魔界転生(幕末編)
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第49話 悪魔との対峙
土方合流により久々の勝利により隊員たちはその夜は美酒に酔った。が、近藤、土方両名と京都より一緒に行動を共にした武人たちは今後の作戦を練るために会議を開いていた。
「はてさて、土方隊が合流したことでなんとか敵を圧しとめたことができたが、敵の装備は侮れないと思われます」
近藤と共に行動してきた参謀役の永倉新八が口を開いた。
「確かにな。我らが先発して到着はしたが、後から大砲2門と鉄砲隊が合流する予定ではあるが、それでは奴等の装備には対抗できないかもしれない」
土方も一気に突入はしたものの危うい場面は数々あったことを思い出していた。
「そこでです。奴らが態勢を整えるまでの間、一気に甲府城へ走り抜け占拠します」
「籠城するのか?」
土方の問いに永倉はうなづいた。
「だが、永倉君、籠城はいいとしても食料や弾薬は尽きてしまわないか?」
斉藤が一番重要な質問をした。なぜなら、籠城戦は長期的展開を見据えての戦略なのだ。
「その点は考慮しています。いくらあちらが新政府軍と言ったとしても、面白く思っていない人間だっています。すでに浅草新町の弾左衛門殿へ援軍を取り付けておりますゆえ」
永倉はにこりと微笑んで答えた。
「が、どうにかやつらの武器や弾薬を横取りできないものか?」
土方の突拍子のない疑問に全員が土方を見つめた。
「はは、土方さん、あんたって本当に面白いな」
斉藤は手を叩いて笑った。
「それはかなり難しいことですよ、土方さん。夜襲をかけるにしても時期を間違えればこっちが全滅してしまう」
確かに永倉もまた敵の武器や弾薬をこちらに横取りできれば戦いは互角にはわたりあえたかもしれないと思っていた。が、なんとか江戸へと辿りつき反撃の狼煙をあげることができればと慎重に考えていたのだった。
「近藤さんはどう思うんだ?」
土方は、何故か心ここに非ずといったような感じでそわそわとしている近藤に問いかけた。が、近藤の返事はかえってこなかった。
「近藤さん、どうしたっていうんだ!!」
土方はそんな近藤にいらだったように大声をあげた。
「あ、あぁあ、きいてるよ、としさん」
近藤はにこりと笑ってみせた。
「ともかく、後の事は永倉君にまかせるよ。わしは、ちょっと疲れたから休ませもらう」
近藤はすたすたとその場を逃げるように立ち去っていった。
「いったい、どうしまっちまたんだ?近藤さんは」
斉藤は首をひねった。
(確かにおかしい。それにかなりやつれているようにも見える)
土方は合流したときから近藤の異変に気づいていた。確かにここまでの激戦によるものなのかもしれないが、やつれ方が異常だ。
「少し様子をみてくる」
土方もまた席を外し、近藤の後を追った。
近藤は女を待った。まだ名も聞いていない女を。が、待てど暮らせど女は現れる事はなかった。
(どうしたというのだ。まさか、新政府軍に・・・)
そんなことを思うと胸が張り裂けそうに痛んだ。最早、近藤は女の体の虜になっていた。
「近藤殿、お久しゅうございます」
青白い光がともったと同時に人の影が現れた。
「天草四朗」
近藤は天草を睨みつけた。
「あの女はもうここには参りませんよ」
天草はにやりと微笑んだ。
「まさか貴様が!!」
近藤は虎徹を抜いて天草へ向けた。
「あの女はいい忍体になりました。近藤殿、今度は貴方様が蘇ったときお会いいたしましょう」
刀を抜いた近藤を前にしても天草はひるむことなく微笑んだ。その微笑みは何故か天使にさえみえる。
「女を返せ、天草」
近藤はじりじりと間合いを詰めた。
「近藤さん、どうしたんだ?」
その時、土方の声が聞こえた。
「おぉ、としさん、いいとこに来た。そいつを逃がさないでくれ」
近藤は土方に支援を頼んだ。
「そいつ?」
土方は近藤の前にいる男をみつめた。
「お前、何者だ?」
土方の本能が危険を察し、愛刀・兼定ではなく典太の方を抜いた。
「ほう、柳生十兵衛の剣・典太とは忌々しい。我が名は天草四朗時貞。いずれ決着をつけましょう。貴方様のお名前は?」
天草の目が金色に光った。
「新撰組副長・土方歳三だ。もしや。貴様か、土佐の岡田以蔵や長州の高杉晋作。そして、坂本龍馬まで生き返らせたのは?」
土方の問いにくすっと天草は微笑んだ。
「私ではありません。ですが、私にも協力者がおりまする。では、近藤殿、土
方殿、また後程」
天草が再び青白い光に包まれ始めた。
「待て、天草!!」
近藤の攻撃と同時に土方も天草へ襲い掛かった。が、一歩遅く天草は消えていってしまった。
「くっそー、あまくさぁー!!女を、俺の女を返せ!!」
近藤の涙が交った怒号が夜空に響き渡った。
「こ、近藤さん、あんた・・・・・・」
土方はその近藤の姿を見て絶句するのだった。
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