戦国異伝
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第二百五十二話 壇ノ浦へその七
「御主達が滅びその後の天下のことは考えてもな」
「それでもか」
「わしが滅びることはない、それを見せてやろうぞ」
「そう言うか、ではじゃ」
「さあ、あらためて言う」
信長は今度は自身が率いる軍勢に告げた。
「魔界衆の船、そして将兵を撃て」
「はい、それでは」
「これより」
諸将も応えた、こうしてだった。
信長は全ての船に攻撃をさせた、魔界衆の船は次から次にだった。
沈み人が吹き飛ばされていく、老人の乗る船も大きく揺れ動く。
だが老人はそれでもだ、血走った目で言った。
「わかっておるな」
「はい、我等も力の全てを使いました」
「先程」
「それではです」
「最早逃げることもです」
適わぬとだ、他の魔界衆の者達も言うのだった。
そしてだ、老人は言った。
「ではな」
「はい、これより」
「織田信長を倒し」
「この軍勢と滅ぼし」
「勝ちましょう」
「そして生き残りましょうぞ」
「命さえあれば」
血走った目のままでだ、老人は言うのだった。
「どうとでもなるからな」
「だからですな」
「ここは何としても生き残る」
「そうしますか」
「織田信長はわしが倒す」
絶対にと言うのだった。
「この手でな」
「そうされますか」
「織田信長については」
「御前がご自身で」
「さもなければ気が済まぬ」
それ故にというのだ。
「あの者はわしが滅ぼす」
「では」
「我等は他の者をです」
「何としてもです」
「一人でも多く滅ぼします」
「そしてこの国を闇に包むのじゃ」
執念だった、まさにそれが具現化した言葉だった。
「その為にな」
「生きましょう」
「必ず」
彼等はまだ諦めていなかった、そしてだった。
幕府の水軍の砲撃の中でもだ、諦めることなくだった。
戦い続けた、その傀儡の者達がだった。
幕府の水軍に向かう、彼等は次々と倒されていくが。
倒されるその後からも出る、戦はまだ続くのだった。妖術が破れても。
第二百五十二話 完
2015・11・14
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