見習い悪魔
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8部分:第八章
第八章
「それはどうしてですか?」
「だからだ。人間の世界は元気でなくては困るのだ」
またこの理由を話すのだった。
「そうでなくてはな」
「元気でなくては」
「そうだ。元気でなくては困るのだ」
魔神の言葉は続く。
「その為に巨人は負けなくてはならなかったのだ」
「巨人が勝てばそれだけで人間達に元気がなくなる」
「では聞こう」
アミィーはチブスに対して問うてきた。
「それは」
「それは?」
「巨人というチームはどういうチームだ」
「巨人はですか」
「そうだ。どういうチームだ」
このことを問うてきたのだ。
「あのチームは」
「正直に言っていいですか?」
まずはここから話す彼だった。
「あのチームはですね」
「そうだ。どういうチームか」
「正直言ってむかつきますね。それに気色が悪いです」
「何故そう思う?」
「何か自分達は優勝しなければならないって妄信していて。しかも球界の盟主とか自称して。何か強烈に思い上がって勘違いしてますよね」
これがチブスの巨人への見方だった。
「嫌いな人間もかなり多かったですね。おいらも嫌いになりました」
「それだ」
まさしくそれだというのだった。
「それなのだ。そうしたチームが優勝すればだ」
「嫌いな人間は嫌な気分になりますね」
「だからこそだ。人間世界が元気でいる為には」
「その圧倒的多数のアンチ巨人を励ます為にも」
「巨人は優勝してはならない」
そういうことだった。
「その目的は無事達成されたのだ」
「そうだったんですか」
「これでわかったな」
ここまで話してあらためてチブスに問うてみせた。
「天界もまた目的を果たしたということが」
「ええ、これで」
「巨人には無様な負けがよく似合う」
魔神はこんな言葉も口にしてみせた。
「実にな」
「実に、ですか」
「魔界も天界も人あってのものだ」
このことも話される。
「そのことも忘れるな。いいな」
「はい、じゃあ」
「次の仕事はだ」
その仕事についての話になった。チブスは野球を通じて様々なことがわかったのだった。見習い悪魔として非常にいい経験であった。
見習い悪魔 完
2010・3・11
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