英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第16話
その後リィン達は課題を片付けながら調査をした所、第三者の犯人がいる事に気付いた。しかし誰が犯人なのかわからなかったが、リィンが気付いた点―――今まで大市に関わって来なかった領邦軍が朝の喧嘩の時だけ仲裁に来た事を調べる為に領邦軍の詰所を訪ねた。
~ケルディック・領邦軍詰所~
「ん……お前達は確か、士官学院の生徒達だったな。今日は何の用だ?」
「忙しい所申し訳ないのですが……お願いがあってきました。今朝の大市での事件について、俺達に話を聞かせていただけませんか?」
「……何だと?部外者のお前達に何の関係があるというんだ?」
リィンの質問を聞いた領邦軍の兵士は眉を顰めて尋ねた。
「え、ええっと……」
「我々は特別実習でこの町を訪れている。”トールズ士官学院の生徒として”、軍の先輩方の仕事について勉強する機会を頂きたい……そういった理由では駄目だろうか?」
「む……ふう……わかった。少し待っていろ。」
ラウラの説明を聞いて納得した兵士は詰所の中に入って行った。
「ふう……何とか話は聞けそうね。それにしてもラウラ、上手く言い含めたじゃない。」
「ふふ、こういうときこそ士官学院たる身分を有効活用しなくてはな。」
アリサに感心されたラウラは苦笑しながら答え
「でも問題はここからだね……はあ、なんだか緊張してきた。」
「どこまで情報を引き出せるかが鍵になりますね……」
エリオットは不安そうな表情をし、プリネは真剣な表情で考え込んでいた。
「とにかく、俺達にできる限りのことをやるだけだ。気を引き締めてかかろう。」
「うん……!」
そしてリィン達は領邦軍の隊長との面会を始めた。
「……やれやれ。我々も忙しいのだが……まあいい、手短に用件を言ってみたまえ。」
(あからさまに迷惑そうね……)
(聞こえますよ、アリサさん……)
リィン達と話すのも面倒だという態度を隠さない隊長の態度にアリサはジト目になり、アリサの言葉を聞いたプリネは苦笑した。
「……では、単刀直入にお聞きします。領邦軍としては、あれ以上の調査を行わないおつもりですか?」
「フン、何を言うかと思えば……そんなことか。」
「そんなこと……とは?各地の治安維持を預かる領邦軍としては、いささかそぐわぬ言動と思えるが。」
リィンの質問に鼻を鳴らした隊長の答えを聞いたラウラは眉をピクリと動かした後正論を口にした。
「ラ、ラウラ……」
直接責めるような言い方にエリオットは慌て
「フン、威勢のいいことだ。だがその認識はまだまだ青いと言わざるを得ないな。」
隊長は鼻を鳴らした後嘲笑した。
「どういうことですか?」
「我々領邦軍が各地を維持するにあたって最も重要なものがわかるかね?それは、各地を治める領主――――我々の場合はアルバレア公爵家―――彼らの意向ということになる。」
「公爵家の意向……」
「…………………」
隊長が口にした説明を聞いたラウラとプリネはそれぞれ真剣な表情で隊長を見つめた。
「領邦軍に属する以上、貴族の命令は絶対だ。我々はその意向に従い、守るべきものを冷静に判断しているだけなのだよ。」
(冷静に判断していると聞こえはいいけど、軍人として本当の守るべきものが何なのか全く見えていないだけじゃない……)
(典型的な強い権力に尻尾をふるっている雑魚ね。)
隊長の話を聞いたプリネは内心不愉快に思いながらも顔に出さず隊長を見つめ、リィンの身体の中にいるベルフェゴールは呆れた表情で隊長を見つめ
「……公爵家に出されているという”増税取りやめの陳情”ですね?それを取り下げない限り、ケルディックの大市は”守るべきもの”ではないと?」
リィンは冷静な表情で尋ねた。
「好きに解釈したまえ。あくまで我々は職務を全うしているに過ぎん……軍人とはそういうものだ。士官学院に入ったばかりの、羽根も生えて揃わぬヒヨッ子どもにとやかく言われる筋合いはない。」
「くっ………」
自分達を侮辱しているとも取れる隊長の言葉を聞いたラウラは唇を噛みしめ
(……面の皮が厚いわね。)
(ああ……何か手がかりが得られるかもと思ったけど……)
(この様子だと何も話してくれなさそうですね……)
厳しい表情で隊長を見つめながら呟いたアリサの小声にリィンとプリネはそれぞれ頷き
「…………」
エリオットはジッと隊長を見つめていた。
「さて、他に話はないのかね?我々も忙しい。それ以上ないなら、そろそろお引き取り願いたいところだが……」
「――あ、あのっ……最後に僕から一つ、いいですか?」
「エリオット……?」
予想外の人物が質問した事にリィンは目を丸くしてエリオットを見つめた。
「……フン、いいだろう。何でも言ってみたまえ。」
「それじゃあ、えっと……被害者のマルコさんが取り扱っていた商品ですけど……あの装飾品の行方がどうなったか、わかりますか?」
「……?何を言っている。”装飾品を扱っていたのはあのハインツとかいう帝都の商人の方だろう”。」
「え―――」
「今、なんて……?」
エリオットの質問に眉を顰めた後答えた隊長の答えを聞いたリィンは呆け、アリサは目を丸くして尋ね、またプリネ達も黙り込んだ。
「……な、なんだ。」
黙り込んでいるリィン達の様子を隊長が戸惑いの表情で見つめたその時
「……どうしてそんなことを詳しく知っているんですか?この事件については領邦軍はろくに調査していないはずですよね……?」
エリオットが真剣な表情で質問した。
「ふむ、腑に落ちぬな。我々も先刻の聞き込みで知ったばかりの事なのだが?」
「!……た、隊長……!」
(フフ、まんまと引っかかるなんて、やっぱり雑魚ね♪)
自分達の失言に気付いた兵士の一人が慌てた様子で隊長を見つめ、慌てている様子の領邦軍を見たベルフェゴールは口元に笑みを浮かべ
「わ……我々も我々で、独自の情報網を持っているということだ!――さあ、話は終わりだ!これで失礼する!」
隊長は慌てた様子で話を無理やり終わらせ、詰所の中に戻って行き、リィン達は詰所から離れて話し合いを始めた。
「……ねえ、さっきの話って……」
「領邦軍が、被害者についてある程度の調べを進めていた……そういうことだろうな。だが、事件は昨日の夜発生し、発覚したのは今朝……とてもじゃないけど、領邦軍に調べる時間なんてなかったはずだ。」
「おそらく、昨日今日で調べたものではあるまい。領邦軍の主たる公爵家には、商人たちの商売の許可証が出されていたが……」
「……その筋から得られた情報だと考えれば辻褄が合いそうね。となると、今度はどうしてそんな情報を得ていたかが気になってくるわね……」
「……下準備のため、だったのかもしれないね。」
「下準備……」
(そういう事ね………これは下手をしたら”あの権限”を早速使う事になるかもしれないわね……)
エリオットの言葉を聞いたリィンはアリサ達と共にエリオットに注目し、既にある事を察していたプリネは真剣な表情で考え込んでいた。
「多分、あの事件は少し前から計画されていたんだよ。商人たちの商売許可証に同じ場所が書かれていたのも、やっぱり、偶然じゃない。彼らをいがみ合わせる上で、そのほとぼりが冷めないうちにさらに事件を起こす……そうして、領邦軍なしではどうにもならない状況まで騒ぎを悪化させたんだ。」
「なるほど……要するにあの商人たちは利用されていたわけか。現に、店を失った二人は元締めでも止められないほどヒートアップしていたし……」
「だが領邦軍が大市のトラブルにまともに取り合うことはない。――――”増税取り消しへの陳情”が取り下げられない限りはな。」
「あのタイミングで現れ、強引にでも事態を収束することで領邦軍の存在をアピールした……そうやって、大市の人達に陳情を取り下げさせざるを得ない状況を作ろうとしたのね。」
「―――間違いないでしょう。詰所でも遠回しにですが認めていましたし。」
アリサの推測にプリネは真剣な表情で頷き
「……思った以上に真っ黒だったみたいね……」
アリサは疲れた表情で溜息を吐いた。
「ああ、エリオットのおかげで、ようやく見えてきたかもしれない。」
「よくぞ機転をきかせて言葉を引き出したものだ。ふむ、そなたはなかなかの策略家だな。」
「私も驚きました。」
「あはは……たまたまだよ。」
リィンやラウラ、プリネの称賛の言葉にエリオットは恥ずかしそうな表情で苦笑した。
「とにかく……領邦軍が今回の”犯人”に関わっている可能性は高そうだ。なんとか見つけ出して捕まえたいところだけど……軍の内部に犯人がいたら、調べるのは難しいだろうな。」
「いや……おそらく実行犯は別にいるはずだ。あのプライドが高い領邦軍が、自らの手を汚してまで、事を起こすとは考え難い。」
複雑そうな表情で呟いたリィンの推測を聞いたラウラは静かな表情で首を横に振り
「そうね、それに……犯人がこの町に居座っている可能性も低そうだわ。屋台から盗んだ商品……町のどこかに隠しきるのはちょっと難しいと思うのよね。」
「確かに……それは言えてるな。盗品の数から考えれば、鉄道を使って逃げた……というのも考えにくいな。」
「そうですね………――となるとまだこの町の近くにいる事は間違いないでしょうね。」
「僕もそう思う。盗品の数を考えるとたった一晩でそんな遠くに行けるとは思えないし……」
アリサの推測にリィンは頷き、プリネとエリオットはそれぞれ考え込んでいた。
「……だったら、表通りを中心にまた聞き込みをしてみよう。町を出入りする人の中に、怪しい人物を見かけた人がいるかもしれない。」
「うん、いい線だろう。では、早速調査再開といこう。卑劣な犯人を逃がさぬためにな。」
「ええ……!」
そしてリィン達は犯人の手掛かりを得る為に聞き込みを開始した。
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