若き禿の悩み
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5部分:第五章
第五章
「だからバットなり箒なり持ってな」
「ああ、若し変質者とかだったら叩き出そうぜ」
「俺達でな」
皆その真剣な面持ちで頷き合った。そうしてだった。
手にそれぞれバットなり箒なりを持って校門のところに行くとだ。やはりいた。
目がいっていて髪の毛を短く刈っている。眼鏡が異様に大きい。
小柄であるがその手に何処からか持って来たバールの様なものがある。それを手にしてそうしてこんなことを喚いていたのであった。
「女の子はいないか!」
「女の子って」
「いきなりかよ」
「女の子だ!女の子を出せ!」6
こう言って喚いていた。その手にあるバールの様なものを振り回してもいる。
「そして俺の彼女にしろ!誰か出せ!」
「頭がおかしいな」
「ああ、間違いないな」
「どう見てもな」
皆その変質者を見て口々に言う。
「さて、その変態だけれどな」
「どうする?あれ」
「よってたかってボコって取り押さえるか?」
誰かがこう提案した。その手にはそれぞれバットや箒、トンボといった得物がある。幸三にしてもその手にはちゃんと剣道部から借りた木刀がある。
皆そういったものを持っているから比較的強気だ。そしてそのうえで話をしているのだ。
「それとも警察呼んでるしな」
「それまで待つか?」
「囲んだままな」
こうした考えも出た。とりあえず今は囲んだままだ。
しかしであった。その変質者が動いたのだった。
突然前に出た。叫びながらだ。
「女ああああああーーーーーーーーーーっ!」
「げっ、来たぞ!」
「いきなり動いたのかよ!」
「やばいぞこれは!」
流石に囲んでいれば用心して動かないと思っていた。しかし相手は動いた。そうした意味で彼等の予想を遥かに超えていたのだった。
そしてだ。その変質者は幸三に向かって突き進んできていた。そのバールの様なものを振り回しながらだ。そのうえで来たのである。
「お、おい和田!」
「危ないぞ!」
「そっち行ったぞ!」
皆でそれぞれ幸三に告げる。
「突け!突きだ!」
「それでいけ!」
「屈め!」
「あ、ああ!」
幸三も仲間達の言葉に頷いてだ。そのうえで身構える。そしてその時に。
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