真田十勇士
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巻ノ三十八 双槍その十
「それがしここでのご恩は忘れませぬ」
「そう言われますか」
「はい」
「そうですか」
「そしてそのうえで」
「戦の場では」
「武士としてです」
お互いに刃を交える時はというのだ。
「恥じぬ戦いをしましょう」
「是非共」
こう約束をするのだった、そしてだった。
幸村は春日山において十勇士達と共に鍛錬を続けた、そうして己を磨いていった。それは信之も同じでだった。
鍛えに鍛えていた、己を。そしてだった。
その中で服部半蔵とも会った、その服部は。
信之を見てだ、すぐに彼に言った。
「忍術の心得があり」
「そしてですか」
「それは相当ですな」
こう彼に言うのだった。
「忍術も見事ですか」
「それはです」
「それがしにはわかります」
微笑んでの言葉だった。
「ですから」
「それで、ですか」
「これより手合わせをしたいのですが」
「宜しいですか」
「その腕を実際に見たくなりました」
動きで、というのだ。
「ですからお願いしました」
「ふむ、それでは」
今日の信之の稽古の相手は榊原だった、本多と同じく徳川四天王の一人であり武辺で以て知られている。
その彼がだ、こう言った。
「道場においてな」
「手合わせをですな」
「すればどうか」
こう服部にも言うのだった。
「わしが二人を見る」
「そうして頂けますか」
「源三郎殿とのな」
こう言うのだった、そしてだった。
二人は道場で忍術の稽古をすることになった、そして。
お互いに礼をした後で素早い動きで跳びだった。
木刀や木の苦無を投げ合った、お互いに一歩も譲らず。
激しい勝負をしてだった、半刻程で榊原は言った。
「これまで」
「いや、これは」
「かなりですな」
信之も服部も汗だくになって言った。
「お見事です」
「全く以て」
「服部殿は流石です」
「いや、それがしの見立て通りです」
「源三郎殿も半蔵も見事だった」
榊原も微笑んで言う。
「まさに天下の忍よ」
「いえ、実はです」
ここでだ、信之が言った。
「忍術、そして武芸については」
「貴殿よりもだな」
「いつも言っていますが」
「弟の源四郎殿の方が」
「遥かに腕は立ちます」
「ふむ」
信之が榊原に話すのを聞いてだ、服部は。
面白そうに笑ってだ、こう言った。
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