戦国異伝

　　　　　　　　　　　　　　　　　第二百五十二話　　壇ノ浦へ
　信長は織田家の、彼が尾張を統一する前より共にいた者達だけでなくだ。浅井家や徳川家、その他の天下の主な大名達とその重臣達を全て己の前に集めた。
　そのうえでだ、彼はまずはその集めた者達を見回して言った。
「うむ、まさに壮観じゃな」
「これで全ての者が集まりました」
　平手は幕臣筆頭、大老の場から信長に応えた。
「それではこれより」
「そうじゃ、皆じゃ」　
　ここに集めた者全てをというのだ。
「船に乗ってもらう」
「そのうえで」
「魔界衆の者達は海に逃げた」　
　鋭い声でだ、信長は諸将に魔界衆が何処に行ったのかも話した。
「ではな」
「はい、これより」
「それぞれ船に乗り」
「そして、ですな」
「魔界衆を撃つ」
「そうするのですな」
「そうじゃ」
　こう強く言うのだった。
「必ずな」
「では、ですな」
　水軍を動かす九鬼が問うた。
「敵を囲みますな」
「うむ、これまで屋島と一ノ谷で破りな」
「敵の数は減っています」
「それも相当にな」
　水軍についてもというのだ。
「だからこそじゃ」
「海での戦においても」
「敵を囲んでじゃ」
　そのうえでというのだ。
「倒すぞ」
「その海で、ですな」
「あの者達はまだ勝てると思っておる」
　このことも言う信長だった。
「奴等には切り札があるからな」
「妖術ですな」
「それがあるからですな」
「まだ妖術が効かないと思っている」
「左様ですな」
「そうじゃ、まだ動きに余裕があるところを見ると」
　まさにというのだ。
「あの者達はな」
「妖術が効くと思っていて」
「海でも使ってきますか」
「まだ」
「そうしてきますか」
「そうしてこよう、しかしじゃ」
　それでもとだ、また言った信長だった。
「そこが攻めどころじゃ」
「敵がまだ妖術が効くと思っている」
「ならばそこに余裕が出来る」
「その余裕を見せる」
「そうしますな」
「そういうことじゃ、ここはそうして攻める」
　まさにというのだ。
「わかったな」
「はい、では」
「その様にします」
「そしてです」
「攻めてそして」
「滅ぼしましょうぞ」
「是非な、では皆の者よいな」
　あらためてだ、信長は場にいる者達に言った。
「これより船に乗り込むぞ」
「そうしてですな」
「そのうえで海に出て」
「そのうえで最後の戦ですな」
「今度こそ」
　諸将も口々に言う、見れば全ての色が揃っている。そして。
　九鬼はここでもだ、信長に話した。
「上様、瀬戸内の流れは複雑怪奇ですが」
「それでもじゃな」
「わかり申した」　
　瀬戸内の複雑な潮流がというのだ。