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異世界にて、地球兵器で戦えり

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第十四話 アカツキ帝国は、決断を迫る

前田健太郎。アカツキ帝国の軍の最高司令官であると同時に最高指導者。異世界にて突然転移して前代未聞の事件が起きたにも関わらず、冷静に対処して、産業革命が起きていないアビス大陸の国家相手ではあるが、アビス大陸全土を事実的に6年で制覇した実績がある王。そして戦後の方針は、自分達の傘下に入る事を希望した亜人達や列強によって虐げられた属国を解放して、アビス大陸の亜人達から「奴隷解放の英雄」として尊敬されており、これまでのアビス大陸の常識を根底から否定して改革に乗り出して、彼の示した法案は着実に実行に移されて成果も出始めている。

これだけの偉業を成し遂げたなのに、気負う事もなく当然のように歩む彼をアカツキ帝国国民達は「歴史に名を遺す英雄」として尊敬の念を抱いているが、彼らは知らない。外面は覇気のある王を演じているが、実際は10年たった現在でも小市民気質の社会人である事に……。


「元帥閣下。日本大使との第一接触は順調に進んでいます」

「彼らは我々と近い民族という事もあり、アルヌス野戦基地の司令官である坂本中将からも良好との返事が返ってきています」

「そうか、我々と同じ世界の出身ではないが、近い民族との交流が良好であることは喜ばしいな」

健太郎は現在、外務省の人間や高級軍人たちの報告を聞いて少し微笑む形で頷く。実際に健太郎は、日本人が門を潜ってファルマート大陸に現れた事を聞いて心の故郷とも言える日本人の接触は表情には出さないが、内心ではすごく嬉しいのだ。

(このまえ日本から来た大使達と会話した時は、めっちゃテンションが上がったもんな)

初めは日本人と近い民族であるアカツキ人であるが、相手は民主国家で大日本帝国を否定して出来た国家であるが、こっちはバリバリの帝国国家であるため、日本との接触はギスギスとした第一接触になるんじゃないかなと内心では不安で仕方なかった健太郎であったが、意外にも第一接触会議はギスギスとした会談ではなく穏やかに終わって健太郎はホッとしていた。

「日本について関係が良好なのは理解した。相変わらず帝国は動かないままか?」

「動かないのではなく、動けないと言った方がいいですね。」

「自衛隊相手に異世界に侵攻して返り討ち、各国に声をかけて連合諸王国軍を形成して挑んだのはいいですかこれも敗退に終わり、現在の兵力では帝都防衛で精一杯のようです。実際に、帝国の弱体化を悟った帝国植民地では反乱の兆しが見え始めています。」

「それでも講和には応じないのか?こちらは責任者の引き渡しと亜人奴隷の解放と領土の一部で良いと帝国に通達しているはずだが」

アカツキ帝国はファルマート大陸全土を占領する意図は全くない。そのため講和条件として、戦争の発端となった責任者の引き渡しと帝国領土の一部をアカツキ帝国に明け渡すだけで和議を成立してもいいと言っているだが、これに対してゾルザルは怒り狂い、徹底抗戦の構えを崩さないと帝都に籠りきる羽目になった。

「もはや帝国に戦争を継続処か、帝国の支配権を維持する力は存在しないはずだ……」

「元帥閣下のおっしゃる通りです。ゾルザルを支援していた主戦派も、ここまで負けが続いて帝国支配権を維持する事が難しくなると知って左遷した和議派と接触する動きがあると聞いていますが、やはりまだゾルザルを支持する主戦派が優勢であるため、和議は難しいですね」

「帝国の治安が悪化しているのも痛いものです。帝国は、今回の戦争で多くの領主の貴族が戦死した為に、領地の指揮系統が機能しなくなり、治安システムが崩壊しています。そのため盗賊の襲撃が続出しており、盗賊の襲撃を受けた村では、我々の噂を聞きつけて占領地域に逃げ込む帝国難民が増えています。」

「ふむ……」

健太郎は予想以上に早い帝国の崩壊の音が聞こえている事に焦りを感じた。このまま気長に帝国が屈して降伏する事をまっては入れらないと感じた。帝国との終戦後には、多くの企業がファルマート大陸に参入するのだ。そして異世界からも日本企業や地球世界各国の企業もファルマート大陸に参入するのは分かりきっているので、ここで下手に帝国支配権の治安を悪化させれば、企業進出が遅れてしまううえに、地球世界の不評も買うので、そこは避けたいと思っている健太郎。

「これ以上ファルマート大陸の秩序の乱れは無視できない。即急にゾルザルに退場してもらおう。」

「では、いよいよ帝国の帝都に侵攻するのですか!」

「そうだ。我々単独で帝都を落とす事は造作もない。だが、日本政府にも立場がある。先ずは日本政府と話し合い、帝都侵攻に対しての根回しを行う。早急にアルヌス野戦基地に連絡を入れてくれ」

「は!!」

健太郎は確かに内心では未だに自分を小市民の社会人であるという認識を持っているが、それでも自分の決断一つで国の運命を決めてしまう事は理解しているので、それで起きる犠牲に対する責任感も人一倍強いのである。

ーーー。

一方そのころアルヌス駐屯地では、第三偵察隊が保護した避難民達の仮設住宅が建つ間はテントでの暮らしを余儀なくされたが、それでも衣食住が最低限保証されてコダ村から来た避難民達はホッと一息ついていた。

仮設住宅を建てる場所は、アルヌス駐屯地に近くにあるため自衛隊の仕事であるがアカツキ帝国軍も援助の為に建設の仕事を手伝った。なお、この光景を驚いた表情で見ていたのはカトーの弟子であるレレイである。自衛隊やアカツキ帝国軍が使用するチェーンソーで巨木を切り取り、ブルドーザーを筆頭とした重機で避難民が住める土地が出来上がり、次の日には40名が住める仮設住宅が完成したのだ。

コダ村の避難民達は純粋に驚いており、ブルーム王国の王女であるアナも純粋に驚いていた。


「相変わらずの常識はずれの国だ。帝国が負けるわけだ」

そのような感想を述べたのだが、レレイは賢者として生きる事を決めて純粋に驚いてばかりではいられない。知らない知識があるならそれを貪欲に吸収して理解する事こそ賢者の役割であるため、自衛隊とアカツキ帝国に対して詳しく知ろうと決意した。実際にアカツキ帝国軍兵士は個人差はあるが、ファルマート大陸とアビス大陸で使われる言葉が似ている為に、避難民達との意思疎通は出来たので、レレイが日本やアカツキ帝国に事を詳しく知りたい事も理解できて、そこで自衛隊とアカツキ帝国の母国語を教える事になった。

これにレレイは積極的に参加しており、アナも興味があるようで島田と宮本で役割分担して言葉を教える事になった。


「この言葉は?」

「『ほん』」

「じゃあこれは?」

「『うさぎ』」

島田が教えた言葉を次々と書き込むレレイとアナ。

「二人とも理解が早いな。もう平仮名は大丈夫そうだし、次はカタカナに入ろうか」

二人が早く言葉を覚える事に驚く島田。その様子を伊丹もニヤニヤとした様子で見ていた。

「美女と美少女に教えるって男の夢じゃないですか島田大尉」

「まあ~な。実際に悪きはしないね。何しろこっちに所属している美女はクセが強いから余計にそう思うよ」

「お、それは言えてますね」

島田の言葉に伊丹は同意したように呟く。伊丹の第三偵察隊は小柄で巨乳の童顔の美女だが、言葉より拳で語り合う事が好きな栗林に、見た目は大和なでしこでお上品なお嬢様を思わせるが毒舌な黒川と、確かに癖が強いと思っても仕方ない。

(伊丹二尉の所と同じように、俺の所も濃いキャラがいるからな)

炎龍の偵察行動で即時に炎龍を発見してくれた事で、コダ村の避難民の被害を最小限に抑える事に貢献したアニエスである。見た目は真面目そうな美女な翼人であるのだが、アカツキ帝国のアニメや漫画に感染してしまい、重度の腐女子となってしまったのだから。普段はそんな風には見えないのだが、同じ趣味が合う女性軍人を見つけては布教活動をしており、現在も時間を見つけては女性自衛官を腐女子仲間に居れようとしている。

(それに加えて両方もいけると豪語しているから余計にキャラが濃い奴なんだよな)

実際に男も女もいけるらしく「気持ち良ければなんでもどちらでもいけます!」と言っているもんだから、男色なうえに百合でもあるので、この濃いキャラのせいで男性から嫌煙されている。

そんな風にわかるわかると二人で頷いていたら、これに察知した栗林、黒川、アニエス三人の女性から制裁を食らうのであった。

それから翌日。仮設住宅も全て完成して生活費を自分で賄えるまでは支援する事を決まっていたが、自衛隊やアカツキ帝国軍がいつまでも避難民達に支援してくれるとは限らないので、生活費は自分で稼ぎたいと思い、そこでカトーはアルヌスの丘あたりに翼龍の死骸が沢山ある事に気がつき、翼龍の鱗と爪で生活費を稼ごうと思いついた。

そして、それを伊丹に伝えるとあっけなく了承された。

「好きに取っていいとな!?レレイ!?」

「そう言っている」

あまりにあっけなく翼龍の鱗を生活費にしていい事を了承された事に、カトーは驚く。

「いいんじゃないの?どうせ射撃訓練の的にしているだけだし、自活に役立つならいくらでも持ってちゃって」

伊丹の言った通りに特に問題はない。日本政府は、この翼龍の鱗や爪に対してそこまで執着しているわけではないからだ。既に翼龍の遺伝情報や鱗や爪のサンプルの多くを確保して、生物学者に研究材料として渡しているので、そのため日本政府もそれ以上の価値はないと判断しているからだ。

こうして許可が下りて、龍の鱗や爪を喜んで採取する村人たちであった。その鱗や爪を丁寧に水で汚れを落として袋に詰めていく。最初の一日だけで、二頭分の翼龍の鱗と爪を採取したので、鱗一枚で銀貨一枚分の価値があるらしく、そこで翼龍の鱗を大量に採取した事で、この鱗の取引を何処でやるかで迷ったが、そこでカトーの知り合いの大商人がイタリカにいるので、そこで売ろうという話しでまとまった。

ーーー。

ここは変わってアルヌス駐屯地にある会議室の一部屋。そこにアルヌス駐屯地の司令官である狭間陸将とアルヌス野戦基地司令官の坂本中将が深刻な表情で話し合っていた。

「帝都に対する侵攻ですか」

「ええ、そうです。このファルマート大陸の秩序の崩壊が始まっています。現皇帝のゾルザルを捕縛し和平を結ばざる得ない状況に追い込まなければ、この大陸は戦乱の世となります」

「そのための帝都侵攻ですか?」

ファルマート大陸は状況がどうであれ、帝国の一極支配により安定を保っていたと言ってもよかった。しかし、その安定もアカツキ帝国と日本に対して戦争を仕掛けた事により状況は変わった。度重なる敗戦により影響力の低下と、領地運営に長けた貴族達による戦死の続出による治安システム崩壊。その敗残兵の増加による盗賊化という負の連鎖がファルマート大陸に広まり始めているのだ。

実際に盗賊の増加により、村を襲撃されて村を捨てて逃げてアカツキ帝国占領下の地域に難民が押し寄せており、難民は日に日に増えていると伝え、盗賊の討伐による軍の出動も増えているとも伝えた。

そもそも帝国もここまで状況が深刻化するほど戦争を継続するほど愚かではなく、アカツキ帝国が実行した帝都による警告爆撃を受けて、自分達が戦争を仕掛けた相手がとんでもない相手であったと理解して、これに対して直ぐにでも和平を結んで戦争を辞めようと考えたのだが、それが前皇帝のモルトが負傷して意識不明となり、モルトの意識不明を好機と考えてゾルザルが帝国の権力を掌握してしまい、無謀な戦争拡大の道を歩んでしまった。異世界侵攻と連合諸王国軍による敗退が更に帝国の勢力基盤を崩してしまい、今では帝国は戦争前の支配権を支える程の兵力も影響力なく、帝国に対して迫害された亜人や、帝国に頭を下げるしかできなかった属国が反旗の兆しが見えているのだ。

「現在、我々は帝国の講和派の援助を行っており、ゾルザルの失脚後の帝国の政権についての話し合いも進めています。陸将も分かるはずです。これ以上の秩序の乱れが起きれば、両国にとって不利益でしかありません」

そもそも日本もアカツキ帝国も帝国の領域全てを支配する気などない。日本の場合は、まず帝国全土に戦線を拡大する能力はなく、そして世論がそれを許さない。アカツキ帝国も、アビス大陸に対する備えもあるので、いつまでもファルマート大陸だけに集中するわけにもいかないので、理想を言えばゾルザルが失脚してこちらに友好的な政権が樹立して、帝国に対して通商条約を結ぶことである。

「日本にも立場ある事を理解しています。そこで我が国の帝国元帥である前田健太郎閣下は、日本政府との会議を望んでいます」

「首脳会議ですか!!」

「閣下は直ぐにでも帝都を攻略して、ゾルザルを捕らえた後に和平派による政権樹立を望んでいます。その後の取り決めの為にも出来れば直ぐにでも会談を行いたいと言ってきています」

「わ、分かりました。直ぐにでもアカツキ帝国の提案を伝えます」

こうして帝都攻略に対する為と、戦後のファルマート大陸に対する取り決めを決定する為に、日本政府との会談をアカツキ帝国は望んだ。この提案は直ぐに日本の首相官邸に届き、直ぐにでも首脳会議を行いたいと通達してきたアカツキ帝国の対応に、本位総理は驚いた。

直ぐにでも首脳会議を行いたいと通達が来たときは本位は困っていた。日本で首脳会議を実行すればアカツキ帝国批判をするマスコミや左翼団体が多いので、そこでデモ隊がアカツキ帝国批判をして、彼らの機嫌を損なえば、第一接触で友好関係を築いたのに、それが全て水の泡に消える事を恐れていたのだ。実際に、ここで不評を買えば、彼らが提供してくれるロボット技術を得られない可能性もあるので余計に本位は困っていた。

だが、アルヌス駐屯地からの特地の情報で、ファルマート大陸は度重なるアカツキ帝国と自衛隊相手による敗戦で、帝国の支配力は大幅に低下して、ファルマート大陸の秩序が崩壊する恐れがあり、このまま帝国を放置しておくと、ファルマート大陸は戦国乱世に突入して、特地の開発どころではなくなり、下手をすればファルマート大陸各国に対する戦闘も考慮しなければいけず、無謀な戦線拡大にもなりかねないのだ。

この事もあり、特地に対する経済効果は世界では注目の的であるので、このまま放置して特地に対する取り分がおじゃんとなる事を恐れた本位は、アカツキ帝国との首脳会議を決定した。

日本本国で行うと未だにマスコミや左翼団体がうるさいと判断したので、アカツキ帝国で会議を行おうと決めていた。 
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