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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第8話(序章終了)

~旧校舎・終点~



「―――――」

パラスケヴァスと対峙した魔獣は鋭い爪で攻撃したが

「…………………」

石の身体を持つ魔獣より遥かに硬い鱗を持つパラスケヴァスにはビクともせず、パラスケヴァスは自分を攻撃している魔獣をまるで蠅を払うかのように無造作で巨大な尾を振るった。

「――――!?」

パラスケヴァスが振るった巨大な尾によって魔獣は吹っ飛ばされて壁に叩きつけられて怯み

「―――――」

咆哮を上げて傷ついた身体を再生した後翼を羽ばたかせて空へと飛びあがってパラスケヴァスに襲い掛かったが

「―――――――!!」

パラスケヴァスは水流を纏った巨大な槌を振り下ろし、パラスケヴァスの攻撃―――水流スマッシュを受けた魔獣は哀れにも全身を粉々に破壊されて消滅した!



「…………………」

「俺達が苦労して勝利した相手を僅か数秒で倒すなんて……」

「い、一撃必殺……」

「まあ、あれだけ体格差があるんだから当然だと思うけど。」

パラスケヴァスの圧倒的な攻撃威力を見たマキアスは口をパクパクさせ、ガイウスとエリオットは呆け、周囲の人物達が驚いている中フィーだけは冷静な様子で呟いた。



「―――――」

ペルル達と対峙した魔獣は口から炎のブレスを放ったが

「おっと。」

「遅いですわ!」

ペルルとフィニリィは上空へと退避し

「無駄だ!」

アムドシアスは片手で簡易結界を展開して自分に襲い掛かるブレスを防いだ。



「いっくよ~!それっ!!」

そして上空へと退避したペルルは全身の回転させて敵に突撃するクラフト―――ごろごろで突撃し

「!?」

回転するペルルの攻撃をまともに受けた魔獣は凄まじい勢いで吹っ飛ばされて壁に叩きつけられた!

「集え!風の精霊達!双竜の大竜巻!!」

その時魔力を溜め込んだ槍をフィニリィが掲げると巨大な竜巻が二つ発生して魔獣を呑みこみ、竜巻に呑みこまれた魔獣は全身を切り刻まれながら上空へと打ち上げられ

「美しき我が弓技!受けるがいい!」

そこにアムドシアスが目にも止まらぬ速さで3本の矢を連続で解き放ち、解き放たれた矢は全て魔獣に命中すると共に貫通し、貫通した魔獣の身体に風穴を空けた!



「う、嘘でしょう!?旧式の弓であんな威力を叩き出すなんて……!?」

同じ弓使いであるアリサはアムドシアスの弓技の威力に驚き

「なっ……先程あの魔獣が俺達に放った魔法(アーツ)とは桁違いだぞ!?」

「あの竜巻の大きさからして、恐らく上位か最上位魔術かもしれないな……」

(なんて魔力…………それに周囲に漂う精霊達が彼女の一言で一瞬で集うなんて……)

ユーシスはフィニリィの魔術の威力に驚き、リィンは真剣な表情で呟き、エマは驚いた後真剣な表情でフィニリィを見つめていた。



「―――――!!」

3人の連携攻撃を受けて重傷を負った魔獣は落下しながら咆哮して自分の傷を回復した後地面に叩きつけられる瞬間翼を羽ばたかせて空中へと飛び上がったが

「ねこつめパ~ンチ!!」

「――――!?」

羽の部分を鋭く尖らせて斬撃を解き放ったペルルの攻撃によって翼は斬られてしまい、地面へと落下し

「美しき我が魔力、受けるがいい!ケルト=ルーン!!」

落下して行く魔獣の周囲にはアムドシアスが発動した魔術によって発生した膨大な魔力の渦が発生して魔獣を呑みこんで全身を爆発させて瀕死の状態にし

「止めですわ!」

そこに槍に闘気を流し込んだフィニリィが勢いよく突撃して魔獣の顔を貫くと同時に破壊した!鉄をも貫く槍技―――貫鉄槍によって顔を貫かれて破壊された魔獣は全身を石と化させた後消滅した!



「―――――」

プリネとツーヤと対峙した魔獣は地面を叩きつけて衝撃波を発生させたが

「ハッ!」

「フッ!」

二人は跳躍して回避し

「十六夜―――”突”!!」

ツーヤは抜刀の構えをして一瞬で闘気を溜め込んだ後抜刀すると共に溜め込んだ闘気をエネルギーとして解放し、解放されたエネルギーは魔獣の腹の部分を貫いて巨大な風穴を作った。

「暗黒の霧よ………全てを崩壊させよ!――――崩壊のディザイア!!」

そこに魔術の詠唱を終えたプリネが発動した魔術によって魔獣を中心に包み込むような暗黒の霧が発生し

「―――――――!?」

暗黒の霧に包みこまれた事によって全身を破壊されるような痛みを感じた魔獣は悲鳴を上げた!そしてツーヤはプリネの魔術によってできた隙を逃さないかのように魔獣に詰め寄り

「神速!鳳凰剣舞!!」

まるで踊りを舞うかのような動作で次々と刀による斬撃を繰り出して魔獣の全身に斬撃を叩き込み、更にそれぞれの持つオーブメントが出す青い光の線でツーヤと結ばれたプリネが魔獣に詰め寄り

「――――瞬雷!!」

電光石火の速さで雷を宿したレイピアを魔獣に叩き込むと駆け抜けた!



「――――!?――――――!!」

二人の連携攻撃によって瀕死の重傷を負った魔獣は咆哮を上げて傷ついた肉体を再生させた後翼を羽ばたかせて空中へと飛び上がって二人に魔法(アーツ)を放つ為に滞空してアーツの発動準備を始めた。

「させません!」

しかしその時ツーヤが壁に向かって走った後、己に秘められた”竜”の脅威的な身体能力を活かして大きく跳躍して壁を蹴った後魔獣の上空へと向かって落下し

「十六夜――――”破”!!」

「!?」

上空でアーツの発動をしている魔獣の背に強烈な一撃を叩きこんで地面に叩き落とし

「貫け!烈輝の陣!!」

地面に叩き落とされた魔獣に向かってプリネは片手から魔力を凝縮させたエネルギー――――レイ=ルーンを放って魔獣の翼を貫いて斬り落とした!



「――――――――!!??」

翼が貫かれた痛みによって魔獣は悲鳴を上げてその場で暴れ

「―――これで決めるわよ、ツーヤ!」

「はいっ!」

プリネとツーヤは暴れる魔獣を挟み込む形でそれぞれ武器を構え直すと二人が装着しているオーブメントが強い光を放ち始めた!



「―――暗黒よ!我が仇名す者達を捉えよ!!」

レイピアに魔力を込めたプリネがレイピアを天へと掲げると暗黒の霧が魔獣を拘束し

「―――今こそ吹雪け!全てを凍てつかせる竜の吹雪よ!!」

プリネと同じように魔力を込めた刀をツーヤが天へと掲げると魔獣を中心に極寒の吹雪が発生して暗黒の霧によって拘束された魔獣をまるごと凍り付かせ、そして二人は同時に地面を蹴って魔獣に詰め寄り

「「ハァァァァァァァ………!!」」

それぞれ常人では決して見えない動きで華麗に舞いながら怒涛の連撃を次々と叩き込んだ!すると二人の連撃によって魔獣を凍り付かせた氷は砕かれ、砕かれた氷の破片は光輝きながら周囲に落ち

「「奥義!絶氷剣舞!!」」

華麗な連撃を叩き込んだ二人は最後の一撃を斜め十字(クロス)する形の斬撃を叩きこんで魔獣の背後へと駆け抜けた!すると全身をズタズタに切り裂かれた魔獣は二人が斬撃を叩きこむと同時に駆け抜けた際に発生した闘気の爆発に呑みこまれ、爆発が収まると魔獣の全身はそれぞれ地面に落ちて石と化してやがて消滅した!



「す、凄い……息ピッタリだわ……」

「へえ。”協力技(コンビクラフト)”まで使えるんだ。」

「―――見事な剣だ。私もまだまだ精進が必要だな……」

二人の協力技にアリサは驚き、フィーは目を丸くした後感心し、ラウラは静かな笑みを浮かべて二人を見つめた。



「―――皆さん、お疲れ様です。後は私の中でゆっくりと身体を休めて下さい。」

そしてレイピアを鞘に収めたプリネがペルル達を見つめて呟くとペルル達は光に包まれ、プリネの身体と同化した。

「わわっ!?」

「こ、今度は消えて彼女に宿ったのか……?い、一体どうなっているんだ!?」

「…………………」

ペルル達の様子を見たエリオットとマキアスは驚き、エマは真剣な表情でプリネを見つめていた。



「ね、ねえ、プリネ。今の人達は一体何者なの?」

その時アリサはおずおずとプリネに話しかけた。

「ペルル達の事ですか?あの娘達は私の使い魔です。」

「つ、使い魔??」

「それは伝承で出てくる”魔女”が従えている存在の事か?」

「…………………」

プリネの答えを聞いたアリサは首を傾げ、ユーシスの質問を聞いたエマは複雑そうな表情をして黙り込んだ。そしてプリネは自分達の世界―――ディル・リフィーナでの使い魔の事について説明した。



「”契約”によって力を貸す、か。異世界は不思議な事だらけだな……」

「伝承の中でしか出てこない天使や妖精が存在している事と言い、まさに伝承の世界と言ってもおかしくないな。」

説明を聞き終えたガイウスとユーシスはそれぞれ考え込み

「そ、それに妖精―――それも妖精の王女様みたいな存在やあんな凄く大きい怪物まで力を貸してくれるなんて、さすがは”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”だね……」

「というか君達自身、そんなに強いんだから、さっき現れた人達が力を貸す必要もないんじゃないか!?」

「同感。正直戦力過剰と言ってもおかしくないと思う。」

エリオットは表情を引き攣らせ、マキアスは疲れた表情で指摘し、マキアスの指摘にフィーは頷いた。



「アハハ……私達なんてお父様達と比べたら大した事はないですよ?」

「”お父様”って……」

「―――”英雄王”リウイ・マーシルン皇帝陛下か。確か他の異名では”剣皇”という異名があるが……一体どれほどの腕前の剣士かアルゼイドの剣を学ぶ者として気になるな……。」

苦笑するプリネの説明を聞いたアリサは呆け、アリサの疑問に答えたラウラは真剣な表情で考え込み

「あ、あのプリネさん。比べる対象をリウイ陛下達にする事自体が間違っている気がするのですが……」

「た、確かに………」

表情を引き攣らせたツーヤの意見にリィンは冷や汗をかいて頷いた。



「それにしても……さっきと僕達が戦った事に起こった最後のあれ、何だったのかな?」

「そう言えば……何かに包まれたような。」

「ああ、僕を含めた全員が淡い光に包まれていたな。」

「なんだと……?」

何かを思い出したエリオットの疑問を聞いたアリサとマキアスはそれぞれ頷き、ユーシスは眉を顰め

「ふむ、気のせいか……皆の動きが手に取るように”視えた”気がしたが……」

「……多分、気のせいじゃないと思う。」

考え込んでいるラウラの疑問にフィーは静かな表情で答え

「ええ。それに先程の”協力技(コンビクラフト)”、恐らくこのオーブメントのお蔭だと思うんです。」

「プリネさんの動きどころか、考えもわかって、あたし達、先程の技を自然にできたんです。」

「―――となると、この戦術オーブメントが全ての鍵という訳か。」

プリネとツーヤの説明を聞いたガイウスは自分が装着しているオーブメントを見て呟いた。



「―――そう。ARCUSの真価ってワケね。」

するとその時サラ教官の声が聞こえ

「あ―――」

声を聞いた方向をリィンが見つめるとそこにはサラ教官とレオンハルト教官がいた。

「いや~、やっぱり最後は友情とチームワークの勝利よね。うんうん。お姉さん感動しちゃったわ♪後そこの二人。少しは空気を読んでもっと早く駆けつけてあげなさいよ。だったら、その後現れた3体もわざわざ”助っ人”を呼ばなくても難なく倒せたのじゃないかしら?」

「アハハ……すみません。」

「次からはかけつけるように頑張ります……」

サラ教官に視線を向けられたプリネとツーヤはそれぞれ苦笑し

「俺は先程の二人の判断が正しいと思うが。残りの者達は一部を除けば既に余力を残していなかったからな。」

「うっさいわね~。可能性は0じゃないからいいじゃない。」

呆れた表情で指摘したレオンハルト教官をサラ教官はジト目で睨んだ。そして二人はリィン達に近づいてきた。



「これにて入学式の特別オリエンテーリングは全て終了なんだけど……何よ君達。もっと喜んでもいいんじゃない?」

全員が注目している中、何の反応もしないリィン達を見回したサラ教官は首を傾げ

「…………………」

その様子を見ていたレオンハルト教官は呆れた表情で黙り込んでいた。



「よ、喜べるわけないでしょう!」

「正直、疑問と不信感しか湧いて来ないんですが……」

「あら?」

「当然の反応だな。」

そしてマキアスとアリサの苦言にサラは首を傾げ、レオンハルト教官は冷静な様子で呟いた。



「―――単刀直入に問おう。特科クラス”Ⅶ組”………一体何を目的としているんだ?」

「身分や出身に関係ないというのは確かにわかりましたけど……」

「なぜ我らが選ばれたのか結局のところ疑問ではあるな。」

ユーシスの質問をきっかけにエマとラウラも次々と疑問を口にした。



「ふむ、そうね。君達が”Ⅶ組”に選ばれたのは色々な理由があるんだけど……一番わかりやすい理由はその”ARCUS”にあるわ。」

サラの答えを聞いたリィン達はそれぞれが装着している戦術オーブメントを取り出してオーブメントを見つめた。

「この戦術オーブメントに……」

「エプスタイン財団とラインフォルト社が共同開発した最新鋭の戦術オーブメント。様々な魔法(アーツ)が使えたり通信機能を持っていたりと多彩な機能を秘めているけど……その真価は”戦術リンク”――――先程君達が体験した現象にある。」

「”戦術リンク”……」

「さっき、みんながそれぞれ繋がっていたような感覚……」

サラ教官の説明を聞いたアリサとエリオットはそれぞれ呆けた様子で戦術オーブメントを見つめた。



「ええ、例えば戦場においてそれがもたらす恩恵は絶大よ。どんな状況下でもお互いの行動を把握できて最大限に連携できる精鋭部隊……仮にそんな部隊が成立すればあらゆる作戦行動が可能になる。まさに戦場における”革命”と言ってもいいわね。」

「ふむ、確かに。」

「理想的だね。」

サラ教官の話にラウラとフィーはそれぞれ納得した様子で頷き

「―――だが、欠陥もある。」

「欠陥、ですか?」

レオンハルト教官が呟いた言葉を聞いたリィンは首を傾げた。



「現在エプスタイン財団が新開発を終え、軍や遊撃士協会等に提供している戦術オーブメント―――”ENIGMA(エニグマ)Ⅱ”と比べると個人の適性差が激しい。」

「個人の適性差………それはもしかして人によっては使えないという事ですか?」

レオンハルト教官の説明を聞いて考え込んだ後何かに気付いたツーヤは尋ね、ツーヤの質問にサラ教官は頷いて答えた。

「その通りよ。現時点で、ARCUSは個人的な適性に差があってね。新入生の中で、君達は特に高い適性を示したのよ。それが身分や出身に関わらず君達が選ばれた理由でもあるわ。」

「………なるほど。」

「な、なんて偶然だ……」

サラ教官の口から出た驚愕の事実にガイウスは冷静な様子で頷き、マキアスは信じられない表情をした。



「さて――――約束どおり、文句の方を受け付けてあげる。トールズ士官学院はこのARCUSの適合者として君達11名を見出した。でも、やる気のない者や気の進まない者に参加させるほど予算的な余裕があるわけじゃないわ。それと、本来所属するクラスよりもハードなカリキュラムになるはずよ。それを覚悟してもらった上で”Ⅶ組”に参加するかどうか――――改めて聞かせてもらいましょうか?」

サラ教官に見回されたリィン達はすぐには答えを用意できず、互いの顔を見合わせた。

「あ、ちなみに辞退したら本来所属するはずだったクラスに行ってもらうことになるわ。貴族、皇族出身ならⅠ組かⅡ組、それ以外ならⅢ~Ⅴ組になるわね。今だったらまだ初日だし、そのまま溶け込めると思うわよ~?」

「…………………」

サラ教官の忠告を聞き、全員が考え込んでいる中リィンは目を伏せて幼い頃のある出来事を思い出した後決意の表情で一歩前に出て宣言した。



「リィン・シュバルツァー。――――参加させてもらいます。」

「あら……」

「え……」

「ほう……?」

「リ、リィン……!?」

リィンの宣言にプリネは目を丸くし、アリサは呆け、レオンハルト教官は意外そうな表情をして戸惑いの表情のエリオットと共にリィンを見つめた。



「一番乗りは君か。何か事情があるみたいね?」

「いえ…………自分は本来学院に通えない立場でありながらもある方のお蔭で、学院に通えるようになったのです。その方の期待を裏切らない為にも自分を高められるのであればどんなクラスでも構いません。」

「……………」

「リィンさん……」

リィンの話を聞いたプリネは目を伏せて黙り込み、ツーヤは驚き

「ふむ、なるほど。」

サラ教官は納得した様子で頷いた。



「―――そういう事ならば私も参加させてもらおう。元より修行中の身。此度のような試練は望む所だ。」

「―――オレも同じく。異郷の地から訪れた以上、やり甲斐がある道を選びたい。」

「―――それでは私も。今後の自分が進むべき未来の糧とする為にもやり甲斐のある授業を受けたいですし。」

「―――あたしもです。ずっと無理だと思っていた学院に通えるのですから、在学中はやり甲斐のある事をしたいですし。」

するとリィンの決意をきっかけにラウラ、ガイウス、プリネ、ツーヤがそれぞれ申し出た。

「新入生トップクラスの使い手にノッポの留学生君と学院最強の留学生コンビも参加と。さあ、他には?」

4人の申し出を聞いたサラ教官は笑顔で頷いた後残りの人物達を見回した。



「私も参加させてください。奨学金を頂いている身分ですし、少しでも協力させていただければ。」

するとその時エマが一歩前に出て申し出

「ぼ、僕も参加します……!これも縁だと思うし、みんなとは上手くやって行けそうな気がするから。」

続くようにエリオットもおずおずと前に出て申し出た。

「魔導杖のテスト要員も参加と。ARCUSと同じくまだテスト段階の技術だから運用レポート、期待してるわよ。」

「ふふっ、了解しました。」

「ううっ……早まっちゃったかな……」

「―――私も参加します。」

(え……)

アリサが申し出るとリィンは驚いた様子でアリサに視線を向けた。



「あら、意外ね。てっきり貴女は反発して辞退するかと思ったんだけど?」

「……確かに、テスト段階のARCUSが使われているのは個人的には気になりますけど……この段階で腹を立てていたらキリがありませんから。」

「フフ、それもそっか。これで8名――――フィー、あんたはどうするの?」

「別にどっちでも。サラと”剣帝”が相談して決めていいよ。」

「”剣帝”………?」

「あら……」

(フィーさんの出身を考えるとレーヴェさんの事を知っていてもおかしくないですね……)

サラ教官に尋ねられたフィーはサラ教官とレオン教官に視線を向けて呟き、フィーの呟いた言葉を聞いたラウラは不思議そうな表情でレオン教官を見つめ、プリネは目を丸くし、ツーヤは真剣な表情でフィーを見つめていた。



「駄目、あんたが決めなさい。自分の事は自分で決める。そういう約束でしょ?というかそいつと相談なんて、こっちから願い下げよ。」

「フッ、随分な嫌われようだ。」

ジト目のサラ教官に視線を向けられたレオンハルト教官は静かな笑みを浮かべ

「めんどくさいな。じゃ、参加で。」

サラ教官の答えを聞いたフィーは呆れた表情で答え、周囲の人物達を呆れさせた。



「それとフィー・クラウゼル。今後先程の名で俺を呼ぶのは止めてもらおう。メンフィル帝国軍人となった今の俺は既にその名は捨てている。」

「ふーん。……わかった。じゃ、”レーヴェ”で良いの?わたしが知っているそっちの名前は後はそれだけだし。」

レオンハルト教官―――レーヴェに指摘されたフィーはレーヴェを見つめて尋ね

「好きにしろ。」

尋ねられたレーヴェは静かな表情で答えた。



「レ、”レーヴェ”??」

「もしかしてレオン教官の愛称でしょうか……?」

レーヴェの名前を聞いたアリサは戸惑い、エマは不思議そうな表情でレーヴェを見つめ

「”レーヴェ”―――帝国では”獅子”を意味する言葉だが……レオンハルト教官はもしかしてエレボニア帝国人なのでしょうか?帝国では”レオン=ハルト”は”獅子の果敢”を意味していますが……それに”剣帝”とは一体……」

「……………」

レーヴェの名前を聞いて何かに気付いたラウラに尋ねられたレーヴェは何も語らず黙り込み

「というかフィー、だっけ。何だかレオン教官の事を知っているようだけど……もしかして知り合いなの?」

「……………」

エリオットに尋ねられたフィーも何も語らず黙り込んだ。



「はいはい、そう言う事は後々わかるから後にしなさい。―――それで残りの二人はどうするつもりなのかしら?」

その時話を変えるかのようにサラ教官は手を叩いて自分を注目させた後マキアスとユーシスに視線を向けて尋ねた。



「………………………」

「………………………」

サラ教官に尋ねられた二人は何も返さず黙り込んでいたが

「まあ、色々あるんだろうけど深く考えなくてもいいんじゃない?一緒に青春の汗でも流していけばすぐ仲良くなれると思うんだけどな~。」

「そ、そんな訳ないでしょう!?」

からかい半分のサラの言葉にマキアスが声を上げて指摘した後腕を組んで厳しい表情で語り始めた。



「帝国には強固な身分制度があり、明らかな搾取の構造がある!その問題を解決しない限り、帝国に未来はありません!」

「………」

「うーん、そんな事をあたしに言われてもねぇ。」

マキアスの反論にユーシスは何も答えず、サラ教官は苦笑していたが

「―――ならば話は早い。ユーシス・アルバレア。”Ⅶ組”への参加を宣言する。」

突如ユーシスが一歩前に出てその場にいる全員が驚く宣言をした。



「あ……」

「な、何故だ………!?君のような大貴族の子息が平民と同じクラスに入るなんて我慢できないはずだろう!?」

ユーシスの宣言にリィンは呆け、マキアスは理解できないような物を見るような目でユーシスを見つめて叫んだ。

「勝手に決めつけるな。アルバレア家からしてみれば他の貴族も平民も同じようなもの。勘違いした取り巻きにまとわりつかれる心配もないし、アルバレア家よりも”格”が上のメンフィル皇家やメンフィル帝国の大貴族の一人である”蒼黒の薔薇”―――ツーヤが”Ⅶ組”に参加するのならば、アルバレア家に取り入ろうとする取り巻き達の注意が逸れて好都合が重なるというものだ。」

「…………………」

ユーシスの答えを聞いたマキアスは口をパクパクさせ

(アハハ……私達、さりげなくユーシスさんの”盾”扱いされているわね……)

(よくプリネさん―――メンフィル皇家に対して恐れを抱かず、あんな言葉を口にできますね……)

(フッ、貴族―――それも”四大名門”の出身の子息にしては随分と度胸のある者だな……)

プリネとツーヤはそれぞれ苦笑し、レーヴェは静かな笑みを浮かべていた。



「かと言って無用に吠える犬を側に置いておく趣味もない……ならばここで袂をわかつのが互いのためだと思うが、どうだ?」

そしてユーシスはマキアスを見つめて挑発し

「だ、誰が君のような傲岸不遜な輩の指図を聞くものか!―――マキアス・レーグニッツ!特科クラス”Ⅶ組”に参加する!古ぼけた特権にしがみつく時代から取り残された貴族風情にどちらが上か思い知らせてやる!」

ユーシスの挑発に怒鳴って答えたマキアスはサラ教官を見つめて宣言した後ユーシスを睨み

「……面白い……」

対するユーシスは口元に笑みを浮かべた後マキアスと睨み合い始めた!



(はあ……先が思いやられるな……)

二人の様子を見たリィンは溜息を吐いた後隣にいるアリサに小声で話しかけ

(そうね……何だか相当相性が悪いみたいだし。!……)

リィンに話しかけられたアリサは反射的に答えたがすぐに先程の出来事を思い出してリィンに背を向けた。



(あ……)

アリサの様子を見たリィンは肩を落とし

(あはは……そっちはそっちで大変だね。)

(笑いごとじゃないんだが……)

二人の様子を見て苦笑するエリオットをリィンは恨みがましそうな目で見つめた。



「これで11名――――全員参加ってことね!――――それでは、この場をもって特科クラス”Ⅶ組”の発足を宣言する。この一年、ビシバシしごいてあげるから楽しみにしてなさい―――!」

そしてサラ教官はリィン達を見回して宣言した後笑顔になった。



「やれやれ、まさかここまで異色の顔ぶれが集まるとはのう。これは色々と大変かもしれんな。」

一方その様子を上層階で真紅のコートを身に纏った金髪の青年と共に見つめていたヴァンダイク学院長は苦笑し

「フフ、確かに。―――ですがこれも女神の巡り合わせというものでしょう。」

「ほう……?」

「ひょっとしたら、彼らこそが”光”となるかもしれません。動乱の足音が聞こえる帝国において対立を乗り越えられる唯一の光に――――」

ヴァンダイク学院長の隣にいる金髪の青年は静かな笑みを浮かべてリィン達を見つめていた。



こうして……平民と貴族が混じり合う前代未聞のクラス―――特科クラス”Ⅶ組”が発足された……! 
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