英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第2話
~旧校舎・1F~
一方建物内に入ったリィン達は若干高くなっている場所に移動した女性教官と青年の教官に注目した。
「―――サラ・バレスタイン。今日から君達”Ⅶ組”の担任を務めさせてもらうわ。よろしくお願いするわね♪」
「―――レオン・ハルト。お前達”Ⅶ組”の副担任を務める形になる。それと先に言っておくが俺はメンフィル帝国軍の将校だ。ある事情により、”臨時教官”として今回この”トールズ士官学院”に出向する形となった。」
女性教官―――サラと青年の教官―――レオンハルトはそれぞれ自己紹介をした。
「な、”Ⅶ組”……!?」
「そ、それに君達って……」
二人の自己紹介を聞いた眼鏡の男子とエリオットは驚き
「ほう………?メンフィル帝国の………」
金髪の男子は興味深そうな様子でレオンハルトを見つめ
「ふむ……?聞いていた話と違うな。」
青髪の女子は考え込み
「あ、あの……サラ教官、レオンハルト教官?この学院の1学年のクラス数は5つだったと記憶していますが。それも各自の身分や、出身に応じたクラス分けで……それにどうして外国の軍隊の将校が教官としていらっしゃるのでしょうか?」
眼鏡の女子は戸惑いながら尋ね
「お、さすがは首席入学。よく調べているじゃない。そう、5つのクラスがあって貴族と平民で区別されていたわ。―――あくまで”去年”まではね。」
尋ねられたサラは感心した後答えた。
「え………」
「今年からもう一つのクラスが新たに立ち上げられたのよね~。すなわち君達――――”身分に関係なく選ばれた”特科クラス”Ⅶ(なな)組”が。で、メンフィル帝国軍の将校であるレオンハルト教官がここにいるのはこのクラスの中にメンフィル皇女がいるから、その護衛の為ね。」
「特科クラス”Ⅶ組”………」
「………サラ・バレスタイン。こちらの機密事項をあっさりと話さないでもらおうか。」
サラの説明を聞いたリィンは呆け、レオンハルトは呆れ
「別にいいじゃない~。どうせ黙っていてもその内わかるし。」
レオンハルトの指摘を聞いたサラ教官は笑いながらレオンを見つめた。
「み、身分に関係ないって……本当なんですか?」
「し、しかもあのメンフィルのお姫様がこのクラスにいるって……信じられない………」
「ほう……?身分も関係ないことにも驚いたが、まさかメンフィルの皇族がいるとはな?」
一方金髪の女子は戸惑い、エリオットは信じられない表情をし、金髪の男子は興味深そうな表情をした。
「――――冗談じゃない!身分に関係ない!?そんな話は聞いていませんよ!?」
するとその時眼鏡の男子は怒りの表情で怒鳴ってサラたちを睨んだ。
「えっと、確か君は……」
「マキアス・レーグニッツです!それよりもサラ教官、レオン教官!自分はとても納得しかねます!まさか貴族や皇族風情と一緒のクラスでやって行けって言うんですか!?それも自分だけの為に護衛まで学院に滞在させるような我儘な皇女と!!」
(……随分と、身分が高い人達を毛嫌いしている方のようですね………リベールにはそんな人達、見かけた事はなかったのに………)
(……まあ、リベールと違って身分階級の差が激しいエレボニアの平民の中にはそういう人達も多いだろうし、特にあの人の場合は平民の中でも特殊な立場の人が関係しているからね……仕方ないわ。)
眼鏡の男子―――マキアスの言葉を聞いた黒髪の女性は眉を顰め、プリネは静かな表情でマキアスを見つめていた。
「うーん、そう言われてもねぇ。同じ若者同士なんだからすぐに仲良くなれるんじゃない?」
「それと捕捉しておくが俺がこの学院に出向したのは皇女の意志ではない。”メンフィル帝国”が決めた事だ。それ以前に皇族に護衛がつくのは当然のことだろう?」
一方サラ教官は苦笑しながら言い、レオンハルトは静かな口調で説明した。
「そ、そんなわけないでしょう!第一皇女にしたって、皇族専用の教育係とかが絶対いるはずで、この学院に通う必要はないはずです!」
二人の話を聞いたマキアスは怒りの表情で反論した。
「フン………………」
するとその時金髪の男子は鼻を鳴らして黙り込んでいた。
「……君。何か文句でもあるのか?」
「別に。”平民風情”が騒がしいと思っただけだ。」
マキアスに睨まれた金髪の男子は呟き
「これはこれは……どうやら大貴族のご子息殿が紛れ込んでいたようだな。その尊大な態度……さぞ名のある家柄と見受けるが?」
「ユーシス・アルバレア。”貴族風情”の名前ごとき、覚えてもらわなくても構わんが。」
マキアスに睨まれた金髪の男子―――ユーシスは振り向いて名乗った。
「!!!」
ユーシスの名を聞いたマキアスは目を見開き
「し、”四大名門”………」
「東のクロイツェン州を治める”アルバレア公爵家”の………」
エリオットとリィンは信じられない表情をし
「……大貴族の中の大貴族ね。」
「なるほど……噂には聞いていたが。」
金髪の女子と青髪の女子は静かな口調で呟き
「………?」
長身の男子は眉を顰め
「……ふぁ………」
銀髪の女子はあくびをし
(あの……そんなに凄いんですか、あの人。)
(ええ………エレボニアで言えば、皇族の次に身分が高い血筋よ……)
黒髪の女性に尋ねられたプリネは静かな表情で答えた。
「だ、だからどうした!?その大層な家名に誰もが怯むと思ったら大間違いだぞ!いいか、僕は絶対に――――」
一方マキアスはユーシスを睨んで怒鳴った後話しかけたが
「別に何と思ってもらおうと結構だ。今は貴様如きに構うより優先して確認すべき事がある。」
「な、なんだと!?」
ユーシスが呟いた言葉を聞いたマキアスは怒鳴り、マキアスの様子を気にしていないユーシスはプリネと黒髪の女性に視線を向け
「見た所、そちらの内のどちらかがメンフィル皇女と見受けられるが?それとも二人ともか?」
目を細めて二人を見つめて尋ねた。
「なっ………!?」
ユーシスの言葉を聞いたリィンは驚き
「なんだと!?」
「ええっ!?」
マキアスと金髪の女子は声を上げ
「ほう……?」
青髪の女子は興味深そうな表情で呟いた後他の生徒達と共にプリネ達に視線を向けた。
「………何故、そう思ったのですか?」
一方プリネは驚きの表情で尋ね
「……先程メンフィルと同盟関係にあるリベールの”ジェニス王立学園”の名がそちらの口から出た。加えてお前達2人とも俺達”人間”とは違う種族――――”闇夜の眷属”だ。ならば自ずと答えが出てくるだろう?」
「そ、そういえばあの二人だけ、耳が僕達と全然違う……!」
「”闇夜の眷属”…………異世界の国、メンフィル帝国を代表する異世界の種族一つですね。確か話を聞くところ異世界ではエルフや竜、天使すらも存在していると聞いた事がありますが………」
ユーシスの説明を聞いたエリオットはプリネ達の耳を見つめて驚き、眼鏡の女子は静かな口調で呟いた後プリネ達を見つめ
「………………………」
レオンハルトは目を細めてユーシスを睨んでいた。
「なるほど………フフ、言われてみれば確かにそうですね。――――――私の名はプリネ・カリン・マーシルン。今日から同じ学生同士、よろしくお願いします。それと最初に言っておきますが皇女だからといって、遠慮しなくていいですよ?この学院にいる間は一生徒のつもりですし。」
そしてプリネはユーシスに微笑んだ後名乗り上げ
「ええっ!?そ、その名前って……!」
「プ、”姫君の中の姫君”………!!」
「ほう………貴女があの………」
「は、”覇王”リウイ陛下と”闇の聖女”ペテレーネ神官長の直系のご息女……!」
「……………?」
「……………さすがに私も驚いた……………」
プリネの名を聞いた金髪の女子やエリオットは声を上げ、青髪の女子は興味深そうな表情でプリネを見つめ、眼鏡の女子は信じられない表情をし、銀髪の少女は呟き、長身の男子は不思議そうな表情をした。
「―――ツーヤ・ルクセンベールと言います。マスター……いえ、プリネさん共々仲良くして頂ければ幸いです。」
その時黒髪の女性―――ツーヤも名乗り上げ
「ええっ!?そ、”蒼黒の薔薇”までいるなんて……!?」
「い、一体どうなっているの、このクラス……!?」
ツーヤの名を聞いたエリオットや金髪の女子は混乱し
「ほう………?……まさかかの”プリンセスナイツ”の片翼が私達と同じクラスとは……………姫君共々是非ともお手合わせを願いたいな……………」
青髪の女子は興味深そうな表情でツーヤを見つめ
「あ、あはは……できればあたしの異名とか口にしないでください。正直、恥ずかしいんですよ………」
見つめられたツーヤは苦笑した。
「……フッ。これはさすがに俺も驚いた。どこかで見た事がある顔だと思っていたが、”姫君の中の姫君”とメンフィル帝国の大貴族の中の大貴族でありながら異端の貴族である”蒼黒の薔薇”だとはな………」
一方ユーシスは静かな笑みを浮かべてプリネとツーヤを見つめ
「大貴族の中の大貴族でありながら異端の貴族……?」
「…………………」
「……あ。そういえば”蒼黒の薔薇”って確か元々は平民―――――」
ユーシスの言葉を聞いた金髪の女子は不思議そうな表情をし、リィンは複雑そうな表情をして黙り込み、ある事に気付いたエリオットが呟きかけたその時
「だ、だからそれがどうした!?いくら大層な異名を持っていたり、”大陸最強”とか呼ばれている皇族や貴族だからと言って誰もが怯むと思ったら大間違いだぞ!?」
マキアスはプリネとツーヤを睨んで怒鳴ったが
「貴様は阿呆か。」
「なんだとっ!?」
ユーシスが呟いた言葉を聞いた後ユーシスを睨んだ。
「先程までの貴様の発言………メンフィル皇室どころかメンフィル帝国を侮辱しているも同然の発言だ。なんせ、メンフィルの大貴族どころか皇族――――それもよりにもよって”覇王”リウイ・マーシルン達と同等の知名度がある”姫君の中の姫君”を罵倒しているのだからな。………”平民風情”なら家族共々処刑されても文句は言えない発言だぞ。」
「あ、あの。さすがにお父様達と同じ知名度だなんて、言いすぎです。それに私達はそのくらいの事で――――」
「グッ………!そのぐらいの事でこの僕や父さんが怯むと思ったら大間違い―――――」
そしてユーシスが呟いた言葉を聞いたプリネが何かをいいかけ、一瞬怯んだマキアスが反論しかけたその時
「はいはい、そこまで。」
サラ教官が手を叩いて中断させ、自分に注目させた。
「色々あるとは思うけど文句は後で聞かせてもらうわ。そろそろオリエンテーリングを始めないといけないしねー。」
「くっ………」
サラの言葉を聞いたマキアスは唇を噛みしめた後、サラを見つめた。
「オリエンテーリング……それって一体、何なんですか?」
「そういう野外競技があるのは聞いたことがありますが……」
金髪の女子と眼鏡の女子がサラに質問したその時
「(あ………)もしかして……門の所で預けたものと関係が?」
校門で預けた荷物の事を思い出したリィンは尋ねた。
「ほう………」
「あら、いいカンしてるわね。」
リィンの質問を聞いたレオンとサラは感心した後、サラは前を向いたまま後ろに下がり
「―――それじゃ、さっそく始めましょうか♪」
壁についているレバーを下ろした。すると地鳴りが聞こえた後、リィン達が立っている床が傾き始め
「えっ………」
「っ……!?」
「しまった―――」
それに気付いたリィン達が驚いたその時、床は完全に傾いた!
「な……!?」
「うわわっ……!」
「っ………」
完全に傾いた床によってユーシス達は滑りながら下へと落下し
「きゃあっ……!?」
金髪の女子は悲鳴を上げながら床を滑り落ちて行き
(くっ……)
それを見たリィンは唇を噛みしめた後、金髪の女子へと跳躍して、下に落下した。
「―――やっ。………ふぅ。」
一方銀髪の女子はワイヤーを投擲して天井近くにある鉄骨に巻きつけて滞空し
「フッ!!」
「ハッ!!」
プリネとツーヤは跳躍して傾いていない床に着地した。
「―――こらフィー。サボってないであんたも付き合うの。オリエンテーリングにならないでしょーが。」
それを見たサラはジト目で少女を見つめて言った後、短剣をワイヤーに向かって投擲してワイヤーを切断した。
「はあ……メンドクサイな。」
少女は溜息を吐いた後ワイヤーが切れた為下へと落下して行き
「それとそこの二人も。とっとと下に降りてオリエンテーリングに参加しなさい!」
「フフ、わかりました。」
「一体何をさせられるのでしょうね?」
そしてサラ教官に指摘されたプリネとツーヤは苦笑した後傾いた床に跳躍し、下り坂を走りながら下に向かっていった。
「言い忘れていたけど、いくら護衛だからといっても、後を追っていっちゃダメよ?でないとオリエンテーリングにならないんだし。」
二人っきりになったサラ教官はレオンハルトに視線を向けて注意し
「………そのぐらいの事はわかっている。第一、ルクセンベール卿もいる上、プリネ姫の腕ならわざわざ俺が行かなくてもこの建物内にいる雑魚には遅れを取らん。」
注意されたレオンハルトは呆れた表情で答えた。
「それは知っているけど、一応念の為にね。……にしても、エレボニアでは”魔王”と恐れられている”覇王”って結構過保護なのね?”剣帝”である貴方を含めて護衛を”3人”も付けて学院を通わせているのだから。」
レオンハルトの言葉を聞いたサラ教官は頷いた後口元に笑みを浮かべてレオンハルトを見つめ
「フッ………………士官学院にしては戦力過剰と思えるほどの猛者にだけは言われる筋合いはないと思うが?”紫電”サラ・バレスタイン。」
見つめられたレオンハルトは静かな笑みを浮かべて呟き
「”剣帝”に名を知られているなんて、光栄ね。………あんたを含めた”連中”みたいな”化物”達は一体何を企んでいるのかしら?」
レオンハルトの言葉を聞いたサラ教官は静かな表情で答えた後目を細めてレオンを見つめ
「さあな…………俺は既に”結社”を抜けた身だ。”結社”の真の目的は”執行者”ですら知らされていないからな。」
「やれやれ………ホント、色々と謎だらけね………」
レオンハルトの答えを聞いたサラ教官は溜息を吐いた
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