ロザリオとバンパイア〜Another story〜
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第52話 授業が眠たいのは万国共通
~陽海学園~
無事? 学園にたどり着く事が出来た3人。月音は朝から血を抜かれて やや貧血気味だった様だが、とりあえずは大丈夫そうだ。
そして、当然だが 学生の本分である学業が今日も始まる。
「さてこれから授業…か… ううむ、やっぱり眠くなる………、な。この感覚は忘れられん……」
《学校の授業》
それは、眠くなる原因の大部分だろう。恐らく同じ意見の人も少なくないはずだ。難しい事を考え続けると、段々意識が遠のいていく……、楽な方向へと流されていく……。非常によく判ると言うものだ。
だが、決して悪い事だけではない。カイトにとっては、学生と言う環境だけでも、非常に懐かしみさえ感じるから。
だけど、やっぱり眠たい様子で、頭をぼーっと、させている時だった。
「はーい! じゃあここの問を……えーっと、はい、御剣君に解いてもらおうかな?」
黒板に問題を書いた後に回答者を指名する。
これも、恐らくは、ありがちなパターンだろう。ぼー、っと惚けている最中にご指名されてしまった。別ごとを考えている時に、狙ったかの様に当てられた。
この後の展開はつまり。
『ううー……すみません……、分かりません……。と言うより、どの問題でしょうか……』
『もー、ダメじゃない。ちゃんと聞いてたのー? しっかり勉強しないと、テストが辛いわよ??』
と、説教をされてしまった上に。
『あははははー』
と言う感じに、クラス中に笑われてしまうのが、学園ものの、王道と言うものだ。
それはそれで、クラスの雰囲気が和やかになるとは思うのだが、当事者にはたまったものではないのも事実だろう。笑い者にされてしまっているのだから。
―――……だが、生憎、そのお約束な展開には、ならなかった。
カイトはゆっくりと黒板の前にまで移動をすると、渡されたチョークを手に取り。
「ん。三角比の定義を使った問題ですね。えーーっと ~だから、こうなって……、つまり、こうで……(以下省略)です」
素早く、淀み無く、黒板に答え書き終え、先生の方を見た。
「(……まあ この程度なら…問題ないな。流石に)」
まだ解答をされていないが、自信はあったのだろう。カイトはそう考えていた。
そして、その考えは間違いなかった。
「はい完璧よ! 御剣君。よく出来ましたー」
先生が軽く手を叩いて拍手。
少々これはこれで、恥ずかしいのだが、それ以上の事が起こる。
「おおおおお!」
「すごーい!!」
「きゃー!!」
クラスから、賞賛の声が沸き起こったのだ。
先生に褒められるだけならまだしも、同級生たちにここまでされた経験はある訳もなく、少々戸惑ってしまうカイト。
「(……いや、だが。これ、そこまで難しいかな? 1年だから、数Ⅰレベルだし……)」
疑問に思う部分も多少なりとも出てきたのだが、ここは人間の学校ではなく、《陽海学園》
だからこそ、あまり深く考えないようにした。
因みに、カイト君がある程度学業が出来る理由をここで説明しておこう。
――……生前。
というか転生前の話である。
彼は、学業が疎かにし、それが顕著に現れでもしたなら(テストの点or成績の点)…… それはそれはまるで、阿修羅のような凶悪な教師(放課後の部活動の)に、グラウンドの済で精神的にも肉体的にもボコボコにされていた。……嫌ーな記憶がまだ鮮明に残ってるのだ。
前世の記憶は 薄れてきていると言うのに……、こういった部分はどことなく覚えている様子だった。それが悪い事なのか、良い事なのかは判らないが……、現時点では良かっただろう。
ある程度、勉強が出来て 困る事はない。ここにも、中間・期末テストはあるのだから。
でも、あの頃は、出来るまでは地獄の様な日々。訴えられないか? って思う程スパルタだった――……と、カイトは思い出しながら、冷や汗をかいていると。
「(すごいねーカイト! ひょっとして、勉強得意?)」
自分のすぐ後ろの席の月音が、声を掛けてきた。
「(………いやいや、別に難しくないだろ? 抜き打ちって訳じゃないし、普通に教科書見れば、公式も載ってるだろ? ……ま、勉強自体は基本嫌いだ。……でも、赤点は取りたくないから そこそこ頑張ってる、ってところだ)」
「(えーーっ!! 教科書見ただけで判るの? 十分すごいって! だって、オレなんか 教科書、数字と英単語の呪文にしか見えないんだし)」
「(それはそれは……。って、そこまで行ったら、ちょっとは、べんきょーしろ! つくね! 久しぶりに聞いたわ! その数字の呪文って表現!)」
小声ではあるが、カイトと月音が、あーや こーやとやり取りしている間にも、授業は進む。
「じゃ次の問題は… 赤夜さんお願いね!」
「はいっ!」
今度はモカが指名され、立ち上がり、黒板に公式等を使って次の問題をあっさりと解いてのけた。甲乙つけがたい。
「はい! 赤夜さんも完璧ね。よく出来ました!」
「おおおおお!」
「やっぱモカさんもすごーい!」
そして、恒例行事なのか……、またまたクラスが沸いた。
「(ほら、つくね。……モカも、あーやって、ばっちり解いてるだろ? ちょっとは見習って、予習なりなんなりをだな……って、ん?)」
モカの姿を見た後、月音の顔を見ると。
「(モカさん、スゴイ……)」
月音は、まるで輝いているかの様なモカの姿に完全に見惚れてしまっていて、先に話しかけてきたにも関わらず、完全にカイトの話を訊いて無い様だった。
「(はぁ……ダメだこりゃ…)」
兎に角、カイトはそれ以上何も言わず、教科書に視線を落とした。
因みにその後。
月音にも、指名がかかったのだが……、モカに見惚れ、完全に自分の世界から帰ってこれず、全く問題や先生の話を聞いてなかった為、全く答えられなかった。
クラスが違う意味で又沸きあがったのは言うまでもない。
「(……まあ 赤点はとらんようにな、つくね)」
やや 冷ややかな目でカイトは月音を見ると同時に、……キーンコーンカーンコーン~♪ と言うチャイムと共に、授業が終了したのだった。
「はい 今日の授業はここまでね。みんな、もうすぐ実力テストがあるからしっかり勉強しておきなさいね」
と、終わり後の先生の一言で、再び違う意味で教室内が沸く。
「うげぇええ! テストなんてあんの?」
「うわー全然自信ないし……」
「うー! テストいやぁ!」
点数として、形に残るのがテスト。……好む者もいるだろうが、大多数が嫌なのだろう。
「じゃ! がんばってねぇ~♪」
クラス中で悲鳴が上がってるのを尻目に、先生は教室から出て行った。
クラス中が、悲鳴を上げている中でも、安堵している者も勿論いた。
「おお……、やーーっとおわったなぁ―――……………オヤスミ………」
それはカイトである。
休み時間をどの様に過ごすのかは、基本的に生徒の自由だ。購買部に行ってジュースなりなんなりを買うもよし、友達と話すのもよし、次の授業の準備をするのもよし……そして、眠るのも全く問題ない。
カイトは、授業が終わると殆ど同時に、机に頭を下ろし、突っ伏したまま寝始めた。
そんな彼の前に、おずおずと 現れた? のは月音。
「あははは……カイト…ちょーーっといいかな?」
苦笑いをしつつ、話しかけている月音。
だが、カイトにとっては、いくら友達であっても、今の月音は、ただの睡眠のお邪魔虫でしかない。
「………む? つくね………、 オレは、今もれなく眠いんだ。非常に、眠いんだ。………聞いてやらん事もない、が、内容は単純簡潔にな………。そうだな、15文字以内に、だ」
カイトは、突っ伏したまま、ちょっぴり無理を言うが、月音も負けてはいない。
「テスト自信ないから手伝って」
淀み無く答える。まるで、先程の解答をしたモカやカイトの様に。……それも、カイトが指定した15文字以内。……いや、ぴったりで。
少々驚いたカイトだったが、特にこれといった反応を見せる事なく。
「眠い…………、オヤスミ。始まる1分前に起こして………」
「って、えええ! 今の、スルーなの? 今の、ダメなの?」
まさかの華麗なるスルーに、度肝抜かれた月音。自分としては、清々しいまでのカウンターを当てられた。会心の出来、とまで思っていたのに、完全に外れていた、と驚いていた様だ。
「………オレは、聞いてやらん事はない、とは言ったが、それに応える、と言ってないぞ? ……つくね」
「ええっ、へ、屁理屈だしっ! そんな、ひどいや!」
抗議する月音。だが、カイトも折れる事はない。
「これもつくねを思っての事だ」
「嘘だ!! 絶対、楽しんでるって! そんな気配がバリバリするし!」
「……いや、嘘じゃないぞ! (……多分な)」
「多分って何! 聞こえる様にわざと言わないでよー!」
「ん。以上を持って、コント終了だ」
「いやいや! 別にコントじゃないから! 頼むよー。 このままじゃオレ、やばいんだって…」
懇願する月音。
スルーし続けたカイトだったが(後半は、月音が言う様に完全に楽しんでた)、流石にかわいそうになってきた為、ゆっくりと身体を起こした。
「………やれやれ。つくね。別にオレじゃなくても良いんじゃないか? ほれ、モカに教わればどうだ? 話するチャンスだし、何より、オレよりきっと頭いいと思うぞ?』
そう促してやった。
月音のモカへの想いに関してはよく判るし、何よりも反応が面白いから、一石二鳥だ。月音にとっても、悪い事ではない、と思っていたのだが、月音は首を軽く横に振る。
「………もちろん、さ。それも考えたけど…… でも、いきなり勉強教えてっていうのも……」
月音は、それ以上は言わず、俯いていた。
大体の月音の気持ちは、ここで判明。
「成る程ね。ま、カッコ悪い、って思うはな。 ふぅ……、仕様がない。多少なら手伝ってやるよ。それで、どこが分からないんだ?」
「あ、ありがとっ! えっとね…、三角比の定義についてなんだけど……」
月音が、先程の授業で控えていたノートを取りに行ったその時だ。
「カイト君っっ!!」
「ちょっとさっきの授業で…」
「数学なんだけど…」
「ちょっといいっっ!?」
「好きな人、いるっっ!?!?」
あっという間に他の生徒に囲まれた。女子生徒たちに。
「………へ??」
先程まで、月音と話していた筈なのに、突然変わったから、こればかりは想定外で戸惑っていると。
「ちょっと! 私が最初に話しかけたんだから、遠慮しなさいよ!」
「何よ! わたしの方が早かったし!!」
「ああもう!! うるさーいっ!!」
あれよあれよ、と言う間に、こんどは女子同士の喧嘩が始まった。
「……………って、ああー! ちょ、ちょっと!! 喧嘩はやめて! 判んないならちゃんとみんな教えるから。(後半部分は授業に関係ないし……スルーかな)」
カイトは、その喧嘩を止めようとしたのだが、止まらない。
「このー!」
「この!!」
「なによー!」
ポカポカポカ~~っと、叩き合いの喧嘩が始まった。でも大丈夫。怪我したりしない。両手をぐるぐる~と奮って、ぽかぽか、叩き合ってるだけだから大丈夫だ。完全に子供の喧嘩。
でも、厄介な事に、喧騒だけはいっちょまえに大きい。騒がしい。
「(このままだと… ね…寝れない… しかも 聞いてくれない………、何より、嫌な予感しかしない……)」
という訳で、この場から脱出。
安住の地を求めて。
「ああ! カイトっ! オレに教えてくれる件は??」
暫く、カイト同様に、突然の事に呆然と見ていた月音は、カイトが移動していくのが見えた為、慌てて訊き直した。
「ちょっろ、 今日はパスだ!! なにやら嫌な予感がするか…………っっっ!!」
その予感は、綺麗に的中した。
カイトがいなくなったのに気づいた女子達はと言うと。
「「「あ!!まって!!」」」
一斉にに走って向かってきたのだ。ロケットスタート。陸上部も真っ青なクラウチングスタートだ。
「ちょ!! うぎゃあ~~~」
それは、最早一瞬の出来事である。
人波に溺れるなんて経験はないし、見た事もないのだけど、瞬く間にカイトは女子生徒達に押しつぶされるように、沈んでいった……
「(って、オレが何したーーーっっ!! ただ、眠ろうとしただけじゃないかーーーーっ)」
揉みくちゃにされるカイト。
柔らかい感触も、それなりにはあって、顔が赤くなったりもしたのだが……、後半は圧力がハンパなかった為、何も考えられず、ただただ 苦しむだけなのだった。
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