もね。」

「……否定はしないさ。あなたの思わせぶりに(ほの)めかされる筋合いはないがな。」

「やれやれ、つれない事を。」

あまり乗り気でない様子のロランス少尉の言葉を聞いたワイスマンは口から出た言葉とは裏腹に口元に笑みを浮かべていた。

「ふふ、なーるほど。色々と事情がありそうだ。まあいいや、教授の悪趣味はまはや芸術的とすら言えるからね。存分に楽しませてもらうよ。」

「フフ……。悪趣味とは聞こえが悪い。まあいい、心ゆくまで今回の計画を見届けるがいい。我らが『盟主』の代理としてね。」

「うふふ、任せておいてよ。執行者No.0―――『道化師』カンパネルラ。これより、使徒ワイスマンによる『福音計画』の見届けを始める。」

そしてカンパネルラはその場でうやうやしく礼をして、自分達の”組織”にとって重要な宣言をした。



~同時刻・エレボニア帝国南部・リベール王国の国境線より約120セルジュ北部~



「………………………………」

一方同じ頃、黒髪の少年が墓石の前で花束を抱え

「カリン姉さん……帰ってきたよ。」

花束を墓石の前に置いた。

「お、おーい……。どこ行っちゃったのさぁ!?」

その時、少女の声が聞こえて来た。すると少女は同行者達と共に、少年を見つけた。

「よかった……ここにいたんだ。」

少女――かつてボース市でハイジャック事件を起こし、リベール軍に拘束されたはずの空賊の一人―――ジョゼット・カプアが少年を見つけて安堵の溜息を吐いた。



「もう、ビックリさせないでよ!1人でさっさと奥に行くんだもん。」

「ふう……どうして来たんだ。個人的な用事だから付き合う必要はないと言ったはずだよ。」

「か、可愛くないヤツ!人がせっかく心配して探しに来てやったのにさ!」

自分が心配して口にした言葉を一蹴した少年――――ヨシュアの答えを聞いたジョゼットはヨシュアを睨んだ。

「それにこの有様は興味を持つなって方が無理さ。見たところ、廃墟になったのはここ10年くらいの間みたいだな。」

「俺たちは3年前まで北部の領地に住んでいたが……。南部が廃村になったなんて今まで聞いたことがなかったぞ。何ていう名前の村だったんだ?」

その時ジョゼットの兄達であり、空賊―――”カプア一家”を率いるキール・カプアとドルン・カプアはそれぞれ廃村となった廃墟を見回して尋ねた。

「………………………………。……『ハーメル』。かつてそう呼ばれていた村さ。」

二人の疑問にヨシュアはしばらく言うのを戸惑ったが、ジョゼット達に背中を向けて言った。



「ハーメル……。聞いたことのない名前かも。キール兄、知ってる?」

「いや……。俺も聞いたことがないな。兄貴はどうだい?」

「んー、待てよ……。かなり前に、帝国政府から何かの通達があったような……。……駄目だ、思い出せねえ。」

「なんだよ~、それ。」

ジョゼット達の会話に入らず黙り込んでいたヨシュアはやがて振り向いて口を開いた。

「……僕の用事は終わりだ。貴方たちには関係ないのに付き合わせて済まなかったね。」

「別にそれはいいんだけどさ……。アンタ、最初に会った時と態度が違いすぎるんじゃない?ボクたちを舐めてるわけ?」

ジョゼットは以前の優しい少年であったヨシュアの態度を思い出し、ヨシュアを睨みながら尋ねた。



「……君にそんなことを言われる筋合いはないな。最初に会った時、ずいぶん堂に入った演技をしてくれたじゃないか。僕の態度もそれと同じさ。」

「うっ……。そ、それじゃあそれがアンタの本性ってわけかよ!?」

しかしヨシュアに図星を突かれると焦った様子で反論し

「ふう……何だか知らんが色々と事情があるみたいだな。まあ、本性を出してくれた方がこちらとしては信頼はできる。上辺を取り繕われるよりはな。」

「……………………………」

キールの言葉を聞いたヨシュアは何も語らず黙り込んでいた。

「それに、おめぇには王国軍に追われていたところを助けてもらった借りもあるしな。そのクソナマイキな態度も少しは大目に見といてやらぁ。」

「……大目に見る必要はない。貴方たちを助けたのはあくまで利用できる駒が欲しかっただけだからね。貸しに見合う働きを期待させてもらうだけさ。」

「ぐっ、口の減らねぇガキだな。だがまあ、おめぇの提案は俺たちにとっても渡りに舟だ。せいぜい俺たちの方もおめぇを利用させてもらうぜ。」

「……それでいい。僕と行動するのはかなりの危険が付きまとう。その危険に見合うだけの協力はさせてもらうつもりだ。」

ドルンの挑発とも取れる言葉をヨシュアは淡々と答えた。



「ほ、ほんと可愛くないヤツ!なんでこんなヤツのことをあの時一瞬でも……」

「……?」

「なんでもないっ!不思議そうな目でボクを見るな!」

「どうどう、ジョゼット。ま、いずれにしてもお互いの目的を達成するまでは俺たちが仲間ってのは確かだ。よろしく頼むぜ、ヨシュア。」

妹の気持ちを察していたキールはジョゼットが怒る理由を苦笑いしながら見つめていたキールはヨシュアを見つめ、しばらくの仲間となるヨシュアを見つめて言い

「………………………………。わかった、よろしく頼む。」

ヨシュアは静かな表情で頷いた。

「ヘッ……。そろそろ出発するかよ?」

「ああ……戻ろう。リベールへ―――」

そしてヨシュア達がその場から去ろうとしたその時、周囲に光が走った!



「わっ!?」

「クッ!?」

「な、なんだ~!?」

光に目が眩んだジョゼット達は驚き

「閃光弾か!?」

ヨシュアは警戒の表情で後ろへと跳躍した。そして光が晴れるとそこには燕尾がついた外套を身に纏い、紫色のツインテールの少女が褐色肌で服の上からも見える筋肉を持つ大柄な男性と互いの武器をぶつけて鍔迫り合いの状態になっており、更に少女の背後では漆黒の服と外套を身に纏い、ヨシュアよりも深い漆黒色の髪を持つ少年が地面に跪いていた。



「な、ななななななっ!?」

「お、おいおい、どうなってんだよ!?」

「一体どういう状況だよ、これは!?」

状況を見たジョゼット達は混乱し

「……………」

ヨシュアは双剣を構えて目の前の3人を警戒していた。



「クク、この俺と一人でまともにやりあえるとは面白いじゃねえか!ハハハハハハッ!!」

自らの得物である斧を持つ大柄な男性は凶悪な笑みを浮かべて笑い続け

「アスベル達と私の故郷は私が”守る”!」

格闘技の構えで凶悪な笑みを浮かべる男性と対峙している少女は男性を睨んだ。

「……?馬鹿な!?一体何故僕が再び蘇っているんだ………!?――――!!シャル!?何故、お前が!?それに貴様は……―――バルバトス!!」

一方地面に跪いていた少年は自分の身体や腰に刺してある剣を見て驚いた後、少女と交戦している大柄な男性を見つめて目を見開いて驚き

「ほう?貴様はジューダスか。カイル・デュナミスがいないのは少々残念だが……貴様がいるなら面白くなりそうだなあ!?纏めてかかって来いやあっ!」

大柄な男性―――バルバトスは少年―――ジューダスに気付くと凶悪な笑みを浮かべて叫び

「フン、まさか生きていたとはな。相変わらずしぶとい男だ。スタン達やカイル達によって救われた世界を壊す事はこの僕が許さない!何度蘇ろうと貴様はこの僕が何度でも殺す!」

ジューダスは立ち上がった後かつて自分が”友”と認めた男やその息子や仲間達が為した偉業を再び破壊する”原因”になるであろうバルバトスを睨みながら叫んだ!

(坊ちゃん!ここは、バルバトスと戦っているあの少女と共闘すべきです!バルバトスを相手にするのですから、一人でも多くの戦力が必要です!)

「わかっている。―――おい、何者か知らぬがここは手を貸してやる。そいつと僕は色々と因縁があってな。そいつを絶対に生かしておく訳にはいかん!」

そしてジューダスは少女と並んでかつて自分の愛剣であり、古の時代より存在した意志ある剣―――『ソーディアン』の『シャルティエ』と短剣―――『クリスダガー』を構えてバルバトスと対峙した。



「ありがとう。――――私の名前はソフィ・ラント。貴方の名前は?」

ジューダスの申し出を聞いた少女―――ソフィは自分の名前を名乗った後ジューダスに名前を訊ね

「―――ジューダス。それが今の僕の名前だ。」

訊ねられたジューダスは静かな表情で答えた。

「――そこの人達は早く逃げて!」

「でなければ貴様らも戦いに巻き込まれるぞ!死にたくなければ今すぐここから離れろっ!」

そしてソフィはジューダスと共にヨシュア達に視線を向けて警告した。

「ど、どうするの、ヨシュア!?」

「ここはとっとと逃げちまった方がよくねえか!?」

「だ、だが……あの二人の事はほおっておいていいのかよ!?」

警告されたジョゼット達は混乱した様子でヨシュアに判断を促し

「………君達は危ないから下がっていて。」

「ヨシュア!?」

ヨシュアは双剣を構え、瞬時に話が通じると判断した相手―――ジューダスとソフィに視線を向けた。



「―――多くの死者達が眠るこの村をこれ以上荒らす事は許さない。ジューダスさんとソフィさん、でしたね?僕も加勢します。」

「フン、物好きな奴だ。好きにしろ。」

「―――来るよっ!」

「さあ!全員纏めてかかって来いやぁっ!ぶるあああああぁぁぁぁぁっ!!」

そしてヨシュア、ジューダス、ソフィはバルバトスとの戦闘を開始した………! 
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