英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第31話
その後宿舎に戻ったエステル達は宿舎を調べた後、宿舎を出たところ、クルツが隙を見て逃がしたオーブメントの整備士に会った。
整備士から状況を聞き、猟兵達が別拠点に移った事を知ったエステル達は整備士から教えられた訓練用の要塞――グリムゼル小要塞に猟兵達に捕まったクルツと管理人がいると思い、3人はグリムゼル小要塞に入って仕掛けを解除したりしながら進み始め、終点に到着した。
~グリムゼル小要塞・終点~
「カカッ、よく来やがったな。」
エステル達が終点に着くとそこには槍を構えた猟兵がいた。
「あ……!」
「あら。」
「やっと出た……!」
猟兵を見つけたエステル達は一定の距離をとりながらいつでも戦闘に入れるようにそれぞれの武器を構えた。
「よく来たなぁ。俺たちの新たな拠点によ。仕掛けは楽しんでもらえたかい?」
「えー、おかげさまでね。それよりも、クルツさんたちはその扉の向こうにいるみたいね。」
「痛い目に遭う前に解放した方がいいと思うよ~。」
「うふふ、一人で正遊撃士を3人も相手にするなんて、命知らずとしか言いようがないわよ?」
「クク、小娘3人がずいぶんと囀るじゃねえか。死地とも知らずにのこのこ飛び込んでくるとはな。」
エステル達の言葉を聞いた猟兵は口元に笑みを浮かべて答えたが
「フン、それを言うならあんたたちだって同じでしょ。何が目的か知らないけど袋のネズミと同じじゃないの。」
「なにィ……?」
勝ち誇った笑みを浮かべるエステルの言葉を聞き、エステルを睨んだ。
「ギルドの応援もすぐに来るよ。そうなったら、あなたたちの勝ち目は無いと思うんだけどなぁ。」
「フン……。宿舎の通信器は完全に破壊した。それでどうやって連絡を取る?」
「え、えっと……(何か上手いハッタリは……)」
猟兵に指摘されたエステルは猟兵を騙すハッタリを考え込み、思いついた事を口にした。
「フン、連絡なんてそもそもする必要がないのよ。定時連絡がない時点でこちらに異常が起きたのはギルドにも分かってるはずだし。」
「なに……?」
「確かに、今朝の時点で異常に気が付いているはずだから……。うん、そろそろ応援が到着するかも♪」
「うふふ、もしかしたらお兄様達が来るかもしれないわね?」
エステルが口にしたハッタリに騙されている猟兵にたたみかけるようにアネラスとレンもそれぞれハッタリを口にした。
「……チッ。詰めが甘かったみたいだな。まあいい。どのみち貴様らは目障りだ。とっとと片付けさせてもらうぜ!」
「望むところよ!」
「いざ、尋常に勝負だよっ!」
「うふふ、”戦天使”に喧嘩を売った事、その身を持って後悔させてあげるわ!」
そしてエステル達は猟兵との戦闘を開始した!
「オラアッ!まずはガキ!テメェからだ!!」
戦闘が開始されると猟兵はレンに向かって突撃し
「うふふ、レンに目をつけたのは正解だけど……貴方”如き”でレンに一人で勝とうなんて、無謀よ。二の型・改―――裏疾風!双牙!!」
不敵な笑みを浮かべつレンは猟兵の突撃をすれ違う瞬間に回避すると同時に二振りの小太刀でそれぞれ斬撃を叩き込み、更に猟兵から距離を取って二つの斬撃波を解き放った!
「何っ!?グッ!?」
襲い掛かる高速の攻撃にさばけなかった猟兵はダメージを受けて怯んだ。
「せいっ!!」
「蒼波刃!!」
そこにそれぞれ挟み込むような位置でエステルは衝撃波の弾丸を、アネラスは闘気によって発生した風の刃を武器から放ち
「フンッ!」
猟兵は同時に自分に襲い掛かって来た衝撃波を槍で薙ぎ払って相殺し
「魔神剣――――」
「無駄だっ!」
レンが片方の小太刀をふるって放った遠距離からの衝撃波を槍を突き出して相殺したが
「双牙!!」
「なっ!?チッ!?」
時間差でもう片方の小太刀を振るって繰り出したレンの衝撃波に驚いた猟兵は紙一重で側面に跳躍して回避に成功した。
「瞬迅爪!!」
そこにエステルが棒を突きの構えをして突撃し
「させねえぜ!」
猟兵は槍でエステルの突撃攻撃を受け流し
「ハァァァァァァ……!」
怒涛の突きを繰り出した。
「散沙雨!!」
猟兵の技―――五月雨に対抗するようにエステルも棒で怒涛の突きを放って対抗したが
「そこだっ!!」
「あうっ!?」
猟兵が最後に放った強烈な一撃を間一髪で棒で防御した際に後ろへと吹っ飛ばされた。
「はぁぁぁぁぁ、はぃ!!」
その時アネラスが全身を回転させながら跳躍した。すると回転による風圧が猟兵をアネラスの方へと引き寄せ
「蒼牙刃!!」
風を纏った剣をそのまま落下しながら猟兵に叩きつけようとした。
「ハッ!」
「キャッ!?」
猟兵は上空からのアネラスの攻撃を槍で薙ぎ払って弾き
「Eins!Zwei!」
全身を回転しながら槍による連続薙ぎ払い攻撃を放った!
「えっ!?クッ……!」
見覚えのある攻撃動作にアネラスは驚いた後剣で攻撃をさばいていたが
「Drei!!」
「キャッ!?」
最後に放った強烈な突きが肩当てに命中し、そのまま後ろへと吹っ飛ばされた。
「えいっ!ダークマター!!」
「グッ……!?」
その時2人が猟兵と戦っている間にオーブメントの駆動を終えたレンがアーツを発動すると、猟兵を中心とした広範囲に重力が発生して重力で猟兵にダメージを与えると共に身体の動きを止め、そこにエステルとアネラスが並んで突撃して技を繰り出した!
「さあ、行くよっ!まだまだまだまだまだぁっ!!」
「烈波―――無双撃!はぁぁぁぁぁ!」
「グアアアアッ!?」
二人は息も突かせない怒涛の連続攻撃を猟兵に叩き込み
「「とどめえっ!!」」
「ガッ!?」
同時に強烈な一撃を猟兵に叩き込み、後ろへと吹っ飛ばした。
「チッ、やるじゃねえか。だが、まだまだこれからだぜっ!!」
空中で受け身を取って着地した猟兵はその場で精神統一をした。すると猟兵の傷はみるみると回復して行ったが
「うふふ、回復する暇を与える訳がないじゃない♪」
「な――――」
”疾風追連”で詰め寄って来たレンが猟兵の目の前に現れ
「爪竜連牙斬!!」
「チィッ!?」
踊りを舞うかのような動作で次々と二振りの小太刀を繰り出し、対する猟兵はレンの攻撃を全て槍でガードしたが、その時レンは素早く二振りの小太刀を鞘に収めて両手の拳に闘気を溜め込んで猟兵の腹に叩き込んだ!
「剛烈破掌!!」
「ガハッ!?」
零距離で闘気を込められた拳を叩きつけられ、闘気による爆発を受けた猟兵は怯みながら足に力を込めてその場で踏ん張った。
「アネラスさん!今よっ!」
「うんっ!行っくよー!!」
その時エステルとアネラスが猟兵を距離を取った状態で挟み撃ちにし
「ハァァァァァァッ!!」
「まだまだまだまだまだぁっ!!」
「グッ………!?」
それぞれ武器を怒涛の振るって衝撃波や闘気によって発生した風の刃を次々と猟兵に叩き込み
「これがあたし達の!」
「とっておきだよっ!」
怒涛の攻撃を放ち終えた後それぞれの武器に闘気を込めて武器を構え
「「奥義!双波滅殺!!」」
それぞれ同時に突撃して猟兵の目の前で互いの武器を打ち合わせて駆け抜けた。
「グアアアアアアアッ!?クソッ……!」
すると互いの闘気が打ち合った事によって大爆発が起き、爆発に呑みこまれた猟兵は悲鳴を上げた後地面に跪いた!
「はあはあ……か、勝った……。で、でもこの手応えって……」
「う、うん……。エステルちゃんとレンちゃんも気付いた?」
「うふふ、二人ともようやく気付いたようね♪」
互いの顔を見合わせているエステルとアネラスの様子を見たレンは小悪魔な笑みを浮かべ
「フフ……。見事、騙されてくれたようだね。」
「ハハハッ。約1名を除けば、面白いように引っかかったな。クソ~、さすがの”小剣聖”もちょっとは慌てると思っていたんだけどなあ?」
更に猟兵の背後の扉から猟兵が二人現れた!
「あっ!」
「あ、新手!?」
新手の登場にエステルとアネラスは驚き
「そんな訳がないでしょう?―――お疲れ様。カルナお姉さん、グラッツお兄さん♪」
レンは呆れた様子で溜息を吐いた後口元に笑みを浮かべて二人の猟兵を見つめた。
「へ……」
「え……」
レンの答えを聞いた二人が呆けたその時
「やれやれ……一体いつからあたし達だと気付いていたんだろうねえ?」
「相変わらず恐ろしい嬢ちゃんだな……」
二人の猟兵が仮面を取るとなんと二人の猟兵はカルナとグラッツだった!
「アネラス、エステル、レン。ずいぶん久しぶりじゃないか。」
「久しぶりって……。一体どうなっちゃってるの?そ、それじゃあこっちは……」
「クルツ先輩ですねっ!?」
カルナに親しげに話しかけられたエステルとアネラスは地面に跪いている猟兵に視線を向けると
「その通り。」
猟兵が仮面を取るとなんと猟兵はクルツであった!
「よう、3人共。お疲れさまだったなぁ。」
「お、お疲れさまって……。……もしかしてこれって……」
「フフ、そういうことだ。エステル君、アネラス君、レン君。最終訓練、ご苦労だったな。」
「さ、最終訓練……」
「うふふ、”やっぱり”ね♪」
「つ、つまり……。昨日の襲撃から全部、お芝居だったんですかっ!?」
クルツの説明を聞いたエステルは口をパクパクさせ、アネラスは信じられない表情で尋ねた。
「ふふ、この訓練場における慣例のようなものでね。最終訓練は、訓練生を騙して危機的状況を体験させる趣向なんだ。」
「あ、あんですって~!?」
「んで俺たちは、その手伝いのためわざわざリベールから来たってわけだ。」
「ふふ……。なかなか楽しませてもらったよ。」
「う~っ……。先輩ってば意地悪すぎですよ~っ!」
「クスクス、レンは途中から気付いていたけどね♪」
クルツ達の説明を聞き、クルツ達を睨んでいるエステルとアネラスをレンは面白そうに見つめていた。
「と、途中からって……」
「一体どこで気付いていたの~!?」
「うふふ、”サントクロワの森”でレン達の武具を見つけた時に全て理解したわ♪昨日の襲撃がお芝居でレン達に危機的状況を体験させて、レン達がどんな風に動くのかを見る為だって。」
「あ、あんですって~!?」
「ひ、酷いよ~、レンちゃ~ん。気付いていたのなら、言ってくれたらよかったのに……」
レンだけ既に気付いていた事に驚いた二人はそれぞれ恨みがましそうな視線でレンを見つめた。
「ハハ、昨日の事と言い、相変わらず恐ろしい娘だねえ。」
「ああ、視界を煙に遮られていたにも関わらず俺達の位置を完全に把握して反撃したしなあ。あれには驚かされたぜ。」
レンの答えを聞いたカルナとグラッツはそれぞれ苦笑いをし
「レン君の言う通り、君達に危機的状況を体験させ、どのような判断をするのかを見るのが狙いだからね。ちなみに言っておくが……本物の猟兵はこんなに甘くないぞ。」
カルナ達と共に苦笑いをしながらクルツは説明し、やがて表情を引き締めてエステル達を見つめた。
「うっ……」
「あう……」
「……………」
クルツの警告にエステルとアネラスは肩を落とし、二人の様子を見たレンは茶化さず真剣な表情で黙り込んでいた。
「リベールでは猟兵団の運用は禁止されているからあまり想像できないだろうけど……。他の国じゃ、遊撃士協会と猟兵団の対立は日常茶飯事なのさ。自然と、遊撃士たちも危機的状況に備える者が多い。」
「だから、リベールの遊撃士にも一度は危機的状況を体験して欲しい。そんな親心の現れだと思ってくれや。」
「はあ……ずるいなぁ。そんな風に言われたら文句言いたくても言えないわよ。」
「うんうん、ずるいよね。」
「うふふ、だからパパ達はこの訓練場に来るように言ったのね♪」
「あらあら。もう終わっちゃったのかしら?」
先輩遊撃士達の言葉を聞いたエステル達が答えると扉の外から管理人が姿を現した。
「あ、管理人さん!」
「む~、管理人さんもグルだったんですね?」
「あん、グルなんて言わないで。お芝居っていうから私も一生懸命、台詞を覚えたのよ?うふふ、迫真の演技だったでしょ♪」
驚いているエステルとアネラスに管理人は悪びれも無く呑気に答え
「うふふ、確かに”本番”と見間違えてもおかしくない程の役者っぷりだったわよ♪」
レンは小悪魔な笑みを浮かべて管理人を見つめた。
「はっはっはっ。3人ともお疲れさん!」
「あ~、嘘つきな人だ!」
「結局のところ、全員がグルだったわけね。あ、それじゃあ、宿舎の通信器って……」
そして整備士がエステル達の背後から現れるとアネラスは整備士を睨み、エステルは宿舎を調べた際、壊されていた通信器の事を思い出した。
「うん、あれはジャンクパーツさ。本物の通信器は、別の場所に保管してあるから心配いらないよ。本当は、僕も最後まで人質として出てこない予定だったけど……君たちが、新型オーブメントをどう使いこなすか知りたかったからあのタイミングで現れたってわけさ。」
整備士がエステルの想像通りの答えを答えた。
「まったくもう……。みんな用意周到すぎですよ。でも、結局のところ騙された私たちの負けかなぁ?」
「うーん、悔しいけどそうかも。落ち着いて考えれば不自然な所はかなりあったし……。まだまだ修行が足りないなぁ。」
「うふふ、最初からお芝居だって気付いていないレンもまだまだね。」
「ふふ、そう落ち込むことはない。グラッツも言っていたが、今回は君たちの実力を試すよりも危機的状況を体験して欲しかった。そういう意味で演習は大成功だ。」
落ち込んでいるエステル達をクルツは励ました後、表情を戻してアネラス達の名を呼んだ。
「では改めて……アネラス・エルフィード。」
「あ、はいっ。」
「エステル・ブライト。」
「……はい!」
「レン・ブライト。」
「はーい!」
「これをもって、本訓練場における総合強化訓練の全過程を終了する。この3週間、本当にご苦労だったね。」
「そ、それじゃあ……」
「もう明日には……?」
「ようやくリベールに帰れるわね♪」
クルツの説明を聞いたエステル達は期待の表情でクルツを見た。
「すでにリベール行きの定期船のチケットは取ってある。もう今夜は何も起こらないから3人とも、ゆっくり休んでくれ。」
「うふふ。打ち上げと、送別会を兼ねて今夜はご馳走にしなくちゃね♪」
こうしてエステル達はル=ロックルでの訓練を終えた……………
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