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魔界転生(幕末編)

作者:焼肉定食
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第48話 合流

 土方は、自分についてきた隊士たちをつれ、急ぎ甲府へ向かった。
 福沢諭吉との会談を終えた後の近藤隊危機の知らせを受け、宿へとって帰えると、すでに馬の用意もされていた。
(近藤さん、無事でいてくれよ)
 近藤の無事を祈りつつ、土方たちは馬を走らせた。

 甲府では、新政府軍の攻撃により、次々と銃弾や砲撃に仲間が倒れていった。
 最早、やぁやぁ我こそはという口上を垂れ、刀でちんちんばらばらという時代は今は昔のことで、高性能の連発銃と大砲をどれだけ持っているかで勝負が決していた。
 近藤隊は勇敢にも突撃を繰り返し、新政府軍をひるませることは出来たが、連戦連敗、敗走を繰り返し、甲府へとようやく辿りついたのだった。
「もうすぐ江戸に入る。みな、それまで頑張ってくれ」
 近藤は自分を奮い立たせるようにみんなに怒鳴った。そして、夜は生きたい、生きたいとつぶやき、女を抱いて果てるのだった。

 大阪を離れ、何度目の朝になるだろうか。
 新政府軍と再び激突することになった。
 最早、近藤率いる旧・幕府軍は全滅覚悟で戦いを開始した。
 旧・幕府軍にも鉄砲はあるが、急いで大阪城を出たために、その鉄砲は新政府軍とは似ても似つかないお粗末なもので、結局のところ身一つで突撃していくしかなかった。が、近藤隊は鬼神のような勢いで敵を翻弄し、切り捨てていった。
「新撰組局長・近藤勇である。死にたい奴から前へでろ!!」
鬼の形相で睨みつけると新政府軍の隊員はひるんだ。
「ひるむな!!近藤を打ち取れ!!」
 ひるむ隊員達に激を飛ばし、長槍隊が近藤を取り囲んだ。
 近藤は愛刀・虎徹を正眼に構え、迎え撃つ。が、多勢に無勢。
 徐々に近藤は追い詰められていった。そのとき、後方から馬の蹄の音を聞いたのだった。
「突撃!!」
 土方の号令で一気に新政府軍へ馬ごと雪崩こんだ。
「おぉ、としさん!!」
 近藤は土方合流に歓喜の声をあげた。
「近藤さん、遅くなって済まない。よくぞ、ご無事で」
 土方は馬の上から近藤に詫びた。
「して、江戸はどうだった?」
 近藤は生きて土方に会えたのがうれしいのか戦闘を忘れてしまっていた。
「その事は後程、今は戦いに集中しましょう」
 土方は馬を走らせ、新政府軍へ突っ込んでいった。そして、息を吹き返した近藤隊も新政府軍を押し返していったのだった。
「一旦、引け!!」
 急な土方隊合流により、新政府軍は引かざるを得なくなってしまった。
 その有様をみた旧・幕府軍は歓喜の声をあげ、初めての勝ち名乗りをあげた。
 泥だらけの顔や埃だらけの体など気にせず、みな抱き合い喜びを爆発させた。それは無理もないことだった。
「よく来てくれた。としさん」
 近藤もまた同じ思いだった。土方としっかり握手をかわし、目を潤ませた。
「近藤さんこそ」
 土方は笑みを浮かべ、そんな近藤を労うのだった。が、そんな二人を木の上から見つめる男が一人いた。
「頃合いだな。女を連れて帰るとしよう」
 男はまるで風のようにすぅっと木の上から消え去ったのである。

 
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