異世界にて、地球兵器で戦えり
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第八話 自衛隊と各国の状況
特地。それはアジア圏にて強大な経済力を誇る日本の首都である東京の銀座に開いた門の先にある異世界だ。この異世界の軍勢の突然の襲撃もあり、日本では民間人に多大な犠牲を出した日本を含めて世界に衝撃を与えるニュースであった。日本は、この門より現れた謎の武装勢力を排除したが、日本の首都圏に軍隊を送り込んだ犯人を捕らえていないので、日本を攻撃した張本人を捕まえるという名目で自衛隊を異世界に派遣する事を決定した。
自衛隊が逆侵攻したと判断した新皇帝ゾルザルは、各国に対して連合諸王国軍を形成して大軍勢を編成して挑んだが、戦闘方法事態が根本的に格が違い過ぎて連合諸王国軍は敗北した。これにより、帝国軍の自衛隊に対する動きはなく、自衛隊も地球とも違う全くの未開地である特地の情報を入手するために、動きを始めていた。そんな時に、特地で帝国と連合諸王国軍とは違う新たな勢力と接触した。だが、この勢力の接触は、自衛隊が驚愕する内容であった。
そう、魔法といったファンタジーな物を除いて特地の文明レベルは中世時代であったのだが、地球世界と同等の武力と文明を持っている勢力であったのだ。そして、民族的にも日本と殆ど同じ事も自衛隊が驚愕する内容であった。日本では北条首相の任期を終えて新たな首相となった本位総理は、この新たな勢力であるアカツキ帝国とは、友好的に接触するように自衛隊に伝えた。先ず初めは第一接触者である自衛隊とアカツキ帝国軍との交流から始まった。
「見ろよこの戦車。ソ連のT-55にそっくりだ」
「アサルトライフルは、AKシリーズだ。」
1式戦車や68式突撃銃を見て驚く自衛官。何しろ第一世代戦車の61式より洗練されている1式戦車と、黒のビニールテープで部品の脱落を防いでいる64式小銃と68式突撃銃を見比べて、自衛官は軽く涙目であった。
「いいな、この弾薬の山は、いくらでも撃てる。」
「こっちはアメリカの援助で何とか弾薬を確保しているのに」
「考えて使わないと上がうるさいしな」
アカツキ帝国が自前で用意した弾薬の数は自衛隊が用意した弾薬の数を遥かに上をいっていた。この事実に、自衛官は羨ましそうな視線をアカツキ帝国軍に向けていた。
アカツキ帝国の装備は、自衛隊から見れば既に退役している兵器に属されるものが大多数が現役で使われている事に、文明レベルは、1960年代あたりと当初は思っていたが、アカツキ帝国の情報が次々と入ると、第二次大戦時と冷戦初期の旧式兵器をあえて大量に配備している理由に納得していくのであった。
「なるほど。多少の装備の質を犠牲にしても、武器を大量に揃える必要性が増して、ハイテク兵器をこの世界で大量に使う必要性がないからこそ、再配備したというわけか」
この特地に派遣された陸上自衛隊の狭間陸将は、アカツキ帝国が旧式兵器を再配備した理由に納得したように呟いたという。
こうして、二十一世紀の地球世界は、中世時代の文明しか築いていない異世界に自分の世界と同等の軍事力と文明を所持している国家が存在する事を知る。この事実は直ぐに日本側に流れるが、地球世界と似た世界から特地に転移したアカツキ帝国の存在を知ったSF作家や架空戦記ファンは無論のこと、科学者の間でも歓喜したが、しかし転移して10年で特地で実行に移した軍事行動に、もはや平成日本を知るものなら分かりやすい行動が日本各地で起きていた。
「帝国主義を許すな!」
「自衛隊の侵略行為を許すな!!」
「自衛隊は、帝国主義国家と同じで特地を侵略している!」
銀座では、大小様々な左翼組織による大規模なデモ隊が抗議しており、これを支持する愉快な仲間達も賛同して、これらの大規模デモには海外勢力も混じっているので、日本政府は、これらのデモ隊対応に追わる事になる。
こうした動きに事実を真面に伝えないマスコミという名のマスゴミ達の報道もあり、今の日本は軍国主義国家として報道しているアカツキ帝国に対して批判する報道を続けて、アカツキ帝国と特地で共闘するという事実もあり、本位内閣発足後にして、最大の政府批判を浴びる事になる。
「全く勝手な事ばかり……」
「しかし総理。アカツキ帝国は、日本とは文化も民族的にも同じことは分かりましたが、果たして信用できるか怪しいものですよ。」
「信用できなくとも、共闘しなければ特地の利権得るどころか、下手をすれば無駄な出費が増えるだけだ」
この若い政治家の言葉に、本位は心の中でため息を吐く。いくら民衆やマスコミが、アカツキ帝国と共闘するなとワーワー騒いでも、そんなこと出来るわけがない。下手に敵対でもすれば、逆にこっちが痛い目に遭う事は、軍事のエキスパートでもない本位でも分かりきっているのだ。
彼らは特地に国があり、いくらでも人員や補給物資を整える事が出来るが、日本では状況が違い過ぎる。日本は、特地からの行き来は門を潜る事しか出来ない。しかし、その門の大きさの都合上。どうしても門の補給はトラックからの経由でしかできなく、補給物資を送るにも限界があり、特地に送る戦力も限定せざるを得ない。しかも、万が一にアカツキ帝国が自衛隊と敵対する関係になれば、どんな方法であるにせよ、門を破壊すれば日本との行き来は出来ないし、日本は門からの利益を失い、三個師団も送り込んだ自衛隊も失い、補給が絶たれた自衛隊は特地で孤立する羽目にもなる。そうなれば、日本にとって大赤字を背負う羽目になるし、アカツキ帝国と敵対の決断を下した日本の国際的批判も免れないものとなり、世界からその信用を失ってしまう。
そういう事を理解してはいるが、今は大多数の政治家が民衆の目もあり、アカツキ帝国に対しての批判に便乗している光景に、本位はため息を吐く。
(こっちの気も知らないで……)
首相になってから、様々な対応に追われて胃が痛い思いをする本位であった。
ーーー。
世界の警察を自他共に認めるアメリカ合衆国も、門から得る利益を多くとる為に、現大統領ディレルを含めて議論が交わされていた。その内容については、地球世界と同等の武力と文明を誇るアカツキ帝国に対する対応も含まれていた。
「特地に存在するインペリアル・アカツキ。特地に進出する際には、彼らと協調する事こそ重要だ」
「無論です大統領。情報によれば、文化的、民族共に日本の類似点が多く存在します。そのため、価値観も我々と同じ事が証明しています。彼らは我々の存在をしれば、特地の利益に対して協力してくれるでしょう」
補佐官であるクロリアンは、ディレル大統領にそう答える。アカツキ帝国は、地球世界と類似点が多い世界の出身で、10年前に特地に転移した国家。この十年で特地に存在する一つの大陸を事実上支配しており、新たな友好国に対するインフラ整備も進めており、そして日本が開いた特地の大陸に対しても、現在も介入をしており、これらの対処にアカツキ帝国は積極的であった。
アカツキ帝国が事実上支配したアビス大陸と、新たに日本と共に介入しているファルマート大陸による新たな市場拡大に対して、アメリカ経済界は多くの利益を望めるとして、早く特地に介入したいと色めき立っていた。
そしてディレルは、コーヒーを一口飲み、話を再開する。
「そうだ。現実が見えない昔のジャパンの馬鹿な政府と違い、現代の日本は外交が上手いとは言えないが、実に合理的だ。ジャパンとアカツキと協力すれば、どれだけの莫大な利益を得られると経済に疎い連中でも気づく。なのに連中は……」
はあ~とため息を吐くディレルに、補佐官のクロリアンも「お察しします」と同情的な視線をする。
「帝国国家を打倒して、正義を実行しよう!!」
「帝国に支配されている異世界の国々にアメリカが助けよう!!」
「王族と貴族達の圧政に苦しむ異世界国家に、アメリカは助けるべきだ!!」
このように、アカツキ帝国の存在を知ると、主に中国系と韓国系を中心としたデモ隊が結成された。その規模は今や万となって、アメリカ経済界や政治界にも影響が出る程に膨らんでいた。
「中東情勢で手一杯な状況で、更に門のほうに軍を送れ!無理に決まっているだろうが!!誰がこのデモ騒動を起こした!」
「初めは学生達による小規模なデモでしたが、裏で中国の情報局が援助を行い、ここまでの規模に膨れ上がったそうです。」
「ファッキンチャイナめ!!」
思わず叫びながら怒り散らすディレル大統領。日頃から国際条約を無視してやりたい放題の中国と、昔の事をいつになっても話して日本に対する悪い印象を強めようとする韓国に対する愚痴が爆発したが、直ぐに沈静化した。
「すまない。少し疲れているようだ。」
「いえ問題はありません。それと大統領。韓国がアカツキ帝国と協調する日本に対して共に制裁するようにとの通達がありましたが」
「被害妄想のコリアンの言葉など無視しろ」
「ですな」
文化的、民族的にも日本と類似点が多いと言う理由だけで、アカツキ帝国と敵対に走る韓国に呆れるディレル。あんな被害妄想の国など、地理的に重要拠点でもなければとっくに見捨てていると心の中で呟くディレルであった。
「チャイナに対しては大使を呼び抗議はするが、面が厚いせいもあり何事もなかったように「知らない」と平然と言うだろうがな」
長い歴史から大国としての意地がある中国との付き合いは、いつも骨が折れると思うと苦笑いするディレル。だが、どんな事があろうとも邪魔はさせないと意気込んで言葉に出すディレル。
「インペリアル・アカツキは、最初の接触者である日本とは、共闘関係を築くだろう。そして、我々がとる行動は、日本同様に友好関係を築く事だ」
「その通りです大統領。ここで特地の利益を多く獲得し、インペリアル・アカツキと友好関係を結べば、大統領の地位は不動のものとなるでしょう」
「支持率も今まで以上にあがる。そして、二期の当選も可能だ!」
ディレルは、自分の地位を不動の物とすべく、アカツキ帝国との友好関係を築くべく、日本との特地に対する協力関係を強くしようと働きかけるのであった。
ーーー。
ロシアでは、日本の門に対する出現で、無資源国であった日本が特地の資源を輸出して、ロシア発言力低下を恐れていたが、ジェガノフ大統領は、然程ゲートに関しては興味を示していなかった。
だが、それでも日本側の動きも気になるので、工作員の数を増やすように進言する。
そして、ロシアと日本のお隣の中国は逆に門に対する関心は高かった。
「何としても門の利益をどの国よりも多くとるのだ」
中国主席のトウ・トクシュウは、そう呟いた。
「おっしゃる通りです。日本だけの独占は許せません。ですが、アカツキ帝国の動きに注意しなければいけません」
「その通りだ。欲をいえば多くの人民を特地に移民させたいが、アカツキ帝国の事もあるから難しいな」
中国は、アメリカ同様にアカツキ帝国との友好関係を築くという選択は選べなかった。いや、選べないのである。アカツキ帝国は、民族的にも文化的にも多くが日本と類似している点が多いので、反日を日常的に起きている中国で、主席であるトウ・トクシュウが行えば、上なら未だしも、下の連中が暴走する恐れがあるので、簡単に友好関係を築くことは出来なかった。
「ならば、日本とアカツキ帝国に対して友好的に接する外交を行い、アカツキ帝国と連携と行動に対する制限を掛けるように働きかけるのだ。」
「ですが、アカツキ帝国と関係を結ぼうとしますと強硬派の連中が暴走する恐れが」
「恨みは分からなくもないが、外交はただ怒りに任せて行えば良いと言うものではない。その所を老害達は分かってないようだね。ならば、強硬派に対する監視を強めてくれ」
強硬派は、確かに影響力はあった。反日デモという一種の人民のガス抜きを先導してくれる連中であるため、あえて連中に対する制約はしなかったが、今回のような事態となると面倒でしかなかった。現在の政府の方針も強硬派からすれば「小日本達に対して生ぬるい!!」と、激怒しているのだ。
こうして、地球世界も含めてアカツキ帝国の存在に注目が集まっていくのであった。
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