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私は町の何でも屋

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4部分:第四章


第四章

「それも夜に」
「おおっぴらにする手術じゃないだろ」
「だからですか」
「そうだよ。まああまりする手術じゃないし」
 それをする数自体は少ないというのである。
「けれど」
「けれど?」
「報酬はいいしね」
 フィガロはまたにこりとしてきた。
「やらせてもらうよ」
「それでなんですか」
「しかも僕にそれを依頼してくれるってことは」
「それは?」
「有り難いことじゃないか」
 こうも言うのである。
「それでなんだ」
「そうですか。それでなんですか」
「そうだよ。頼られたらそれに応える」
「それが散髪屋ですね」
「そういうこと。さて」
 ここでまた話す彼等だった。
「そろそろ来るよ」
「わかりました。では用意を」
「頼んだよ」
 こうして客が来るのを待つ。そのうえで夜のその手術をこっそりとするのだった。そしてそれが終わってから二人で夕食となった。
 パンにそれにソーセージ、それとトマトである。ジャガイモもある。そうしたものをワインと一緒に食べていた。マゼットはここでまた話した。
「今日も大変でしたね」
「そうだね、仕事が多いよ」
「しかし楽しかったですね」
「そうだろ?忙しいと何か楽しいだろ」
「退屈が怖くなります」
 笑って話す二人だった。
「ただ」
「ただ?」
「フィガロさんどうするんですか?」
 こうフィガロに問うのだった。
「それで」
「それでって?」
「結婚はされないんですか?」
 問うのはこのことだった。
「それは」
「結婚か」
「フィガロさんいい歳じゃないですか」
「気付けばそうだな。もうすぐ三十だし」
「それならどうですか?そろそろ」
 また二人に話す。
「結婚は」
「結婚も何も」
 しかしだ。ここでフィガロは話すのだった。
「相手がいないからね」
「相手がですか」
「うん、いない」
 こうマゼットに話すのである。
「肝心の相手がね」
「相手っているじゃないですか」
「いるかな」
「いますよ」
 また話すのだった。
「それはちゃんと」
「僕を好きな人がいるんだ」
「フィガロさんもててますよ」
 彼が全く気付いていないことだった。これはだ。
「例えばですね」
「例えば?」
「ほら、スザンナさん」
「スザンナ?ああ、伯爵夫人の侍女の」
「はい、あの人です」
 彼女だというのだ。
 
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