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私は町の何でも屋

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5部分:第五章


第五章

「あの人はどうですか?」
「可愛いね。それに性格はいいしおまけにしっかりしている」
「はい、それじゃあスザンナさんに話をしておきますね」
「わかりました。それなら」
 そう話してだった。そのうえであった。
「スザンナさんにお話しておきますね」
「そうだね。それとマゼット」
「僕ですか」
「君もそろそろ相手はいないのかい?」
 フィガロはマゼットに対して話す。
「それで」
「もういますよ」
 彼は落ち着いた声で答えた。
「僕はね。ちゃんとね」
「誰だい、それは」
「はい、ツェルリーナです」
 この名前が出て来た。
「今付き合ってまして。近いうちに」
「おいおい、それは初耳だよ」
「何時か言おうと思ってたんですがね」
「そうだったのか」
「けれど。フィガロさんより先に結婚する訳にはいきませんし」
 何気に本音も出していた。
「ですから」
「そうか。それじゃあ」
「よし、スザンナさんとですね」
「会うよ。しかしそれなら人手が加わることになるね」
「奥さんがお家に入ればですね」
「うん、その分助かるかな」
 実際のところ結構以上に忙しくてだ。人手も欲しかったのである。
「それじゃあ」
「そういうことですね」
 こうしてフィガロはマゼットを介してスザンナと結婚した。スザンナは小柄で茶色の髪を奇麗にまとめた可愛らしい少女だった。しかも確かに気立てがよくしっかりとした性格だった。だが。
 フィガロの忙しさは変わらなかった。むしろ、であった。
 余計に忙しくなってしまっていた。店の中はまさに戦場だった。
「フィガロ、ちょっと」
「ちょっと?」
「赤ちゃん達が」
「えっ、またなのか」
「そう、またなの」
 スザンナが店から出てだ。困った顔で話すのだった。
「またね。おむつが」
「すぐに替えないと駄目か」
「そうしないと駄目だから」
「わかったよ、じゃあすぐに」
「私今手が離せないし」
「洗濯まだ終わらないか」
「ええ、まだなの」
 彼女はそれをしているというのだ。フィガロは丁度店で客の髭を剃っているところだった。その最中に声をかけられてのことだった。
「まだしている最中よ」
「何か洗濯物が急に増えたなあ」
「子供何人いると思ってるの?」
「五人」 
 フィガロはその数を正確に述べた。
「そして今度」
「また一人できるでしょ」
「それでなんだ」
「そうよ、それで六人よ」
「増えたものだな」
「増えて嫌?」
 スザンナはそれを問う。
「子供が増えるのは」
「いや、それはいいよ」
 フィガロは笑顔で返すのだった。
「子供は宝だからね」
「そういうことよ。いらないとか言ったら許さないわよ」
「わかってるよ。それにしても」
「お家の中も御願いね」
「お店も忙しいんだけれど」
 今度は客の頭を洗っている。実に手馴れた動きである。
 
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