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真田十勇士

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巻ノ三十九 天下人の耳その五

「あの方はやや物足りぬところもあるが」
「跡継ぎとしてはですか」
「関白様になられるには」
「充分ですか」
「今の羽柴家は家臣の方々も揃っておられるし」
 それにというのだ。
「弟君のな」
「羽柴秀長殿ですか」
「あの方もおられる」
「だからですか」
「あの方がおられるならですか」
「大丈夫であろうな」
 こう言うのだった。
「まずは」
「そうですか、では」
「これからはですか」
「羽柴家の天下ですか」
「それが続きますか」
「関白様には実のお子がおられぬ」
 幸村はこのことを強く指摘した。
「それが羽柴家の泣きどころであったが」
「それが、ですな」
「なくなっていた」
「それで、ですな」
「どうなるかわからなかったのですな」
「しかし跡を継ぐ方がおられる」
 その秀次がというのだ。
「ならばな」
「安心出来ますか」
「それだけ」
「そうであろう、おそらくこれからな」
 幸村は先のことも話した。
「西国攻めとなるぞ」
「西国、九州ですか」
「既に山陽、山陰、四国は収まっています」
「しかし九州はまだ」
「では、ですな」
「九州じゃ」
 まさにその地をというのだ。
「攻めることになるな」
「ですか、では」
「次は、ですな」
「九州で戦ですか」
「そうなる」
 こう言うのだった。
「そしてその時はな」
「我等もですか」
「出陣ですか」
「そうなりますか」
「九州に向かって」
「そうですか」
「なるであろう」
 幸村は十勇士達に答えた。
「まさにな」
「そうですか」
「九州にですか」
「行きそして」
「戦う」
「そうなりますか」
「相手は島津家となる」
 この家の名前を出すのだった。
「薩摩のな」
「あの家は最早」
 根津は島津家と聞いて言った。
「薩摩からです」
「うむ、北を進みな」
 望月も応えた。
「龍造寺も殆ど倒したしな」
「大友もじゃな」
 清海はこの家の名前を出した。
「耳川で破ったな」
「もうあの二家は島津の敵ではない」
 こう言ったのは海野だった。
「九州はこのままではな」
「島津家のものじゃな」
 由利ははっきりと言った。
「もうすぐ」
「そうなる前にか」
 穴山は九州の先を見ていた、彼なりに。 
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