真田十勇士
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巻ノ三十八 双槍その九
「そうしています」
「では真田家から分家等してです」
「大名になればですか」
「その時はどうされますか」
こう仮定してだ、兼続は幸村に彼が家を離れた時のことを問うた。
「一体」
「はい、その時もです」
「文武の修行を励まれますか」
「天下一の武士になりたいので」
そう思うからこそというのだ。
「続けていく所存です」
「そうですか、どちらにしろですか」
「それがし一生修行を続けていきます」
「それではです」
ここまで聞いてだ、兼続は幸村に言った。
「是非です」
「この度もですか」
「書をお読み下さい」
「有り難きお言葉、それでは」
「しかし。あれだけ修行されて書もここまで読まれるとは」
唸って言う兼続だった。
「源四郎殿は必ずです」
「天下一の武士になれると言われますか」
「それがし確信しております」
まさにというのだ。
「必ずやそうなります」
「このまま修行を続ければ」
「十勇士の方々もです」
彼等もというのだ。
「どの方も天下無双となりましょう」
「十人共ですか」
「必ず」
彼等もというのだ。
「そして主従で天下に名を残されましょう」
「それがしもあの者達も」
「そうなります、ではお励み下さい」
「これからも」
「そうされて下さい」
「わかり申した」
「ただ、貴殿達が味方であればいいですが」
ここでこうも言った兼続だった。
「若し敵になれば」
「その時はですか」
「この上ない敵になりますな」
こう言うのだった。
「いや、その時が来ないことを祈ります」
「それがし達は上杉家とは」
「決してですか」
「その考えですが」
「人の世はわからぬものです」
兼続は幸村に返した。
「後のことは」
「三年先は闇」
「ですから」
「では」
「はい、その時はです」
幸村達がというのだ。
「この上ない敵になりますな」
「そうはならぬことを」
「祈っております」
やはり笑って言う兼続だった。
「当家の為にも。ただ」
「その時はですな」
「お互いに武を尽くしましょう」
こうも言うのだった。
「武士として」
「そうですな、互いに恥じぬ戦をし」
「恨むことのなきようにしましょう」
「戦いがあろうとも」
幸村も言う。
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