異世界にて、地球兵器で戦えり
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十三話 アカツキ帝国との交流は本格化する
伊丹を含めた偵察隊がアルヌス近辺でアカツキ帝国軍と共同作業を実行に移しているころ、日本国から第一陣の外交官がアカツキ帝国に足を踏み入れた。アカツキ帝国の首都である大和を見て、報告通りに建物の雰囲気は確かに日本に似ており、現代文明の象徴もいえるビル群も沢山立ってはいるが、その隙間に日本式の緑地帯が絶妙なバランスでマッチしており、第一陣の外交官が感じたアカツキ帝国の印象は、最新と過去が奇妙に混雑した国という印象である。
「まさか異世界で、ここまで発展している国がある事に驚きが隠せないな」
「それに技術力もです。未だに日本を含めたEUやアメリカで実用化されていない実用的な二足歩行型の有人ロボットを民間や軍で広く普及している点もです」
ロボットを実用的に使用する事は地球世界でも日夜研究されているが、未だにアニメの様に人間のようにスムーズに動くような二足歩行型のロボットを実用化した実績は地球世界に存在しない。
「環境に対する概念は既に産業革命に入った時点で行われている点もありますよ。産業革命初期で既に、地球の過去の失敗を知っているようにスムーズに環境に対する法案が次々と実行されています」
「車に対しても普及した時期をピンポイントに見計らってガス規制が始まり、エコカーに属される車の実用化にも早くから力を注いでいます」
外交官達はアカツキ帝国の発展と技術力だけに驚いているのではない。その進化の課程でどれが実用的に成功するのか失敗するのかをあらかじめに知っているかのように技術発展に疑問を生じているのだ。どんな天才でも技術革新に至るまで多くの試行錯誤を繰り返してようやく実用化にいたる。多くの失敗を繰り返す事は、天才でも例外ではない。
地球を代表する天才の例を上げるなら飛行機の開発者ライト兄弟、電球を実用化したエジソン等も多くの試行錯誤を繰り返して発展してきたのだ。なのに、アカツキ帝国は試行錯誤と失敗に対する時間があまりにも短く、まるで失敗する理由が初めから知ってるように思えて仕方ないのだ。
「妙だな……技術革新を受け入れる事は国の発展に繋がる。だが、それは本当に実用的であった場合だ。見極めを誤れば下手をすれば逆に……」
「ええ、だからこそ、一人の自衛官が書いたレポートを無視できないと思っているのでしょう」
これに外交官に同行してきた陸・海・空の武官として派遣された自衛官達の言葉に頷く外交官達。そのレポートを提出したのは、第三偵察隊でアカツキ帝国軍と合同でアルヌス近辺を調査している陸上自衛隊の伊丹 耀司二等陸尉のレポートには、大まかに説明すればこう書かれていたのだ。
『アカツキ帝国の中核を担っているのが地球の過去を知る転生者、もしくは地球世界から来た未来人によって国が運営されているのでは?』という内容である。
こんな201X年の日本で普及しているネット小説のような出来事を実在するというレポートを提出しても、報告書として通る事はないのだが、アカツキ帝国の技術発展があまりにも歪なスピードで進化している事と、二足歩行型のロボットが、地球世界のロボットアニメの主要メカにそっくりな点もあり、転生者や未来人が国の中核を担っているという内容を無視できる状況でなくなったのだ。
「もし未来人や転生者といった人物が国を運営していたならば、日本の外交戦略は根本的に見直さなければいけませんよ。相手がこちらが示すカードを知り尽くしている事も考えなければいけないのですから」
この言葉は外交官達の本音を代弁した言葉である。もし、こちらの外交カードを知り尽くしていた場合は、こちらがピエロになる可能性があるのだ。そうなれば外交官としては悪夢としか言えないのだ。なお、アカツキ帝国の中核の人物が転生者や未来人だと早くから指摘した伊丹は、外交官や武官として派遣された自衛官や外交官達から「有能な怠け者」としての印象を強める要因となり、お偉方達から本人が嫌がる仕事を沢山与えらえる羽目になる事は、この時点で伊丹は知らない。
ーーー。
そして場所は戻りアルヌス駐屯地に帰投した第三偵察隊は40名はいる避難民達も連れてきた。なお、この避難民達に最初は、炎龍の脅威がなくなったのだからこのまま村に戻ればと言ったのだが、そもそも今回の逃避行で限られた財産を持ってくるだけで精一杯であったし、村は既に無人と化しており、戻った所でこの動きをかぎつけた盗賊たちに置いて来た財産を奪われてしまった可能性も高いので、村長達も、それを理解しているのでならば親戚を頼ったり、無人となったコダ村に戻って働くより新たな土地で再出発した方が遥かにマシだとの事である。
そのため、自衛隊やアカツキ帝国軍について来たのも真面な働き口がないのが理由でもある。
この避難民達を連れてきた事は許可されておらず、下手をすれば見捨てる可能性もあった。実際に伊丹の想像通りで伊丹の上司である檜垣三等陸佐は、どうして連れてきたんだと頭を抱えて伊丹を叱ったが、意外にもアカツキ帝国軍のアルヌス野戦基地司令官である坂本中将とアルヌス駐屯地司令官狭間陸将が事前に話し合ったお蔭で、この避難民の扱いは直ぐに受け入れられる事になった。
伊丹は直ぐに避難民の受け入れ許可が出る事に驚いたが、この避難民達の面倒は第三偵察隊が責任をもってお前が面倒を見ろという命令が来たので、そこで直ぐに避難民達に対する簡易的な寝床を作る為に、テントやレーションを分けてもらう必要があり、そしてそれを実行する為の報告書も書く必要性があり、余計な仕事が増えたとため息を吐いていたが、そこで役所は違うが、同じ二等陸尉である柳田に呼び止めらて、屋上で話す事になる。
「難民受け入れがこんなにスムーズに進むとは思いませんでしたよ」
「特地で10年の実績があるアカツキ帝国軍と話し合った結果、遅かれ早かれこういう状況にはなる事は予想していた。それに現地人の協力者を得るいい機会でもあったからな」
「で、柳田さん。俺に何のようですか?俺は、これから避難民の住む場所や食事を提供するために書類仕事をしないといけないんですけど」
「まあ、いいから俺の話を聞け」
そもそも伊丹のように避難民達を連れて来ざる得ない状況は既にアカツキ帝国軍の情報で知っていた狭間陸将は、伊丹が避難民を連れてきた事を理解した直後に許可を下したのだ。どうせ避難民を連れてくる状況が発生するなら変に突き返すより、受け入れる状況を作る事にしたのだ。
「転生者や未来人がアカツキ帝国軍の中核を担っている可能性があるという報告書。最初は二課で、こんな馬鹿げた報告書があるものかと思っていたが、それが無視できない状況にまでなっている」
「柳田さん。やっぱり……」
「ああ、お前さんの指摘通りだ。アカツキ帝国の文明スピードは歪すぎると派遣された外交官や武官達が口を揃えて言っている。技術班もアカツキ帝国軍の武装に関しても、まるで予めに武器の欠点を知っているように開発が順調に進んでいる。普通なら初めの開発段階で何処かしら失敗はあるが、アカツキ帝国の場合は、それがない。これが上の連中が転生者と未来人の可能性を公的ではないが、内心では認めざる得ないというわけだ。」
伊丹が書いたレポートの内容が公的ではないにせよ、転生者と未来人の可能性を認めたと告げる柳田。実際に伊丹書いたレポート通りに、細かな指摘が一致しており、これがお偉方が伊丹のレポートの関心している理由でもある。
「いいか、伊丹。この世界、特地は宝の山だ。公害や汚れのない手つかずの自然。そして何より世界経済をひっくり返しかねない膨大な地下資源。文明格差はアカツキ帝国を除けば中世と現代並。そんな世界との唯一の接点が日本に開いた。アカツキ帝国に関しては軍の規模こそアメリカに劣るが、技術力に関しては地球よりも一歩も二歩も先に進んでいる。この世界のもう一つの大陸で覇者となり、現在も友好国に対して援助や開発を続けている。これはまだ公にされていない秘密だが、アカツキ帝国が日本に対してロボット技術の提供も視野に入っている。この意味は分かるな」
「ええ、文明も民族も俺達日本人と類似点が多い。交流も現在も順調に進んでいるけど、外圧が酷いんでしょう。」
「分かってるじゃないか。実際に中国と韓国は特にな。アカツキ帝国と交流しただけで軍国主義、帝国主義の復活だと声を高くしてデモをしているし、韓国に関しては大統領が直々にアメリカに訪問して、お互いに協力して日本に制裁すべきだと言ったそうだ。国内事情も韓国や中国に負けに劣らず酷いもんだ。国内にいる現実が見えない左翼団体と愉快な仲間達が現在も銀座の門の前で抗議活動が現在も続いている。そんな中でアメリカは比較的おとなしいが、アカツキ帝国に興味を示している。実際に、アカツキ帝国が地球の経済界に進出した場合の経済効果は、予想が出来ない程に波乱を呼び起こすからな」
現在特地を巡っての世界情勢を伊丹に教えた柳田。
「だからこそ、永田町の連中は知りたがってんだ。世界の半分を敵に回して門を維持するだけの価値が、ここにあるのか?実際にアカツキ帝国がこの10年で開発した土地で、油田も含めて希少鉱物を発掘している情報は既に世界を回っている。特地にも地球同様の油田と希少鉱物がある事が判明して日本の経済界は無論のこと、世界各国の大手企業は早く参入したいと色めき立っている。」
「はあ、まさか新任二尉の俺が厄介な仕事を任される羽目になるなんてな。避難民と交友して現地協力者を作り上げて、この特地の資源や、この世界の情勢に対する独自の情報縁を得ろって事ですよね」
「ああそうだ。確かに現状はアカツキ帝国経由の情報を下に作戦を練っているが、だからといってアカツキ帝国に全ての情報源を頼るわけにはいかん。いつまでも友好国でもある保証もないからな。お前さんは既に避難民に対して信頼もされている事は報告書で分かっている。近日中に上から大幅な自由行動が許可される」
「何で俺に……」
「上はお前さんを怠け者だが、有能だと認めたそうだ。今までサボった分の仕事が舞い込んでくる。覚悟しておけ。あと、アカツキ帝国軍の島田大尉とは引き続き協力してもらうからな」
柳田の言葉に更に落ち込む伊丹。自分のモットーである「喰う寝る遊ぶ、その間にほんのちょっとの人生」から大幅に遠のいていくと感じると、心の中で涙目になる伊丹であった。
ページ上へ戻る