英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第22話
”自由行動日”で再び依頼の消化や旧校舎の探索を終えたリィンは実技テストの日を無事迎え、サラ教官が選んだメンバーと共に難なくテスト内容をクリアした。
5月26日―――
~トールズ士官学院・グラウンド~
「うんうん、いいじゃない♪特別実習の成果と旧校舎探索の賜物かしら?」
「連携も悪くなかった。入学して2ヶ月近くで今の連携ができるのなら上出来な方だな。」
リィン達の戦闘が終わり、それぞれが武器を収めるとサラ教官とレーヴェはそれぞれ評価した。
「はは……そうかもしれません。」
「いい連携だった。」
「うむ、もう一戦くらいしてもいいくらいだな。」
二人の教官の褒め言葉にリィン達は表情を明るくし
「さ、さすがにそれは勘弁してほしいわね……」
アリサは唯一人表情を引き攣らせていた。その後フィー、エリオット、プリネもリィン達と比べると一人かけていたが、それぞれ連携して危なげなくクリアした。
「ふう……な、何とか終わった~。」
「割と楽な戦いだったよ。」
「お二人ともよい連携でしたよ。」
戦闘を終えたエリオットは安堵の溜息を吐き、フィーは静かに呟いた後武器を収め、プリネは微笑んだ。
「うんうん、プリネ一人の力に頼らずにちゃんと連携ができていて何よりよ♪さあ、これで最後よ!―――ツーヤ、エマ、ユーシス、マキアス!前へ!」
エリオット達の戦闘を嬉しそうな表情で評価したサラ教官は残りのメンバーを指名し
「うっ……わ、わかりました。」
「残りのメンバーや人数を考えるとそうなるのが自然なんですけど……」
ユーシスとマキアスの険悪さからとても連携等出来ない事を理解していたツーヤは唸った後すぐに気を取り直し、エマは心配そうな表情でユーシスとマキアスを見つめた。
「……くっ……とっとと終わらせるぞ!」
「フン……貴様が指図をするな。」
「な、なんだと!?」
対する二人は互いの顔を睨み合い
「やれやれ……このメンバーだとどのような結果になるのか、既に見えているようなものなのだがな……」
その様子を見ていたレーヴェは呆れた表情で溜息を吐いた。その後戦闘が始まったが、連携はエマがツーヤに合わせた事を除けば殆んどバラバラがツーヤ一人で3人に向かう攻撃をカバーしつつ、勝利した。
「何とか無事に終わりましたが、今の戦闘はどう考えても……」
戦闘を終えたエマは言い辛そうな表情でツーヤを見つめ
「―――ルクセンベールが全てカバーしての勝利だな。予想した通り、連携もほとんどバラバラで団体戦での勝利とは言えん。」
エマが言おうとした言葉の続きをレーヴェが静かな表情で答えた。
「……そのツーヤさん。ツーヤさん一人に負担をかけてしまって本当に申し訳ありません。」
「いえ。エマさんの連携や援護は助かりましたから、お互い様です。」
謝罪するエマの言葉にツーヤは謙遜しながら受け止め
「……わかってはいたけどちょっと酷過ぎるわねぇ。ま、そっちの男子2名はせいぜい反省しなさい。ツーヤ一人に負担をかけたのは君達の責任よ。」
サラ教官は呆れた後真剣な表情でユーシスとマキアスを見つめて厳しげな評価をした。
「……………くっ……………」
「…………………」
サラ教官の評価を聞いたマキアスは悔しそうな表情をし、ユーシスは唇を噛みしめた。
(何時になく厳しいな……)
サラ教官の評価を聞いたリィンは静かな表情で呟き
(……今回ばかりは仕方ないかもしれないわね。)
アリサは心配そうな表情で厳しげな評価を貰った二人を見つめていた。
「―――今回の”実技テスト”は以上。続けて今週末に行う”特別実習”の発表をするわよ。さ、受け取ってちょうだい。」
そしてサラ教官はリィン達に”特別実習”のメンバー表を配った。
5月特別実習
A班:リィン、エマ、マキアス、ユーシス、フィー、ツーヤ
(実習地:公都バリアハート)
B班:アリサ、ラウラ、エリオット、ガイウス、プリネ
(実習地:メンフィル帝国領、セントアーク市)
「これは………」
(また露骨な人選ねぇ。)
メンバー表を見たリィンは驚き、ベルフェゴールは苦笑し
「ハア………」
「そ、その……元気を出してね、ツーヤ。」
疲れた表情で溜息を吐いたツーヤを見たプリネは苦笑しながら慰め
「バリアハートとセントアーク……どちらもよく聞く地名だな。」
ガイウスは静かな表情で呟いた。
「バリアハートは東部にあるクロイツェン州の州都だね……」
「セントアークは帝国南部にあるサザーラント州の州都……だったんだけど”百日戦役”でメンフィルに制圧されて、そのままメンフィル領となった都市よ。」
エリオットと共に答えたアリサは言い辛そうな表情でプリネやツーヤを見つめ
「そういう意味では双方で釣り合いは取れているはずだが……」
「はい……ですが……」
「それ以前の問題かも。」
ラウラの言葉に頷いたエマは心配そうな表情で呆れた表情をしているフィーと共にユーシスをマキアスを見つめた。
「―――冗談じゃない!サラ教官!いい加減にしてください!何か僕達に恨みでもあるんですか!?」
その時マキアスが怒鳴ってサラ教官を睨み
「……茶番だな。こんな班分けは認めない。再検討をしてもらおうか。」
ユーシスは不愉快そうな表情で首を横に振ってサラ教官を睨んだ。
「うーん、あたし的にはこれがベストなんだけどな。特に君は故郷ってことでA班からは外せないのよね~。」
「っ……!」
サラ教官の説明を聞いたユーシスは舌打ちをし
「だったら僕を外せばいいでしょう!誰かさんの故郷に行く事を比べると、元帝国領の他国の土地に行った方が色々と勉強になって遥かにマシだ!”翡翠の公都”………貴族主義に凝り固まった連中の巣窟っていう話じゃないですか!?」
マキアスは怒りの表情で反論した。
「確かにそう言えるかもね。――だからこそ君をA班に入れてるんじゃない。」
「!…………………」
しかしサラ教官の説明からユーシスとの険悪さや上流階級を嫌悪する自分の性格をなんとかしろという事を遠回しに言われた事に気付き、目を細めてサラ教官を睨んだ。
「ま、あたしは軍人じゃないし命令が絶対だなんて言わない。ただ、Ⅶ組の担任として君達を適切に導く使命がある。それに異議があるなら、いいわ。―――二人がかりでもいいから力ずくで言う事を聞かせてみる?」
マキアスの反論を聞いたサラ教官は静かな表情で答えた後腕を組んで笑顔で二人を見つめ
「っ……!」
「……面白い。」
見つめられたマキアスは息を呑み、ユーシスは不敵な笑みを浮かべた後互いの顔を見て頷いた後サラ教官の前へと近づき
「おい、二人とも……」
「や、止めようよ……」
二人の行動を見たリィンとエリオットはそれぞれ制止の言葉を言ったが二人は耳に貸さずサラ教官の前に出た。
「フフ、そこまで言われたら男の子なら引き下がれないか。そういうのは嫌いじゃないわ――――」
自分の前に来た二人をサラ教官は口元に笑みを浮かべて見つめた後強化ブレードと導力銃を取り出して構え
「あーあ。あの二人はご愁傷だね。」
「やれやれ。その二人相手なら片方の武器で十分じゃないのか?」
その様子を見たレーヴェはフィーと共に呆れていた。
「……くっ……!」
「…………………」
サラ教官が無意識に出す威圧感に呑まれたマキアスは唇を噛みしめ、ユーシスは無言でそれぞれの武器を構え
「フフ、乗ってきたわね。―――リィン。ついでに君も入りなさい!まとめて相手をしてあげるわ!」
「りょ、了解です!」
サラ教官に指名されたリィンは慌てた様子で二人と並んで武器を構えた。そしてサラ教官は全身から気を練って目にも見えるほどの凄まじい闘気を全身に纏った!
「ごくっ……」
「……何と言う気当たりだ。」
「ほう……こんな形でお前の実力の一端を見る事ができるとはな。」
サラ教官がさらけ出す闘気にエリオットは息を呑み、ラウラは驚き、レーヴェは興味ありげな表情でサラ教官を見つめ
「アガットさんがさらけ出す闘気をも超えているんじゃないですか?」
「そうね……さすが……と言った所かしら。」
ツーヤとプリネは真剣な表情でサラ教官を見つめていた。
「それじゃあ”実技テスト”の補習と行きましょうか………トールズ士官学院・戦術教官、サラ・バレスタイン―――参る!」
そしてリィン達はサラ教官との戦闘を開始したが、サラ教官の実力はあまりにも圧倒的で連携すらできないリィン達は瞬殺と言ってもおかしくないくらい、凄まじい速さで敗北した。
「くっ……はあはあ……」
「ぐううっ……」
「……馬鹿な……」
サラ教官との戦いによってそれぞれ身体に強烈な一撃を与えられ、地面に膝をついているリィンは息を切らせ、マキアスは唸り、ユーシスは信じられない表情をした。
「だ、大丈夫!?」
「と、とんでもないわね。」
「……あれでも一応、手加減したみたいだな。」
「ふむ、どんな流派か皆目見当もつかないが……」
一方その様子を見ていたエリオットは3人を心配し、アリサやガイウスは驚き、ラウラは考え込み
(フッ、”死線”と互角に張り合うだけはあるな。)
(これがエレボニア帝国のトップクラスの遊撃士の実力……あたし達が知る遊撃士の中ではエステルさん達を除けばサラ教官がダントツに強いんじゃないでしょうか?)
(恐らくそうでしょうね。)
レーヴェは静かな笑みを浮かべ、ツーヤは驚き、プリネは真剣な表情でサラ教官を見つめ
「でも、これで……」
「決まりかな。」
エマの言葉にフィーは頷いた。
「フフン、あたしの勝ちね♪それじゃあA班・B班共に週末は頑張ってきなさい。お土産、期待してるから♪」
そしてユーシスとマキアスの仲違い、マキアスとリィンの距離の遠さが治らない中、”特別実習日”が来た………!
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